香港政府は1日、域外から優秀な人材を誘致するための制度について、同日から一部規定を変更した。高収入または高学歴の人材を誘致するスキーム「トップタレントパス」の対象を拡大したほか、高度な職業能力やスポーツ・芸術に優れた才能を持つ人材を誘致する「優秀人材入境計画(QMAS)」の審査基準を明確にした。政府は香港を「高度人材の国際ハブ」とする目標を掲げており、香港経済に貢献する人材を積極的に呼び込んでいく方針だ。
ジョブフェアに参加した政府の香港人材サービスオフィス(HKTE)。域外から来た人材と企業とのマッチングを支援した=2日、亜洲国際博覧館(香港政府提供)
トップタレントパスは、年収250万HKドル(約4,900万円)以上、または世界トップクラスの大学を卒業した人材に香港滞在査証(ビザ)を与える制度。このうち、学歴条件の対象となる大学数を13校増やして198校とした。
学歴条件は、英国のタイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)やクアクアレリ・シモンズ(QS)、中国の上海交通大学などが発表する世界大学ランキングで100位以内に入っていることが基本だが、上海交通大学版「中国大学ランキング」の上位校も対象となる。従来は同ランキングのトップ10としていた資格を20位まで広げ、四川大学、北京航空航天大学、東南大学など9校を加えた。
大学のランキングとは別に、専門性の高い学部の卒業生にも申請を認める。QSランキングの「アート&デザイン」部門で上位の英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート、英ロンドン芸術大学など4校が新たに対象となった。
年収250万HKドル以上の条件でトップタレントパスを申請する高所得者については、初回発給のビザ期間を2年から3年に延長する。学歴条件での申請者は従来通り、初回ビザは2年間で変わらない。
政府労働・福祉局の孫玉カン(クリス・スン、カン=くさかんむりに函)局長は2日に出演したラジオ番組で、所得条件を満たして申請する人は香港に来てからの就業率、起業率が高く、香港経済への貢献が大きいためだと説明した。既にトップタレントパスで2年間のビザを取得済みの高所得人材も、入境事務処(入境管理局)に申請すれば無条件でビザ期間が3年に延長される。
優秀人材入境計画は、年齢や語学能力、学歴、業務経験などを点数化して香港滞在ビザを与える制度。従来は制度設計が複雑で審査に時間がかかりすぎていたため、今後は申請者が自分でビザ取得の可能性を事前にある程度把握できる方式に改める。
具体的には◇50歳以下か◇条件を満たす大学の修士号または博士号を取得しているか◇2種類以上の言語の読み書き、会話ができるか◇学位に見合った業務経験があるか◇年収は100万HKドル以上か——など12項目の質問を用意。自己採点で6項目以上に当てはまる場合のみ、各項目の証明書類を添えて申請できる。
2日付信報、明報などによると労働・福祉局の関婉儀(アンジェリーナ・クワン)副秘書長は、従来の方式では審査の待ち時間が約9カ月と長くなってしまうため、ハイレベル人材の誘致に不利だったと説明。新方式なら審査時間を3カ月ほど短縮でき、6カ月程度で結果を出せるようになるとの見通しを示した。
■悪徳仲介を排除
香港が域外からの人材誘致を強化していることで、中国本土ではトップタレントパスなどのスキームを不正に利用して香港へ移住する方法を指南するビジネスが生まれているとされる。孫局長は2日に地元メディアと会見し「本土のインターネット上に『仲介』と称した多くの偽情報があることに留意している。申請者は偽情報を信じてはいけない」と述べた。
2022年に始まったトップタレントパスは、学歴条件で香港居住を認められた人たちの最初のビザ更新時期が近く到来する。香港で既に就職または起業するなど安定した収入を得て香港経済に貢献していることが条件だが、政府は悪徳業者が介在できないよう明確な審査基準を設定。納税記録などを確認し、不正な更新申請を防止するとしている。
今回のトップタレントパスと優秀人材入境計画の見直しは、政府トップの李家超(ジョン・リー)行政長官による先月の施政報告(施政方針演説に相当)を受けて行われた。李氏は香港を高度人材の国際ハブとする方針を掲げ、今後は優秀人材入境計画の対象となる人材を主体的にスカウトしていく考えも示している。
政府によると、世界中から人材を呼び込むための制度を強化した22年末以降、各種スキームの申請件数は38万件を超えた。うち24万件近くを認可し、約16万人とその家族が既に香港入りしたという。
object(WP_Post)#9817 (24) {
["ID"]=>
int(23040)
["post_author"]=>
string(1) "3"
["post_date"]=>
string(19) "2024-11-04 00:00:00"
["post_date_gmt"]=>
string(19) "2024-11-03 15:00:00"
["post_content"]=>
string(5991) "香港政府は1日、域外から優秀な人材を誘致するための制度について、同日から一部規定を変更した。高収入または高学歴の人材を誘致するスキーム「トップタレントパス」の対象を拡大したほか、高度な職業能力やスポーツ・芸術に優れた才能を持つ人材を誘致する「優秀人材入境計画(QMAS)」の審査基準を明確にした。政府は香港を「高度人材の国際ハブ」とする目標を掲げており、香港経済に貢献する人材を積極的に呼び込んでいく方針だ。[caption id="attachment_23041" align="aligncenter" width="620"]ジョブフェアに参加した政府の香港人材サービスオフィス(HKTE)。域外から来た人材と企業とのマッチングを支援した=2日、亜洲国際博覧館(香港政府提供)[/caption]
