井村屋グループ(三重県津市)の現地法人イムラヤ・マレーシアがマレーシアで現地生産する「あずきバー」の売れ行きが好調だ。発売から1年以上が経過したが、シンプルな素材の味を生かす製法は変えずに甘みなどをローカライズし、ハラル(イスラム教の戒律で許されたもの)認証を取得したことが同国での人気につながっている。昨年9月には、餅を使った新商品「Mochi Mochi(もちもち)」を投入。認知度をさらに上げるため取扱店の拡大を目指す。【笹沼帆奈望】
マレーシアで現地生産されている「あずきバー」(右)と「もちもち」=スランゴール州(NNA撮影)
井村屋はマレーシアでの現地生産に踏み切る前から、日本で生産したあずきバーを輸入。購買層は在住日本人だったが、あずきバーの現地生産でマレーシア人が手に取るようになった。特に女性が多く、子ども連れの人やオフィス勤務の会社員が昼食に出た際に購入していくという。
マレーシアにはマレーシア人に好まれる「たい焼きアイス」や「最中アイス」も輸入しており、あずきバーはこの2つに比べて輸入量が少ない。イムラヤ・マレーシアの小川篤マネージングディレクターによると、現地生産しているあずきバーは既に日本で生産した輸入品を大きく上回る販売を記録しているという。
井村屋は2019年12月、中国、米国に次ぐ海外拠点としてマレーシアに現地法人を設立。現地の独立系中堅アイスクリームメーカー、ポーラー・アイスクリームと戦略提携し、スランゴール州の同社工場で製品を生産している。21年9月に現地生産のあずきバーを発売した。
イムラヤ・マレーシアの村越聡洋ゼネラルマネジャーは、現地生産のあずきバーについて、「ハラル認定を受けた原料しか使うことしかできず、設備も異なる。その中で甘さはマレーシア人好みにしつつも、日本で売られているあずきバーのようにシンプルな原料で素材の味を生かしたものになるよう工夫を凝らした」と説明。日本生産品と同じように小豆の粒感を残すため、炊き方や蒸気の量などのこだわりを現地の従業員に教えたという。
マレーシアで生産しているあずきバーは小豆味、抹茶味、ミルク味の3種あり、小豆味では、製造工程で小豆の煮汁を捨てずに加えることで風味を残し、甘みを抑える製法を採用。抹茶味のあずきバーでは、抹茶アイスに練乳を混ぜることで、マレー系や中華系など誰でも食べやすい味に仕上げた。1本4.5リンギ(約135円)で販売している。
ディスカウント店「JONETZ by DON DON DONKI(ジョウネツバイドンドンドンキ)」で21年9月に発売した際には、25日間であずきバー全3種類合わせて1万本を販売。22年7月に首都圏で行われたクアラルンプール日本人会などが主催する盆踊り大会では、7,000本を売り上げた。
現在の1日当たりの生産能力は、あずきバーの小豆味が6,000本、抹茶味とミルク抹茶がそれぞれ1万2,000本。イムラヤ・マレーシアの商品を取り扱っている小売業者の新たな店舗開業時の特売や、イベントへの出展といった販促を行っている。今後は販路の拡大に応じて供給量を増加する予定で、23年度(1~12月)は前年比3倍以上の出荷を目指す。
■他のムスリム市場に販路拡大
小川氏は、マレーシアでの生産を通じ、同国以外のイスラム教徒(ムスリム)市場への販路拡大を狙うと話す。その足がかりになるのがハラル認証だ。
日本で生産しているあずきバーもアルコールや豚由来の原材料は入っていないため、当初は日本でのハラル認証取得を検討した。しかし、手続きなどのハードルが高いことから、マレーシアで生産し、世界的にも信頼度の高いマレーシア・イスラム開発局(JAKIM)のハラル認証取得を目指したという。認証取得に当たっては、パートナーのポーラー・アイスクリームのノウハウを活用することができた。
あずきバーのハラル認証取得を足がかりに、今後は、東南アジア諸国連合(ASEAN)や中東、アフリカへの輸出を目指しており、皮切りにイスラム教徒が人口の最多を占める隣国インドネシアへの輸出を開始する予定だ。
あずきバーに次ぐ新たな現地生産品も生まれた。イムラヤ・マレーシアは昨年、ハラル認証を取得した餅の形状をしたアイスクリーム「もちもち」の販売を開始した。味はバニラ・マンゴー、チョコレート・チョコレート、抹茶・小豆の3種類で、価格は6.8リンギとしている。
村越氏は、「日本風である餅の形状のアイスクリームは、マレーシアに限らず世界中で周知されてきている」と発売の背景を説明。現在の1日当たりの生産能力は1万1,000個と、先発商品のあずきバーとほぼ変わらない。「アイスクリームを包む餅の部分を製造する機械は日本から輸入しており、地場企業が販売している餅アイスクリームより柔らかい仕上がりになっている」と強みを強調する。
「認知度向上が課題」と話すイムラヤ・マレーシアの小川氏(右)と村越氏=スランゴール州(NNA撮影)
■認知度向上が今後の課題に
さらなる売り上げ増加を目指す上で、欠かせないのが認知度の向上だ。現在、現地生産されたあずきバーを取り扱っているのは、首都圏のJONETZ by DON DON DONKIやイオン、韓国系コンビニエンスストアのEマート24など一部にとどまっている。
