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テスラ、規制嫌い投資回避か米商議所報告書、政府に改善促す

米電気自動車(EV)大手テスラがインドネシアへの投資を見送ったのは、国内の投資規制の不確実性や地場企業との提携義務などを嫌ったためとみられることが3日、分かった。在インドネシア米国商工会議所(AmChamインドネシア)が発表した報告書の内容から判明した。これまで政府は国内のグリーン電力供給問題が投資回避の理由と説明してきた。報告書ではインドネシア政府のEVなどのハイテク産業向け投資誘致策に疑問が投げかけられたとして投資環境の改善を求めている。

インドネシア政府は、ジョコ・ウィドド大統領(当時、左)が2022年の訪米時にテスラのイーロン・マスクCEOを訪問するなどして投資誘致を図ってきたが実現していない=22年5月(大統領府提供)

AmChamインドネシアと全米商工会議所は11月下旬に米国のインドネシア投資に関する年次報告書を発行。同報告書は◇インドネシアの投資環境◇米インドネシアのビジネスパートナーシップ◇投資環境の主な課題◇政策提言——などをまとめている。
テスラに関しては投資環境の項目で触れ「インドネシアには魅力的な投資機会があるが、規制の不確実性、知的財産権の保護の問題、政府が継続的に実施している現地調達義務や地場企業との合弁義務などが、多くの重要な投資を阻んできた」と指摘した。
その上で、近隣諸国では雇用創出や技術移転を促すため外資100%の投資を認めているのに対して「インドネシアでは地場企業との提携を求められることから、テスラをはじめとする大型投資が実現しなかった」と述べた。
さらにAmChamインドネシアは報告書で「テスラが2023年に販売・サービス拠点の設置先としてマレーシアを選んだことは、インドネシアのハイテク産業誘致での競争力に重大な疑問を投げかけた」と指摘。マレーシア政府がテスラに対して100%の外資投資を認め、関税ゼロでの完成車(CBU)輸入を認めたことも、インドネシアへの投資見送りに影響したと述べた。

マレーシア政府はテスラに対してブミプトラ(マレー系と先住民系の総称)企業との提携なしに自動車の輸入許可を与える優遇措置を適用し、同社の進出を後押しした=23年7月(テスラ・マレーシア提供)

一方テスラは、マレーシアでは同国政府が推進するEV振興策「バッテリー式電気自動車(BEV)グローバル・リーダーズ・プログラム」の適用第1号となり、ブミプトラ(マレー系と先住民系の総称)企業との提携なしに自動車の輸入許可(AP)が付与された。これにより独自の自動車輸入販売を認められた。テスラ独自の急速充電器「スーパーチャージャー」の設置も進めている。
テスラの発表によると、マレーシアでは24年1月1日から25年12月31日まで関税ゼロでテスラ車の輸入が認められている。
一方、インドネシア政府によるテスラ誘致を巡っては、ジョコ・ウィドド前大統領が22年5月に訪米した際にテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)と投資協議するなど継続的に誘致をしてきた。だが、今年9月にロサン投資相(現投資・下流化相)が、テスラが投資を躊躇(ちゅうちょ)しているのは石炭などの化石燃料を主要なエネルギー源としているためだと説明するなど誘致は実現していない。
■下流化政策は投資誘致の代償
またAmChamインドネシアの報告書では、政府が掲げる30年までに電動バイク1,300万台、EV220万台普及させる目標に関して、未加工のニッケル鉱石の禁輸措置と国内の製錬所整備によるEVバッテリーの製造容量を拡大させることが前提だが「大きな代償を伴っている」とした。
製錬所への投資コストは高く国際的な鉱業会社が撤退しているほか、石炭火力発電所で発電した電力を使う製錬所は環境破壊につながると指摘。その上でEVやエネルギー産業の進展により、環境保護が強化されオープンな投資環境が実現するならインドネシアの優位性は発揮されるとの見方を示した。
ニッケル製錬所には中国企業が投資をしている一方、フランスの金属資源大手エラメットが今年6月、ドイツ化学大手BASFと共同で検討していた26億米ドル(約3,900億円)規模のニッケル・コバルト製錬所の建設計画の中止を発表した。
それでもプラボウォ・スビアント政権がEVバッテリー用のニッケル加工とステンレス鋼を中心とした下流化を推進しようとする姿勢は、投資省の投資・下流化省への改称にも反映されているとした。

