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各国の裁判所の種類及び各裁判所が取り扱う紛争の種類

1.日本

(1) 概要

憲法は、「すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」と定めており(憲法76条1項)、これを受けて、高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所及び簡易裁判所の4種類の下級裁判所が裁判所法によって設置されています。

(2) 取扱事件について

日本は三審制の国であり、通常、第一審を簡易裁判所または地方裁判所、控訴審を地方裁判所または高等裁判所、上告審を高等裁判所または最高裁判所が担当します。より具体的には、訴額が140万円を超える場合には地方裁判所、140万円以下の場合には簡易裁判所がそれぞれ第一審を管轄します。ただし、当事者の合意があれば、140万円以下の場合でも地方裁判所を第一審とすることができます。

また、家庭裁判所では、離婚や相続等に関連する家事事件や、未成年者による犯罪等の少年事件を取り扱っています。

なお、事件によっては、特定の裁判所のみが第一審を管轄する専属管轄が法定されている場合があります。専属管轄が法定されている場合、当事者の意思によって管轄裁判所を定めることはできません。例えば、特許権等に関する訴えは、東日本については東京地裁が、西日本については大阪地裁が、それぞれ専属管轄を有しています。このほか、会社関連の訴訟で、株主が株主代表訴訟を提起する場合は、当該株式会社の本店の所在地の地方裁判所が専属管轄を有しています。

2.タイ

(1) 概要

タイの裁判所には4種類あり、司法裁判所(The court of Justice)、憲法裁判所(The Constitutional Court)、行政裁判所(The Administrative Court)、軍事裁判所(The Military Court)に分けられます。このうち、通常の民事訴訟・刑事訴訟は司法裁判所で取り扱われます。

以下では、司法裁判所を念頭にタイの司法制度について概観していきます。

(2) 司法裁判所について

司法裁判所は、一般の民事・刑事事件を扱う一般裁判所と特定の専門事件を取り扱う専門裁判所の二つに分けられます。

知的財産・国際通商、労働、租税、破産、少年・家庭といった専門事件については、各専門裁判所が第一審の管轄権を有しており、第二審を専門控訴裁判所、上告審を最高裁判所がそれぞれ担当します。

① 知的財産・国際通商裁判所

知的財産・国際通商裁判所は、知的財産権および国際通商に関する民事事件・刑事事件を取り扱っています。知的財産・国際通商裁判所は、現状、バンコクに所在する中央知的財産・国際通商裁判所のみが設置されており、バンコクを含む周辺6県を管轄しています。

また、地方には未だ知的財産・国際通商裁判所が設置されていないため、上記6件以外の地域についても、地方知的財産・国際通商裁判所までは、中央知的財産・国際通商裁判所が管轄権を有するものとされています。

② 労働裁判所

労働裁判所は、雇用や労働組合に関係する事件等、労働関連の事案を取り扱っています。労働裁判所については、バンコクに所在する中央労働裁判所のほか、全国の9地域に地方労働裁判所が設置されています。

③ 租税裁判所

租税裁判所は、税金関係の事件を取り扱っています。現状、バンコクに所在する中央租税裁判所が唯一の租税裁判所であり、バンコク及び周辺5県を管轄しているほか、地方租税裁判所が設置されるまでは、前記地域以外の地域に対しても管轄権を有するものとされています。

④ 破産裁判所

破産裁判所は、破産および事業再生に関する民事事件・刑事事件を取り扱っています。現状、バンコクに所在する中央破産裁判所が唯一の破産裁判所であり、バンコクを管轄しているほか、地方破産裁判所が設置されるまでは、前記地域以外の地域に対しても管轄権を有するものとされています。

⑤ 少年・家庭裁判所

少年・家庭裁判所は、未成年者に関する刑事事件や、家庭に関する民事事件等を取り扱っています。少年・家庭裁判所はバンコクをはじめ全国各地に設置されています。

3.マレーシア

(1) 概要

マレーシアには普通裁判所として、①連邦裁判所(Federal Court)、②控訴裁判所(Court of Appeal)、③高等裁判所(High Court)、④初級裁判所(Session Court)、⑤治安判事裁判所(Magistrates Court)が設置されています。①ないし③は上級裁判所(Superior Court)、④及び⑤は下級裁判所(Subordinate Court)と呼称されます。

これらの裁判所の他、労使裁判所(Industrial Court)のように、高度の専門性が要求される分野を管轄する特別裁判所も設置されています。

(2) 連邦裁判所(Federal Court)

連邦裁判所は、マレーシアにおける最高位の司法機関であり、民事、刑事、憲法問題についての終審裁判所です。民事事件に関しては、同裁判所の許可を条件として、高等裁判所が第一審として行った判決に対する控訴裁判所の判決の当否及び憲法解釈にかかる事件について審理し、裁判を行います。刑事事件に関しては、高等裁判所が第一審としてした判決に対する控訴裁判所の判決の当否及び憲法解釈にかかる事件を審理し、裁判を行います。

(3) 控訴裁判所(Court of Appeal)

控訴裁判所では、高等裁判所又は初級裁判所が第一審として行った判決または命令の当否及び下級裁判所が第一審として行った判決に対してなされた高等裁判所の判決又は命令の当否を審理し、裁判を行います。

もっとも、民事事件については、以下の場合には高等裁判所の判決に対する上訴は認められておらず、結果として控訴裁判所が取り扱う上訴の範囲は限定されています。

① 訴訟物の価額がRM250,000以下の事件(ただし、控訴裁判所の許可がある場合を除きます。)
② 合意判決等
③ 裁判所の裁量に基づき決定された費用にのみ関連する判決等(ただし、控訴裁判所の許可がある場合を除きます。)
④ 書面法により終局的なものであることが明言されている判決等

(4) 高等裁判所(High Court)

