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【年始特集】日系景況感、「改善」は4割回復期待も不透明感、駐在員調査

NNAがアジア太平洋地域の日系企業駐在員を対象に実施した調査で、2023年上半期(1~6月)の景気が22年下半期から上向くとの回答が4割に上った。新型コロナウイルス対策として実施された各種規制の緩和に伴う経済回復への期待が強く示された。ただ、回復に一服感が出ていることや、物価高、金融引き締めで世界経済の先行きに不透明感が高まっていることを受け、「横ばい」になるとの回答も3割以上を占めた。

入国規制の緩和以降、タイでは外国人観光客数が回復している=バンコク(NNA撮影)

景況感調査は22年12月6日から12日にかけて、アジア太平洋地域の駐在員らにウェブアンケート方式で実施し、15カ国・地域の769人が回答した。
駐在する国・地域の23年上半期の景気が22年下半期と比べてどうなるかを尋ねた質問では「緩やかに上昇」が36.0%、「上昇」が4.7%と、合わせて40.7%を占めた。「横ばい」との回答は35.9%で、悪化を見込む「緩やかに下降」は16.8%、「下降」は6.1%だった。
「上昇」と「緩やかに上昇」を合わせた改善を見込む回答の割合は、インドが72.1%と国・地域別で最も高く、特に「上昇」との回答は23.3%と、ほかの国・地域に比べて突出して高かった。
「上昇」と「緩やかに上昇」を合わせた割合は、フィリピン(53.8%)とタイ(51.9%)も5割を超えた。国内の行動制限に加え、22年2月ごろから段階的に入国規制の緩和を進めた東南アジア諸国やインドに比べ、東アジアでは楽観的な見方が比較的少なく、香港、台湾、韓国は「上昇」との回答がゼロだった。

改善を見込む理由では、「コロナ以前のレベルにはまだ達していないため、そこまでは戻ると考えている」(ベトナム/食品・飲料)などとコロナ禍からの経済の正常化、回復がさらに進むとの見方が多数を占めた。ほかに「半導体の供給の安定化と消費者心理の向上」(タイ/四輪・二輪車・部品)と、自動車など幅広い産業に影響が及んでいる半導体不足の解消を見込む声も目立った。
「市民はモールに繰り出し、飲食店に並んでいる。お金が回っている感じがある」(インドネシア/食品・飲料)、「市場からのフィードバックでは多くが(22年11月の選挙を経て発足した)新政権に好印象を持っており、来期は好転することを期待」(マレーシア/機械・機械部品)と景気回復の兆しを肌で実感している回答もあった。
中国で改善を見込む割合は39.5%だった。「ゼロコロナ対策の緩和による企業、個人の活動活性化」(電機・電子・半導体)、「コロナ政策の適正化や緩和が進み、プロジェクト案件を中心に徐々に需要回復が進むと予測」(貿易・商社)と、ロックダウン(都市封鎖)やPCR検査の徹底など厳格なコロナ対策が続いていた同国では、22年12月上旬に大幅に規制が緩和された効果に期待する声が圧倒的に多かった。ただ、足元では感染爆発が起きているとみられ、見通しの修正を迫られる可能性がある。

■「横ばい」も目立つ
23年上半期の見通しでは、「横ばい」になるとの回答の多さも目立った。国・地域別では、21年2月のクーデター後に国軍が実権を握るミャンマーが57.1%と最も多く、韓国(52.4%)、オーストラリア(44.0%)、台湾(43.5%)、タイ(39.4%)、ベトナム(38.4%)、中国(37.2%)などと続いた。
横ばいを見込む理由としては、「コロナの影響は徐々になくなると思われるが、インフレに伴う景気減速で(回復が)相殺されてしまう」(オーストラリア/その他の製造業)、「アフターコロナでのさらなる需要回復の一方でインフレ進行懸念」(タイ/食品・飲料)と物価高を警戒する声が目立った。ほかに中国では、電気自動車(EV)などの「新エネルギー車(NEV)」に対する補助金政策の期限が22年末だったことの反動減を挙げる声も一定数あった。
23年上半期の景気悪化を予測する声では、「22年下期が良過ぎた。インフレ、金利上昇の影響が出ると思う」(インドネシア/鉄鋼・金属)、「コロナ禍からの回復は進むものの、原材料その他の各種コスト上昇が引き続き大きく影響すると思われる」(タイ・運搬・倉庫)と物価上昇による打撃をより深刻にとらえる向きが出た。
「欧米景気の冷え込みから加工工場の受注全体が減少している様子」(ベトナム/繊維)、「世界景気の後退および継続する物価上昇の影響」(フィリピン/その他の製造業)と、不透明な世界経済の先行きを懸念する意見も目立った。
産業別の景気見通しでは、改善を見込む声は製造業で39.2%、非製造業で41.7%となった。業種別では「食品」(55.6%)、「サービス」(55.3%)、「建設・不動産」(53.3%)などで半数を超えた。
「下降」と「緩やかに下降」を合わせた割合は、「運搬・倉庫」が41.5%と最も大きく、「機械・機械部品」が34.9%と続いた。「横ばい」は、「繊維」の46.2%を筆頭に、「四輪・二輪車・部品」(43.1%)、「その他の製造業」(42.3%)と製造業で比較的多かった。
国・地域によっては産業集積が進む「四輪・二輪車・部品」は改善を見込む割合が44.0%、悪化が12.8%、「電機・電子・半導体」は改善が37.5%、悪化が22.7%だった。半導体調達については改善したとの声があった一方、「現在の主な障害は半導体不足」(インドネシア/四輪・二輪車・部品)と、今も正常化していないと指摘する声もあった。
■22年下期、改善は43.9%

