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「超高齢社会」25年に到来最速ペースで、経済の土台揺らぐ

韓国では2025年にも人口全体に占める65歳以上の割合が20.6%に達し、「超高齢社会」を迎える。高齢化の速度は日本を上回るスピードで、生産年齢人口(15~64歳)の急減により経済成長の土台も揺らぐ。21年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数、暫定値)は世界最低の0.81で、人口減少の抜本的な改善策はまだ見当たらない。画期的な対策を打ち出せなければ、低成長が常態化するような未来が訪れる恐れもある。[2378624_1.png]
韓国統計庁によると、65歳以上の人口数は現在の870万人から25年には1,000万人に上り、全人口の5分の1が高齢者で占められる見通しだ。朝鮮戦争後の1955~63年に生まれた「ベビーブーム世代」の約700万人が続々と引退を迎えるためだ。
世界保健機関(WHO)などは高齢者の割合7%超を「高齢化社会」、14%超を「高齢社会」、21%超を「超高齢社会」と定義している。韓国は高齢者割合が20.6%となる25年に超高齢社会が到来するとみられ、45年には37.4%と、高齢化で先を行く日本(45年に36.7%)を超えて高齢国家として世界1位になると予想される。
■24年間で超高齢社会に
韓国の特徴は高齢化の速度だ。高齢化社会から高齢社会に移行するスピードは17年と、フランス(114年)や米国(69年)に比べて大幅に短く、日本の24年よりも早い。高齢社会から超高齢社会に移る速度も韓国は24年と、日本(36年)のほか、フランス(154年)、イタリア(79年)、ドイツ(75年)に比べて突出している。
■生産人口は62年に半分水準
韓国では、20年から死亡者数が出生者数を上回る人口の「自然減」が始まっている。昨年の自然減少数は5万7,280人で、前年の3万2,611人に比べて75.6%拡大した。
生産年齢人口も急速に減っている。統計庁の分析では、今年3,667万人に達する生産年齢人口は、38年には2,963万人と初の2,000万人台まで低下する見通し。それ以降も減少の一途をたどり、62年には1,985万人と1,000万人台に落ち込み、今の54%水準に下がるとされる。
生産年齢人口が減少し続ければ労働供給に制約が生まれ、経済も低成長の常態化につながってしまう。シンクタンクの韓国経済研究院によると、現在2.5%前後の韓国の潜在成長率は、30年には0%台に低下するという。
■23年の出生率0.68も
出生率は昨年0.81と過去最低で、経済協力開発機構(OECD)平均の1.61(19年時点)や日本の1.30(21年時点)と比べても大幅に低い水準だ。住宅費用の高騰や養育費の負担などで、出産や結婚をためらう若者が増えていることが背景にある。
統計庁は21年12月に発表した出生率の見通しで、22年の最低値(最も深刻な「低位シナリオ」)で0.73、23年の最低値は0.68と予測している。
■「低成長時代」の足音じわり
少子高齢化の加速で、韓国が誇る国民皆保険・皆年金制度の維持も難しくなる。生産年齢人口100人当たりで扶養しなければならない65歳以上の高齢者は今年24.6人だが、36年には51.1人に倍増。67年には100人と、生産年齢人口1人が高齢者1人を支える構造となる。
韓国政府はその対策として、21年に国家予算の10分の1に上る46兆ウォン(約4兆7,080億円)もの巨額予算を投じた。ただ、少子化に直接関係のなさそうな事業の予算が6割ほど入っており、国民からは「名ばかりの政策」との批判を受けている。
5月に発足した尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権も改善に向けた取り組みを掲げるが、抜本的な解決策を見いだせていない。少子高齢化の波を止めれない限り、低成長期への突入は避けられそうにない。

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■24年間で超高齢社会に
韓国の特徴は高齢化の速度だ。高齢化社会から高齢社会に移行するスピードは17年と、フランス(114年)や米国(69年)に比べて大幅に短く、日本の24年よりも早い。高齢社会から超高齢社会に移る速度も韓国は24年と、日本(36年)のほか、フランス(154年)、イタリア(79年)、ドイツ(75年)に比べて突出している。
■生産人口は62年に半分水準
韓国では、20年から死亡者数が出生者数を上回る人口の「自然減」が始まっている。昨年の自然減少数は5万7,280人で、前年の3万2,611人に比べて75.6%拡大した。
生産年齢人口も急速に減っている。統計庁の分析では、今年3,667万人に達する生産年齢人口は、38年には2,963万人と初の2,000万人台まで低下する見通し。それ以降も減少の一途をたどり、62年には1,985万人と1,000万人台に落ち込み、今の54%水準に下がるとされる。
生産年齢人口が減少し続ければ労働供給に制約が生まれ、経済も低成長の常態化につながってしまう。シンクタンクの韓国経済研究院によると、現在2.5%前後の韓国の潜在成長率は、30年には0%台に低下するという。
■23年の出生率0.68も
出生率は昨年0.81と過去最低で、経済協力開発機構(OECD)平均の1.61(19年時点)や日本の1.30(21年時点)と比べても大幅に低い水準だ。住宅費用の高騰や養育費の負担などで、出産や結婚をためらう若者が増えていることが背景にある。
統計庁は21年12月に発表した出生率の見通しで、22年の最低値(最も深刻な「低位シナリオ」)で0.73、23年の最低値は0.68と予測している。
■「低成長時代」の足音じわり
少子高齢化の加速で、韓国が誇る国民皆保険・皆年金制度の維持も難しくなる。生産年齢人口100人当たりで扶養しなければならない65歳以上の高齢者は今年24.6人だが、36年には51.1人に倍増。67年には100人と、生産年齢人口1人が高齢者1人を支える構造となる。
韓国政府はその対策として、21年に国家予算の10分の1に上る46兆ウォン(約4兆7,080億円)もの巨額予算を投じた。ただ、少子化に直接関係のなさそうな事業の予算が6割ほど入っており、国民からは「名ばかりの政策」との批判を受けている。
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