インドネシア西ジャワ州スバン県にあるパティンバン港自動車ターミナルは、4月から完成車(CBU)取り扱い能力を年40万台規模に倍増させる。インドネシアの港湾分野で初となる官民連携事業として、運営を受託している豊田通商グループの100%出資会社パティンバン・インターナショナル・カーターミナル(PICT)は、未活用だった既存の敷地にヤードを整備するほか、建機向けのヤードの設置も計画している。2021年12月の本格稼働から2年目を迎え、さらなるターミナルの需要の取り込みを図る。【和田純一】
パティンバン港自動車ターミナルに並ぶ輸出向けの車両=6日、西ジャワ州(NNA撮影)
PICTによると、パティンバン港自動車ターミナルの22年の完成車取り扱い実績は20万1,932台。内訳は輸出用が10万3,819台、輸入用が1万4,364台で、残りは国内向けだった。同社が22年目標に設定していた、月当たりの取り扱い台数1万6,000台を超える結果となった。
インドネシア自動車製造業者協会(ガイキンド)のデータによれば、22年の国内の完成車輸出台数は47万3,602台で、輸出全体の2割超がパティンバン港から出荷されたことになる。
PICTの矢澤弘之社長はパティンバン港について、貨物船が沖で待ち時間なく入港でき、港への陸路では渋滞も少ないことから「時間効率の良さが強みだ」と話す。
1年目からほぼフル稼働だったことを受けて、今後は、未活用の13.7ヘクタール分の敷地を完成車保管用のヤードとして利用し、取り扱い能力を年40万台規模に倍増させる。現在、運輸省との調整や施設の準備を進めており、4月からの運用開始を目指す。
運輸省の当初計画では、23年時点での取り扱い能力は年21万8,000台を想定しており、拡張工事はこれから進められる計画だが、現在利用可能なスペースを最大限活用することで工事の完工を待つことなく取り扱い能力を増やせるという。
■建機の需要にも対応
パティンバン港自動車ターミナルには現在、国際船が週に1回、国内船が週に3~4回入港する。国内向けでは韓国・現代自動車や中国の上汽通用五菱汽車(SGMW)などの日系メーカー以外も利用しているが、輸出向けはトヨタやダイハツの車両が大半を占める。
完成車輸出1台当たりの港湾使用料は、首都ジャカルタの国際港のタンジュンプリオク港よりも、やや割安な設定となっている。
またPICTは、自動車だけでなく幅広い輸送需要に対応するため、建機向けの専用ヤード(約1ヘクタール)の整備も計画している。路面をアスファルトからコンクリートに変更して、強度を高めた専用の区域を設ける。
このほか、22年7月から本格導入した、貨物や税関情報の共有を行う独自のターミナル・オペレーション・システムについても、荷主側のシステムと情報を連携できる機能の追加などを検討する。
矢澤社長は、「インドネシアの港湾分野で初となる官民連携事業として、関係者の協力を得ながら最初の1年を操業できた」と話す。港湾使用料やサービス、港への運搬効率、港からの運航航路などさまざまな要素によって、顧客に選ばれる港になることができるとし、「公共の港としてさらに多くの企業に利用してもらえるよう、ヤードのレイアウト変更を含めた環境整備に取り組む」と意欲を語った。
■動き出す拡張事業と周辺インフラ整備
円借款による支援で進むパティンバン港開発は、拡張事業や周辺のインフラ整備でも進展が見られる。自動車ターミナル関連では、第1期(フェーズ2)として拡張事業を行う「パッケージ5」を、東亜建設工業や国営建設ワスキタ・カルヤのコンソーシアム(企業連合)が実施することが、昨年末に決まった。
パッケージ5では、新たに20ヘクタールを埋め立てて敷地を拡張するほか、自動車ターミナルバースを381メートル追加し、既存と合わせて約690メートルに伸ばす。このほか、岸壁の水深も現在の10メートルから、すべての大型船に対応できる12.5メートルとする計画だ。
24年末に開通予定のパティンバン港とジャワ島横断高速道路を結ぶアクセス高速道路(延長37.1キロメートル)も重要なインフラの一つだ。現在のパティンバン港へのアクセスは、最寄りの高速道路出口から港まで70キロ弱あるうち、最後の約9キロは国道から港へ直通するアクセス道が整備されているが、残りの約60キロは国道を利用しなければならない。
