2021年12月31日に、「財政部・国家税務総局より、外国籍個人の手当等に関する優遇政策延長実施に関する公告(財政部・国家税務総局2021年第43号)」・「一年一回賞与の個人所得税優遇政策延長実施の公告(財政部・税務総局)2021年第42号」」が公布されています。
1.公告の趣旨
① 財政部・国家税務総局2021年第43号
中国では、2000年代に入り、内外資の税制統合が進められてきましたが、個人所得税法は、外国人に対する優遇が、最近まで残っていました。
これが、基礎控除(中国公民3,500元/月次、外国人4,800元/月次)と、国税発[1997]54号に定めるフリンジベネフィットに関する免税措置ですが、2019年1月1日の個人所得税法改定に際して、基礎控除は年間6万元(月次平均5,000元)に統合され、国税発[1997]54号は廃止となりました。
但し、国税発[1997]54号に定めるフリンジベネフィット免税は、経過措置(財税[2018]164号)として、2年間の延長が認められていましたが(2021年末迄)、財政部・国家税務総局2021年第43号により、更に2年間の延長(2023年末迄)が認められたものです。
② 財政部・税務総局2021年第42号
この公告は、年一回賞与の課税特例措置(外国人、中国公民共に対象となる)に関するものですが、これもやはり、2023年末まで延長が認められました(ストックオプションに関する優遇付いては2022年末迄)。
2.優遇措置延長の影響
① 財政部・国家税務総局2021年第43号
国税発[1997]054号は、外国籍社員が取得する以下のフリンジベネフィットに対して、個人所得税課税を免除するものです。
● 現物支給もしくは実費精算方式で取得する住宅手当、食費手当、引越費用、クリーニング費用、合理的基準に従い取得する国内外出張手当、帰省費用(年2回以内)、語学訓練費用(本人のみ)、子女教育費
但し、2019年の個人所得税法改定により、特別付加控除(子女教育、継続教育、大病医療、住宅ローン金利、住宅家賃、老人扶養)が認められたことから、内容が重複する、住宅手当、子女教育費、語学研修費に関する優遇の打ち切り方針が決定しました。但し、影響の大きさを考慮し、財税[2018]164号により、2年間の延長が認められていましたが、経過措置の打ち切りに際して、更に2年の延長が認められました。
特別付加控除よりも、国税発[1997]54号に定める優遇の方が有利であるため、この延長は、外国人納税者にとっては有難い事です。
② 財政部・税務総局2021年第42号
改定前の個人所得税法では、課税単位が月次であったため、超過累進課税の下では、賞与支給月に過大な課税(年間に均したよりも高額な課税)を受ける事になっていました。
この負担を軽減するために、国税発[2005]9号により、年1回の賞与(年に複数回支払われる場合は、その内の1回)は、軽減税率での課税が認められていましたが、この措置も、居住者に限定して2年間延長されました(2023年末まで)。
この影響ですが、居住者に関しては、現在の所得税法では、既に課税単位が年間になっているため、以前の様な月次の税額不均衡は、確定申告で調整できます(過払いの部分は還付申告ができる)。更には、月次の源泉徴収時には、年度の所得表を使用する事から、低い税率から課税がスタートするため、優遇措置を使わなくても、賞与支給月の影響は軽微と言えます(年初では低い税率から課税が開始され、徐々にテールヘビーになっていく、納税者に有利な源泉徴収方法が採用される)。
この様な理由により、本優遇は、打ち切られても納税者にとって重要な影響はないと言えますが、優遇継続により一定のメリットは有ります。
これは、優遇継続期間中は、「賞与を総合所得(給与・労務報酬・原稿料・フランチャイズ所得)の一部として計算し確定申告する方法」と、「年一回賞与は、総合所得と合算せず、個別に税額を確定させる方法」の選択が認められるためです。
後者の方法を採用すれば、賞与を12で割った金額で算定した税率で確定します。
尚、本優遇は、居住者に限定して延長されていますが、非居住者に対しては、財政部・税務総局2019年第35号により、別の課税軽減措置が認められています。
執筆日:2022年2月8日
object(WP_Post)#9817 (24) {
["ID"]=>
int(4659)
["post_author"]=>
string(1) "5"
["post_date"]=>
string(19) "2022-02-09 15:01:22"
["post_date_gmt"]=>
string(19) "2022-02-09 06:01:22"
["post_content"]=>
string(5351) "2021年12月31日に、「財政部・国家税務総局より、外国籍個人の手当等に関する優遇政策延長実施に関する公告(財政部・国家税務総局2021年第43号)」・「一年一回賞与の個人所得税優遇政策延長実施の公告(財政部・税務総局)2021年第42号」」が公布されています。
1.公告の趣旨
① 財政部・国家税務総局2021年第43号
中国では、2000年代に入り、内外資の税制統合が進められてきましたが、個人所得税法は、外国人に対する優遇が、最近まで残っていました。
これが、基礎控除(中国公民3,500元/月次、外国人4,800元/月次)と、国税発[1997]54号に定めるフリンジベネフィットに関する免税措置ですが、2019年1月1日の個人所得税法改定に際して、基礎控除は年間6万元(月次平均5,000元)に統合され、国税発[1997]54号は廃止となりました。