民事事件に関しては、高等裁判所は、憲法に規定する制限の範囲内において、全ての民事訴訟を審理する管轄権を有するものとされています。

加えて、以下のような特殊な民事事件についても管轄権を有します。

① 婚姻又は離婚に関する事件
② 破産又は会社に関する事件
③ 乳幼児の保護者の選任・監督等に関する事件
④ 精神障害者の保護者の選任・監督等に関する事件
⑤ 遺言状及びその検認に関する事件

また刑事事件については、下級裁判所において審理することができない法定刑に死刑を含むすべての刑事事件を審理し、裁判を行います。上訴裁判所としての高等裁判所は、下級裁判所の判決に対する当否を審理し、裁判を行います。ただし、民事事件については、法律問題に関するものを除き、訴額がRM10,000以下の請求については、高等裁判所に控訴することはできないこととなっています。

(5) 初級裁判所(Sessions Court)

初級裁判所はマレーシアに155か所設置されています。初級裁判所においては、民事事件に関して、すべての交通事故事件、訴訟物の価額がRM1,000,000を超えない事件並びに契約の履行、取消し、解除及び修正に関する事件について第1審として審理し、裁判を行います。また、刑事事件に関しては、死刑判決の対象となる罪を除きすべての犯罪事件を審理し、死刑以外のいかなる判決をも言い渡すことができます。なお、初級裁判所は、上訴審としての管轄を有していません。

(6) 治安判事裁判所(Magistrate Court)

治安判事裁判所には、第1級治安判事裁判所と第2級治安判事裁判所の2種類が存在します。

ア 第1級治安判事裁判所

第1級治安判事裁判所においては、民事事件に関して、訴訟物の価額がRM100,000以下の事件について審理し、裁判を行います。また刑事事件に関しては、罰金刑又は長期10年以下の拘禁刑を科し得る犯罪事件について審理し、裁判を行います。

イ 第2級治安判事裁判所

第2級治安判事裁判所においては、民事事件に関して、訴訟物の価額がRM10,000を超えない債権回収に関する事件について審理し、裁判を行います。また、刑事事件に関しては、罰金又は長期12か月以内の拘禁刑を科し得る犯罪事件について審理し、裁判を行います。ただし、同裁判所は、6か月を超える拘禁刑、RM1,000以下の罰金刑又はこれらを併せて科する判決のみ言い渡すことができます。

(7) 労使裁判所(特別裁判所)

マレーシアでは、高度の専門性が要求される又は事件数が多い等の理由により、これらの事件を専門的に扱う裁判所として、特別裁判所が設置されています。

労使裁判所は、労使関係法に基づき設立された裁判所であり、労使関係から生じた個別紛争、使用者と労働者との間に生じた紛争及び労使関係法上の権利義務に関する事件を取り扱います。ただし、労使裁判所における手続では、法律問題に関しては、高等裁判所に付託し、判断を求めることが義務付けられています。

4.ミャンマー

⑴ 裁判所の種類

2008年憲法下では、連邦の裁判所は、①連邦最 高裁判所(Supreme Court of the Union)、管区高等裁判所(High Court of the Region)、 州高等裁判所(High Court of the State)、自己管理管区裁判所(Courts of the Self-Administered Division)、自己管理区域裁判所(Courts of the Self-Administered Zone)、 県裁判所(District Courts)、郡裁判所(Township Courts)及び法律によって設置されるその他の裁判所、②軍法会議、③連邦憲法裁判所とされています(憲法293条)。法律によって設置されるその他の裁判所は、少年裁判所、都市犯罪を審理する裁判所、交通犯罪を審理する裁判所等が存在します。

(2) 各裁判所が取り扱う対象

郡裁判所は、1,000万チャットより小さい訴額の事件を取扱います。

自己管理管区裁判所、自己管理区域裁判所、及び県裁判所は、1,000万チャット以上5億チャット未満の訴額の事件を取扱います。

管区高等裁判所及び州高等裁判所は、5億チャット以上の訴額の事件を取扱います。

連邦最高裁判所は、連邦が締結した二国間条約に起因する事案等、一定の事項に ついての第一審管轄権を有するほか、連邦の最上位の裁判所として、上告裁判所となります(憲法295条)。

憲法裁判所の役割は、憲法規定の解釈、法律の憲法に適合審査等です。

軍法会議は、憲法及びその他の法律によって設置され、国軍の軍人に対する裁判を行います。

5.メキシコ

⑴ 概要

メキシコは連邦制を採用しており、メキシコ国内の裁判所には、連邦裁判所と州裁判所があります。当該州内のみで生じた事件については当該州の裁判所が、複数の州にまたがる事案や連邦が関係する事案については連邦裁判所が担当しています。連邦裁判所と州裁判所は、基本的には二審制を採用していますが、裁判所の判決が人権を侵害している場合や、判決の基となった法律が憲法違反であり、これによって人権が侵害されたような場合には、さらにアンパロ裁判(連邦裁判所管轄)に訴えることができ、その場合は合計4回まで審議を受けることが可能です。

① 連邦レベルの司法機関

連邦司法機関としては、最高裁判所、巡回合議裁判所、控訴合議裁判所、地区裁判所、連邦選挙裁判所といった裁判所があります。

このうち、連邦レベルの第一審裁判所としては地区裁判所があり、民事・刑事・行政または国際条約における連邦法の適用に関する訴訟等を取り扱っています。地区裁判所に対する控訴は、控訴合議裁判所が取り扱っています。

② 州レベルの司法機関

州レベルの裁判所としては、上級司法裁判所、第一審裁判所、下級裁判所・少額裁判所・治安裁判所・地方裁判所・郡裁判所があります。

第一審裁判所(Juzgados de Primera Instancia)は、州レベルの第一審裁判所であり、民事・商事・刑事・不動産賃貸・家族等の案件を取り扱っています。 その他、下級裁判所・少額裁判所・治安裁判所・地方裁判所・郡裁判所は、州により管轄や名称が異なっており、一般には、一定の金額を超えない民事・商事事件、懲役刑に該当しない刑事事件を取り扱っています。