小川氏は、「アッパーミドル層が利用するスーパーマーケットには必ず展開したい」と意気込む。また日本産のあずきバーについても、「乳製品は使っておらず、プラントベース(植物由来)で健康性が高いことから、訴求次第で富裕層が来店するプレミアムスーパーマーケットへの展開も可能だ」と指摘する。
商品群はさらに増やす計画で、もちもちの季節限定味、カップに入った製品、ファミリー層向け商品の販売を検討。長期的には、日本の井村屋でしか取り扱っていないアイスクリーム以外の商品をマレーシアで輸入販売することも視野に入れる。看板商品のあずきバーを含めて、小豆をレッドビーンではなく「AZUKI(アズキ)」という日本語読みで浸透させることも目標だ。
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井村屋はマレーシアでの現地生産に踏み切る前から、日本で生産したあずきバーを輸入。購買層は在住日本人だったが、あずきバーの現地生産でマレーシア人が手に取るようになった。特に女性が多く、子ども連れの人やオフィス勤務の会社員が昼食に出た際に購入していくという。
マレーシアにはマレーシア人に好まれる「たい焼きアイス」や「最中アイス」も輸入しており、あずきバーはこの2つに比べて輸入量が少ない。イムラヤ・マレーシアの小川篤マネージングディレクターによると、現地生産しているあずきバーは既に日本で生産した輸入品を大きく上回る販売を記録しているという。
井村屋は2019年12月、中国、米国に次ぐ海外拠点としてマレーシアに現地法人を設立。現地の独立系中堅アイスクリームメーカー、ポーラー・アイスクリームと戦略提携し、スランゴール州の同社工場で製品を生産している。21年9月に現地生産のあずきバーを発売した。
イムラヤ・マレーシアの村越聡洋ゼネラルマネジャーは、現地生産のあずきバーについて、「ハラル認定を受けた原料しか使うことしかできず、設備も異なる。その中で甘さはマレーシア人好みにしつつも、日本で売られているあずきバーのようにシンプルな原料で素材の味を生かしたものになるよう工夫を凝らした」と説明。日本生産品と同じように小豆の粒感を残すため、炊き方や蒸気の量などのこだわりを現地の従業員に教えたという。
マレーシアで生産しているあずきバーは小豆味、抹茶味、ミルク味の3種あり、小豆味では、製造工程で小豆の煮汁を捨てずに加えることで風味を残し、甘みを抑える製法を採用。抹茶味のあずきバーでは、抹茶アイスに練乳を混ぜることで、マレー系や中華系など誰でも食べやすい味に仕上げた。1本4.5リンギ(約135円)で販売している。
ディスカウント店「JONETZ by DON DON DONKI(ジョウネツバイドンドンドンキ)」で21年9月に発売した際には、25日間であずきバー全3種類合わせて1万本を販売。22年7月に首都圏で行われたクアラルンプール日本人会などが主催する盆踊り大会では、7,000本を売り上げた。
現在の1日当たりの生産能力は、あずきバーの小豆味が6,000本、抹茶味とミルク抹茶がそれぞれ1万2,000本。イムラヤ・マレーシアの商品を取り扱っている小売業者の新たな店舗開業時の特売や、イベントへの出展といった販促を行っている。今後は販路の拡大に応じて供給量を増加する予定で、23年度(1~12月)は前年比3倍以上の出荷を目指す。
■他のムスリム市場に販路拡大
小川氏は、マレーシアでの生産を通じ、同国以外のイスラム教徒(ムスリム)市場への販路拡大を狙うと話す。その足がかりになるのがハラル認証だ。
日本で生産しているあずきバーもアルコールや豚由来の原材料は入っていないため、当初は日本でのハラル認証取得を検討した。しかし、手続きなどのハードルが高いことから、マレーシアで生産し、世界的にも信頼度の高いマレーシア・イスラム開発局(JAKIM)のハラル認証取得を目指したという。認証取得に当たっては、パートナーのポーラー・アイスクリームのノウハウを活用することができた。
あずきバーのハラル認証取得を足がかりに、今後は、東南アジア諸国連合(ASEAN)や中東、アフリカへの輸出を目指しており、皮切りにイスラム教徒が人口の最多を占める隣国インドネシアへの輸出を開始する予定だ。
あずきバーに次ぐ新たな現地生産品も生まれた。イムラヤ・マレーシアは昨年、ハラル認証を取得した餅の形状をしたアイスクリーム「もちもち」の販売を開始した。味はバニラ・マンゴー、チョコレート・チョコレート、抹茶・小豆の3種類で、価格は6.8リンギとしている。
村越氏は、「日本風である餅の形状のアイスクリームは、マレーシアに限らず世界中で周知されてきている」と発売の背景を説明。現在の1日当たりの生産能力は1万1,000個と、先発商品のあずきバーとほぼ変わらない。「アイスクリームを包む餅の部分を製造する機械は日本から輸入しており、地場企業が販売している餅アイスクリームより柔らかい仕上がりになっている」と強みを強調する。
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