香港から日本へのパッケージツアーが徐々に増えている。日本政府がツアー限定で外国人観光客の受け入れを再開して約1カ月半。日本では新型コロナウイルスの流行「第7波」が広がり、香港ではツアーから戻った入境者への隔離政策が依然として続いているが、日本を訪れようとする人たちの心理的ハードルは当初よりも下がってきたようだ。【蘇子善、福地大介】
地元メディアに囲まれて取材を受けるクレアさん(中央)=28日、香港国際空港(NNA撮影)
地場旅行大手の東瀛遊控股(EGLホールディングス)は28日、大阪、和歌山、徳島などを回る7泊8日のツアーを催行した。料金は香港帰還後の隔離ホテル費用も含めて2万1,099HKドル(約36万4,000円)。参加人数は20人に上り、同社によると、訪日観光再開後に香港から出発したツアーでは最大規模となった。
EGLのケン国全(スティーブ・ヒュン、ケン=しめすへんによんがしらの下が羽)執行取締役は「香港人はもう2年以上も旅行に行けない状況が続いていた。6月に催行したツアーがメディアで取り上げられ、香港人の旅行意欲を刺激したのだろう」と述べた。これまでのツアーが無事に香港へ戻ってきた実績も、参加者の安心感につながっていると指摘した。
日本政府は新型コロナの水際対策を6月から緩和し、同月10日に海外からの観光ツアー受け入れを再開した。EGLはその直後からビザ取得など訪日に必要な手続きの準備を始め、香港からの第1陣となる東京、北海道7日間のツアーを同月22日に催行した。
ケン氏は「ゼロになっていた訪日旅客が6月の最初のツアーで10人となり、今回のツアーには倍の20人が参加した」と強調。6月から累計のツアー参加者数は申し込みベースで約200人に上っているとして、市場が回復傾向にあることを説明した。
■コロナも隔離も怖くない
日本政府観光局(JNTO)香港事務所によると、再開後の訪日ツアーはEGLのほか、これまでに縦横遊控股(WWPKGホールディングス)、香港永安旅遊(ホンコン・ウィンオン・トラベル・サービス)といった大手各社も既に催行済み。小沼英悟所長は「夏休みの関係もある」として、8月にはさらにツアー本数が増えるとの見通しを示した。
夏休みを利用して両親とともに今回のツアーに参加したクレアさん(11)は「すごく旅行に行きたかったし、温泉にも入りたい」と弾んだ声で語った。日本行きは自分から両親に頼んだといい、日本でコロナの第7波が広がっていることも「家族は全員ワクチンを3回接種しているから怖くない」と意に介さない。香港へ戻ってからは隔離が待っているが「以前に日本を旅行したのは覚えていないほど昔だし、どうしても行きたかった」と話した。
香港政府は海外からの入境者に対し、7日間の強制検疫(隔離)を義務付けている。海外旅行をする上で最大の障害といえるが、それでも訪日ツアーは月を追うごとに倍々で増えている。EGLのツアーだけでも、6月に2本、7月は4本で、8月は現時点で8本が催行される見通しだ。
同社の袁文英会長は「今の香港人は隔離に対するあきらめの気持ちもある」と分析。当初は7月の新政権発足に伴い隔離期間が短縮されるとの期待があったが、一向に緩和されないことにしびれを切らし、旅行への欲求が抑えられなくなってきたとの見方を示す。
「とてもうれしくて期待で興奮している」と話す陳さん(40代女性)は、コロナ前は毎年3回は日本を訪れていたという。「隔離は短い方がいいに決まっているけれど、もうあまりにも長いこと日本に行っていないから」と、7日間の隔離もやむなく受け入れる。
■初の大阪往復、香港航空を利用
ツアー参加者に記念品を渡すEGLの袁会長(左)と香港航空の荘ディレクター(右)=28日、香港国際空港(NNA撮影)
EGLの今回のツアーは、訪日再開後初めて大阪が起点となる。これまでの各社ツアーは、航空会社の座席の関係などから東京便を利用していた。大阪便の座席を提供したのは、地場の香港航空(ホンコン・エアラインズ)だ。
同社の荘偉祺(リッキー・チョン)企業統治・発展担当ディレクターは、NNAに対し「旅客輸送の回復につながり、香港航空にとっても大きな意義がある」とツアーの効果を説明。現在の日本線は大阪に週3便を運航しているだけだが「下半期(7~12月)には東京、札幌、沖縄などの路線を再開させ、輸送能力をコロナ前の3割程度まで戻したい」との計画を明らかにした。