上級司法裁判所は、州における控訴裁判所であり、刑事、民事、商取引、家族、少年司法、刑事罰の執行、制裁の執行を取り扱っています。

⑵ その他の司法機関・行政司法機関

⑴で述べたもののほか、メキシコには特殊な事件を取り扱う裁判所等があります。主なものとして、労働裁判所・労働調停登録センター、連邦行政裁判所、行政審裁判所、高等農事裁判所・単独農事裁判所が挙げられます。

このうち、労働裁判所・労働調停登録センターは、労働者と使用者間に発生する労働紛争解決を担う機関であり、メキシコにおいて労働紛争は⑴の裁判所とは異なる裁判所や紛争解決機関にて解決されます。税務や行政訴訟に関しては行政裁判所である連邦行政裁判所が取り扱っており、地方の行政機関と私人との紛争に関しては行政審裁判所が取り扱っています。その他、土地などの境界や保有権、承継、返還、利用に関する紛争等に関しては単独農業裁判所が担当し、その上訴審として高等農事裁判所が存在します。

6.バングラデシュ

(1) バングラデシュの裁判制度

バングラデシュには、最高裁判所、民事裁判を扱う下級裁判所、刑事裁判を扱う下級裁判所、そして法令に基づく裁判所があります。

(2) 最高裁判所

最高裁判所には、「上訴部」と「高等裁判所部」が設置されています。高等裁判所部は、いかなる事項でも下級裁判所の判決に対する上訴を審理する権限を持ちます。上訴部は、高等裁判所部の判決や命令に関する上訴を受け付け、憲法に関連する重要な事項や死刑または終身刑が判決に含まれる場合に管轄権を有します。

(3) 民事裁判を扱う下級裁判所

民事事件を取り扱う下級裁判所として、地方判事裁判所、追加地方判事裁判所、共同地方判事裁判所などがあり、各裁判所の管轄権は民事裁判所法によって規定されています。訴額に応じて、第一審の裁判所が決まります。

(4) 刑事裁判を扱う下級裁判所

刑事事件を取り扱う裁判所には、セッション判事裁判所と治安判事裁判所があります。それぞれの管轄は刑事訴訟法によって定められており、地域や量刑によって第一審裁判所が決まります。

(5) 法律による特別な裁判所

労働上訴審判所(Labour Appellate Tribunal)、労働裁判所(Labour Court)は、2006年労働法(Bangladesh Labour Act 2006)に基づいて、同法が定めた労働に関する事件を扱います。

行政審判所(Administrative Tribunal)、行政上訴審判所(Administrative Appellate Tribunal)は、憲法第117条と1980年行政審判所法(Administrative Tribunals Act 1980)を根拠に、同法が定めた行政法の事件を扱います。

その他、特定の法令に基づき、租税控訴審判所(Tax Appellate Tribunal)、関税、物品税及びVAT上訴審判所(Customs, Excise and VAT Appellate Tribunal)、家庭裁判所(Family Court)、海事裁判所(Admiralty Court)、村落裁判所(Village Court)、少額原因裁判所(Small Causes Court)、貸金裁判所(Money Loan Court)、倒産裁判所(Bankruptcy Court)が設置されています。

7.フィリピン

(1) 基本

フィリピンの裁判所の基本構造はおおまかに以下のとおりです。基本的にはフィリピンも日本と同じように三審制を採用しています。

i) 簡易裁判所(First Level Courts):略式手続や少額訴訟を扱う裁判所。
ii) 地方裁判所(Regional Trial Courts):基本的に第一審として事実審を行う。また、第一審裁判所の判決に対する上訴裁判所としても機能する。
iii) 高等裁判所(Court of Tax Appeals):地裁等からの上訴を扱う。
iv) 最高裁判所(Court of Appeals):高裁からの上訴を扱う、最上位の裁判所

(2) その他の裁判所

フィリピンには他にも以下のような裁判所があります。フィリピンでビジネスを行う企業にとっては、労働問題を扱う中央労使関係委員会(The National Labor Relations Commission)が最も重要であると思われます。

i) 中央労使関係委員会(The National Labor Relations Commission):労働問題に関する紛争を扱う。厳密には裁判所ではなく労働雇用省 (DOLE)の一部門であるが、裁判所と同様の機能を果たしている。
ii) 税務裁判所: 税務関連の決定に関する控訴を扱う控訴裁判所。
iii) サンディガンバヤン(Sandiganbayan): 公務員や職員による汚職や腐敗事件等を扱う特別裁判所。
iv) シャリーア(Shari’ah)裁判所:ムスリム身分法(the Code of Muslim Personal Laws)が適用される事案で、一方または両方の当事者がイスラム教徒である場合に管轄権を持つ(非イスラム教徒が当事者になる場合、その当事者はシャリーア裁判所で裁判することを承諾する必要がある。)。

簡易裁判所に相当するシャリーア巡回裁判所(Shari’ah Circuit Courts)、地方裁判所に相当するシャリーア区裁判所(Shari’ah District Courts)、高等裁判所に相当するシャリーア高等裁判所(Shari’ah High Court)がある。

8.ベトナム

⑴ 組織体制

ベトナムの司法機関は人民裁判所と呼ばれ、憲法に基づき司法権を行使します。人民裁判所には、最高人民裁判所および法律で定められたその他の裁判所が含まれます。人民裁判所組織法(2025年1月1日に施行される2024年人民裁判所組織法)第3条によると、人民裁判所の組織は以下の通りです。

最高人民裁判所:ベトナムの最高司法機関です。

高級人民裁判所:省級人民裁判所および専門第一審人民裁判所からの上訴を扱います。

省級人民裁判所(中央直轄都市人民裁判所を含みます):県級人民裁判所からの上訴および特定の第一審を扱います。省級人民裁判所は中級裁判所とみなされます。

県級人民裁判所:主に、第一審を扱います。県級人民裁判所は地方裁判所とみなされます。

専門第一審人民裁判所(2025年1月1日以降に施行):行政、知的財産、破産事件の第一審のみを扱います。

軍事裁判所(中央軍事裁判所、軍事区域および同等の軍事裁判所、地域軍事裁判所を含みます):ベトナム人民軍に組織され、被告人が現役の軍人である刑事事件およびその他規定された事件を審理する裁判所制度を指します。

