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東南アの料理宅配市場が転換期22年1桁成長に鈍化、コロナ収束で

東南アジアのフードデリバリー(料理宅配)市場が転換期を迎えている。新型コロナウイルス流行下での行動制限を背景に急拡大してきたが、2022年の成長率は1桁台に鈍化。取引額が大きいインドネシア、タイ、シンガポールの3カ国ではマイナス成長となった。今後も事業環境は思わしくなく、生き残りをかけた競争が激しくなりそうだ。

東南アジアでフードデリバリー市場の成長が鈍化している=シンガポール(NNA撮影)

東南アジアのフードデリバリー市場は新型コロナの流行をきっかけに急成長した。ロックダウン(都市封鎖)や感染対策としての店内飲食の制限などの影響で、自宅での食事やデリバリーの活用が促進・推奨されたことが背景にある。
20年の成長は特に目覚ましく、ベンチャー企業支援を手がけるシンガポールのモメンタム・ワークスによると域内での総取引額は前年比2.8倍の119億米ドル(約1兆5,400億円)を記録した。
21年も前年比3割増と堅調に成長したが、22年に転機が訪れた。同年の取引額は前年比5%増の163億米ドルとなり、1桁成長にとどまった。主要6カ国のうち市場規模が大きい上位3カ国で取引額が減少に転じた。
最大市場のインドネシアは前年比2%減の45億米ドル、タイは10%減の36億米ドル、シンガポールは14%減の25億米ドルとそれぞれ大きく落ち込んだ。モメンタム・ワークスは、市場縮小の要因は国ごとに異なると分析しつつも、政府方針の影響が大きいと考えている。
シンガポールでは新型コロナを巡る行動制限がほぼ撤廃され、飲食店に関しては「オンライン(フードデリバリー)ではなくオフライン(店内飲食)」の需要が大きく拡大。デリバリーよりも店内飲食の需要に応えることを優先する企業が増えた。
タイでは政府が22年10月にフードデリバリー向けの助成を打ち切ったことが響いた。下半期(7~12月)の洪水被害も大きな影響をもたらしたという。
一方、フィリピン、マレーシア、ベトナムでは市場規模が拡大。フィリピンは前年比50%増の24億米ドルと最大の伸びを示した。マレーシアは22億米ドル、ベトナムは11億米ドルとなり、いずれも38%増加した。

■グラブ、6市場で独り勝ち
企業別にみると、シンガポールの配車サービス大手グラブが展開する「グラブフード」が6カ国全てのマーケットシェアで首位を獲得した。東南アジア全体の取引額のうち54%に当たる88億米ドルを占め、2位のドイツ系フードパンダ(31億米ドル)を大きく上回る水準だ。
域内のフードデリバリー市場で22年に取引額を伸ばしたのはグラブのみで、前年比16%増加した。フードパンダは9%減少。インドネシアの配車ゴジェックが運営するゴーフード(シェア3位)と、シンガポール系のショッピーフード(同4位)などはいずれも前年から横ばいだった。
モメンタム・ワークスのリー・ジャンガン代表によると、域内のフードデリバリーサービスは投資環境が悪化する中で収益改善圧力にさらされている。ただ、米国で上場したグラブは資金力があり、収益改善圧力が高まる中でも堅調だったという。
■ドイツ系など2社は撤退の可能性も
東南アジアのフードデリバリー市場は23年も厳しい事業環境に置かれそうだ。リー氏は「マージン率の改善や黒字化が最重要事項に置かれ、一部事業の縮小や市場から撤退するプレーヤーも出てくる」と指摘。配達員のインセンティブ(報酬)引き下げなど、コスト圧縮の動きも加速するとみている。
タイでは22年12月に、同国でシェア2位のラインマン・ウォンナイ(LINE MAN Wongnai)が、3位のフードパンダの買収に向けて交渉を進めていると報道された。
リー氏は、「フードパンダとベトナムのベミンを傘下に収めるドイツのデリバリー・ヒーロー・グループにとって、国・地域別の取引額の割合は韓国が約5割で最大市場となっており、東南アジアは10%未満だ」と指摘。同グループが東南アジアの複数市場から撤退する可能性を指摘する。
ショッピーフードは、親会社のシンガポールの電子商取引(EC)大手ショッピーが経営不振のため欧州や中南米、インドなどの市場から撤退している。中核事業のアジアのEC事業に注力する中、フードデリバリー事業を縮小する可能性も残る。
新型コロナ下で急成長したフードデリバリーのエコシステムは、ポストコロナ期に入り、今後の生き残りを左右する局面に入りそうだ。

