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ミネベア、タイ進出から40年中部バンパイン工場訪問ルポ

今年タイ進出から40年という節目の年を迎えた電子部品大手ミネベアミツミ。同国のプラユット首相は先日、表敬訪問した同社の貝沼由久会長兼社長に対し、これまでの投資と雇用創出に感謝の意を表した。NNAはこのほど、ミネベアミツミのタイ子会社、NMBミネベア・タイが中部アユタヤ県で運営するバンパイン工場を訪問。同社の事業内容や今後の取り組みについて話を聞いた。【坂部哲生】[2386847_1.jpg]
曇り空の中、バンコク都内のホテル屋上をヘリコプターが飛び立ってから北に約30分。広大なバンパイン工場が眼下に広がってきた。同工場の建物面積は20万8,750平方メートル。1万7,000人の従業員が勤務する。NMBミネベア・タイが運営する9拠点の中でも最重要拠点のうちの1つだ。
■HDD向けが好調
バンパイン工場内を案内してくれたのは、ミネベアミツミの小峯康生広報・IR室長とNMBミネベア・タイの杉田寛東南アジア営業ゼネラルマネジャー。同工場は主力事業であるボールベアリングの生産を手がける。月産能力はグループ全体(3億7,000万個)で2番目の規模を誇る。エアコン向けを中心に需要が拡大しており、今後はグループ全体で2,000万個積み増す予定だ。
同工場では、データ保存に使う記憶装置、ハードディスク駆動装置(HDD)向けにディスクを高速回転させるスピンドルモーターの生産も好調だという。米シーゲイト・テクノロジーと同ウエスタン・デジタル(WD)が生産拠点を構えるタイはHDDの生産量で世界トップだ。NAND型フラッシュメモリーを使うソリッド・ステート・ドライブ(SSD)への代替が進んでいるものの、新型コロナウイルス禍でのデジタル化の加速によって、安価に大容量を提供できるHDDの需要が高まっている。
同工場でのスピンドルモーターの生産は、ベアリングや金型、治工具などを全て内製化しているのが特徴だ。敷地内にあるラボでは、不純物の分析などを通じて迅速な品質改善に取り組んでいる。ラボ内にある洗濯機で月3万着の作業服と50万セットのグローブを洗い、それらに付着した不純物を調べるという力の入れようだ。
HDD向けでは他にも、磁気ヘッドを動かす駆動装置(アクチュエーター)の支点となるベアリング2個とその他機械加工部品を組み合わせたピボットアセンブリーも生産している。ミネベアミツミはピボットアセンブリーでは世界シェアトップを占める。
同工場では、自動車のハンドルの角度を制御する「レゾルバ」と呼ばれる回転角(測定)センサーの製造も手がけている。
■太陽光発電設備を設置
NMBミネベア・タイはグループの環境方針の下、温室効果ガスの排出量削減に取り組んでいる。2020年にバンパイン工場と中部ロッブリ県の工場の屋根に発電容量が計5メガワットの太陽光発電システムを設置したのに続き、今年はバンパイン工場内の敷地に11メガワットの太陽光パネルを敷き詰めた。今回の工場案内では降り出した強い雨のせいで実現できなかったが、担当者によると「高所から見下ろした景色は壮観」だという。ミネベアミツミの貝沼会長兼社長は、タイ工場でのクリーンエネルギーのさらなる使用促進についてもプラユット首相と意見を交わしている。
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■都市のスマート化に貢献
電子部品メーカーとしてのイメージの強いミネベアミツミだが、タイではスマートシティー向け道路灯の導入にも力を入れている。液晶向けバックライトの製造で培ったスマートLED照明技術を採用したもので、これまで国内に1,378本を設置。うち269本は高速道路の出入り口で、今後は本線にも拡張していく計画だ。消費電力を削減し、都市の景観が改善するだけでなく、無線通信の技術を組み合わせれば道路灯同士がつながり、モノのインターネット(IoT)のプラットフォームとしての機能を果たすようになる。故障した道路灯を遠隔からピンポイントで発見したり、温湿度センサーを取り付けて天候を正確に予報するための基礎的なデータを取得して送信したりすることができる。カメラを装着すれば地域の防犯にも役立つ。