(2) 紛争の種類

2015年民事訴訟法の規定に基づき、紛争は民事紛争、家庭紛争、商業・ビジネス紛争、労働紛争に分類されます。これに応じて、紛争の具体的な内容に基づき、人民裁判所の管轄レベルが決定されます。しかし、裁判所の管轄レベルを適用する前に、当事者は裁判所の管轄区域を考慮しなければなりません(2015年民事訴訟法第39条)。紛争の対象が不動産である場合、不動産が所在する地域の裁判所のみが紛争を解決する管轄権を有します。また、当事者は、書面により、原告の居住地または原告会社の本店所在地の裁判所に紛争解決を依頼することに合意する権利を有します。合意がない場合は、被告の居住地または被告会社の本店所在地の裁判所が民事事件を解決する管轄裁判所となります。

9.インド

⑴ 裁判制度について

インドの裁判制度は、最高裁判所(Supreme Court)、および最高裁判所の下に位置づけられる裁判所で構成されており、日本と同様に三審制を採用しています。最高裁判所の下には、高等裁判所(High Court)があり(基本的に高等裁判所は各州に設置される)、その下に下級裁判所(Subordinate Court)があります。下級裁判所は、地方裁判所(District Court)と刑事事件のみを取り扱うSessions Courtからなります。

その他、商事事件(INR30万以上の事件)のみを取り扱う商事裁判所や、労働事件のみを取り扱う労働裁判所などの特別な事件のみを取り扱う裁判所があります。

(2) 管轄について

基本的には、被告の住所若しくは被告が事業を営み利益を得る場所、または請求原因が発生した場所に裁判管轄が生じます。もっとも、不動産に関して生じた紛争についての裁判は、当該不動産が所在する管轄区域内の裁判所に提起されなければなりません。

(3) 準司法機関について

他にも準司法機関である会社法審判所(NCLT : National Company Law Tribunal)、労働審判所(Industrial Tribunal)、直接税審判所(ITAT : Income Tax Appellate Tribunal)、間接税審判所(CESTAT : Customs Excise and Service Tax Appellate Tribunal)等があります。これらの準司法機関である審判所は、事件の性質により使い分けられ、例えば会社法に関する紛争であれば会社法審判所が利用されることになります。

準司法機関の判断に対する不服申立てとして高等裁判所への上訴が認められます。

10.アラブ首長国連邦(ドバイ)

アラブ首長国連邦では、各首長国は、連邦憲法の下で連邦裁判所の所管とされる事項以外について司法権を有する(連邦憲法第104条)一方で、各首長国の希望によって、連邦法を制定して、その司法権に属する事項を連邦裁判所の管轄に服することができます(連邦憲法第105条)。そのため、7つある首長国のうちアブダビ、ドバイ及びラアスルハイマは、各首長国独自の司法システムを構築して首長国裁判所を有しますが、後者を選択したその他の4首長国(シャルジャ、アジュマン、フジャイラ及びウンムアルカイワイン)には、首長国裁判所はなく、あらゆる事項が連邦裁判所において審理されます。

連邦裁判所は、一審裁判所、控訴裁判所、最高裁判所(Supreme Court)の三審制となっています。このうち、連邦最高裁判所は、各首長国間の紛争、首長国と連邦政府との紛争、連邦法の合憲性、首長国法の連邦憲法または連邦法適合性、連邦裁判所と首長国裁判所の管轄争い、連邦の公益を直接害する犯罪等(連邦憲法第99条)を所管し、連邦一審裁判所は、連邦が原告または被告となる連邦と個人間の民事・商事・行政紛争(連邦憲法第102条)等を所管し、上記のとおり首長国裁判所を設置していない4首長国にかかる首長国内の紛争も所管します。

ドバイにおける首長国裁判所は、一審裁判所、控訴裁判所、破毀院(Court of Cassation)の三審制となっていて、これらとは独立した特別裁判所である遺産裁判所が設置されています。首長国破棄院は法令違背の有無のみを判断する法律審で、連邦一審裁判所では、首長国が管轄を持つ司法権に属する事項(民事、商事、家事、労働、刑事等)が審理されます。

フリーゾーン独自の規則が適用される2か所のフリーゾーン(Abu Dhabi Global Market及びDubai International Financial Center)については、それぞれ独自に制定された法律によって独自の裁判所が設置されています。ドバイに所在するDIFC裁判所は、一審裁判所と控訴裁判所の二審制で、DIFCで制定された法律に基づき英語で審理されるという特色がある他、所管事項は、当初DIFC内で生じた紛争に限定されていましたが、DIFCと関連のない事件についても拡大されています。アブダビに所在するADGM裁判所も二審制の構造を持ち、英国法(English common law)が直接適用されるという特色を有しています。

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1.日本

(1) 概要 憲法は、「すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」と定めており(憲法76条1項)、これを受けて、高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所及び簡易裁判所の4種類の下級裁判所が裁判所法によって設置されています。

(2) 取扱事件について

日本は三審制の国であり、通常、第一審を簡易裁判所または地方裁判所、控訴審を地方裁判所または高等裁判所、上告審を高等裁判所または最高裁判所が担当します。より具体的には、訴額が140万円を超える場合には地方裁判所、140万円以下の場合には簡易裁判所がそれぞれ第一審を管轄します。ただし、当事者の合意があれば、140万円以下の場合でも地方裁判所を第一審とすることができます。 また、家庭裁判所では、離婚や相続等に関連する家事事件や、未成年者による犯罪等の少年事件を取り扱っています。 なお、事件によっては、特定の裁判所のみが第一審を管轄する専属管轄が法定されている場合があります。専属管轄が法定されている場合、当事者の意思によって管轄裁判所を定めることはできません。例えば、特許権等に関する訴えは、東日本については東京地裁が、西日本については大阪地裁が、それぞれ専属管轄を有しています。このほか、会社関連の訴訟で、株主が株主代表訴訟を提起する場合は、当該株式会社の本店の所在地の地方裁判所が専属管轄を有しています。