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東南アジアのフードデリバリー市場は新型コロナの流行をきっかけに急成長した。ロックダウン(都市封鎖)や感染対策としての店内飲食の制限などの影響で、自宅での食事やデリバリーの活用が促進・推奨されたことが背景にある。
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21年も前年比3割増と堅調に成長したが、22年に転機が訪れた。同年の取引額は前年比5%増の163億米ドルとなり、1桁成長にとどまった。主要6カ国のうち市場規模が大きい上位3カ国で取引額が減少に転じた。
最大市場のインドネシアは前年比2%減の45億米ドル、タイは10%減の36億米ドル、シンガポールは14%減の25億米ドルとそれぞれ大きく落ち込んだ。モメンタム・ワークスは、市場縮小の要因は国ごとに異なると分析しつつも、政府方針の影響が大きいと考えている。
シンガポールでは新型コロナを巡る行動制限がほぼ撤廃され、飲食店に関しては「オンライン(フードデリバリー)ではなくオフライン(店内飲食)」の需要が大きく拡大。デリバリーよりも店内飲食の需要に応えることを優先する企業が増えた。
タイでは政府が22年10月にフードデリバリー向けの助成を打ち切ったことが響いた。下半期(7~12月)の洪水被害も大きな影響をもたらしたという。
一方、フィリピン、マレーシア、ベトナムでは市場規模が拡大。フィリピンは前年比50%増の24億米ドルと最大の伸びを示した。マレーシアは22億米ドル、ベトナムは11億米ドルとなり、いずれも38%増加した。

■グラブ、6市場で独り勝ち
企業別にみると、シンガポールの配車サービス大手グラブが展開する「グラブフード」が6カ国全てのマーケットシェアで首位を獲得した。東南アジア全体の取引額のうち54%に当たる88億米ドルを占め、2位のドイツ系フードパンダ(31億米ドル)を大きく上回る水準だ。
域内のフードデリバリー市場で22年に取引額を伸ばしたのはグラブのみで、前年比16%増加した。フードパンダは9%減少。インドネシアの配車ゴジェックが運営するゴーフード(シェア3位)と、シンガポール系のショッピーフード(同4位)などはいずれも前年から横ばいだった。
モメンタム・ワークスのリー・ジャンガン代表によると、域内のフードデリバリーサービスは投資環境が悪化する中で収益改善圧力にさらされている。ただ、米国で上場したグラブは資金力があり、収益改善圧力が高まる中でも堅調だったという。
■ドイツ系など2社は撤退の可能性も
東南アジアのフードデリバリー市場は23年も厳しい事業環境に置かれそうだ。リー氏は「マージン率の改善や黒字化が最重要事項に置かれ、一部事業の縮小や市場から撤退するプレーヤーも出てくる」と指摘。配達員のインセンティブ(報酬)引き下げなど、コスト圧縮の動きも加速するとみている。
タイでは22年12月に、同国でシェア2位のラインマン・ウォンナイ(LINE MAN Wongnai)が、3位のフードパンダの買収に向けて交渉を進めていると報道された。
リー氏は、「フードパンダとベトナムのベミンを傘下に収めるドイツのデリバリー・ヒーロー・グループにとって、国・地域別の取引額の割合は韓国が約5割で最大市場となっており、東南アジアは10%未満だ」と指摘。同グループが東南アジアの複数市場から撤退する可能性を指摘する。
ショッピーフードは、親会社のシンガポールの電子商取引(EC)大手ショッピーが経営不振のため欧州や中南米、インドなどの市場から撤退している。中核事業のアジアのEC事業に注力する中、フードデリバリー事業を縮小する可能性も残る。
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