NECの子会社NECインドが、ITを活用したヘルスケア事業に今後注力する。NECインドによると、国内IT市場の成長率は毎年10~15%だが、ヘルスケア分野に絞ると過去5年間は毎年20%程度で推移。直近の市場規模(IT市場のヘルスケア分野)は約4,000億円に達している。NECインドは2023/24年度(23年4月~24年3月)中に、生活習慣病予防や新生児スクリーニング(検査)に関する新事業を始める方針だ。アプリを含むサービスまたはソフトウエアを提供する。
NECインドは新生児スクリーニングに使うソフトウエア提供を23/24年度中に始める予定だ(同社提供)
生活習慣病予防に関する新事業は、「アシャ」と呼ばれるヘルスケアのソーシャルワーカーにNECアプリ搭載のタブレットを使ってもらい、農村住民の健康管理をしてもらう取り組みだ。アプリを含むサービスの利用料は、各州政府もしくは住民から徴収することを検討している。
アシャはインド政府などが農村で雇用するワーカーで、アシャ一人当たり500~1,000人の健康を管理する。3~6カ月おきの戸別訪問を通じ、発熱の有無や体重の増減、食生活の状況を聞き取っている。
今までは、紙の記入用紙を持って戸別訪問をしていたため、住民一人ごとのデータの追跡や活用が簡単にできなかった。アシャ自身の知識・意識の不足により、身長や体重、腹囲、血圧の定期測定をしっかりしていない実態もあった。
各アシャがNECアプリ搭載のタブレットを使えば、画面上の項目などに沿って聞き取りや測定を行い、結果をクリックで入力して各データを可視化。1カ月おきに健診すれば、「今月は脂を取り過ぎなので、来月は減らしてください」など、生活習慣病を予防するアドバイスができる。
この新事業を巡り、NECは新型コロナウイルス流行前から事業化に向けた検討を開始。東部ビハール州の州政府と覚書を結び、20年2~3月には実証実験を実施した。現在は実験で得た知見をもとに、事業化の最終調整をしている。
インドでは生活習慣病の予防が社会課題の一つになっている。17年時点で約7,300万人(全世界比17%)の糖尿病患者を抱え、患者数は世界2位。45年までには約1億3,400万人(21%)に達し、中国を抜き1位になるとみられる。
インドは、料理が脂質などで高カロリーになりがちな上、スイーツが好きな人も多い。ひと昔前は農作業を通じてカロリーを消費していたが、経済発展に伴いホワイトカラーが増加。体を動かさずカロリーを十分消費しないライフスタイルが、都市部はもちろん農村部にも広がり始めている。
■病気や障害を早期に発見・対応
もう一つの新事業は、新生児スクリーニングに使うソフトウエア提供だ。子どもが誕生した直後、血液採取のほか、身長や体重、頭の大きさ、聴力を病院スタッフが測り、各データをNECのソフトウエアに入力して一元管理。各データはいつでも見ることができ、データによっては子どもが学校に通い始めた後まで収集し、新生児の時と比較する。大勢のデータの蓄積と比較を繰り返すことで、「将来難聴になりやすい子どもが新生児の時にどんな特徴を持っていたか」などが分かるようになり、新生児の段階から病気や障害の発見・対応ができる。成長に合わせ、ワクチンの接種漏れを防ぐリマインドメッセージを送ることも予定している。
実はこの取り組みは、NECの子会社がNECグループに入る前から英国などで20年以上手がけてきた。先進国では似たような取り組みが普及しているが、インドを含む途上国はこれからの段階。NECインドは今、国内にある複数の私立病院と導入協議を進めている。私立病院で実績をつくった後、公立病院での展開も視野に入れる。
■AIなどグループの強み生きる
NECインドはこれまで、警察向け監視カメラや、国民皆番号制度「アドハー」(Aadhaar)の生体認証システム、物流可視化サービス、海底ケーブル敷設、第5世代(5G)移動通信システム関連の事業を実施してきた。ITを活用したヘルスケア事業は、市場の成長率が高い上、人工知能(AI)やビッグデータ、生体認証などNECグループの強みを生かしやすい。また、インドはスタートアップや技術者が豊富で、必要に応じて連携したり、採用したりする考えだ。