アクセス高速道路が完成すれば、輸送車が1日に往復できる回数が増え、陸上輸送コストの低減も見込める。ジャカルタ東郊の西ジャワ州カラワン県などの工業団地から高速道路で直接アクセスできるタンジュンプリオク港と比較しても、パティンバン・アクセス高速道路への期待は大きい。
アクセス高速道路は、このほど事業契約が結ばれ、23年下半期(7~12月)に着工を予定する。公共事業・国民住宅省の高速道路統制庁(BPJT)によると、アクセス高速道は、西ジャワ州スバン県サワンガン付近でジャワ島横断高速道路のチコポ—パリマナン高速道と接続する。
現在は最寄りの高速道路出入り口から国道を利用して港にアクセスする=6日、西ジャワ州(NNA撮影)
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インドネシア自動車製造業者協会(ガイキンド)のデータによれば、22年の国内の完成車輸出台数は47万3,602台で、輸出全体の2割超がパティンバン港から出荷されたことになる。
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1年目からほぼフル稼働だったことを受けて、今後は、未活用の13.7ヘクタール分の敷地を完成車保管用のヤードとして利用し、取り扱い能力を年40万台規模に倍増させる。現在、運輸省との調整や施設の準備を進めており、4月からの運用開始を目指す。
運輸省の当初計画では、23年時点での取り扱い能力は年21万8,000台を想定しており、拡張工事はこれから進められる計画だが、現在利用可能なスペースを最大限活用することで工事の完工を待つことなく取り扱い能力を増やせるという。
■建機の需要にも対応
パティンバン港自動車ターミナルには現在、国際船が週に1回、国内船が週に3~4回入港する。国内向けでは韓国・現代自動車や中国の上汽通用五菱汽車(SGMW)などの日系メーカー以外も利用しているが、輸出向けはトヨタやダイハツの車両が大半を占める。
完成車輸出1台当たりの港湾使用料は、首都ジャカルタの国際港のタンジュンプリオク港よりも、やや割安な設定となっている。
またPICTは、自動車だけでなく幅広い輸送需要に対応するため、建機向けの専用ヤード(約1ヘクタール)の整備も計画している。路面をアスファルトからコンクリートに変更して、強度を高めた専用の区域を設ける。
このほか、22年7月から本格導入した、貨物や税関情報の共有を行う独自のターミナル・オペレーション・システムについても、荷主側のシステムと情報を連携できる機能の追加などを検討する。
矢澤社長は、「インドネシアの港湾分野で初となる官民連携事業として、関係者の協力を得ながら最初の1年を操業できた」と話す。港湾使用料やサービス、港への運搬効率、港からの運航航路などさまざまな要素によって、顧客に選ばれる港になることができるとし、「公共の港としてさらに多くの企業に利用してもらえるよう、ヤードのレイアウト変更を含めた環境整備に取り組む」と意欲を語った。
■動き出す拡張事業と周辺インフラ整備
円借款による支援で進むパティンバン港開発は、拡張事業や周辺のインフラ整備でも進展が見られる。自動車ターミナル関連では、第1期(フェーズ2)として拡張事業を行う「パッケージ5」を、東亜建設工業や国営建設ワスキタ・カルヤのコンソーシアム(企業連合)が実施することが、昨年末に決まった。
パッケージ5では、新たに20ヘクタールを埋め立てて敷地を拡張するほか、自動車ターミナルバースを381メートル追加し、既存と合わせて約690メートルに伸ばす。このほか、岸壁の水深も現在の10メートルから、すべての大型船に対応できる12.5メートルとする計画だ。
24年末に開通予定のパティンバン港とジャワ島横断高速道路を結ぶアクセス高速道路(延長37.1キロメートル)も重要なインフラの一つだ。現在のパティンバン港へのアクセスは、最寄りの高速道路出口から港まで70キロ弱あるうち、最後の約9キロは国道から港へ直通するアクセス道が整備されているが、残りの約60キロは国道を利用しなければならない。
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