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車載デバイスの研究開発強化地場ベタメック、ス州に施設開設

自動車産業向けのODM(相手先ブランドによる設計・生産)とEMS(電子機器の受託製造サービス)を手がけるマレーシアのベタメックは3日、首都圏スランゴール州ラワンに設けた研究開発(R&D)センターの開所式を開いた。自動車産業で電動化が進む中、東南アジア諸国連合(ASEAN)で自動車の研究開発の中核拠点を目指す国策に沿い、最先端の車載デバイスの開発・製造を目指す。

ベタメックはR&Dセンターを開設した=3日、スランゴール州(NNA撮影)

R&Dセンターは、ベタメックが本社を構えるラワン工業団地に位置する。会議室やオーディトリアム(講堂)のほか、研究室、試験室などを設置。現在、エンジニア30人が勤務し、自動車に搭載されるテレマティクス(移動体通信システムを利用した情報提供サービス)システムや先進運転支援システム(ADAS)、モノのインターネット(IoT)を活用したコネクテッドモビリティーソリューション、スマートコックピット(運転席周りの各種機能をデジタル制御する技術)などの研究開発を進める。
マハティール元首相の長男で、ベタメックの社長を務めるミルザン・マハティール氏は、R&Dセンターの開所式後の記者会見で、「ベタメックの事業で研究開発が占める割合はこれまで小さかったが、より革新的な車載デバイスを開発するため、今後は研究開発に注力していく」と説明。中国企業のほか、タイ、ベトナム、インドネシアといった東南アジア諸国の企業とも連携していく方針を示した。
ベタメックは昨年3月、全額出資子会社ベタメック・リサーチを通じて、中国の車載デバイスメーカーの深セン市衆鴻科技と提携した。ミルザン氏は「中国企業から技術移転を受けるだけではなく、自社の技術や製品を創出することを目指す」とした。
ベタメックは現在、生産した車載デバイスの9割を国民車メーカーのプロドゥアに供給し、プロドゥアに出資するダイハツ工業のインドネシア拠点にも一部供給しているという。プロドゥアは、年内の発売を目指して自社初の電気自動車(EV)の開発を進めており、電子部品や電子機器の需要拡大が見込まれる。

開所式には、ザフルル投資貿易産業相(右から2人目)も出席した=3日、スランゴール州(NNA撮影)

開所式に出席したザフルル・アブドゥル・アジズ投資貿易産業相は、2月28日にジョホール州デサルで開いたASEANの非公式の経済相会合で、全ての出席者が域内のEV政策を推進していくことで合意したと説明。「ベタメックのR&Dセンター開設は単に同社が新たな局面を迎えただけではなく、マレーシアがハイテクかつ付加価値経済に移行するための大きな一歩となる」と期待を示した。
■対象分野を拡大へ

R&Dセンター内で記者会見に臨むベタメックのミルザン社長(右)とファウジ・エグゼクティブディレクター=3日、スランゴール州(NNA撮影)

ベタメックは昨年6月、製造請負や研究開発の受託、人材派遣などアウトソーシング事業を手がけるアウトソーシング(東京都千代田区)から、カーオーディオ製品や電子部品の製造を手がけるマレーシア子会社サンシンマレーシアの全株式を取得し、完全子会社化した。
ベタメックのファウジ・ガニ・エグゼクティブディレクターによると、サンシンマレーシアは生産した製品の約6割を日本に輸出している。ファウジ氏は、サンシンマレーシアが自動車向け以外の電子部品も製造していることに言及。「特に医療機器用の電子部品は需要があるとみている」と話し、今回開設したR&Dセンターで自動車向け以外の電子部品の研究開発も進めていく計画を明らかにした。
<メモ>
ベタメック
1989年にカーオーディオシステムの製造会社として設立され、94年にプロドゥアへの供給を開始。ラワン工業団地に構える本社工場の従業員数は約400人で、全員がマレーシア国籍の地元人材という。2022年にマレーシア証券取引所(ブルサ・マレーシア)の新興企業向け市場エース(ACE)に上場した。