2.タイ

(1) 概要 タイの裁判所には4種類あり、司法裁判所(The court of Justice)、憲法裁判所(The Constitutional Court)、行政裁判所(The Administrative Court)、軍事裁判所(The Military Court)に分けられます。このうち、通常の民事訴訟・刑事訴訟は司法裁判所で取り扱われます。 以下では、司法裁判所を念頭にタイの司法制度について概観していきます。 (2) 司法裁判所について 司法裁判所は、一般の民事・刑事事件を扱う一般裁判所と特定の専門事件を取り扱う専門裁判所の二つに分けられます。 知的財産・国際通商、労働、租税、破産、少年・家庭といった専門事件については、各専門裁判所が第一審の管轄権を有しており、第二審を専門控訴裁判所、上告審を最高裁判所がそれぞれ担当します。 ① 知的財産・国際通商裁判所 知的財産・国際通商裁判所は、知的財産権および国際通商に関する民事事件・刑事事件を取り扱っています。知的財産・国際通商裁判所は、現状、バンコクに所在する中央知的財産・国際通商裁判所のみが設置されており、バンコクを含む周辺6県を管轄しています。 また、地方には未だ知的財産・国際通商裁判所が設置されていないため、上記6件以外の地域についても、地方知的財産・国際通商裁判所までは、中央知的財産・国際通商裁判所が管轄権を有するものとされています。 ② 労働裁判所 労働裁判所は、雇用や労働組合に関係する事件等、労働関連の事案を取り扱っています。労働裁判所については、バンコクに所在する中央労働裁判所のほか、全国の9地域に地方労働裁判所が設置されています。 ③ 租税裁判所 租税裁判所は、税金関係の事件を取り扱っています。現状、バンコクに所在する中央租税裁判所が唯一の租税裁判所であり、バンコク及び周辺5県を管轄しているほか、地方租税裁判所が設置されるまでは、前記地域以外の地域に対しても管轄権を有するものとされています。 ④ 破産裁判所 破産裁判所は、破産および事業再生に関する民事事件・刑事事件を取り扱っています。現状、バンコクに所在する中央破産裁判所が唯一の破産裁判所であり、バンコクを管轄しているほか、地方破産裁判所が設置されるまでは、前記地域以外の地域に対しても管轄権を有するものとされています。 ⑤ 少年・家庭裁判所 少年・家庭裁判所は、未成年者に関する刑事事件や、家庭に関する民事事件等を取り扱っています。少年・家庭裁判所はバンコクをはじめ全国各地に設置されています。

3.マレーシア

(1) 概要 マレーシアには普通裁判所として、①連邦裁判所(Federal Court)、②控訴裁判所(Court of Appeal)、③高等裁判所(High Court)、④初級裁判所(Session Court)、⑤治安判事裁判所(Magistrates Court)が設置されています。①ないし③は上級裁判所(Superior Court)、④及び⑤は下級裁判所(Subordinate Court)と呼称されます。 これらの裁判所の他、労使裁判所(Industrial Court)のように、高度の専門性が要求される分野を管轄する特別裁判所も設置されています。 (2) 連邦裁判所(Federal Court) 連邦裁判所は、マレーシアにおける最高位の司法機関であり、民事、刑事、憲法問題についての終審裁判所です。民事事件に関しては、同裁判所の許可を条件として、高等裁判所が第一審として行った判決に対する控訴裁判所の判決の当否及び憲法解釈にかかる事件について審理し、裁判を行います。刑事事件に関しては、高等裁判所が第一審としてした判決に対する控訴裁判所の判決の当否及び憲法解釈にかかる事件を審理し、裁判を行います。 (3) 控訴裁判所(Court of Appeal) 控訴裁判所では、高等裁判所又は初級裁判所が第一審として行った判決または命令の当否及び下級裁判所が第一審として行った判決に対してなされた高等裁判所の判決又は命令の当否を審理し、裁判を行います。 もっとも、民事事件については、以下の場合には高等裁判所の判決に対する上訴は認められておらず、結果として控訴裁判所が取り扱う上訴の範囲は限定されています。 ① 訴訟物の価額がRM250,000以下の事件(ただし、控訴裁判所の許可がある場合を除きます。) ② 合意判決等 ③ 裁判所の裁量に基づき決定された費用にのみ関連する判決等(ただし、控訴裁判所の許可がある場合を除きます。) ④ 書面法により終局的なものであることが明言されている判決等 (4) 高等裁判所(High Court) 民事事件に関しては、高等裁判所は、憲法に規定する制限の範囲内において、全ての民事訴訟を審理する管轄権を有するものとされています。 加えて、以下のような特殊な民事事件についても管轄権を有します。 ① 婚姻又は離婚に関する事件 ② 破産又は会社に関する事件 ③ 乳幼児の保護者の選任・監督等に関する事件 ④ 精神障害者の保護者の選任・監督等に関する事件 ⑤ 遺言状及びその検認に関する事件 また刑事事件については、下級裁判所において審理することができない法定刑に死刑を含むすべての刑事事件を審理し、裁判を行います。上訴裁判所としての高等裁判所は、下級裁判所の判決に対する当否を審理し、裁判を行います。ただし、民事事件については、法律問題に関するものを除き、訴額がRM10,000以下の請求については、高等裁判所に控訴することはできないこととなっています。 (5) 初級裁判所(Sessions Court) 初級裁判所はマレーシアに155か所設置されています。初級裁判所においては、民事事件に関して、すべての交通事故事件、訴訟物の価額がRM1,000,000を超えない事件並びに契約の履行、取消し、解除及び修正に関する事件について第1審として審理し、裁判を行います。また、刑事事件に関しては、死刑判決の対象となる罪を除きすべての犯罪事件を審理し、死刑以外のいかなる判決をも言い渡すことができます。なお、初級裁判所は、上訴審としての管轄を有していません。 (6) 治安判事裁判所(Magistrate Court) 治安判事裁判所には、第1級治安判事裁判所と第2級治安判事裁判所の2種類が存在します。 ア 第1級治安判事裁判所 第1級治安判事裁判所においては、民事事件に関して、訴訟物の価額がRM100,000以下の事件について審理し、裁判を行います。また刑事事件に関しては、罰金刑又は長期10年以下の拘禁刑を科し得る犯罪事件について審理し、裁判を行います。 イ 第2級治安判事裁判所 第2級治安判事裁判所においては、民事事件に関して、訴訟物の価額がRM10,000を超えない債権回収に関する事件について審理し、裁判を行います。また、刑事事件に関しては、罰金又は長期12か月以内の拘禁刑を科し得る犯罪事件について審理し、裁判を行います。ただし、同裁判所は、6か月を超える拘禁刑、RM1,000以下の罰金刑又はこれらを併せて科する判決のみ言い渡すことができます。 (7) 労使裁判所(特別裁判所) マレーシアでは、高度の専門性が要求される又は事件数が多い等の理由により、これらの事件を専門的に扱う裁判所として、特別裁判所が設置されています。 労使裁判所は、労使関係法に基づき設立された裁判所であり、労使関係から生じた個別紛争、使用者と労働者との間に生じた紛争及び労使関係法上の権利義務に関する事件を取り扱います。ただし、労使裁判所における手続では、法律問題に関しては、高等裁判所に付託し、判断を求めることが義務付けられています。

