台北市南港区の南港展覧館で開かれている台湾最大のIT見本市「台北国際電脳展(コンピューテックス台北)」では、最先端の人工知能(AI)技術が集結している。EMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手の鴻海精密工業やモバイル端末向け集積回路(IC)設計世界大手の聯発科技(メディアテック)のブースでは、米半導体大手、エヌビディアの最新半導体技術を搭載したAI関連製品がひときわ来場者の関心を引いている。【安藤千晶】
大勢の来場者が鴻海のブースで「GB300・NVL72」を見ていた=20日、台北(NNA撮影)
鴻海は、エヌビディアの技術を使用したAIサーバー「GB300・NVL72」、ヒト型ロボット、スマート製造プラットフォームのAIシステム・ソリューションなどを展示している。
担当者は、GB300・NVL72について、データセンター向けに使用される見込みだと話した。
会場ではエヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)が鴻海をはじめとする台湾の取引メーカーのブースを訪問。GPU(画像処理装置)などAIデータセンター向け半導体で圧倒的なシェアを持つ同社の動向は台湾メーカーの命運を左右するだけに、フアン氏の様子を見逃すまいと大勢の来場者や報道関係者が押し寄せた。
聯発科技は自動車用コックピットプラットフォーム「Dimensity Auto Cockpit」を展示。パネルを自動車のレプリカに展示し、多くの来場者が写真撮影をしていた。
担当者は、ゲームや動画を滑らかに再生できるだけでなく、車外の歩行者検知や危険回避情報を表示したり、周囲の街並みを映し出したりする機能も備えていると胸を張った。現在、自動車メーカーへの供給について協議中だという。来場者からは「とても斬新だ」との声が上がっていると話した。
金融業に従事する男性(40)は、「現在の台湾におけるソフトウエアおよびハードウエアの発展状況、特にハードウエア分野に関心がある」と話した。3つの展示エリアを見学し、AIのリソース管理に興味を持ったという。
聯発科技はDimensity Auto Cockpitを紹介=20日、台北(NNA撮影)
■九州ベンチャーも参戦
日本勢では九州の複数のベンチャー・スタートアップ企業が自社製品をPRした。
北九州市のブースでは、電気自動車(EV)や充電設備の販売・メンテナンスを手がけるEVモーターズ・ジャパンが出展。同社の代表取締役社長の佐藤裕之氏は、「当社の強みは電池関連技術だ。台湾の方々に日本製EVの良さを知ってもらいたい」とアピールした。
佐藤氏は日本と台湾は災害が多い共通点があるが、EVは災害時に非常用電源として活用できると強調。また、商用EVは電力確保が課題となっているとコメントした。同社にはEMS大手、緯創資通(ウィストロン)などが出資している。
福岡市のブースではモノのインターネット(IoT)を活用したヨガマットを手がける「ヨクト」が、利用者の姿勢や重心を正確に測定できるセンサーを搭載したヨガマット「yoctoMat」などをPRした。
河野敬文代表取締役は、「台湾での販売実績はまだないが、来場者と直接つながる機会を得ることで、将来的な販路拡大の足がかりにしたい」と話した。台湾市場を狙う理由としては、「ヨガ人気の高さ、日本への親近感、そして地理的な近さ」を挙げた。
福岡市のブース担当者は「1社でも多くのスタートアップ企業が海外展開できるようサポートしている」と述べた。
福岡市は日本のスタートアップ企業のブースを設けた。写真はヨクトの河野敬文代表取締役=20日、台北(NNA撮影)
同市は外国人エンジニアの受け入れ促進に向けた「エンジニアビザ制度」も紹介。同制度では外国人エンジニア(ITおよび半導体関連産業など)の在留資格の審査期間が1カ月程度まで短縮される。台湾企業では益芯科技(CMSC)が福岡市に進出している。
■頼総統「コンピューティング技術が鍵」
台湾の頼清徳総統は開幕式典に出席し、スピーチで「今年のコンピューテックスには5万人を超える海外来場者が登録されており、過去に例を見ない盛況ぶりだ」と喜びを表した。
頼氏は今年のコンピューテックスの主軸テーマ「AIネクスト」に触れ「コンピューティング技術が鍵となる」と強調。政府として法制度、税制、金融支援を通じて産業成長を後押しする姿勢を明らかにした。
また、対外展開としては友好国との経済・貿易協定などの締結や、民主的な半導体供給網(サプライチェーン)の構築を目指すと表明し、中国系企業との価格競争にも対抗する姿勢を示した。
ハードウエアだけでなくソフトウエアやAIを活用したソリューションの開発も必要となっている中、無人機や軍事、セキュリティー、通信、ロボットといった次世代産業における官民連携も呼びかけた。
