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現代自がタイに完成車工場政府EV普及支援策に申請へ

韓国の自動車大手、現代自動車がタイに完成車工場を設立する方針を固めたことが14日までに分かった。セーター政権が2024年からの新たな電気自動車(EV)普及支援策「EV3.5」を正式導入すれば、速やかに参加を申請する。30年に国内生産する自動車の3割を電動車にする目標を掲げるタイ政府の方針に呼応する。【タイ・坂部哲生、韓国編集部】

来年タイ市場への投入が計画されている「アイオニック5N」=14日、タイ・バンコク(NNA撮影)

首都バンコク・プラカノン地区の複合施設「トゥルー・デジタル・パーク・ウエスト」1階に設けた自社EVブランド「アイオニック」を紹介する「アイオニック・ラボ」の開所式で、現代自関係者がNNAとの取材で明らかにした。同関係者は「タイ市場の攻略に本腰を入れる。EV3.5に申請する準備は整っている」と話した。
EV3.5は年末に失効する「EV3.0」の後継策に当たり、期限は27年までの4年間。セーター首相をトップとする国家EV政策委員会はすでにEV3.5の導入を決定しており、現在は、閣議での承認を待っているところだ。
タイに工場を建設すれば、21年1月に完成したインドネシアの工場に続き、東南アジアでは2カ所目の完成車工場となる。タイではまずは、韓国から輸入販売するEV「アイオニック5」を生産する計画だ。
現代自はインドネシアでは、韓国バッテリー大手のLGエナジーソリューションと合弁でEV電池の生産をする。タイでも同様の計画を立てるものとみられる。
■アイオニック5が無関税に
EV3.5ではタイ国内での生産を条件に、販売価格が200万バーツ(約808万円)以下の乗用タイプについてバッテリー容量に応じて、購入時に1台あたり最大10万バーツの補助金を支給する。現代自は先頃開催された自動車展示・販売会「第40回タイ国際モーターエキスポ2023」でアイオニック5を発表し、タイのEV市場への本格参入を表明した。アイオニック5は「プレミアム」「エクスクルーシブ」「ファースト・エディション」の3タイプがあり、「プレミアム」と「エクスクルーシブ」は価格が200万バーツを下回るため、補助金の対象となる。
価格が200万バーツ以下のEVはまた、輸入関税率も40%引き下げられる。東南アジア諸国連合(ASEAN)韓国自由貿易協定(AKFTA)によると、韓国車に対する関税率は40%。EV3.5に参加すれば、アイオニック5は実質無関税となる。タイでは購入にかかる物品税も、価格が700万バーツ未満のEV乗用車は8%から2%に引き下げられる。
一方、EV3.5はこれらの補助の条件として、EVメーカーにタイでの生産量を輸入量に対して26年に2倍、27年に3倍と義務付けている。現代自関係者はタイ工場の生産能力について「詳細はまだ決定していない」としながらも「インドネシア工場ほどの規模にはならないだろう」と話した。同工場の当初の年間生産能力は15万台で、最終的には25万台まで拡大する予定だ。
■ハイブリッド車も生産へ
同関係者はまた「EVだけでは販売台数が限られる。将来的にはハイブリッド車(HV)やガソリン車のタイ国内での生産・販売も視野に入れている」とも述べ、タイ市場攻略に向けて強い意欲を見せた。
現代自は、東南アジア市場の開拓に積極的である一方、主力市場だった中国市場では販売低迷が続く。17年の中韓関係悪化による不買運動や地場メーカーの台頭などで、現代自中国法人の年間販売台数は、ピークだった16年の114万台から昨年は25万台と約8割も急減した。主力市場の1つで失速する中、新たな市場の開拓が急務になっている。
現代自傘下の起亜も現在、タイでの工場設立に向け、タイ投資委員会(BOI)と交渉を進めている。

アイオニック・ラボの開所式に出席した現代自やCPグループ関係者=14日、タイ・バンコク(NNA撮影)

■アイオニック・ラボを開設
14日に開所したアイオニック・ラボは、タイの財閥チャロン・ポカパン(CP)グループの協力も得て、自社のEV専用プラットフォーム(車台)「E—GMP」などを紹介するスペースを確保した。顧客の相談にも応じる。アイオニック5の試乗プログラムも準備した。大型商業施設「メガバンナー」やスワンナプーム空港まで運転したり、1日借り切って帰宅したりできる。現代自のタイ法人ヒュンダイ・モビリティー(タイランド)の広報担当者はアイオニック・ラボのコンセプトについて「顧客との接点を増やすのが狙い。将来的にはアイオニック5の引き渡しも行う予定だ」と説明した。
開所式では、「アイオニック5」の高性能モデル「アイオニック5N」を公開した。韓国環境省が実施した性能テストの結果によると、アイオニック5Nは1回の充電での最長走行距離が364キロメートルを記録した。同モデルは高性能四輪駆動システムを搭載し、最大出力は650馬力。最高速度は時速260キロに達する。タイ市場には来年投入する予定だ。
現代自はこれまで双日が8割出資するヒュンダイ・モーター(タイランド)にタイでの販売を委託していたが、今年4月から自社販売に切り替えている。運輸省陸運局のデータによると、今年4~10月の現代自車の新車登録台数は3,251台と、前年同期比26%増えた。
ヒュンダイ・モビリティー(タイランド)は10月には、バンコクにショールームや倉庫、テクニカルセンター、従業員のトレーニングセンターとしての機能を持つ旗艦サービスセンター「H—スペース」を開設した。

