韓国政府と与党「国民の力」が、これまで適用対象外だった従業員5人未満の零細業者にも勤労基準法(労働基準法に相当)を適用する方針を固めた。有給休暇や休日・残業手当の支給などを保障することで、零細業者の従業員の暮らしの質改善を目指す狙いがある。ただ、適用された場合、使用者側の負担が増大して雇用減少につながるとの懸念も根強い。
零細業者が集まるソウル市中区の乙支路=韓国(NNA撮影)
現行の勤労基準法は、5人以上の従業員が勤める企業にのみ適用されるため、従業員5人未満の零細業者で働く人は最低賃金などの一部項目を除き、◇週52時間労働制◇有給休暇の取得◇不当解雇の救済申請◇延長・休日・夜間の各種手当——などの保障を受けることができなかった。
国民の力で労働改革を議論する労働改革特別委員会は「勤労基準法の死角にいる労働者の待遇を改善することが、特別委の重要推進課題だ」と説明する。早ければ今月中に最初の協議を行う予定だ。
雇用労働省によると、2021年時点で5人未満の零細業者は123万9,760カ所で事業場全体の62.1%、従業員は313万8,284人で労働者全体の17.3%に上る。同省は今年1月に発表した23年度の業務推進計画に「勤労基準法の適用範囲拡大」を含め、改革を進めてきた。
■適用は労働界の「宿願」
勤労基準法は「人間の尊厳を保障するための最小限の労働基準」を定めるものだが、これが適用されないために5人未満の零細業者の従業員は「差別を受けている」と感じる人が多いもようだ。
韓国就職サイト「インクルート」が全国の労働者1,095人を対象に行ったアンケートでは、「『勤労者の日』に仕事を休めない」と答えた人の比率は、中小企業や大企業など5人以上の業者が20%台だったのに対し、5人未満の零細業者は約6割に達した。
有給休暇がないため、体調不良で病院に通院すると「欠勤扱い」となるケースもある。実際に、韓国労総中央研究院が22年4月に実施した零細業者の実態調査(470人回答)で、「有給休暇がある」と答えた人は13.2%にとどまった。
このため、ソウル経済新聞など韓国メディアによると、勤労基準法の5人未満の零細業者への適用は「労働界の宿願」とされる。全国民主労働組合総連盟(民主労総)と韓国労働組合総連盟(韓国労総)の労組の2大ナショナルセンター(全国中央組織)は21年12月に、これを要求する共同声明を出した。
■雇用減少など根強い懸念も
一方で、使用者側は勤労基準法の適用に対する懸念を強めている。5人未満の零細業者に同法が適用され、有給休暇や各種手当を支給するようになった場合、相当な経営費用の増加が予想されるためだ。
特に国内には、ここ数年の最低賃金の急激な上昇や新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)に伴う営業制限などで、廃業の危機にさらされている零細業者が多い。
また、経営コストの増大を受けて従業員を雇わない使用者も増加傾向にある。韓国統計庁によると、22年時点で従業員がいない自営業者は426万7,000人に上り、世界金融危機が起きた08年以降で最多となった。5人未満の零細業者に勤労基準法が適用されればこうした傾向が加速し、雇用減少が加速する恐れもある。
これらの懸念から政府と与党は、一度に全ての項目を適用するのではなく、有給休暇や休日・残業手当の支給といった項目から段階的に適用していく方針という。
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国民の力で労働改革を議論する労働改革特別委員会は「勤労基準法の死角にいる労働者の待遇を改善することが、特別委の重要推進課題だ」と説明する。早ければ今月中に最初の協議を行う予定だ。
雇用労働省によると、2021年時点で5人未満の零細業者は123万9,760カ所で事業場全体の62.1%、従業員は313万8,284人で労働者全体の17.3%に上る。同省は今年1月に発表した23年度の業務推進計画に「勤労基準法の適用範囲拡大」を含め、改革を進めてきた。
■適用は労働界の「宿願」
勤労基準法は「人間の尊厳を保障するための最小限の労働基準」を定めるものだが、これが適用されないために5人未満の零細業者の従業員は「差別を受けている」と感じる人が多いもようだ。
韓国就職サイト「インクルート」が全国の労働者1,095人を対象に行ったアンケートでは、「『勤労者の日』に仕事を休めない」と答えた人の比率は、中小企業や大企業など5人以上の業者が20%台だったのに対し、5人未満の零細業者は約6割に達した。
有給休暇がないため、体調不良で病院に通院すると「欠勤扱い」となるケースもある。実際に、韓国労総中央研究院が22年4月に実施した零細業者の実態調査(470人回答)で、「有給休暇がある」と答えた人は13.2%にとどまった。
このため、ソウル経済新聞など韓国メディアによると、勤労基準法の5人未満の零細業者への適用は「労働界の宿願」とされる。全国民主労働組合総連盟(民主労総)と韓国労働組合総連盟(韓国労総)の労組の2大ナショナルセンター(全国中央組織)は21年12月に、これを要求する共同声明を出した。
■雇用減少など根強い懸念も
一方で、使用者側は勤労基準法の適用に対する懸念を強めている。5人未満の零細業者に同法が適用され、有給休暇や各種手当を支給するようになった場合、相当な経営費用の増加が予想されるためだ。
特に国内には、ここ数年の最低賃金の急激な上昇や新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)に伴う営業制限などで、廃業の危機にさらされている零細業者が多い。
また、経営コストの増大を受けて従業員を雇わない使用者も増加傾向にある。韓国統計庁によると、22年時点で従業員がいない自営業者は426万7,000人に上り、世界金融危機が起きた08年以降で最多となった。5人未満の零細業者に勤労基準法が適用されればこうした傾向が加速し、雇用減少が加速する恐れもある。
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