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ベトナムとフィリピンで存在感野村不動産のアジア事業(上)

野村不動産が住宅の開発・分譲を中心に東南アジアで積極的に事業を展開している。域内市場には約10年前に進出し、ベトナム、フィリピンなどで多くのプロジェクトに参画してきた。特にベトナムは海外事業の稼ぎ頭となっている。海外事業本部企画室長の米野公規氏と、シンガポール法人の野村リアルエステート・アジアのマネジングディレクター、金子高之氏に、域内の事業戦略などを聞いた。【清水美雪】

ベトナムでは、現地の不動産開発大手ビンホームズがブーイエン島で手がける都市開発事業に参画する(野村不動産提供)

野村不動産は、日本国内で60年以上にわたって培ってきたマンション開発などの住宅事業に強みを持つ。10年ほど前から日本での経験、ノウハウを海外事業に活用する取り組みに力を入れており、2014年に開発企画本部内に海外事業部を新設。20年には海外事業本部を立ち上げ、さらに体制を整備した。
東南アジアでは15年に、域内初の拠点としてシンガポールに野村リアルエステート・アジアを設立した。
野村不動産の米野氏は「海外事業はまだ黎明(れいめい)期」と話すが、東南アジアでは既にベトナムやフィリピン、タイで都市開発などを積極的に推進。海外事業に占める東南アジアの割合は特に大きく、海外投資残高全体(24年3月期に約1,900億円)の約8割となった。
国別ではベトナムが海外投資残高全体の4割と最大で、これにフィリピン(22%)、タイ(14%)が続く。ベトナムとフィリピンは海外の総事業費(住宅分譲、約5,600億円)でも全体に占める割合がそれぞれ43%となっている。タイは12%だ。
日本の大手不動産デベロッパーのアジア事業では、三井不動産がマレーシアなどでアウトレットモールを開発したり、三菱地所がインドネシアでオフィス案件に参画したりするなど企業によって多様な分野に進出している。野村不動産はこうした競合他社に比べると後発組だが、大規模な都市開発事業に参画し、住宅開発・分譲を積極的に展開している。
■ベトナム、今後も住宅事業に注力
ベトナムに進出したのは15年。複数の現地パートナー企業と組み、ホーチミン、ハノイを中心にこれまで住宅、オフィス事業9件に参画してきた。多くが高層分譲住宅の開発事業で、2件はオフィスビル事業だ。
現在は5案件を進めている。6月下旬には、現地の不動産開発大手ビンホームズが北部ハイフォン市のブーイエン島で手がける都市開発事業への参画を発表。住宅1,550戸などを整備する同市最大規模の都市開発事業で、日本の官民ファンドの海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)、高島屋子会社の東神開発、大成建設も参加している。投資額は公表していない。
米野氏はベトナム市場について、「経済成長率が高水準で推移し、人口は昨年1億人を突破した。政情不安などもあり決して楽観視はできないが、経済成長、人口の拡大はまだ続くとみており、今後も住宅事業を中心に展開していきたい」と意気込みを語った。
現在のベトナムは日本の1970~80年代の高度経済成長期に類似しているとも指摘。引き続き域内事業の成長の原動力になることを期待していると説明した。
■フィリピンでは複合施設開発も
17年に進出したフィリピンでは、22年に財閥GTキャピタルの不動産開発子会社フェデラル・ランドと設立した合弁会社フェデラル・ランドNREグローバル(FNG)を軸に、高層・一戸建ての分譲住宅や商業施設、オフィスなどを含む都市開発を複数手がけている。
マニラ首都圏タギッグ市ではフェデラル・ランド、三越伊勢丹ホールディングス(HD)と組んで商業施設「MITSUKOSHI BGC(三越BGC)」を含む大型複合施設を開発。23年7月に正式開業した。
現在は5案件を手がけている。うちフェデラル・ランドNREグローバルがマニラ首都圏カビテ州で開発を進める大型タウンシップ(街)の開発計画では、敷地の一画にカジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが東南アジア最大の物流施設を新設する。同施設の誘致でタウンシップ全体の開発を加速させたい考えだ。
※(下)に続く

フィリピン・カビテ州で開発するファーストリテイリングの物流施設の完成予想図(野村不動産提供)
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東南アジアでは15年に、域内初の拠点としてシンガポールに野村リアルエステート・アジアを設立した。
野村不動産の米野氏は「海外事業はまだ黎明(れいめい)期」と話すが、東南アジアでは既にベトナムやフィリピン、タイで都市開発などを積極的に推進。海外事業に占める東南アジアの割合は特に大きく、海外投資残高全体(24年3月期に約1,900億円)の約8割となった。
国別ではベトナムが海外投資残高全体の4割と最大で、これにフィリピン(22%)、タイ(14%)が続く。ベトナムとフィリピンは海外の総事業費(住宅分譲、約5,600億円)でも全体に占める割合がそれぞれ43%となっている。タイは12%だ。
日本の大手不動産デベロッパーのアジア事業では、三井不動産がマレーシアなどでアウトレットモールを開発したり、三菱地所がインドネシアでオフィス案件に参画したりするなど企業によって多様な分野に進出している。野村不動産はこうした競合他社に比べると後発組だが、大規模な都市開発事業に参画し、住宅開発・分譲を積極的に展開している。
■ベトナム、今後も住宅事業に注力
ベトナムに進出したのは15年。複数の現地パートナー企業と組み、ホーチミン、ハノイを中心にこれまで住宅、オフィス事業9件に参画してきた。多くが高層分譲住宅の開発事業で、2件はオフィスビル事業だ。
現在は5案件を進めている。6月下旬には、現地の不動産開発大手ビンホームズが北部ハイフォン市のブーイエン島で手がける都市開発事業への参画を発表。住宅1,550戸などを整備する同市最大規模の都市開発事業で、日本の官民ファンドの海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)、高島屋子会社の東神開発、大成建設も参加している。投資額は公表していない。
米野氏はベトナム市場について、「経済成長率が高水準で推移し、人口は昨年1億人を突破した。政情不安などもあり決して楽観視はできないが、経済成長、人口の拡大はまだ続くとみており、今後も住宅事業を中心に展開していきたい」と意気込みを語った。
現在のベトナムは日本の1970~80年代の高度経済成長期に類似しているとも指摘。引き続き域内事業の成長の原動力になることを期待していると説明した。
■フィリピンでは複合施設開発も
17年に進出したフィリピンでは、22年に財閥GTキャピタルの不動産開発子会社フェデラル・ランドと設立した合弁会社フェデラル・ランドNREグローバル(FNG)を軸に、高層・一戸建ての分譲住宅や商業施設、オフィスなどを含む都市開発を複数手がけている。
マニラ首都圏タギッグ市ではフェデラル・ランド、三越伊勢丹ホールディングス(HD)と組んで商業施設「MITSUKOSHI BGC(三越BGC)」を含む大型複合施設を開発。23年7月に正式開業した。
現在は5案件を手がけている。うちフェデラル・ランドNREグローバルがマニラ首都圏カビテ州で開発を進める大型タウンシップ(街)の開発計画では、敷地の一画にカジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが東南アジア最大の物流施設を新設する。同施設の誘致でタウンシップ全体の開発を加速させたい考えだ。
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