マレーシア政府が24日に連邦議会下院に提出した2023年度修正国家予算案には、所得税の課税率見直しやキャピタルゲイン課税の導入、ぜいたく品への課税などが盛り込まれた。高所得層の徴税を強化し、広く社会へ還元するというアンワル・イブラヒム政権のメッセージが色濃く反映された内容といえる。特に、個人所得税については、年収10万リンギ(約305万円)以上の層が増税されるため、現地で就労する日本人は、ほぼ対象になりそうだ。
高級宝飾店に行列を作る買い物客。富裕層への課税強化をうたうアンワル政権は23年度国家予算案で奢侈税を導入する方針を示した=クアラルンプール(NNA撮影)
23年度の国家予算案はイスマイルサブリ・ヤーコブ前政権が昨年10月に取りまとめたが、同11月の総選挙で政権が交代。新たに発足したアンワル政権による初の予算案として今月24日に修正案が提出された。
マレーシアの会計事務所、加藤ビジネスアドバイザリーの加藤芳之氏(日本国公認会計士)は修正予算案に関し、「高所得層からの所得移転というメッセージを強く感じる内容だった」とコメントした。
個人所得税の見直しでは、年間所得3万5,001~10万リンギの中間層が2%の減税となる。減税対象の所得下限が引き下げられたことで、節税額は最大で年間1,300リンギとなり、イスマイルサブリ前政権が昨年10月に発表した予算案よりも約300リンギの増額となった。
一方、高所得に分類される年間所得10万1~100万リンギについては、税率を0.5~2%引き上げる。60万1~100万リンギは、税率が現行の26%から28%となり、引き上げ幅が最も大きい。
日本円換算では年収300万円程度を超えると対象になるため、雇用パス(EP)を取得して現地で就労する日本人は、大半が増税対象になるとみられる。増税額は最大で1万950リンギだが、年間所得に応じて異なる。
例えば、年収40万リンギであれば増税額は950リンギ、60万リンギであれば2,950リンギとなる。加藤氏は「所得増税を大きく実感するのは、日本円換算で年収2,000万円程度からではないか」とし、特に日本人の経営幹部や欧米人駐在員などで影響が大きいと指摘した。
富裕層への課税強化では、キャピタルゲイン課税の導入にも注目だ。今回提案された内容は未公開株の売却益のみが対象で、導入時期も24年以降となっているが、長年議論されながらも導入が先送りされてきた制度だけに「思い切った改正」(加藤氏)という。今後、上場企業にも対象範囲を広げるなど課税が強化される可能性もある。
今回、高級ブランド品に課税する奢侈(しゃし)税の導入も発表された。マレーシア初の試みとなるが詳細は不明だ。「(富裕層向け課税という)一般市民へのアピールになる」(加藤氏)とみられる。
■中小企業減税や自主開示制度も実施
企業向けの税制改正に関しては、年間所得15万リンギまでの法人税率が15%となる。現行の17%から2ポイントの引き下げ。昨年発表の当初予算よりも所得の上限を引き上げたことで、中小企業に手厚い内容となった。
一方、経済協力開発機構(OECD)などで国際的に議論が進むグローバルミニマム課税については、引き続き導入の方向で進んでいるとみられる。グローバルミニマム課税は、タックスヘイブン(租税回避地)を利用して本国での課税を逃れている大企業を規制するための国際的な動き。マレーシアは全域で優遇措置がある「タックスヘイブン国」ではないものの、諸外国に足並みを合わせる形で導入を表明している。24年以降に、適格国内ミニマムトップアップ税(QDMTT)として、税率15%で実施する方針だ。
税務の実務面では、タックス・アムネスティ(租税特赦)制度「特別自主開示プログラム」が再開される点に注目だという。今年6月1日~24年5月31日の期間中、内国歳入庁および関税局が所管する直接税・間接税について申告漏れを自主修正すれば罰金が免除される。
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マレーシアの会計事務所、加藤ビジネスアドバイザリーの加藤芳之氏(日本国公認会計士)は修正予算案に関し、「高所得層からの所得移転というメッセージを強く感じる内容だった」とコメントした。
個人所得税の見直しでは、年間所得3万5,001~10万リンギの中間層が2%の減税となる。減税対象の所得下限が引き下げられたことで、節税額は最大で年間1,300リンギとなり、イスマイルサブリ前政権が昨年10月に発表した予算案よりも約300リンギの増額となった。
一方、高所得に分類される年間所得10万1~100万リンギについては、税率を0.5~2%引き上げる。60万1~100万リンギは、税率が現行の26%から28%となり、引き上げ幅が最も大きい。
日本円換算では年収300万円程度を超えると対象になるため、雇用パス(EP)を取得して現地で就労する日本人は、大半が増税対象になるとみられる。増税額は最大で1万950リンギだが、年間所得に応じて異なる。
例えば、年収40万リンギであれば増税額は950リンギ、60万リンギであれば2,950リンギとなる。加藤氏は「所得増税を大きく実感するのは、日本円換算で年収2,000万円程度からではないか」とし、特に日本人の経営幹部や欧米人駐在員などで影響が大きいと指摘した。
富裕層への課税強化では、キャピタルゲイン課税の導入にも注目だ。今回提案された内容は未公開株の売却益のみが対象で、導入時期も24年以降となっているが、長年議論されながらも導入が先送りされてきた制度だけに「思い切った改正」(加藤氏)という。今後、上場企業にも対象範囲を広げるなど課税が強化される可能性もある。
今回、高級ブランド品に課税する奢侈(しゃし)税の導入も発表された。マレーシア初の試みとなるが詳細は不明だ。「(富裕層向け課税という)一般市民へのアピールになる」(加藤氏)とみられる。
■中小企業減税や自主開示制度も実施
企業向けの税制改正に関しては、年間所得15万リンギまでの法人税率が15%となる。現行の17%から2ポイントの引き下げ。昨年発表の当初予算よりも所得の上限を引き上げたことで、中小企業に手厚い内容となった。
一方、経済協力開発機構(OECD)などで国際的に議論が進むグローバルミニマム課税については、引き続き導入の方向で進んでいるとみられる。グローバルミニマム課税は、タックスヘイブン(租税回避地)を利用して本国での課税を逃れている大企業を規制するための国際的な動き。マレーシアは全域で優遇措置がある「タックスヘイブン国」ではないものの、諸外国に足並みを合わせる形で導入を表明している。24年以降に、適格国内ミニマムトップアップ税(QDMTT)として、税率15%で実施する方針だ。
税務の実務面では、タックス・アムネスティ(租税特赦)制度「特別自主開示プログラム」が再開される点に注目だという。今年6月1日~24年5月31日の期間中、内国歳入庁および関税局が所管する直接税・間接税について申告漏れを自主修正すれば罰金が免除される。"
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