トップタレントパスは、年収250万HKドル(約4,900万円)以上、または世界トップクラスの大学を卒業した人材に香港滞在査証(ビザ)を与える制度。このうち、学歴条件の対象となる大学数を13校増やして198校とした。
学歴条件は、英国のタイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)やクアクアレリ・シモンズ(QS)、中国の上海交通大学などが発表する世界大学ランキングで100位以内に入っていることが基本だが、上海交通大学版「中国大学ランキング」の上位校も対象となる。従来は同ランキングのトップ10としていた資格を20位まで広げ、四川大学、北京航空航天大学、東南大学など9校を加えた。
大学のランキングとは別に、専門性の高い学部の卒業生にも申請を認める。QSランキングの「アート&デザイン」部門で上位の英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート、英ロンドン芸術大学など4校が新たに対象となった。
年収250万HKドル以上の条件でトップタレントパスを申請する高所得者については、初回発給のビザ期間を2年から3年に延長する。学歴条件での申請者は従来通り、初回ビザは2年間で変わらない。
政府労働・福祉局の孫玉カン(クリス・スン、カン=くさかんむりに函)局長は2日に出演したラジオ番組で、所得条件を満たして申請する人は香港に来てからの就業率、起業率が高く、香港経済への貢献が大きいためだと説明した。既にトップタレントパスで2年間のビザを取得済みの高所得人材も、入境事務処(入境管理局)に申請すれば無条件でビザ期間が3年に延長される。
優秀人材入境計画は、年齢や語学能力、学歴、業務経験などを点数化して香港滞在ビザを与える制度。従来は制度設計が複雑で審査に時間がかかりすぎていたため、今後は申請者が自分でビザ取得の可能性を事前にある程度把握できる方式に改める。
具体的には◇50歳以下か◇条件を満たす大学の修士号または博士号を取得しているか◇2種類以上の言語の読み書き、会話ができるか◇学位に見合った業務経験があるか◇年収は100万HKドル以上か——など12項目の質問を用意。自己採点で6項目以上に当てはまる場合のみ、各項目の証明書類を添えて申請できる。
2日付信報、明報などによると労働・福祉局の関婉儀(アンジェリーナ・クワン)副秘書長は、従来の方式では審査の待ち時間が約9カ月と長くなってしまうため、ハイレベル人材の誘致に不利だったと説明。新方式なら審査時間を3カ月ほど短縮でき、6カ月程度で結果を出せるようになるとの見通しを示した。
■悪徳仲介を排除
香港が域外からの人材誘致を強化していることで、中国本土ではトップタレントパスなどのスキームを不正に利用して香港へ移住する方法を指南するビジネスが生まれているとされる。孫局長は2日に地元メディアと会見し「本土のインターネット上に『仲介』と称した多くの偽情報があることに留意している。申請者は偽情報を信じてはいけない」と述べた。
2022年に始まったトップタレントパスは、学歴条件で香港居住を認められた人たちの最初のビザ更新時期が近く到来する。香港で既に就職または起業するなど安定した収入を得て香港経済に貢献していることが条件だが、政府は悪徳業者が介在できないよう明確な審査基準を設定。納税記録などを確認し、不正な更新申請を防止するとしている。
今回のトップタレントパスと優秀人材入境計画の見直しは、政府トップの李家超(ジョン・リー)行政長官による先月の施政報告(施政方針演説に相当)を受けて行われた。李氏は香港を高度人材の国際ハブとする方針を掲げ、今後は優秀人材入境計画の対象となる人材を主体的にスカウトしていく考えも示している。
政府によると、世界中から人材を呼び込むための制度を強化した22年末以降、各種スキームの申請件数は38万件を超えた。うち24万件近くを認可し、約16万人とその家族が既に香港入りしたという。"
["post_title"]=>
string(78) "高度人材の誘致制度を改善対象拡大、審査基準の明確化も"
["post_excerpt"]=>
string(0) ""
["post_status"]=>
string(7) "publish"
["comment_status"]=>
string(4) "open"
["ping_status"]=>
string(4) "open"
["post_password"]=>
string(0) ""
["post_name"]=>
string(198) "%e9%ab%98%e5%ba%a6%e4%ba%ba%e6%9d%90%e3%81%ae%e8%aa%98%e8%87%b4%e5%88%b6%e5%ba%a6%e3%82%92%e6%94%b9%e5%96%84%e5%af%be%e8%b1%a1%e6%8b%a1%e5%a4%a7%e3%80%81%e5%af%a9%e6%9f%bb%e5%9f%ba%e6%ba%96%e3%81%ae"
["to_ping"]=>
string(0) ""
["pinged"]=>
string(0) ""
["post_modified"]=>
string(19) "2024-11-04 04:00:09"
["post_modified_gmt"]=>
string(19) "2024-11-03 19:00:09"
["post_content_filtered"]=>
string(0) ""
["post_parent"]=>
int(0)
["guid"]=>
string(34) "https://nnaglobalnavi.com/?p=23040"
["menu_order"]=>
int(0)
["post_type"]=>
string(4) "post"
["post_mime_type"]=>
string(0) ""
["comment_count"]=>
string(1) "0"
["filter"]=>
string(3) "raw"
}
- 国・地域別
-
香港・マカオ情報
- 内容別
-
ビジネス全般人事労務