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同社のスマートシティー構想はすでにカンボジアで導入実績があり、バンコクのチャチャート知事が導入に前向きな姿勢を見せているという。
ミネベアミツミにとってタイはグループ全体の売り上げの3割を占める主要拠点。タイへの総投資額は1,080億バーツ(約4,100億円)と、日系企業の間でもトップクラスの規模だ。累計で約25万3,000人を雇用。現在も約3万8,100人が勤務している。
低所得段階から高所得レベルに達する前に成長が停滞する「中進国の罠(わな)」からの脱却に向けて、タイ政府は現在デジタル経済を軸とする国家戦略「タイランド4.0」を推進している。実現に向けては、ミネベアミツミはこれまで以上に大きな役割が求められている。

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バンパイン工場内を案内してくれたのは、ミネベアミツミの小峯康生広報・IR室長とNMBミネベア・タイの杉田寛東南アジア営業ゼネラルマネジャー。同工場は主力事業であるボールベアリングの生産を手がける。月産能力はグループ全体(3億7,000万個)で2番目の規模を誇る。エアコン向けを中心に需要が拡大しており、今後はグループ全体で2,000万個積み増す予定だ。
同工場では、データ保存に使う記憶装置、ハードディスク駆動装置(HDD)向けにディスクを高速回転させるスピンドルモーターの生産も好調だという。米シーゲイト・テクノロジーと同ウエスタン・デジタル(WD)が生産拠点を構えるタイはHDDの生産量で世界トップだ。NAND型フラッシュメモリーを使うソリッド・ステート・ドライブ(SSD)への代替が進んでいるものの、新型コロナウイルス禍でのデジタル化の加速によって、安価に大容量を提供できるHDDの需要が高まっている。
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同工場では、自動車のハンドルの角度を制御する「レゾルバ」と呼ばれる回転角(測定)センサーの製造も手がけている。
■太陽光発電設備を設置
NMBミネベア・タイはグループの環境方針の下、温室効果ガスの排出量削減に取り組んでいる。2020年にバンパイン工場と中部ロッブリ県の工場の屋根に発電容量が計5メガワットの太陽光発電システムを設置したのに続き、今年はバンパイン工場内の敷地に11メガワットの太陽光パネルを敷き詰めた。今回の工場案内では降り出した強い雨のせいで実現できなかったが、担当者によると「高所から見下ろした景色は壮観」だという。ミネベアミツミの貝沼会長兼社長は、タイ工場でのクリーンエネルギーのさらなる使用促進についてもプラユット首相と意見を交わしている。
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■都市のスマート化に貢献
電子部品メーカーとしてのイメージの強いミネベアミツミだが、タイではスマートシティー向け道路灯の導入にも力を入れている。液晶向けバックライトの製造で培ったスマートLED照明技術を採用したもので、これまで国内に1,378本を設置。うち269本は高速道路の出入り口で、今後は本線にも拡張していく計画だ。消費電力を削減し、都市の景観が改善するだけでなく、無線通信の技術を組み合わせれば道路灯同士がつながり、モノのインターネット(IoT)のプラットフォームとしての機能を果たすようになる。故障した道路灯を遠隔からピンポイントで発見したり、温湿度センサーを取り付けて天候を正確に予報するための基礎的なデータを取得して送信したりすることができる。カメラを装着すれば地域の防犯にも役立つ。
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ミネベアミツミにとってタイはグループ全体の売り上げの3割を占める主要拠点。タイへの総投資額は1,080億バーツ(約4,100億円)と、日系企業の間でもトップクラスの規模だ。累計で約25万3,000人を雇用。現在も約3万8,100人が勤務している。
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