NECインドの高山和之・経営企画部長はNNAなどの取材に対し、「インドは、日本や欧州と異なり、人口増で市場規模自体も今後拡大する。インドは避けて通れない」と話した。
記者に向け、ヘルスケア事業に注力する方針を説明するNECインドの高山和之・経営企画部長=3月、インド北部ウッタルプラデシュ州ノイダ(NNA撮影)
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アシャはインド政府などが農村で雇用するワーカーで、アシャ一人当たり500~1,000人の健康を管理する。3~6カ月おきの戸別訪問を通じ、発熱の有無や体重の増減、食生活の状況を聞き取っている。
今までは、紙の記入用紙を持って戸別訪問をしていたため、住民一人ごとのデータの追跡や活用が簡単にできなかった。アシャ自身の知識・意識の不足により、身長や体重、腹囲、血圧の定期測定をしっかりしていない実態もあった。
各アシャがNECアプリ搭載のタブレットを使えば、画面上の項目などに沿って聞き取りや測定を行い、結果をクリックで入力して各データを可視化。1カ月おきに健診すれば、「今月は脂を取り過ぎなので、来月は減らしてください」など、生活習慣病を予防するアドバイスができる。
この新事業を巡り、NECは新型コロナウイルス流行前から事業化に向けた検討を開始。東部ビハール州の州政府と覚書を結び、20年2~3月には実証実験を実施した。現在は実験で得た知見をもとに、事業化の最終調整をしている。
インドでは生活習慣病の予防が社会課題の一つになっている。17年時点で約7,300万人(全世界比17%)の糖尿病患者を抱え、患者数は世界2位。45年までには約1億3,400万人(21%)に達し、中国を抜き1位になるとみられる。
インドは、料理が脂質などで高カロリーになりがちな上、スイーツが好きな人も多い。ひと昔前は農作業を通じてカロリーを消費していたが、経済発展に伴いホワイトカラーが増加。体を動かさずカロリーを十分消費しないライフスタイルが、都市部はもちろん農村部にも広がり始めている。
■病気や障害を早期に発見・対応
もう一つの新事業は、新生児スクリーニングに使うソフトウエア提供だ。子どもが誕生した直後、血液採取のほか、身長や体重、頭の大きさ、聴力を病院スタッフが測り、各データをNECのソフトウエアに入力して一元管理。各データはいつでも見ることができ、データによっては子どもが学校に通い始めた後まで収集し、新生児の時と比較する。大勢のデータの蓄積と比較を繰り返すことで、「将来難聴になりやすい子どもが新生児の時にどんな特徴を持っていたか」などが分かるようになり、新生児の段階から病気や障害の発見・対応ができる。成長に合わせ、ワクチンの接種漏れを防ぐリマインドメッセージを送ることも予定している。
実はこの取り組みは、NECの子会社がNECグループに入る前から英国などで20年以上手がけてきた。先進国では似たような取り組みが普及しているが、インドを含む途上国はこれからの段階。NECインドは今、国内にある複数の私立病院と導入協議を進めている。私立病院で実績をつくった後、公立病院での展開も視野に入れる。
■AIなどグループの強み生きる
NECインドはこれまで、警察向け監視カメラや、国民皆番号制度「アドハー」(Aadhaar)の生体認証システム、物流可視化サービス、海底ケーブル敷設、第5世代(5G)移動通信システム関連の事業を実施してきた。ITを活用したヘルスケア事業は、市場の成長率が高い上、人工知能(AI)やビッグデータ、生体認証などNECグループの強みを生かしやすい。また、インドはスタートアップや技術者が豊富で、必要に応じて連携したり、採用したりする考えだ。
NECインドの高山和之・経営企画部長はNNAなどの取材に対し、「インドは、日本や欧州と異なり、人口増で市場規模自体も今後拡大する。インドは避けて通れない」と話した。
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