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調達資金を設備投資に回さず金融資産購入、経済回復の足かせ

中国銀行系の研究機関、中国銀行研究院は、「金融機関による新規貸し出しが大きく増える中で、企業は調達資金を本業の投資に回していない」との報告を発表した。調達資金は低リスクの金融商品の購入に充てられるケースが目立ち、資金が金融市場に回流していると指摘した。産業に資金が流れず、経済回復の足かせになっているとの見方だ。
3日に発表した中国の経済・金融に関する今年第3四半期(7~9月)の報告で明らかにした。全国の金融機関による2023年1~5月の人民元建て貸出増加額は12兆6,700億元(約253兆円)で、前年同期を1兆8,000億元上回った。このうち企業の設備投資向けが多いとされる中長期の新規貸し出しは8兆1,100億元。全体に占める比率は64%で、前年同期から20.2ポイント上がった。
一方、投資は伸び悩んでいる。製造業の固定資産投資は5月に前年同月比5.1%増となり、1~2月の前年同期比8.1%増から伸びが鈍化。1~5月は6.0%増で、伸び幅は1~4月から0.4ポイント鈍化した。中でも民間企業による固定資産投資は0.1%減で、1~4月(0.4%増)からマイナスに転じた。

貸し出しが増える中で投資が細っている現状を踏まえ、同研究院は上場企業の決算報告から、金融資産(交易性金融資産)の購入が増えていることに着目。上場1,646社が持つ金融資産の規模は、19年末の18兆1,100億元から23年3月末に29兆700億元へと拡大。この間に10兆9,600億元増えた。
特に22年以降大きく増加。23年3月末の保有規模は22年末から4兆4,800億元増え、22年通年の増加額を上回った。
金融資産の保有額の急増を受け、同研究院は「企業への中長期貸し出しが設備投資に結び付いていないことの表れだ」と指摘。企業の調達資金の多くは金融市場に再び流れ込んでおり、貸し出しの多さは必ずしも景況感の良さを示していないとの見解を示した。
■だぶつきが背景
金融資産を購入する動きの背景には、企業側の資金のだぶつきがある。
金融機関は今年、潤沢な資金と企業支援を強める政府の動きを背景に、短期間で集中的に企業向けの新規貸し出しを実施。ただ企業の設備投資需要は短期間で急拡大することはなく、余剰資金を抱えることになった企業が低リスクの理財商品(財テク商品)を購入することで利益を得る流れが生まれているという。
同研究院は、理財商品の購入は正常な経営行為だとしながらも、企業が大量の理財商品を購入する動きは経済回復の足かせになると指摘。「企業の現在の動きが資金の利用効率を下げ、経済政策の効果を減らしている」と警告し、政府に対応策を取るよう呼びかけた。
■2Q成長率6%前後へ
同研究院は、中国の今年第2四半期(4~6月)の経済成長率が前年同期比で6%前後になるとの予測を示した。第1四半期(1~3月)の4.5%から拡大することになる。内需の弱含みといった問題はあるものの、比較対象となる前年同期の数値の低さが高い成長率につながるとみている。
中でも小売売上高は11.5%増と大幅な伸びを示すとの見方。前年同期に上海市でのロックダウンをはじめとする強い行動・移動規制が取られた反動が出る見通しだ。
下半期(7~12月)に関しては、消費促進策の効果で消費が穏やかに回復するとの見方を示した。インフラ投資は大きな伸びを維持し、ハイテク産業の投資は今後の製造業の投資を押し上げるとみている。不動産市場は次第に底を探る展開になると指摘した。
第3四半期(7~9月)の成長率は4.9%前後と予測。今年通年は前年比5.4%前後の成長になると見通した。

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同研究院は、中国の今年第2四半期(4~6月)の経済成長率が前年同期比で6%前後になるとの予測を示した。第1四半期(1~3月)の4.5%から拡大することになる。内需の弱含みといった問題はあるものの、比較対象となる前年同期の数値の低さが高い成長率につながるとみている。
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