4.ミャンマー

⑴ 裁判所の種類 2008年憲法下では、連邦の裁判所は、①連邦最 高裁判所(Supreme Court of the Union)、管区高等裁判所(High Court of the Region)、 州高等裁判所(High Court of the State)、自己管理管区裁判所(Courts of the Self-Administered Division)、自己管理区域裁判所(Courts of the Self-Administered Zone)、 県裁判所(District Courts)、郡裁判所(Township Courts)及び法律によって設置されるその他の裁判所、②軍法会議、③連邦憲法裁判所とされています(憲法293条)。法律によって設置されるその他の裁判所は、少年裁判所、都市犯罪を審理する裁判所、交通犯罪を審理する裁判所等が存在します。 (2) 各裁判所が取り扱う対象 郡裁判所は、1,000万チャットより小さい訴額の事件を取扱います。 自己管理管区裁判所、自己管理区域裁判所、及び県裁判所は、1,000万チャット以上5億チャット未満の訴額の事件を取扱います。 管区高等裁判所及び州高等裁判所は、5億チャット以上の訴額の事件を取扱います。 連邦最高裁判所は、連邦が締結した二国間条約に起因する事案等、一定の事項に ついての第一審管轄権を有するほか、連邦の最上位の裁判所として、上告裁判所となります(憲法295条)。 憲法裁判所の役割は、憲法規定の解釈、法律の憲法に適合審査等です。 軍法会議は、憲法及びその他の法律によって設置され、国軍の軍人に対する裁判を行います。

5.メキシコ

⑴ 概要 メキシコは連邦制を採用しており、メキシコ国内の裁判所には、連邦裁判所と州裁判所があります。当該州内のみで生じた事件については当該州の裁判所が、複数の州にまたがる事案や連邦が関係する事案については連邦裁判所が担当しています。連邦裁判所と州裁判所は、基本的には二審制を採用していますが、裁判所の判決が人権を侵害している場合や、判決の基となった法律が憲法違反であり、これによって人権が侵害されたような場合には、さらにアンパロ裁判(連邦裁判所管轄)に訴えることができ、その場合は合計4回まで審議を受けることが可能です。 ① 連邦レベルの司法機関 連邦司法機関としては、最高裁判所、巡回合議裁判所、控訴合議裁判所、地区裁判所、連邦選挙裁判所といった裁判所があります。 このうち、連邦レベルの第一審裁判所としては地区裁判所があり、民事・刑事・行政または国際条約における連邦法の適用に関する訴訟等を取り扱っています。地区裁判所に対する控訴は、控訴合議裁判所が取り扱っています。 ② 州レベルの司法機関 州レベルの裁判所としては、上級司法裁判所、第一審裁判所、下級裁判所・少額裁判所・治安裁判所・地方裁判所・郡裁判所があります。 第一審裁判所(Juzgados de Primera Instancia)は、州レベルの第一審裁判所であり、民事・商事・刑事・不動産賃貸・家族等の案件を取り扱っています。 その他、下級裁判所・少額裁判所・治安裁判所・地方裁判所・郡裁判所は、州により管轄や名称が異なっており、一般には、一定の金額を超えない民事・商事事件、懲役刑に該当しない刑事事件を取り扱っています。 上級司法裁判所は、州における控訴裁判所であり、刑事、民事、商取引、家族、少年司法、刑事罰の執行、制裁の執行を取り扱っています。 ⑵ その他の司法機関・行政司法機関 ⑴で述べたもののほか、メキシコには特殊な事件を取り扱う裁判所等があります。主なものとして、労働裁判所・労働調停登録センター、連邦行政裁判所、行政審裁判所、高等農事裁判所・単独農事裁判所が挙げられます。 このうち、労働裁判所・労働調停登録センターは、労働者と使用者間に発生する労働紛争解決を担う機関であり、メキシコにおいて労働紛争は⑴の裁判所とは異なる裁判所や紛争解決機関にて解決されます。税務や行政訴訟に関しては行政裁判所である連邦行政裁判所が取り扱っており、地方の行政機関と私人との紛争に関しては行政審裁判所が取り扱っています。その他、土地などの境界や保有権、承継、返還、利用に関する紛争等に関しては単独農業裁判所が担当し、その上訴審として高等農事裁判所が存在します。