コンピューテックス台北は、台湾政府系貿易振興機関の中華民国対外貿易発展協会(TAITRA)と台北市電脳商業同業公会(TCA)の共催で、今年は「インテリジェント・コンピューティング&ロボティクス」、「次世代テクノロジー」、「未来のモビリティー」の3つに焦点を当てている。
今年は34カ国・地域の約1,400社が出展し、計4,800ブースを構える大規模展示となっている。開催は23日まで。
コンピューテックスの開幕式典に頼清徳総統(中央)も参加した=20日、台北(NNA撮影)
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聯発科技は自動車用コックピットプラットフォーム「Dimensity Auto Cockpit」を展示。パネルを自動車のレプリカに展示し、多くの来場者が写真撮影をしていた。
担当者は、ゲームや動画を滑らかに再生できるだけでなく、車外の歩行者検知や危険回避情報を表示したり、周囲の街並みを映し出したりする機能も備えていると胸を張った。現在、自動車メーカーへの供給について協議中だという。来場者からは「とても斬新だ」との声が上がっていると話した。
金融業に従事する男性(40)は、「現在の台湾におけるソフトウエアおよびハードウエアの発展状況、特にハードウエア分野に関心がある」と話した。3つの展示エリアを見学し、AIのリソース管理に興味を持ったという。
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■九州ベンチャーも参戦
日本勢では九州の複数のベンチャー・スタートアップ企業が自社製品をPRした。
北九州市のブースでは、電気自動車(EV)や充電設備の販売・メンテナンスを手がけるEVモーターズ・ジャパンが出展。同社の代表取締役社長の佐藤裕之氏は、「当社の強みは電池関連技術だ。台湾の方々に日本製EVの良さを知ってもらいたい」とアピールした。
佐藤氏は日本と台湾は災害が多い共通点があるが、EVは災害時に非常用電源として活用できると強調。また、商用EVは電力確保が課題となっているとコメントした。同社にはEMS大手、緯創資通(ウィストロン)などが出資している。
福岡市のブースではモノのインターネット(IoT)を活用したヨガマットを手がける「ヨクト」が、利用者の姿勢や重心を正確に測定できるセンサーを搭載したヨガマット「yoctoMat」などをPRした。
河野敬文代表取締役は、「台湾での販売実績はまだないが、来場者と直接つながる機会を得ることで、将来的な販路拡大の足がかりにしたい」と話した。台湾市場を狙う理由としては、「ヨガ人気の高さ、日本への親近感、そして地理的な近さ」を挙げた。
福岡市のブース担当者は「1社でも多くのスタートアップ企業が海外展開できるようサポートしている」と述べた。[caption id="attachment_26506" align="aligncenter" width="620"]
福岡市は日本のスタートアップ企業のブースを設けた。写真はヨクトの河野敬文代表取締役=20日、台北(NNA撮影)[/caption]
同市は外国人エンジニアの受け入れ促進に向けた「エンジニアビザ制度」も紹介。同制度では外国人エンジニア(ITおよび半導体関連産業など)の在留資格の審査期間が1カ月程度まで短縮される。台湾企業では益芯科技(CMSC)が福岡市に進出している。
■頼総統「コンピューティング技術が鍵」
台湾の頼清徳総統は開幕式典に出席し、スピーチで「今年のコンピューテックスには5万人を超える海外来場者が登録されており、過去に例を見ない盛況ぶりだ」と喜びを表した。
頼氏は今年のコンピューテックスの主軸テーマ「AIネクスト」に触れ「コンピューティング技術が鍵となる」と強調。政府として法制度、税制、金融支援を通じて産業成長を後押しする姿勢を明らかにした。
また、対外展開としては友好国との経済・貿易協定などの締結や、民主的な半導体供給網(サプライチェーン)の構築を目指すと表明し、中国系企業との価格競争にも対抗する姿勢を示した。
ハードウエアだけでなくソフトウエアやAIを活用したソリューションの開発も必要となっている中、無人機や軍事、セキュリティー、通信、ロボットといった次世代産業における官民連携も呼びかけた。
コンピューテックス台北は、台湾政府系貿易振興機関の中華民国対外貿易発展協会(TAITRA)と台北市電脳商業同業公会(TCA)の共催で、今年は「インテリジェント・コンピューティング&ロボティクス」、「次世代テクノロジー」、「未来のモビリティー」の3つに焦点を当てている。
今年は34カ国・地域の約1,400社が出展し、計4,800ブースを構える大規模展示となっている。開催は23日まで。
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