22年下半期の景気が上半期に比べてどうなったかを尋ねた質問は、「緩やかに上昇」が34.3%、「上昇」が9.6%だった。「横ばい」は20.4%で、「緩やかに下降」は20.2%、「下降」は14.7%だった。
「ビジネス客・観光客が増え、大型商業イベントも復活するなど、景況感の回復を感じている」(シンガポール/金融・保険・証券)、「中断していたコンドミニアムや商業施設などの工事はほとんどが再開。シンガポールなどからの旅行者が増加」(マレーシア/電機・電子・半導体)と、長期に及んだ活動制限の緩和による景気回復を実感する向きが強く出た。実際に販売や受注の増加や売上高の拡大を挙げる声も目立った。
国・地域別では、23年上半期と同様に東南アジア、インドで改善を見込む割合が比較的高かった。「上昇」と「緩やかに上昇」を合わせた割合はインドネシアが74.5%と唯一7割を超え、インド(69.8%)、フィリピン(66.6%)、タイ(62.5%)、シンガポール(52.9%)で5割を超えた。23年上半期の見通しと同様に、インドは「上昇」との回答が37.2%と楽観的な見方が強かった。
対照的に東アジアの中国、香港、台湾、韓国は改善したとの回答がいずれも2割前後で、「緩やかに下降」「下降」の合計を大きく下回った。具体的には「防疫政策が経済の足を引っ張っており、実際に案件延期が増えてきている」(中国/機械・機械部品)、「ゼロコロナ政策によるサプライチェーン(供給網)の混乱、半導体不足による生産減」(中国/貿易・商社)といったマイナス材料が示された。
改善を実感しつつも「上海の隔離政策の反動による影響であって、景気回復による上昇ではない」(中国/機械・機械部品)と冷静に現状を分析する声もあった。
<アンケートの概要>
海外在住者の有効回答数は769件で、業種の内訳は製造業が43.4%、非製造業が53.1%、公的機関などその他が3.5%だった。国・地域別の内訳は中国172件、タイ104件、インドネシア86件、ベトナム73件、オーストラリア50件、香港49件、台湾46件、インド43件、フィリピン39件、シンガポール34件、マレーシア34件、韓国21件、ミャンマー14件など。

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景況感調査は22年12月6日から12日にかけて、アジア太平洋地域の駐在員らにウェブアンケート方式で実施し、15カ国・地域の769人が回答した。
駐在する国・地域の23年上半期の景気が22年下半期と比べてどうなるかを尋ねた質問では「緩やかに上昇」が36.0%、「上昇」が4.7%と、合わせて40.7%を占めた。「横ばい」との回答は35.9%で、悪化を見込む「緩やかに下降」は16.8%、「下降」は6.1%だった。
「上昇」と「緩やかに上昇」を合わせた改善を見込む回答の割合は、インドが72.1%と国・地域別で最も高く、特に「上昇」との回答は23.3%と、ほかの国・地域に比べて突出して高かった。
「上昇」と「緩やかに上昇」を合わせた割合は、フィリピン(53.8%)とタイ(51.9%)も5割を超えた。国内の行動制限に加え、22年2月ごろから段階的に入国規制の緩和を進めた東南アジア諸国やインドに比べ、東アジアでは楽観的な見方が比較的少なく、香港、台湾、韓国は「上昇」との回答がゼロだった。

改善を見込む理由では、「コロナ以前のレベルにはまだ達していないため、そこまでは戻ると考えている」(ベトナム/食品・飲料)などとコロナ禍からの経済の正常化、回復がさらに進むとの見方が多数を占めた。ほかに「半導体の供給の安定化と消費者心理の向上」(タイ/四輪・二輪車・部品)と、自動車など幅広い産業に影響が及んでいる半導体不足の解消を見込む声も目立った。
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中国で改善を見込む割合は39.5%だった。「ゼロコロナ対策の緩和による企業、個人の活動活性化」(電機・電子・半導体)、「コロナ政策の適正化や緩和が進み、プロジェクト案件を中心に徐々に需要回復が進むと予測」(貿易・商社)と、ロックダウン(都市封鎖)やPCR検査の徹底など厳格なコロナ対策が続いていた同国では、22年12月上旬に大幅に規制が緩和された効果に期待する声が圧倒的に多かった。ただ、足元では感染爆発が起きているとみられ、見通しの修正を迫られる可能性がある。