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マハティール元首相の長男で、ベタメックの社長を務めるミルザン・マハティール氏は、R&Dセンターの開所式後の記者会見で、「ベタメックの事業で研究開発が占める割合はこれまで小さかったが、より革新的な車載デバイスを開発するため、今後は研究開発に注力していく」と説明。中国企業のほか、タイ、ベトナム、インドネシアといった東南アジア諸国の企業とも連携していく方針を示した。
ベタメックは昨年3月、全額出資子会社ベタメック・リサーチを通じて、中国の車載デバイスメーカーの深セン市衆鴻科技と提携した。ミルザン氏は「中国企業から技術移転を受けるだけではなく、自社の技術や製品を創出することを目指す」とした。
ベタメックは現在、生産した車載デバイスの9割を国民車メーカーのプロドゥアに供給し、プロドゥアに出資するダイハツ工業のインドネシア拠点にも一部供給しているという。プロドゥアは、年内の発売を目指して自社初の電気自動車(EV)の開発を進めており、電子部品や電子機器の需要拡大が見込まれる。
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開所式に出席したザフルル・アブドゥル・アジズ投資貿易産業相は、2月28日にジョホール州デサルで開いたASEANの非公式の経済相会合で、全ての出席者が域内のEV政策を推進していくことで合意したと説明。「ベタメックのR&Dセンター開設は単に同社が新たな局面を迎えただけではなく、マレーシアがハイテクかつ付加価値経済に移行するための大きな一歩となる」と期待を示した。
■対象分野を拡大へ
[caption id="attachment_25110" align="aligncenter" width="620"]R&Dセンター内で記者会見に臨むベタメックのミルザン社長(右)とファウジ・エグゼクティブディレクター=3日、スランゴール州(NNA撮影)[/caption]
ベタメックは昨年6月、製造請負や研究開発の受託、人材派遣などアウトソーシング事業を手がけるアウトソーシング(東京都千代田区)から、カーオーディオ製品や電子部品の製造を手がけるマレーシア子会社サンシンマレーシアの全株式を取得し、完全子会社化した。
ベタメックのファウジ・ガニ・エグゼクティブディレクターによると、サンシンマレーシアは生産した製品の約6割を日本に輸出している。ファウジ氏は、サンシンマレーシアが自動車向け以外の電子部品も製造していることに言及。「特に医療機器用の電子部品は需要があるとみている」と話し、今回開設したR&Dセンターで自動車向け以外の電子部品の研究開発も進めていく計画を明らかにした。
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ベタメック
1989年にカーオーディオシステムの製造会社として設立され、94年にプロドゥアへの供給を開始。ラワン工業団地に構える本社工場の従業員数は約400人で、全員がマレーシア国籍の地元人材という。2022年にマレーシア証券取引所(ブルサ・マレーシア)の新興企業向け市場エース(ACE)に上場した。" ["post_title"]=> string(84) "車載デバイスの研究開発強化地場ベタメック、ス州に施設開設" ["post_excerpt"]=> string(0) "" ["post_status"]=> string(7) "publish" ["comment_status"]=> string(4) "open" ["ping_status"]=> string(4) "open" ["post_password"]=> string(0) "" ["post_name"]=> string(198) "%e8%bb%8a%e8%bc%89%e3%83%87%e3%83%90%e3%82%a4%e3%82%b9%e3%81%ae%e7%a0%94%e7%a9%b6%e9%96%8b%e7%99%ba%e5%bc%b7%e5%8c%96%e5%9c%b0%e5%a0%b4%e3%83%99%e3%82%bf%e3%83%a1%e3%83%83%e3%82%af%e3%80%81%e3%82%b9" ["to_ping"]=> string(0) "" ["pinged"]=> string(0) "" ["post_modified"]=> string(19) "2025-03-04 04:00:04" ["post_modified_gmt"]=> string(19) "2025-03-03 19:00:04" ["post_content_filtered"]=> string(0) "" ["post_parent"]=> int(0) ["guid"]=> string(34) "https://nnaglobalnavi.com/?p=25107" ["menu_order"]=> int(0) ["post_type"]=> string(4) "post" ["post_mime_type"]=> string(0) "" ["comment_count"]=> string(1) "0" ["filter"]=> string(3) "raw" }
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