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「ペイレイター」日常使いに変化・拡大する後払い決済(1)

インドネシアで「ペイレイター」と呼ばれる後払い決済サービスの利用方法や利用者が変化・拡大している。新興フィンテック(ITを活用した金融サービス)企業が始め、広がってきたペイレイターには銀行も参入している。本特集ではペイレイターの利用者像や利用状況、サービス提供者の動向について3回にわたり取り上げる。初回は携帯電話料金の支払いや飲食品の購入といった日常使いに利用する人の割合が増えているなど、変化する利用方法に焦点を当てる。

クレディボのスマホ用アプリでは、ファストフード店での決済にも利用できる(クレディボ提供)

ペイレイターは品物を先に受け取り、代金を後で支払う決済サービスで「バイ・ナウ・ペイ・レイター(BNPL、即購入・後払い)」とも呼ばれる。事前に利用者の信用情報が審査されるが、一般的にクレジットカードと比べて手続きは迅速かつ簡単で少額から利用できることが特徴だ。
民間信用調査会社ペフィンド・ビロ・クレディットによると、国内のペイレイターの利用者数は2023年12月時点で1,340万人とされる。新興企業クレディボなどノンバンク系の事業者やフィンテック企業のほか、シンガポール系ショッピーなど電子商取引(EC)が自社のEC利用者向けにサービスを展開している。
クレディボはこのほど、データアナリティクスなどを手がける地場カタダタ・インサイト・センター(KIC)と共同でペイレイターの利用状況を調査した。調査対象者は23年にクレディボを利用した全国34州の200万人以上で、取引件数2,000万件以上をサンプルとした。
■男女の利用差、年々縮小
クレディボなどが実施した23年の調査では男性の利用者が全体の56.5%、女性は43.5%で、男性の方が13ポイント多かった。男性の利用者が多い傾向は過去の調査と同様の結果となっているが、男女比率の差は21年調査が23.4ポイント、22年調査は18.2ポイントと年々縮小している。

ペイレイターの決済額は、男性が年平均35万~40万ルピア(約3,320~3,790円)に対し、女性は30万~35万ルピアと、男性の方が多かった。総額に占める男性の割合は、23年に全体の58.1%となり、女性(41.9%)よりも16ポイント以上の開きがあったが、男女の差は利用額でも毎年縮小が続いている。
年齢層別に見たペイレイター利用者の割合は、26~35歳が43.9%を占めて最も多く、それより若い層(18~25歳)が26.5%で2番目だった。ただこれらの若年層の割合が年々縮小している一方で、中年層の割合は、36~45歳が21年の18.9%から23年には21.3%に、46~55歳が4.8%から7.2%へと、年々拡大している。

1年間の利用件数は、どの年齢層も11~13回と大差はなかった。一方で、購入した商品の数は、26~35歳が44点なのに対し、36歳以上では48~56点だった。クレディボは、年齢を重ねて所得が増えるにつれ、購入数が伸びていることの表れとみられるとしている。

所得に占めるペイレイター利用額の比率は、18~35歳が6.0~6.4%となり、他の年齢層に比べても高い水準となった。
クレディボの関係者はNNAに対し、「18~35歳の年齢層は、ソーシャルメディアの流行に影響されやすく、はやりの生活スタイルを追い求める傾向にある。また収入がまだ安定していない人も少なくないため、手続きが迅速かつ簡単で少額から利用できるペイレイターを利用して貯金を崩すことなく必要なものを購入している」との見方を示した。
■大都市以外で利用者が増加
23年調査で居住地域別に見た利用者の割合は、人口が500万超~1,100万人の第1級都市に住む利用者が全体の46.3%を占めて最も多い。一方、第2級(同100万~500万人)の割合は21年の36.1%から23年は40.1%に、第3級都市(100万人未満)は9.9%から13.5%へと、年々上昇している。

また決済額、決済件数に占める第1級都市の利用者の割合はいずれも第2級、第3級都市よりも多いが、年々その差は縮小している。
クレディボの関係者は、都市別の利用割合の差が縮まっている要因として、インターネットとデジタル技術の普及で、地方都市でもペイレイターを含むデジタル決済の利用者が増えたことを挙げた。また、ペイレイターのサービスが第2、第3級都市の実店舗でも使えるようになり、ネット通販でかかる送料を負担しなくても買い物できるようになったと指摘した。
■食品の支払い件数が伸び
「ペイレイターを何の支払いに利用しているか」を尋ねた設問では、「携帯電話の通話料チャージやバウチャー」が21.2%で最多となったが、22年(21.7%)からはやや低下した。バウチャーは、データ通信料パッケージ、電力料金、ゲームの課金などを指す。
一方で、2番目に多かった「食品」は22年の16.6%から23年は17.6%に、3番目の「健康・美容用品」は14.4%から15.8%にそれぞれ拡大した。上位3位の品目からも、普段の買い物に利用していることが浮き彫りとなった。