■「横ばい」も目立つ
23年上半期の見通しでは、「横ばい」になるとの回答の多さも目立った。国・地域別では、21年2月のクーデター後に国軍が実権を握るミャンマーが57.1%と最も多く、韓国(52.4%)、オーストラリア(44.0%)、台湾(43.5%)、タイ(39.4%)、ベトナム(38.4%)、中国(37.2%)などと続いた。
横ばいを見込む理由としては、「コロナの影響は徐々になくなると思われるが、インフレに伴う景気減速で(回復が)相殺されてしまう」(オーストラリア/その他の製造業)、「アフターコロナでのさらなる需要回復の一方でインフレ進行懸念」(タイ/食品・飲料)と物価高を警戒する声が目立った。ほかに中国では、電気自動車(EV)などの「新エネルギー車(NEV)」に対する補助金政策の期限が22年末だったことの反動減を挙げる声も一定数あった。
23年上半期の景気悪化を予測する声では、「22年下期が良過ぎた。インフレ、金利上昇の影響が出ると思う」(インドネシア/鉄鋼・金属)、「コロナ禍からの回復は進むものの、原材料その他の各種コスト上昇が引き続き大きく影響すると思われる」(タイ・運搬・倉庫)と物価上昇による打撃をより深刻にとらえる向きが出た。
「欧米景気の冷え込みから加工工場の受注全体が減少している様子」(ベトナム/繊維)、「世界景気の後退および継続する物価上昇の影響」(フィリピン/その他の製造業)と、不透明な世界経済の先行きを懸念する意見も目立った。
産業別の景気見通しでは、改善を見込む声は製造業で39.2%、非製造業で41.7%となった。業種別では「食品」(55.6%)、「サービス」(55.3%)、「建設・不動産」(53.3%)などで半数を超えた。
「下降」と「緩やかに下降」を合わせた割合は、「運搬・倉庫」が41.5%と最も大きく、「機械・機械部品」が34.9%と続いた。「横ばい」は、「繊維」の46.2%を筆頭に、「四輪・二輪車・部品」(43.1%)、「その他の製造業」(42.3%)と製造業で比較的多かった。
国・地域によっては産業集積が進む「四輪・二輪車・部品」は改善を見込む割合が44.0%、悪化が12.8%、「電機・電子・半導体」は改善が37.5%、悪化が22.7%だった。半導体調達については改善したとの声があった一方、「現在の主な障害は半導体不足」(インドネシア/四輪・二輪車・部品)と、今も正常化していないと指摘する声もあった。
■22年下期、改善は43.9%

22年下半期の景気が上半期に比べてどうなったかを尋ねた質問は、「緩やかに上昇」が34.3%、「上昇」が9.6%だった。「横ばい」は20.4%で、「緩やかに下降」は20.2%、「下降」は14.7%だった。
「ビジネス客・観光客が増え、大型商業イベントも復活するなど、景況感の回復を感じている」(シンガポール/金融・保険・証券)、「中断していたコンドミニアムや商業施設などの工事はほとんどが再開。シンガポールなどからの旅行者が増加」(マレーシア/電機・電子・半導体)と、長期に及んだ活動制限の緩和による景気回復を実感する向きが強く出た。実際に販売や受注の増加や売上高の拡大を挙げる声も目立った。
国・地域別では、23年上半期と同様に東南アジア、インドで改善を見込む割合が比較的高かった。「上昇」と「緩やかに上昇」を合わせた割合はインドネシアが74.5%と唯一7割を超え、インド(69.8%)、フィリピン(66.6%)、タイ(62.5%)、シンガポール(52.9%)で5割を超えた。23年上半期の見通しと同様に、インドは「上昇」との回答が37.2%と楽観的な見方が強かった。
対照的に東アジアの中国、香港、台湾、韓国は改善したとの回答がいずれも2割前後で、「緩やかに下降」「下降」の合計を大きく下回った。具体的には「防疫政策が経済の足を引っ張っており、実際に案件延期が増えてきている」(中国/機械・機械部品)、「ゼロコロナ政策によるサプライチェーン(供給網)の混乱、半導体不足による生産減」(中国/貿易・商社)といったマイナス材料が示された。
改善を実感しつつも「上海の隔離政策の反動による影響であって、景気回復による上昇ではない」(中国/機械・機械部品)と冷静に現状を分析する声もあった。
<アンケートの概要>
海外在住者の有効回答数は769件で、業種の内訳は製造業が43.4%、非製造業が53.1%、公的機関などその他が3.5%だった。国・地域別の内訳は中国172件、タイ104件、インドネシア86件、ベトナム73件、オーストラリア50件、香港49件、台湾46件、インド43件、フィリピン39件、シンガポール34件、マレーシア34件、韓国21件、ミャンマー14件など。"
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