■LFP電池の普及で再調整も
EVバッテリーを巡っては、コスト効率の高いリン酸鉄リチウム電池(LFP電池)への世界的な移行が予想されるため、ニッケル製錬事業への投資の再調整が求められるとも述べた。バッテリー用の製錬に注力するだけでなく、ステンレス鋼用のニッケル銑鉄の生産を拡大する方向にシフトする必要もあると指摘した。
テスラもセダン「モデル3」などでLFP電池を使用してきた。テスラ専門のニュースサイト、テスララティによると、米国では10月に中国製のLFP電池搭載のモデル3の販売を中止した。バイデン政権が中国製EVやEV用電池の関税を引き上げたためとみられる。一方、インドネシアでEV生産を計画する中国のEV最大手、比亜迪(BYD)のEVにもLFP電池が使われている。
AmChamインドネシアは報告書で投資環境に関する政策提言として◇国産化率(TKDN)認証手続きを含めた省庁での手続きの簡素化◇汚職の防止を含む公共部門の透明性強化◇予測可能な規制や法的契約を含む規制の確実性の担保——などを求めた。
同報告書によると、14~23年の米企業のインドネシアへの総投資額は約670億米ドルで、経済生産高への貢献は1,300億米ドル規模に上る。産業別の投資では鉱業が8割超を占めるが、近年はデジタル分野や人材育成事業への投資が拡大している。
こうした中、地元メディアは産業省のファイソル副大臣が11月28日に米フォード・モーターが来年にインドネシアにEV工場を建設する計画を明らかにしたと伝えた。AmChamインドネシアの報告書からは米企業のインドネシアでのEV投資に慎重な姿勢がうかがえるため、実現するかどうか注視する必要がありそうだ。

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さらにAmChamインドネシアは報告書で「テスラが2023年に販売・サービス拠点の設置先としてマレーシアを選んだことは、インドネシアのハイテク産業誘致での競争力に重大な疑問を投げかけた」と指摘。マレーシア政府がテスラに対して100%の外資投資を認め、関税ゼロでの完成車(CBU)輸入を認めたことも、インドネシアへの投資見送りに影響したと述べた。
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テスラの発表によると、マレーシアでは24年1月1日から25年12月31日まで関税ゼロでテスラ車の輸入が認められている。
一方、インドネシア政府によるテスラ誘致を巡っては、ジョコ・ウィドド前大統領が22年5月に訪米した際にテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)と投資協議するなど継続的に誘致をしてきた。だが、今年9月にロサン投資相(現投資・下流化相)が、テスラが投資を躊躇(ちゅうちょ)しているのは石炭などの化石燃料を主要なエネルギー源としているためだと説明するなど誘致は実現していない。
■下流化政策は投資誘致の代償
またAmChamインドネシアの報告書では、政府が掲げる30年までに電動バイク1,300万台、EV220万台普及させる目標に関して、未加工のニッケル鉱石の禁輸措置と国内の製錬所整備によるEVバッテリーの製造容量を拡大させることが前提だが「大きな代償を伴っている」とした。
製錬所への投資コストは高く国際的な鉱業会社が撤退しているほか、石炭火力発電所で発電した電力を使う製錬所は環境破壊につながると指摘。その上でEVやエネルギー産業の進展により、環境保護が強化されオープンな投資環境が実現するならインドネシアの優位性は発揮されるとの見方を示した。
ニッケル製錬所には中国企業が投資をしている一方、フランスの金属資源大手エラメットが今年6月、ドイツ化学大手BASFと共同で検討していた26億米ドル(約3,900億円)規模のニッケル・コバルト製錬所の建設計画の中止を発表した。
それでもプラボウォ・スビアント政権がEVバッテリー用のニッケル加工とステンレス鋼を中心とした下流化を推進しようとする姿勢は、投資省の投資・下流化省への改称にも反映されているとした。

■LFP電池の普及で再調整も
EVバッテリーを巡っては、コスト効率の高いリン酸鉄リチウム電池(LFP電池)への世界的な移行が予想されるため、ニッケル製錬事業への投資の再調整が求められるとも述べた。バッテリー用の製錬に注力するだけでなく、ステンレス鋼用のニッケル銑鉄の生産を拡大する方向にシフトする必要もあると指摘した。
テスラもセダン「モデル3」などでLFP電池を使用してきた。テスラ専門のニュースサイト、テスララティによると、米国では10月に中国製のLFP電池搭載のモデル3の販売を中止した。バイデン政権が中国製EVやEV用電池の関税を引き上げたためとみられる。一方、インドネシアでEV生産を計画する中国のEV最大手、比亜迪(BYD)のEVにもLFP電池が使われている。
AmChamインドネシアは報告書で投資環境に関する政策提言として◇国産化率(TKDN)認証手続きを含めた省庁での手続きの簡素化◇汚職の防止を含む公共部門の透明性強化◇予測可能な規制や法的契約を含む規制の確実性の担保——などを求めた。
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