パナソニックホールディングス(HD)傘下のパナソニックエレクトリックワークスが東南アジア諸国連合(ASEAN)電設資材市場を深耕する。経済成長著しく、住宅着工件数の増加が見込めるASEANの旺盛な需要を取り込む。トルコ、インドと並んで同社が重要拠点と位置付けるベトナムでは第2生産棟(新棟)が2024年から本格稼働。30年までに生産能力を現在の1.8倍に拡大することを目指す。
24年に稼働した第2生産棟(ビンズオン省)
コンセントやスイッチといった配線器具やブレーカーなどの電設資材の製造販売などを手がけるパナソニックエレクトリックワークスは、パナソニックグループ全体の売上高の12%、調整後営業利益の17%を占める。車載機器や白物家電と比べて派手さはないが、グループへの貢献度は高い。
主力の配線器具では日本でシェア80%以上を占めるものの、住宅着工件数減に伴う需要減の見通しから、海外事業にも力を入れてきた。18~23年の配線器具の海外での売り上げは年率7.8%で成長。ASEANでは、ベトナム、タイ、インドネシアの配線器具市場でシェアトップだ。中でも、20~30代が多く今後も安定的な経済成長が見込めるベトナムは重点国との位置付けだ。
ベトナムは13年、11年にタイで発生した大洪水による被害を受け、BCP(事業継続計画)対策の一環として南部ビンズオン省に製造拠点を設けた。工場長の内藤吉洋氏によると、稼働から6~7年後には品質の水準はタイ工場のレベルに達したという。
ベトナム工場の配線器具の月産能力は900万台。現在の工場の稼働率は85~90%ほど。24年に新棟を稼働したことで、30年までに1,600万台まで増強可能な体制が整った。
工場の自動化にも力を入れており、22年度に42%だった自動化率を25年までには90%に引き上げる。商品用の部品のほか、設備や金型の内製化も推進する。ベトナムで商品の企画開発から評価、製造できる体制も整え、ベトナムのニーズに合った商品を投入していく。ベトナムでは配線器具のほか、ブレーカーや室内空気質関連機器(ファン)も製造している。
販売面では、1994年の進出以来、地場のディストリビューターであるナノコグループと二人三脚で市場を開拓してきた。ナノコはベトナム全土に21の倉庫を設置するなど、隅々にまで張り巡らせた強固な販売網が強みだ。
パナソニックエレクトリックワークスのベトナムの配線器具市場でのシェアは約5割。2023年の売上高222億円のうち、配線器具とブレーカーを合わせた電設資材が全体の54%(121億円)を占める。ファンは42%、照明が3.8%だ。
パナソニックエレクトリックワークスベトナムの坂部正司社長は30年までの電設資材の売上高について「23年度比1.7倍の2兆9,000億ドン(約176億円)の達成を目指す」と強気だ。
ベカメックス東急が建設した分譲マンションに収められたパナソニックの製品(同省)
パナソニックエレクトリックワークスベトナムは現在、東急のベトナム子会社、ベカメックス東急がビンズオン省ビンズオン新都市で進めている街づくりに参画。ベカメックス東急が建設した分譲マンションに自社の電設資材を納入するなど、自社での販路拡大にも力を入れている。
■ラオス、カンボジア進出を準備
パナソニックエレクトリックワークスはベトナム国内での地産地消を強化しながら、ベトナム工場をASEANの新興国向けの輸出拠点としても活用していく考え。ナノコはすでにカンボジアに支店を構えており、ブレーカーを販売する準備を進めている。今後はラオスへの進出も視野に入れる。
ベトナム工場のブレーカーの月産能力は110万台。能力を維持しながらも、今後は中国工場からの輸入で充てている量を内製に切り替えるなどラインアップの拡充に力を入れていく。
日本向けのコンパクトブレーカーを組み立てる工員
フィリピン向けの配線器具は現在、タイ工場から出荷している。タイ工場の月産能力は1,000万台と、現在のベトナム工場を上回る規模に加え、技術力の高さから、小ロット・多品種に対応できるのが強みだという。
パナソニックエレクトリックワークスはインドネシアにも、現地法人のパナソニック・ゴーベルLS製造インドネシアを通じて配線器具の製造拠点を持つ。インドネシア工場の月産能力は800万台。今後も開発と製造、販売が一体となり、シェアトップを維持していく考えだ。
パナソニックエレクトリックワークスはベトナムのほか、インドとトルコも重要拠点と位置付ける。特に住宅建設市場が拡大しているインドでは、南部チェンナイ近郊の配線器具工場の増強を進めている。中東・アフリカ、南アジア諸国に対応する輸出拠点とすることを視野に、インド全体の年産能力を現在の6億個から30年までに10億個に高める計画だ。
■中国勢が脅威に
将来に向けた布石を打っているパナソニックエレクトリックワークスだが、一方で中国企業による脅威が確実に高まっている。フィリピン市場ではシェア3位と苦戦。中国の不動産・建設市場が足元で低迷していることから、今後は中国企業がベトナム市場を脅かしてくる恐れがある。
ナノコグループのルーン・リュク・ヴァン最高経営責任者(CEO)は中国企業について「現地への適応スピードが速い」と分析しており、警戒心を隠さない。タイでは、中国の電気自動車(EV)が日系自動車メーカーのシェアを侵食し始めている。