6.バングラデシュ

(1) バングラデシュの裁判制度 バングラデシュには、最高裁判所、民事裁判を扱う下級裁判所、刑事裁判を扱う下級裁判所、そして法令に基づく裁判所があります。 (2) 最高裁判所 最高裁判所には、「上訴部」と「高等裁判所部」が設置されています。高等裁判所部は、いかなる事項でも下級裁判所の判決に対する上訴を審理する権限を持ちます。上訴部は、高等裁判所部の判決や命令に関する上訴を受け付け、憲法に関連する重要な事項や死刑または終身刑が判決に含まれる場合に管轄権を有します。 (3) 民事裁判を扱う下級裁判所 民事事件を取り扱う下級裁判所として、地方判事裁判所、追加地方判事裁判所、共同地方判事裁判所などがあり、各裁判所の管轄権は民事裁判所法によって規定されています。訴額に応じて、第一審の裁判所が決まります。 (4) 刑事裁判を扱う下級裁判所 刑事事件を取り扱う裁判所には、セッション判事裁判所と治安判事裁判所があります。それぞれの管轄は刑事訴訟法によって定められており、地域や量刑によって第一審裁判所が決まります。 (5) 法律による特別な裁判所 労働上訴審判所(Labour Appellate Tribunal)、労働裁判所(Labour Court)は、2006年労働法(Bangladesh Labour Act 2006)に基づいて、同法が定めた労働に関する事件を扱います。 行政審判所(Administrative Tribunal)、行政上訴審判所(Administrative Appellate Tribunal)は、憲法第117条と1980年行政審判所法(Administrative Tribunals Act 1980)を根拠に、同法が定めた行政法の事件を扱います。 その他、特定の法令に基づき、租税控訴審判所(Tax Appellate Tribunal)、関税、物品税及びVAT上訴審判所(Customs, Excise and VAT Appellate Tribunal)、家庭裁判所(Family Court)、海事裁判所(Admiralty Court)、村落裁判所(Village Court)、少額原因裁判所(Small Causes Court)、貸金裁判所(Money Loan Court)、倒産裁判所(Bankruptcy Court)が設置されています。

7.フィリピン

(1) 基本 フィリピンの裁判所の基本構造はおおまかに以下のとおりです。基本的にはフィリピンも日本と同じように三審制を採用しています。 i) 簡易裁判所(First Level Courts):略式手続や少額訴訟を扱う裁判所。 ii) 地方裁判所(Regional Trial Courts):基本的に第一審として事実審を行う。また、第一審裁判所の判決に対する上訴裁判所としても機能する。 iii) 高等裁判所(Court of Tax Appeals):地裁等からの上訴を扱う。 iv) 最高裁判所(Court of Appeals):高裁からの上訴を扱う、最上位の裁判所 (2) その他の裁判所 フィリピンには他にも以下のような裁判所があります。フィリピンでビジネスを行う企業にとっては、労働問題を扱う中央労使関係委員会(The National Labor Relations Commission)が最も重要であると思われます。 i) 中央労使関係委員会(The National Labor Relations Commission):労働問題に関する紛争を扱う。厳密には裁判所ではなく労働雇用省 (DOLE)の一部門であるが、裁判所と同様の機能を果たしている。 ii) 税務裁判所: 税務関連の決定に関する控訴を扱う控訴裁判所。 iii) サンディガンバヤン(Sandiganbayan): 公務員や職員による汚職や腐敗事件等を扱う特別裁判所。 iv) シャリーア(Shari’ah)裁判所:ムスリム身分法(the Code of Muslim Personal Laws)が適用される事案で、一方または両方の当事者がイスラム教徒である場合に管轄権を持つ(非イスラム教徒が当事者になる場合、その当事者はシャリーア裁判所で裁判することを承諾する必要がある。)。 簡易裁判所に相当するシャリーア巡回裁判所(Shari’ah Circuit Courts)、地方裁判所に相当するシャリーア区裁判所(Shari’ah District Courts)、高等裁判所に相当するシャリーア高等裁判所(Shari’ah High Court)がある。

8.ベトナム

⑴ 組織体制 ベトナムの司法機関は人民裁判所と呼ばれ、憲法に基づき司法権を行使します。人民裁判所には、最高人民裁判所および法律で定められたその他の裁判所が含まれます。人民裁判所組織法(2025年1月1日に施行される2024年人民裁判所組織法)第3条によると、人民裁判所の組織は以下の通りです。 最高人民裁判所:ベトナムの最高司法機関です。 高級人民裁判所:省級人民裁判所および専門第一審人民裁判所からの上訴を扱います。 省級人民裁判所(中央直轄都市人民裁判所を含みます):県級人民裁判所からの上訴および特定の第一審を扱います。省級人民裁判所は中級裁判所とみなされます。 県級人民裁判所:主に、第一審を扱います。県級人民裁判所は地方裁判所とみなされます。 専門第一審人民裁判所(2025年1月1日以降に施行):行政、知的財産、破産事件の第一審のみを扱います。 軍事裁判所(中央軍事裁判所、軍事区域および同等の軍事裁判所、地域軍事裁判所を含みます):ベトナム人民軍に組織され、被告人が現役の軍人である刑事事件およびその他規定された事件を審理する裁判所制度を指します。 (2) 紛争の種類 2015年民事訴訟法の規定に基づき、紛争は民事紛争、家庭紛争、商業・ビジネス紛争、労働紛争に分類されます。これに応じて、紛争の具体的な内容に基づき、人民裁判所の管轄レベルが決定されます。しかし、裁判所の管轄レベルを適用する前に、当事者は裁判所の管轄区域を考慮しなければなりません(2015年民事訴訟法第39条)。紛争の対象が不動産である場合、不動産が所在する地域の裁判所のみが紛争を解決する管轄権を有します。また、当事者は、書面により、原告の居住地または原告会社の本店所在地の裁判所に紛争解決を依頼することに合意する権利を有します。合意がない場合は、被告の居住地または被告会社の本店所在地の裁判所が民事事件を解決する管轄裁判所となります。