但し、国税発[1997]54号に定めるフリンジベネフィット免税は、経過措置(財税[2018]164号)として、2年間の延長が認められていましたが(2021年末迄)、財政部・国家税務総局2021年第43号により、更に2年間の延長(2023年末迄)が認められたものです。
② 財政部・税務総局2021年第42号
この公告は、年一回賞与の課税特例措置(外国人、中国公民共に対象となる)に関するものですが、これもやはり、2023年末まで延長が認められました(ストックオプションに関する優遇付いては2022年末迄)。
2.優遇措置延長の影響
① 財政部・国家税務総局2021年第43号
国税発[1997]054号は、外国籍社員が取得する以下のフリンジベネフィットに対して、個人所得税課税を免除するものです。
● 現物支給もしくは実費精算方式で取得する住宅手当、食費手当、引越費用、クリーニング費用、合理的基準に従い取得する国内外出張手当、帰省費用(年2回以内)、語学訓練費用(本人のみ)、子女教育費
但し、2019年の個人所得税法改定により、特別付加控除(子女教育、継続教育、大病医療、住宅ローン金利、住宅家賃、老人扶養)が認められたことから、内容が重複する、住宅手当、子女教育費、語学研修費に関する優遇の打ち切り方針が決定しました。但し、影響の大きさを考慮し、財税[2018]164号により、2年間の延長が認められていましたが、経過措置の打ち切りに際して、更に2年の延長が認められました。
特別付加控除よりも、国税発[1997]54号に定める優遇の方が有利であるため、この延長は、外国人納税者にとっては有難い事です。
② 財政部・税務総局2021年第42号
改定前の個人所得税法では、課税単位が月次であったため、超過累進課税の下では、賞与支給月に過大な課税(年間に均したよりも高額な課税)を受ける事になっていました。
この負担を軽減するために、国税発[2005]9号により、年1回の賞与(年に複数回支払われる場合は、その内の1回)は、軽減税率での課税が認められていましたが、この措置も、居住者に限定して2年間延長されました(2023年末まで)。
この影響ですが、居住者に関しては、現在の所得税法では、既に課税単位が年間になっているため、以前の様な月次の税額不均衡は、確定申告で調整できます(過払いの部分は還付申告ができる)。更には、月次の源泉徴収時には、年度の所得表を使用する事から、低い税率から課税がスタートするため、優遇措置を使わなくても、賞与支給月の影響は軽微と言えます(年初では低い税率から課税が開始され、徐々にテールヘビーになっていく、納税者に有利な源泉徴収方法が採用される)。
この様な理由により、本優遇は、打ち切られても納税者にとって重要な影響はないと言えますが、優遇継続により一定のメリットは有ります。
これは、優遇継続期間中は、「賞与を総合所得(給与・労務報酬・原稿料・フランチャイズ所得)の一部として計算し確定申告する方法」と、「年一回賞与は、総合所得と合算せず、個別に税額を確定させる方法」の選択が認められるためです。
後者の方法を採用すれば、賞与を12で割った金額で算定した税率で確定します。
尚、本優遇は、居住者に限定して延長されていますが、非居住者に対しては、財政部・税務総局2019年第35号により、別の課税軽減措置が認められています。
執筆日:2022年2月8日
"
["post_title"]=>
string(54) "【中国情報】個人所得税優遇措置の延長"
["post_excerpt"]=>
string(0) ""
["post_status"]=>
string(7) "publish"
["comment_status"]=>
string(4) "open"
["ping_status"]=>
string(4) "open"
["post_password"]=>
string(0) ""
["post_name"]=>
string(162) "%e3%80%90%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e6%83%85%e5%a0%b1%e3%80%91%e5%80%8b%e4%ba%ba%e6%89%80%e5%be%97%e7%a8%8e%e5%84%aa%e9%81%87%e6%8e%aa%e7%bd%ae%e3%81%ae%e5%bb%b6%e9%95%b7"
["to_ping"]=>
string(0) ""
["pinged"]=>
string(0) ""
["post_modified"]=>
string(19) "2022-10-24 18:01:56"
["post_modified_gmt"]=>
string(19) "2022-10-24 09:01:56"
["post_content_filtered"]=>
string(0) ""
["post_parent"]=>
int(0)
["guid"]=>
string(35) "https://jobwire.nna.jp/blog/?p=4659"
["menu_order"]=>
int(0)
["post_type"]=>
string(4) "post"
["post_mime_type"]=>
string(0) ""
["comment_count"]=>
string(1) "0"
["filter"]=>
string(3) "raw"
}
- 国・地域別
-
マレーシア情報中国情報
- 内容別
-
会計税務個人税金