韓国政府は9日、トランプ米政権が発動した自動車関税から自国産業を守るために2兆ウォン(約1,970億円)規模の追加支援策を打ち出した。すでに発表した13兆ウォンの資金繰り支援策や完成車大手の現代自動車・起亜と連携した1兆ウォンの支援と合わせ、計16兆ウォンに拡大する。電気自動車(EV)の補助金も拡大し、輸出減少に備えた内需促進を目指す。次期大統領が決まるまでトップ不在が続く中、手厚い支援で主力産業の自動車をバックアップしていく考えだ。
米国政府が、韓国に対して課すと発表した自動車関税は25%。完成車については3日に発動され、自動車部品は5月3日までに施行日を明らかにするとしている。産業通商資源省は「国内の自動車産業に相当な衝撃が予想される」と憂慮しており、その被害を最小限に抑えることにフォーカスを合わせた。
■車業界への支援16兆ウォン規模に
自動車・部品分野に対する政策ローンはすでに13兆ウォンが計画されているが、これに2兆ウォンを上乗せする。米国の関税措置により企業の流動性が低下するリスクを軽減する狙いがある。中小企業を対象にした経営安定化のための資金支援を増やすほか、法人税や所得税などの納付期限の延長といった税制面での支援も厚くする。政策ローンの額は企業の需要などを見て、さらなる追加も検討するという。
また、現代自・起亜も中小企業に対する支援に賛同し、銀行などの金融業界と連携して1兆ウォン規模の支援プログラムを運営する計画だ。
韓国にとって米国は、中国に次いで2番目に大きい貿易相手国であり、中でも自動車は最大の輸出先だ。2024年の自動車の対米輸出額は347億米ドル(約5兆410億円)、自動車輸出額全体の49%を占めた。自動車部品も82億米ドルに上った。
現代自や起亜など韓国の自動車メーカーは、米国国内での生産に向けた準備を進めているが、現状で世界の完成車メーカーと比べて米国内での生産規模は小さいのが実情だ。これまでは米韓自由貿易協定(FTA)で高い価格競争力を確保できたが、トランプ大統領の関税政策で好調な輸出にブレーキがかかる恐れがある。
聯合ニュースによると、25%の関税によって対米自動車輸出額は約65億米ドル減少し、完成車メーカーの営業利益の減少幅は計10兆ウォンに上るという分析もある。
■内需拡大に向けEV補助金を増額へ
輸出減少に伴う企業の売り上げへの影響を抑えるため、EVの割引販売に応じた補助金額の拡大や完成車の購入時にかかる個別消費税の減税措置の延長を決めた。
韓国政府は通常のEV補助金に加え、メーカーが割引販売を行った場合に支給する追加補助金制度を運営している。販売価格が4,500万~5,300万ウォンのEVについて割引幅に応じて割引価格の20~40%を支給してきたが、これを30~80%に拡大する。さらに、上半期で終了予定だった自動車の購入時にかかる個別消費税の減税措置(5%から3.5%)も延長する。
自動車の割り引き分を政府が支援することで消費者を購入に誘導し、完成車メーカーの輸出減少分を少しでも内需で補うという戦略のようだ。EVの補助金制度の拡大は、メーカーにとってEVが付加価値の高い車両であることが背景にあるとみられる。
ただ、韓国メーカーの24年の国内販売台数(162万5,848台)は輸出台数(278万2,639台)の6割水準にとどまる。加えて、輸出台数は増加傾向なのに対して国内販売は下り坂で、昨年はルノーコリアを除く全ての国産車メーカーが23年実績を下回った。EV補助金の拡大がどれだけ内需促進につながるかは不透明だ。
韓国政府はアラブ首長国連邦(UAE)やエクアドルなど交渉が妥結済みのFTAを早期発効し、米国以外の輸出先拡大にも取り組む。メキシコとのFTA交渉再開も推進する。
■大統領決定まで交渉は困難か
韓国は尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の罷免に伴い、6月3日に大統領選挙が実施されることになった。韓国政府は関税措置の撤廃・縮小に向けた交渉も並行する構えだが、トップ不在の状況では効果的な交渉は難しいとみられている。そのため、国内産業への支援を手厚くすることが最適と判断し、追加の支援策を打ち出すことに至ったもようだ。
産業通商資源省の朴同一(パク・ドンイル)製造産業政策局長は「今回の対策を通じ、利害関係者と協調して米関税の被害状況のモニタリングを強化し、必要な時期に必要な支援を行えるよう尽力する」と述べた。
米国の関税は自動車分野にとどまらないため、韓国政府は追加補正予算の早期確定も目指す構えだ。

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自動車・部品分野に対する政策ローンはすでに13兆ウォンが計画されているが、これに2兆ウォンを上乗せする。米国の関税措置により企業の流動性が低下するリスクを軽減する狙いがある。中小企業を対象にした経営安定化のための資金支援を増やすほか、法人税や所得税などの納付期限の延長といった税制面での支援も厚くする。政策ローンの額は企業の需要などを見て、さらなる追加も検討するという。
また、現代自・起亜も中小企業に対する支援に賛同し、銀行などの金融業界と連携して1兆ウォン規模の支援プログラムを運営する計画だ。
韓国にとって米国は、中国に次いで2番目に大きい貿易相手国であり、中でも自動車は最大の輸出先だ。2024年の自動車の対米輸出額は347億米ドル(約5兆410億円)、自動車輸出額全体の49%を占めた。自動車部品も82億米ドルに上った。
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聯合ニュースによると、25%の関税によって対米自動車輸出額は約65億米ドル減少し、完成車メーカーの営業利益の減少幅は計10兆ウォンに上るという分析もある。
■内需拡大に向けEV補助金を増額へ
輸出減少に伴う企業の売り上げへの影響を抑えるため、EVの割引販売に応じた補助金額の拡大や完成車の購入時にかかる個別消費税の減税措置の延長を決めた。
韓国政府は通常のEV補助金に加え、メーカーが割引販売を行った場合に支給する追加補助金制度を運営している。販売価格が4,500万~5,300万ウォンのEVについて割引幅に応じて割引価格の20~40%を支給してきたが、これを30~80%に拡大する。さらに、上半期で終了予定だった自動車の購入時にかかる個別消費税の減税措置(5%から3.5%)も延長する。
自動車の割り引き分を政府が支援することで消費者を購入に誘導し、完成車メーカーの輸出減少分を少しでも内需で補うという戦略のようだ。EVの補助金制度の拡大は、メーカーにとってEVが付加価値の高い車両であることが背景にあるとみられる。
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韓国政府はアラブ首長国連邦(UAE)やエクアドルなど交渉が妥結済みのFTAを早期発効し、米国以外の輸出先拡大にも取り組む。メキシコとのFTA交渉再開も推進する。
■大統領決定まで交渉は困難か
韓国は尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の罷免に伴い、6月3日に大統領選挙が実施されることになった。韓国政府は関税措置の撤廃・縮小に向けた交渉も並行する構えだが、トップ不在の状況では効果的な交渉は難しいとみられている。そのため、国内産業への支援を手厚くすることが最適と判断し、追加の支援策を打ち出すことに至ったもようだ。
産業通商資源省の朴同一(パク・ドンイル)製造産業政策局長は「今回の対策を通じ、利害関係者と協調して米関税の被害状況のモニタリングを強化し、必要な時期に必要な支援を行えるよう尽力する」と述べた。
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