アイオニック・ラボに展示されたEV専用プラットフォーム「E—GMP」=14日、タイ・バンコク(NNA撮影)
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首都バンコク・プラカノン地区の複合施設「トゥルー・デジタル・パーク・ウエスト」1階に設けた自社EVブランド「アイオニック」を紹介する「アイオニック・ラボ」の開所式で、現代自関係者がNNAとの取材で明らかにした。同関係者は「タイ市場の攻略に本腰を入れる。EV3.5に申請する準備は整っている」と話した。
EV3.5は年末に失効する「EV3.0」の後継策に当たり、期限は27年までの4年間。セーター首相をトップとする国家EV政策委員会はすでにEV3.5の導入を決定しており、現在は、閣議での承認を待っているところだ。
タイに工場を建設すれば、21年1月に完成したインドネシアの工場に続き、東南アジアでは2カ所目の完成車工場となる。タイではまずは、韓国から輸入販売するEV「アイオニック5」を生産する計画だ。
現代自はインドネシアでは、韓国バッテリー大手のLGエナジーソリューションと合弁でEV電池の生産をする。タイでも同様の計画を立てるものとみられる。
■アイオニック5が無関税に
EV3.5ではタイ国内での生産を条件に、販売価格が200万バーツ(約808万円)以下の乗用タイプについてバッテリー容量に応じて、購入時に1台あたり最大10万バーツの補助金を支給する。現代自は先頃開催された自動車展示・販売会「第40回タイ国際モーターエキスポ2023」でアイオニック5を発表し、タイのEV市場への本格参入を表明した。アイオニック5は「プレミアム」「エクスクルーシブ」「ファースト・エディション」の3タイプがあり、「プレミアム」と「エクスクルーシブ」は価格が200万バーツを下回るため、補助金の対象となる。
価格が200万バーツ以下のEVはまた、輸入関税率も40%引き下げられる。東南アジア諸国連合(ASEAN)韓国自由貿易協定(AKFTA)によると、韓国車に対する関税率は40%。EV3.5に参加すれば、アイオニック5は実質無関税となる。タイでは購入にかかる物品税も、価格が700万バーツ未満のEV乗用車は8%から2%に引き下げられる。
一方、EV3.5はこれらの補助の条件として、EVメーカーにタイでの生産量を輸入量に対して26年に2倍、27年に3倍と義務付けている。現代自関係者はタイ工場の生産能力について「詳細はまだ決定していない」としながらも「インドネシア工場ほどの規模にはならないだろう」と話した。同工場の当初の年間生産能力は15万台で、最終的には25万台まで拡大する予定だ。
■ハイブリッド車も生産へ
同関係者はまた「EVだけでは販売台数が限られる。将来的にはハイブリッド車(HV)やガソリン車のタイ国内での生産・販売も視野に入れている」とも述べ、タイ市場攻略に向けて強い意欲を見せた。
現代自は、東南アジア市場の開拓に積極的である一方、主力市場だった中国市場では販売低迷が続く。17年の中韓関係悪化による不買運動や地場メーカーの台頭などで、現代自中国法人の年間販売台数は、ピークだった16年の114万台から昨年は25万台と約8割も急減した。主力市場の1つで失速する中、新たな市場の開拓が急務になっている。
現代自傘下の起亜も現在、タイでの工場設立に向け、タイ投資委員会(BOI)と交渉を進めている。
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■アイオニック・ラボを開設
14日に開所したアイオニック・ラボは、タイの財閥チャロン・ポカパン(CP)グループの協力も得て、自社のEV専用プラットフォーム(車台)「E—GMP」などを紹介するスペースを確保した。顧客の相談にも応じる。アイオニック5の試乗プログラムも準備した。大型商業施設「メガバンナー」やスワンナプーム空港まで運転したり、1日借り切って帰宅したりできる。現代自のタイ法人ヒュンダイ・モビリティー(タイランド)の広報担当者はアイオニック・ラボのコンセプトについて「顧客との接点を増やすのが狙い。将来的にはアイオニック5の引き渡しも行う予定だ」と説明した。
開所式では、「アイオニック5」の高性能モデル「アイオニック5N」を公開した。韓国環境省が実施した性能テストの結果によると、アイオニック5Nは1回の充電での最長走行距離が364キロメートルを記録した。同モデルは高性能四輪駆動システムを搭載し、最大出力は650馬力。最高速度は時速260キロに達する。タイ市場には来年投入する予定だ。
現代自はこれまで双日が8割出資するヒュンダイ・モーター(タイランド)にタイでの販売を委託していたが、今年4月から自社販売に切り替えている。運輸省陸運局のデータによると、今年4~10月の現代自車の新車登録台数は3,251台と、前年同期比26%増えた。
ヒュンダイ・モビリティー(タイランド)は10月には、バンコクにショールームや倉庫、テクニカルセンター、従業員のトレーニングセンターとしての機能を持つ旗艦サービスセンター「H—スペース」を開設した。
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