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トラック燃料をLNGに代替三井物産系販売店、環境対策強化

タイ日野販売のディーラー、三井物産オートモーティブがタイで初めて、圧縮天然ガス(CNG)を燃料にして走るトラックを液化天然ガス(LNG)トラックにコンバージョンするサービスを始めた。環境問題の解決に向けた独自の取り組みで、すでに、総合物流のフジトランスコーポレーション(名古屋市港区)のタイ現地法人から3台を受注している。カーボンニュートラル(炭素中立)実現への貢献を目指す。

LNGシリンダーを搭載したトラック=11日、タイ・サムットプラカン県

三井物産オートモーティブが新たなサービスを始めた背景には、タイ政府の補助金制度によって普及したCNGトラックが10年以上を経て老朽化し、買い替えの時期を迎えていることがある。CNGトラックは気体のまま貯蔵した天然ガスを燃料にしており、二酸化炭素(CO2)の排出量はディーゼル車よりも2~3割少ない。
ところが、CNGに対するタイ政府による補助金政策の終了が発表されたこともあり、現在はCNGトラックの需要は低下している。全国のCNG充塡(じゅうてん)所でも統廃合が進んでいる状況だ。
多くのユーザーがCNGトラックからディーゼル車への台替えを余儀なくされている中、三井物産オートモーティブはトラックのキャビンの後ろにある8本のCNGタンクを1本のLNGシリンダーに代替することで車両を継続して使用できるオプションを提示した。
LNGシリンダーは、地元のパートナー企業から調達する。天然ガスの主成分はメタンであるため、液化するには沸点でマイナス160度の状態を保つ必要があり、2重構造の特殊な燃料タンクを使用する。
三井物産オートモーティブによると、コンバージョンはエンジン部分などのオーバーホール(修理点検)なども含め、3~4日を要する。サムットプラカン県にある本社の敷地ですべて行う。
フジトランスコーポレーション(名古屋市港区)のタイ現地法人は保有する8台のCNGトラックのうち3台をLNGにコンバージョンするとしており、4月から現場に投入していく計画だ。

8本のCNGタンクを搭載したトラック=3月11日、タイ・サムットプラカン県(NNA撮影)

■CNGよりもエコ
CNGからLNGへのコンバージョンで、ディーゼル車への台替えコストを抑えられるだけでなく、環境負荷のさらなる軽減にもつながる。
天然ガスは液化すると、気化したものより体積が600分の1になるため、容積と重量の両方の面でCNGトラックより有利になる。三井物産オートモーティブによると、CNGからLNGへのコンバージョンで、トラックの燃費が6割向上し、燃料コストを3割削減できる効果が期待できるという。その結果、1回の充塡によるLNGトラックの航続距離は最大1,400キロとディーゼルトラック並みとなり、CNGの550キロを大きく上回る。液体であるため、充塡時間はCNGより短い。
また、天然ガスを液化してLNGを製造する際に硫黄などの不純物を取り除くため、燃焼時に、温室効果ガスの1つといわれるCO2、酸性雨や大気汚染の原因とされる窒素酸化物(NOx)の発生量もCNGより少ないという。
■政策も後押し
タイは安価な国産ガスの埋蔵量が減衰しており、政府がLNGの輸入拡大に力を入れている点も、三井物産オートモーティブの新サービスの追い風となりそうだ。タイに輸入されたLNGは、東部ラヨーン県のマプタプット地区にあるPTTの専用ターミナルで保存されている。ターミナルの数は今後も増加する見込みだ。LNGの充塡所は現在、首都バンコクとバンコク近郊を合わせて6カ所ほどだが、LNGトラックの普及が進めば、統廃合が進んでいるCNG充塡所が今後、LNG向けに置き換えられていく可能性もある。
三井物産オートモーティブは現在、タイ全国で1日1万台のCNGトラックが走行していると試算する。事業拡大に向け、三井物産オートモーティブはまずは自社で販売した500台のCNGトラックを対象にLNGへのコンバージョンを提案していく考え。物流業界で「脱ディーゼル」の流れが逆流する可能性も低く、井上繁男マネジングディレクターは「業界の反応は上々」と話す。
■EVに並ぶ選択肢に
タイ政府はカーボンニュートラル(炭素中立)の実現に向けた取り組みの一環として、電気自動車(EV)バスやEVトラックを購入したバス会社や物流会社に対して法人税の減免を支援する。
日系では、国際物流大手NIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)のタイ法人、NXタイロジスティクスが今年1月、EVトラックを初導入した。年内に計7台導入し、本格的な運用に向けた検証を進める計画だ。さまざまな車種、ケースを試しながら知見を蓄積し、顧客企業への提案につなげる考えだ。
三井物産オートモーティブの井上氏はタイ政府や他社の取り組みについて、「カーボンニュートラルの実現という意味で弊社の取り組みと同じ。LNGトラックをEVトラックと並ぶ選択肢の1つとして顧客に提示していきたい」と述べた。