訪日ツアーの増加と歩調を合わせ、コロナで運休していた日本便も徐々に再開の動きがある。地場格安航空会社(LCC)の香港エクスプレス(香港快運航空)は8月4日に福岡便の運航を再開し、旅行各社は同便を利用した九州ツアーを企画している。
EGLは8月、日本で開催される音楽フェス「サマーソニック」の観覧を組み込んだツアーを催行する。同フェスには香港の人気男性アイドルグループMIRROR(ミラー)が出演するため、ツアー参加人数は今回の20人をさらに上回る規模となることが確実だ。
執行取締役のケン氏は「コロナ前に比べればまだまだ少ない」としながらも、香港の水際対策が緩和されれば3カ月後には旅客数がコロナ前の3~4割まで戻ると予想。ただ、完全に回復するまでには1年ほどかかるとの見通しを示した。
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ケン氏は「ゼロになっていた訪日旅客が6月の最初のツアーで10人となり、今回のツアーには倍の20人が参加した」と強調。6月から累計のツアー参加者数は申し込みベースで約200人に上っているとして、市場が回復傾向にあることを説明した。
■コロナも隔離も怖くない
日本政府観光局(JNTO)香港事務所によると、再開後の訪日ツアーはEGLのほか、これまでに縦横遊控股(WWPKGホールディングス)、香港永安旅遊(ホンコン・ウィンオン・トラベル・サービス)といった大手各社も既に催行済み。小沼英悟所長は「夏休みの関係もある」として、8月にはさらにツアー本数が増えるとの見通しを示した。
夏休みを利用して両親とともに今回のツアーに参加したクレアさん(11)は「すごく旅行に行きたかったし、温泉にも入りたい」と弾んだ声で語った。日本行きは自分から両親に頼んだといい、日本でコロナの第7波が広がっていることも「家族は全員ワクチンを3回接種しているから怖くない」と意に介さない。香港へ戻ってからは隔離が待っているが「以前に日本を旅行したのは覚えていないほど昔だし、どうしても行きたかった」と話した。
香港政府は海外からの入境者に対し、7日間の強制検疫(隔離)を義務付けている。海外旅行をする上で最大の障害といえるが、それでも訪日ツアーは月を追うごとに倍々で増えている。EGLのツアーだけでも、6月に2本、7月は4本で、8月は現時点で8本が催行される見通しだ。
同社の袁文英会長は「今の香港人は隔離に対するあきらめの気持ちもある」と分析。当初は7月の新政権発足に伴い隔離期間が短縮されるとの期待があったが、一向に緩和されないことにしびれを切らし、旅行への欲求が抑えられなくなってきたとの見方を示す。
「とてもうれしくて期待で興奮している」と話す陳さん(40代女性)は、コロナ前は毎年3回は日本を訪れていたという。「隔離は短い方がいいに決まっているけれど、もうあまりにも長いこと日本に行っていないから」と、7日間の隔離もやむなく受け入れる。
■初の大阪往復、香港航空を利用
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同社の荘偉祺(リッキー・チョン)企業統治・発展担当ディレクターは、NNAに対し「旅客輸送の回復につながり、香港航空にとっても大きな意義がある」とツアーの効果を説明。現在の日本線は大阪に週3便を運航しているだけだが「下半期(7~12月)には東京、札幌、沖縄などの路線を再開させ、輸送能力をコロナ前の3割程度まで戻したい」との計画を明らかにした。
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EGLは8月、日本で開催される音楽フェス「サマーソニック」の観覧を組み込んだツアーを催行する。同フェスには香港の人気男性アイドルグループMIRROR(ミラー)が出演するため、ツアー参加人数は今回の20人をさらに上回る規模となることが確実だ。
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