9.インド

⑴ 裁判制度について インドの裁判制度は、最高裁判所(Supreme Court)、および最高裁判所の下に位置づけられる裁判所で構成されており、日本と同様に三審制を採用しています。最高裁判所の下には、高等裁判所(High Court)があり(基本的に高等裁判所は各州に設置される)、その下に下級裁判所(Subordinate Court)があります。下級裁判所は、地方裁判所(District Court)と刑事事件のみを取り扱うSessions Courtからなります。 その他、商事事件(INR30万以上の事件)のみを取り扱う商事裁判所や、労働事件のみを取り扱う労働裁判所などの特別な事件のみを取り扱う裁判所があります。 (2) 管轄について 基本的には、被告の住所若しくは被告が事業を営み利益を得る場所、または請求原因が発生した場所に裁判管轄が生じます。もっとも、不動産に関して生じた紛争についての裁判は、当該不動産が所在する管轄区域内の裁判所に提起されなければなりません。 (3) 準司法機関について 他にも準司法機関である会社法審判所(NCLT : National Company Law Tribunal)、労働審判所(Industrial Tribunal)、直接税審判所(ITAT : Income Tax Appellate Tribunal)、間接税審判所(CESTAT : Customs Excise and Service Tax Appellate Tribunal)等があります。これらの準司法機関である審判所は、事件の性質により使い分けられ、例えば会社法に関する紛争であれば会社法審判所が利用されることになります。 準司法機関の判断に対する不服申立てとして高等裁判所への上訴が認められます。

10.アラブ首長国連邦(ドバイ)

アラブ首長国連邦では、各首長国は、連邦憲法の下で連邦裁判所の所管とされる事項以外について司法権を有する(連邦憲法第104条)一方で、各首長国の希望によって、連邦法を制定して、その司法権に属する事項を連邦裁判所の管轄に服することができます(連邦憲法第105条)。そのため、7つある首長国のうちアブダビ、ドバイ及びラアスルハイマは、各首長国独自の司法システムを構築して首長国裁判所を有しますが、後者を選択したその他の4首長国(シャルジャ、アジュマン、フジャイラ及びウンムアルカイワイン)には、首長国裁判所はなく、あらゆる事項が連邦裁判所において審理されます。 連邦裁判所は、一審裁判所、控訴裁判所、最高裁判所(Supreme Court)の三審制となっています。このうち、連邦最高裁判所は、各首長国間の紛争、首長国と連邦政府との紛争、連邦法の合憲性、首長国法の連邦憲法または連邦法適合性、連邦裁判所と首長国裁判所の管轄争い、連邦の公益を直接害する犯罪等(連邦憲法第99条)を所管し、連邦一審裁判所は、連邦が原告または被告となる連邦と個人間の民事・商事・行政紛争(連邦憲法第102条)等を所管し、上記のとおり首長国裁判所を設置していない4首長国にかかる首長国内の紛争も所管します。 ドバイにおける首長国裁判所は、一審裁判所、控訴裁判所、破毀院(Court of Cassation)の三審制となっていて、これらとは独立した特別裁判所である遺産裁判所が設置されています。首長国破棄院は法令違背の有無のみを判断する法律審で、連邦一審裁判所では、首長国が管轄を持つ司法権に属する事項(民事、商事、家事、労働、刑事等)が審理されます。 フリーゾーン独自の規則が適用される2か所のフリーゾーン(Abu Dhabi Global Market及びDubai International Financial Center)については、それぞれ独自に制定された法律によって独自の裁判所が設置されています。ドバイに所在するDIFC裁判所は、一審裁判所と控訴裁判所の二審制で、DIFCで制定された法律に基づき英語で審理されるという特色がある他、所管事項は、当初DIFC内で生じた紛争に限定されていましたが、DIFCと関連のない事件についても拡大されています。アブダビに所在するADGM裁判所も二審制の構造を持ち、英国法(English common law)が直接適用されるという特色を有しています。" ["post_title"]=> string(75) "各国の裁判所の種類及び各裁判所が取り扱う紛争の種類" ["post_excerpt"]=> string(0) "" ["post_status"]=> string(7) "publish" ["comment_status"]=> string(4) "open" ["ping_status"]=> string(4) "open" ["post_password"]=> string(0) "" ["post_name"]=> string(198) "%e5%90%84%e5%9b%bd%e3%81%ae%e8%a3%81%e5%88%a4%e6%89%80%e3%81%ae%e7%a8%ae%e9%a1%9e%e5%8f%8a%e3%81%b3%e5%90%84%e8%a3%81%e5%88%a4%e6%89%80%e3%81%8c%e5%8f%96%e3%82%8a%e6%89%b1%e3%81%86%e7%b4%9b%e4%ba%89" ["to_ping"]=> string(0) "" ["pinged"]=> string(0) "" ["post_modified"]=> string(19) "2024-10-16 11:38:52" ["post_modified_gmt"]=> string(19) "2024-10-16 02:38:52" ["post_content_filtered"]=> string(0) "" ["post_parent"]=> int(0) ["guid"]=> string(34) "https://nnaglobalnavi.com/?p=22693" ["menu_order"]=> int(0) ["post_type"]=> string(4) "post" ["post_mime_type"]=> string(0) "" ["comment_count"]=> string(1) "0" ["filter"]=> string(3) "raw" }
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世界11か国13拠点で日系企業の進出及び進出後のサポート

世界11か国13拠点(東京、大阪、佐賀、ミャンマー、タイ、マレーシア、メキシコ、エストニア、フィリピン、イスラエル、バングラデシュ、ベトナム、イギリス)で日系企業の進出及び進出後のサポートを行っている。具体的には、法規制調査、会社設立、合弁契約書及び雇用契約書等の各種契約書の作成、M&A、紛争解決、商標登記等の知財等各種法務サービスを提供している。

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