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過熱する300層NAND競争サムスン来年量産、SKは25年中

NAND型フラッシュメモリーで300層以上の超高層化競争が熱を帯びている。SKハイニックスは、2025年の量産を目指す321層NANDのサンプルを今年8月に公開。サムスン電子は今月17日、24年上半期中に300層以上の9世代NANDを量産する方針を明らかにした。NAND世界2位のキオクシアホールディングス(HD)と4位の米ウエスタンデジタル(WD)の統合も迫る中、韓国勢はお得意の積層型NANDの進化で引き離したい考え。
現在量産されている最先端の積層型NANDは200層台だが、各社が開発中の次世代品ではついに300層超えが確実視されている。記憶素子を垂直に積み立てることで記憶密度や読み出し速度の向上、消費電力の低減が進む見通しだ。
300層以上の超高層化にとりわけ力を入れているのが、業界トップのサムスン電子と3位のSKハイニックスだ。台湾の市場調査会社・集邦科技(トレンドフォース)によると、23年4~6月期の世界NANDシェアでサムスン電子は33.7%でトップだった。SKハイニックスは15.1%で、2位のキオクシア(21.3%)に次ぐ3位につけている。
積層型でこの業界をけん引してきた韓国勢だが、近年は日本や米国のメーカーも力をつけてきたこともあり、早期の超高層化を推進している。
■24年上半期に量産前倒し
9世代のV—NANDは、2分割のスタック構造で具現できる最高の層数で開発を進めている。来年初めの量産に向けて、動作チップの確保に成功した——。サムスン電子の李禎培(イ・ジョンベ)メモリー事業部社長は同社半導体部門のホームページに掲載した寄稿文で、次世代NANDの開発状況についてこのように語った。
韓国の大手経済紙である毎日経済新聞は、「動作チップを確保した」という説明について「サムスン電子が300層以上の9世代NANDの量産に向けた最終段階に入ったことを意味する」と解説した。300層以上の9世代は、業界最高水準の記憶密度の高容量や最大2.4ギガビット毎秒のデータ読み出し速度が可能になるという。
量産にこぎ着けば、同社が22年11月に発売した8世代(236層)から約1年半で大幅なステップアップとなる。サムスン電子は研究開発(R&D)を加速させ、「30年までに1,000層のNAND開発」(李社長)を目指す計画だ。

SKハイニックスが公開した321層NANDのサンプル=韓国(同社提供)

■SKはサンプル初公開
業界3位のSKハイニックスはこれに先立つ8月、米カリフォルニア州で開かれたNAND製品に関するイベント「フラッシュメモリーサミット(FMS)」で、321層のNANDのサンプルを公開した。300層以上のNANDの実物が公開されたのは、これが世界で初めて。
SKハイニックスの321層NANDは、記憶容量が1テラビット、1つのセルに3ビットのデータを書き込めるTLC(トリプル・レベル・セル)の多値記憶方式で、生産性は既存製品より59%向上したとしている。
2分割のスタック構造での300層超えを目指すサムスン電子とは異なり、SKハイニックスの321層NANDは3分割のスタック構造となっている。1つのスタック当たりの積層数を少なくすることで、2分割より製造工程も容易になるという。
SKハイニックスは25年に321層NANDの量産に着手する計画を明らかにしている。ただ、サムスン電子が24年上半期までの量産開始を公言したことで、時期の前倒しに動く可能性もありそうだ。
■日米連合との競争激化
サムスン電子やSKハイニックスが300層以上のNAND開発に熱を上げる背景には、この分野で世界的な優位を維持したい意図が透けて見える。
世界シェア2位の東芝メモリを前身とするキオクシアHDと4位のWDの統合が間近に迫っている。キオクシアHDとWDはNANDの開発と量産で連合を組んでおり、韓国勢の強力なライバルに浮上するとみられる。
また両社の統合後のシェアは、今年4~6月期を基準とすると単純合算でサムスン電子を上回る。長く韓国勢がトップの座を守ってきた業界の構図が塗り替えられる可能性がある。NAND分野で日米連合と韓国の競争は今後さらに激しさを増す見通しだ。

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積層型でこの業界をけん引してきた韓国勢だが、近年は日本や米国のメーカーも力をつけてきたこともあり、早期の超高層化を推進している。
■24年上半期に量産前倒し
9世代のV—NANDは、2分割のスタック構造で具現できる最高の層数で開発を進めている。来年初めの量産に向けて、動作チップの確保に成功した——。サムスン電子の李禎培(イ・ジョンベ)メモリー事業部社長は同社半導体部門のホームページに掲載した寄稿文で、次世代NANDの開発状況についてこのように語った。
韓国の大手経済紙である毎日経済新聞は、「動作チップを確保した」という説明について「サムスン電子が300層以上の9世代NANDの量産に向けた最終段階に入ったことを意味する」と解説した。300層以上の9世代は、業界最高水準の記憶密度の高容量や最大2.4ギガビット毎秒のデータ読み出し速度が可能になるという。
量産にこぎ着けば、同社が22年11月に発売した8世代(236層)から約1年半で大幅なステップアップとなる。サムスン電子は研究開発(R&D)を加速させ、「30年までに1,000層のNAND開発」(李社長)を目指す計画だ。[caption id="attachment_16165" align="aligncenter" width="620"]SKハイニックスが公開した321層NANDのサンプル=韓国(同社提供)[/caption]
■SKはサンプル初公開
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SKハイニックスの321層NANDは、記憶容量が1テラビット、1つのセルに3ビットのデータを書き込めるTLC(トリプル・レベル・セル)の多値記憶方式で、生産性は既存製品より59%向上したとしている。
2分割のスタック構造での300層超えを目指すサムスン電子とは異なり、SKハイニックスの321層NANDは3分割のスタック構造となっている。1つのスタック当たりの積層数を少なくすることで、2分割より製造工程も容易になるという。
SKハイニックスは25年に321層NANDの量産に着手する計画を明らかにしている。ただ、サムスン電子が24年上半期までの量産開始を公言したことで、時期の前倒しに動く可能性もありそうだ。
■日米連合との競争激化
サムスン電子やSKハイニックスが300層以上のNAND開発に熱を上げる背景には、この分野で世界的な優位を維持したい意図が透けて見える。
世界シェア2位の東芝メモリを前身とするキオクシアHDと4位のWDの統合が間近に迫っている。キオクシアHDとWDはNANDの開発と量産で連合を組んでおり、韓国勢の強力なライバルに浮上するとみられる。
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