パナソニックエレクトリックワークスが中国企業の脅威をはねのけてシェアを維持・拡大させていくためには、これまで以上の経営のスピードと新商品の開発力の向上が求められている。
記者の質問に答える坂部社長(左)とヴァンCEO
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主力の配線器具では日本でシェア80%以上を占めるものの、住宅着工件数減に伴う需要減の見通しから、海外事業にも力を入れてきた。18~23年の配線器具の海外での売り上げは年率7.8%で成長。ASEANでは、ベトナム、タイ、インドネシアの配線器具市場でシェアトップだ。中でも、20~30代が多く今後も安定的な経済成長が見込めるベトナムは重点国との位置付けだ。
ベトナムは13年、11年にタイで発生した大洪水による被害を受け、BCP(事業継続計画)対策の一環として南部ビンズオン省に製造拠点を設けた。工場長の内藤吉洋氏によると、稼働から6~7年後には品質の水準はタイ工場のレベルに達したという。
ベトナム工場の配線器具の月産能力は900万台。現在の工場の稼働率は85~90%ほど。24年に新棟を稼働したことで、30年までに1,600万台まで増強可能な体制が整った。
工場の自動化にも力を入れており、22年度に42%だった自動化率を25年までには90%に引き上げる。商品用の部品のほか、設備や金型の内製化も推進する。ベトナムで商品の企画開発から評価、製造できる体制も整え、ベトナムのニーズに合った商品を投入していく。ベトナムでは配線器具のほか、ブレーカーや室内空気質関連機器(ファン)も製造している。
販売面では、1994年の進出以来、地場のディストリビューターであるナノコグループと二人三脚で市場を開拓してきた。ナノコはベトナム全土に21の倉庫を設置するなど、隅々にまで張り巡らせた強固な販売網が強みだ。
パナソニックエレクトリックワークスのベトナムの配線器具市場でのシェアは約5割。2023年の売上高222億円のうち、配線器具とブレーカーを合わせた電設資材が全体の54%(121億円)を占める。ファンは42%、照明が3.8%だ。
パナソニックエレクトリックワークスベトナムの坂部正司社長は30年までの電設資材の売上高について「23年度比1.7倍の2兆9,000億ドン(約176億円)の達成を目指す」と強気だ。
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■ラオス、カンボジア進出を準備
パナソニックエレクトリックワークスはベトナム国内での地産地消を強化しながら、ベトナム工場をASEANの新興国向けの輸出拠点としても活用していく考え。ナノコはすでにカンボジアに支店を構えており、ブレーカーを販売する準備を進めている。今後はラオスへの進出も視野に入れる。
ベトナム工場のブレーカーの月産能力は110万台。能力を維持しながらも、今後は中国工場からの輸入で充てている量を内製に切り替えるなどラインアップの拡充に力を入れていく。
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日本向けのコンパクトブレーカーを組み立てる工員[/caption]
フィリピン向けの配線器具は現在、タイ工場から出荷している。タイ工場の月産能力は1,000万台と、現在のベトナム工場を上回る規模に加え、技術力の高さから、小ロット・多品種に対応できるのが強みだという。
パナソニックエレクトリックワークスはインドネシアにも、現地法人のパナソニック・ゴーベルLS製造インドネシアを通じて配線器具の製造拠点を持つ。インドネシア工場の月産能力は800万台。今後も開発と製造、販売が一体となり、シェアトップを維持していく考えだ。
パナソニックエレクトリックワークスはベトナムのほか、インドとトルコも重要拠点と位置付ける。特に住宅建設市場が拡大しているインドでは、南部チェンナイ近郊の配線器具工場の増強を進めている。中東・アフリカ、南アジア諸国に対応する輸出拠点とすることを視野に、インド全体の年産能力を現在の6億個から30年までに10億個に高める計画だ。
■中国勢が脅威に
将来に向けた布石を打っているパナソニックエレクトリックワークスだが、一方で中国企業による脅威が確実に高まっている。フィリピン市場ではシェア3位と苦戦。中国の不動産・建設市場が足元で低迷していることから、今後は中国企業がベトナム市場を脅かしてくる恐れがある。
ナノコグループのルーン・リュク・ヴァン最高経営責任者(CEO)は中国企業について「現地への適応スピードが速い」と分析しており、警戒心を隠さない。タイでは、中国の電気自動車(EV)が日系自動車メーカーのシェアを侵食し始めている。
パナソニックエレクトリックワークスが中国企業の脅威をはねのけてシェアを維持・拡大させていくためには、これまで以上の経営のスピードと新商品の開発力の向上が求められている。
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