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2QのGDP、6.3%に拡大2年ぶり高水準も力強さ欠く

中国国家統計局は17日、2023年第2四半期(4~6月)の実質国内総生産(GDP、速報値)成長率が前年同期比6.3%だったと発表した。成長率は23年第1四半期(1~3月)の4.5%から大きく拡大し、四半期としては21年第3四半期(7~9月)以降で最高となった。ただ高い成長率の背景には前年同期の低迷があり、足元の中国経済には数値が示すほどの力強さはない状況だ。とりわけ財消費の不振が足かせになっている。
第2四半期のGDPは30兆8,038億元(約594兆円)。前四半期比では0.8%増えた。
産業別のGDPは、第1次産業が前年同期比3.7%増の1兆8,841億元、第2次産業が5.2%増の12兆2,735億元、第3次産業が7.4%増の16兆6,462億元だった。第1四半期の前年同期比と比較すると、第1次産業は横ばい、第2次産業は1.9ポイント拡大、第3次産業は2.0ポイント拡大となった。
数値上、成長をけん引したのは第1四半期に続き消費。国家統計局は第2四半期の成長率への項目別寄与度を発表していないが、同局の付凌暉報道官は「上半期(1~6月)の成長率への寄与度は、最終消費支出が77.2%に達した」と明らかにした。第1四半期の66.6%から上昇しており、第2四半期も消費の伸びが大きな貢献を果たしたことになる。
■「予想下回る成長率」
ただ、前年同期比の数値が実際の経済状況から乖離(かいり)するのが今年の中国経済。中国経済は22年に新型コロナウイルス流行の影響を強く受けたため、23年の前年同期比は比較対象の数値が低いことによるベース効果で上振れする。特に23年第2四半期は前年同期に上海のロックダウンがあったことで、もとより高い成長率が見込まれていた。
みずほ銀行(中国)の伊藤秀樹主任エコノミストはベース効果を踏まえると、6%台後半には届くとみていたとし、第2四半期の成長率は「予想を下回った」と述べた。
数値上は成長をけん引した消費も、ベース効果を踏まえると評価が変わる。消費は新型コロナ流行の影響を強く受けており、寄与度の高さもベース効果によるところが大きく、実際の足元の消費は決して芳しくない。
伊藤氏は、とりわけ財消費が弱いと指摘。飲食などのサービス消費は昨年末の新型コロナ対策緩和を機にまずまずの状態だが、財消費は力強さを失っており、中国経済の足かせの一つになっているとの見方を示した。
雇用や所得の見通しに不透明感が漂っていることが市民の財布のひもを締めていると指摘。工業分野の企業が新型コロナ後も収益を伸ばせていないことなどが雇用や賃金の見通しに影響を与えているとみる。
財消費の弱さに加え、近年続く不動産業界の不振や主要国の景気低迷を背景とする外需の落ち込みも中国経済の重しになっているとの見方を示した。
■大規模政策は回避か
こうした要素のうち、少なくとも不動産不況と外需の落ち込みは短期間での払拭が難しく、中国経済は今後も複数の足かせを引きずりながらの状態を強いられる。
こうした状況を踏まえると、強力な経済てこ入れ策の投入もありえそうだが、伊藤氏は「政府は大規模な経済政策の導入を避け、引き続き特定の業界に的を絞った政策に力を入れていくのではないか」と見通した。金融面でも、これまでの緩やかな緩和策を継続するとみている。通年の成長率目標の達成が比較的容易な形勢になったことを主な要因に挙げた。
国家統計局は同日、23年1~6月のGDP成長率が前年同期比5.5%になったと発表した。政府が3月に設定した成長率目標「5%前後」は上回っている状況。23年後半も引き続き一定のベース効果を受けることを踏まえると、目標達成が視野に入り、伊藤氏は「政府も足元の景気に潜む問題には目を向けているだろうが、成長率の押し上げに躍起になる必要はない状況」との見方を示した。
みずほフィナンシャルグループのシンクタンク、みずほリサーチ&テクノロジーズは6月に発表した最新の世界経済見通しで、中国の23年通年の成長率を前年比5.3%と予測。24年は4.6%になると見通した。
中国の22年の成長率は3.0%だった。

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産業別のGDPは、第1次産業が前年同期比3.7%増の1兆8,841億元、第2次産業が5.2%増の12兆2,735億元、第3次産業が7.4%増の16兆6,462億元だった。第1四半期の前年同期比と比較すると、第1次産業は横ばい、第2次産業は1.9ポイント拡大、第3次産業は2.0ポイント拡大となった。
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■「予想下回る成長率」
ただ、前年同期比の数値が実際の経済状況から乖離(かいり)するのが今年の中国経済。中国経済は22年に新型コロナウイルス流行の影響を強く受けたため、23年の前年同期比は比較対象の数値が低いことによるベース効果で上振れする。特に23年第2四半期は前年同期に上海のロックダウンがあったことで、もとより高い成長率が見込まれていた。
みずほ銀行(中国)の伊藤秀樹主任エコノミストはベース効果を踏まえると、6%台後半には届くとみていたとし、第2四半期の成長率は「予想を下回った」と述べた。
数値上は成長をけん引した消費も、ベース効果を踏まえると評価が変わる。消費は新型コロナ流行の影響を強く受けており、寄与度の高さもベース効果によるところが大きく、実際の足元の消費は決して芳しくない。
伊藤氏は、とりわけ財消費が弱いと指摘。飲食などのサービス消費は昨年末の新型コロナ対策緩和を機にまずまずの状態だが、財消費は力強さを失っており、中国経済の足かせの一つになっているとの見方を示した。
雇用や所得の見通しに不透明感が漂っていることが市民の財布のひもを締めていると指摘。工業分野の企業が新型コロナ後も収益を伸ばせていないことなどが雇用や賃金の見通しに影響を与えているとみる。
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■大規模政策は回避か
こうした要素のうち、少なくとも不動産不況と外需の落ち込みは短期間での払拭が難しく、中国経済は今後も複数の足かせを引きずりながらの状態を強いられる。
こうした状況を踏まえると、強力な経済てこ入れ策の投入もありえそうだが、伊藤氏は「政府は大規模な経済政策の導入を避け、引き続き特定の業界に的を絞った政策に力を入れていくのではないか」と見通した。金融面でも、これまでの緩やかな緩和策を継続するとみている。通年の成長率目標の達成が比較的容易な形勢になったことを主な要因に挙げた。
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