23年のペイレイターを利用した購入額の増加率を見ると、携帯電話の通話料が前年比41.5%、電化製品が40.3%と、他の商品よりも際立って高かった。クレディボは、電化製品のような高額商品の購入時だけでなく、携帯電話の通話料といった日常的な支払いにもペイレイターが使われ、同サービスへの信頼感の高まりを示していると分析している。

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民間信用調査会社ペフィンド・ビロ・クレディットによると、国内のペイレイターの利用者数は2023年12月時点で1,340万人とされる。新興企業クレディボなどノンバンク系の事業者やフィンテック企業のほか、シンガポール系ショッピーなど電子商取引(EC)が自社のEC利用者向けにサービスを展開している。
クレディボはこのほど、データアナリティクスなどを手がける地場カタダタ・インサイト・センター(KIC)と共同でペイレイターの利用状況を調査した。調査対象者は23年にクレディボを利用した全国34州の200万人以上で、取引件数2,000万件以上をサンプルとした。
■男女の利用差、年々縮小
クレディボなどが実施した23年の調査では男性の利用者が全体の56.5%、女性は43.5%で、男性の方が13ポイント多かった。男性の利用者が多い傾向は過去の調査と同様の結果となっているが、男女比率の差は21年調査が23.4ポイント、22年調査は18.2ポイントと年々縮小している。

ペイレイターの決済額は、男性が年平均35万~40万ルピア(約3,320~3,790円)に対し、女性は30万~35万ルピアと、男性の方が多かった。総額に占める男性の割合は、23年に全体の58.1%となり、女性(41.9%)よりも16ポイント以上の開きがあったが、男女の差は利用額でも毎年縮小が続いている。
年齢層別に見たペイレイター利用者の割合は、26~35歳が43.9%を占めて最も多く、それより若い層(18~25歳)が26.5%で2番目だった。ただこれらの若年層の割合が年々縮小している一方で、中年層の割合は、36~45歳が21年の18.9%から23年には21.3%に、46~55歳が4.8%から7.2%へと、年々拡大している。

1年間の利用件数は、どの年齢層も11~13回と大差はなかった。一方で、購入した商品の数は、26~35歳が44点なのに対し、36歳以上では48~56点だった。クレディボは、年齢を重ねて所得が増えるにつれ、購入数が伸びていることの表れとみられるとしている。

所得に占めるペイレイター利用額の比率は、18~35歳が6.0~6.4%となり、他の年齢層に比べても高い水準となった。
クレディボの関係者はNNAに対し、「18~35歳の年齢層は、ソーシャルメディアの流行に影響されやすく、はやりの生活スタイルを追い求める傾向にある。また収入がまだ安定していない人も少なくないため、手続きが迅速かつ簡単で少額から利用できるペイレイターを利用して貯金を崩すことなく必要なものを購入している」との見方を示した。
■大都市以外で利用者が増加
23年調査で居住地域別に見た利用者の割合は、人口が500万超~1,100万人の第1級都市に住む利用者が全体の46.3%を占めて最も多い。一方、第2級(同100万~500万人)の割合は21年の36.1%から23年は40.1%に、第3級都市(100万人未満)は9.9%から13.5%へと、年々上昇している。

また決済額、決済件数に占める第1級都市の利用者の割合はいずれも第2級、第3級都市よりも多いが、年々その差は縮小している。
クレディボの関係者は、都市別の利用割合の差が縮まっている要因として、インターネットとデジタル技術の普及で、地方都市でもペイレイターを含むデジタル決済の利用者が増えたことを挙げた。また、ペイレイターのサービスが第2、第3級都市の実店舗でも使えるようになり、ネット通販でかかる送料を負担しなくても買い物できるようになったと指摘した。
■食品の支払い件数が伸び
「ペイレイターを何の支払いに利用しているか」を尋ねた設問では、「携帯電話の通話料チャージやバウチャー」が21.2%で最多となったが、22年(21.7%)からはやや低下した。バウチャーは、データ通信料パッケージ、電力料金、ゲームの課金などを指す。
一方で、2番目に多かった「食品」は22年の16.6%から23年は17.6%に、3番目の「健康・美容用品」は14.4%から15.8%にそれぞれ拡大した。上位3位の品目からも、普段の買い物に利用していることが浮き彫りとなった。

23年のペイレイターを利用した購入額の増加率を見ると、携帯電話の通話料が前年比41.5%、電化製品が40.3%と、他の商品よりも際立って高かった。クレディボは、電化製品のような高額商品の購入時だけでなく、携帯電話の通話料といった日常的な支払いにもペイレイターが使われ、同サービスへの信頼感の高まりを示していると分析している。
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