インタビューに答える三井物産オートモーティブ(タイランド)の井上繁男マネジングディレクターと鈴木勇一郎デピュティー・マネジングディレクター=3月14日、タイ・サムットプラカン県
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三井物産オートモーティブが新たなサービスを始めた背景には、タイ政府の補助金制度によって普及したCNGトラックが10年以上を経て老朽化し、買い替えの時期を迎えていることがある。CNGトラックは気体のまま貯蔵した天然ガスを燃料にしており、二酸化炭素(CO2)の排出量はディーゼル車よりも2~3割少ない。
ところが、CNGに対するタイ政府による補助金政策の終了が発表されたこともあり、現在はCNGトラックの需要は低下している。全国のCNG充塡(じゅうてん)所でも統廃合が進んでいる状況だ。
多くのユーザーがCNGトラックからディーゼル車への台替えを余儀なくされている中、三井物産オートモーティブはトラックのキャビンの後ろにある8本のCNGタンクを1本のLNGシリンダーに代替することで車両を継続して使用できるオプションを提示した。
LNGシリンダーは、地元のパートナー企業から調達する。天然ガスの主成分はメタンであるため、液化するには沸点でマイナス160度の状態を保つ必要があり、2重構造の特殊な燃料タンクを使用する。
三井物産オートモーティブによると、コンバージョンはエンジン部分などのオーバーホール(修理点検)なども含め、3~4日を要する。サムットプラカン県にある本社の敷地ですべて行う。
フジトランスコーポレーション(名古屋市港区)のタイ現地法人は保有する8台のCNGトラックのうち3台をLNGにコンバージョンするとしており、4月から現場に投入していく計画だ。[caption id="attachment_19383" align="aligncenter" width="620"]8本のCNGタンクを搭載したトラック=3月11日、タイ・サムットプラカン県(NNA撮影)[/caption]
■CNGよりもエコ
CNGからLNGへのコンバージョンで、ディーゼル車への台替えコストを抑えられるだけでなく、環境負荷のさらなる軽減にもつながる。
天然ガスは液化すると、気化したものより体積が600分の1になるため、容積と重量の両方の面でCNGトラックより有利になる。三井物産オートモーティブによると、CNGからLNGへのコンバージョンで、トラックの燃費が6割向上し、燃料コストを3割削減できる効果が期待できるという。その結果、1回の充塡によるLNGトラックの航続距離は最大1,400キロとディーゼルトラック並みとなり、CNGの550キロを大きく上回る。液体であるため、充塡時間はCNGより短い。
また、天然ガスを液化してLNGを製造する際に硫黄などの不純物を取り除くため、燃焼時に、温室効果ガスの1つといわれるCO2、酸性雨や大気汚染の原因とされる窒素酸化物(NOx)の発生量もCNGより少ないという。
■政策も後押し
タイは安価な国産ガスの埋蔵量が減衰しており、政府がLNGの輸入拡大に力を入れている点も、三井物産オートモーティブの新サービスの追い風となりそうだ。タイに輸入されたLNGは、東部ラヨーン県のマプタプット地区にあるPTTの専用ターミナルで保存されている。ターミナルの数は今後も増加する見込みだ。LNGの充塡所は現在、首都バンコクとバンコク近郊を合わせて6カ所ほどだが、LNGトラックの普及が進めば、統廃合が進んでいるCNG充塡所が今後、LNG向けに置き換えられていく可能性もある。
三井物産オートモーティブは現在、タイ全国で1日1万台のCNGトラックが走行していると試算する。事業拡大に向け、三井物産オートモーティブはまずは自社で販売した500台のCNGトラックを対象にLNGへのコンバージョンを提案していく考え。物流業界で「脱ディーゼル」の流れが逆流する可能性も低く、井上繁男マネジングディレクターは「業界の反応は上々」と話す。
■EVに並ぶ選択肢に
タイ政府はカーボンニュートラル(炭素中立)の実現に向けた取り組みの一環として、電気自動車(EV)バスやEVトラックを購入したバス会社や物流会社に対して法人税の減免を支援する。
日系では、国際物流大手NIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)のタイ法人、NXタイロジスティクスが今年1月、EVトラックを初導入した。年内に計7台導入し、本格的な運用に向けた検証を進める計画だ。さまざまな車種、ケースを試しながら知見を蓄積し、顧客企業への提案につなげる考えだ。
三井物産オートモーティブの井上氏はタイ政府や他社の取り組みについて、「カーボンニュートラルの実現という意味で弊社の取り組みと同じ。LNGトラックをEVトラックと並ぶ選択肢の1つとして顧客に提示していきたい」と述べた。
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