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地方に浸透するコーヒー文化小規模都市での消費が急拡大

中国の小規模都市を含む地方部でコーヒーの消費が急拡大している。下沈市場(3級都市=地方都市以下の地域と農村部)の開拓に力を入れる大手コーヒーチェーンの動きが背景の一つで、地方に根差したコーヒーブランドも誕生している。新型コロナウイルスがまん延する中でも“実需”としてのコーヒーの消費は衰えなかったとの指摘がある。コーヒー文化が地方に広がることで、市場は今後も成長に向かいそうだ。
第一財経日報系でデータ分析を手がけるDT財経が生活関連サービス「美団」のデータなどを基に報告をまとめた。
小規模都市のコーヒー消費の伸びが、沿海部大都市を大きく上回っていることが見て取れる。
美団を通じたコーヒーの2021年の注文件数は、地方の小規模都市を指す4級都市が前年比3.6倍、5級都市が3.5倍。沿海部大都市の1級都市(北京、上海、広東省深セン、同省広州)が2.7倍、新1級都市(1級都市に次ぐ規模の都市)が2.9倍、地方大都市の2級都市が2.4倍、地方都市の3級都市が3倍だった。全体的に強い伸びを示す中で、とりわけ地方小規模都市での消費拡大が目立った。
注文件数自体は大都市が中心で、1級都市は約2,300万件、新1級都市は約2,200万件で、2~3級都市は1,000万~1,400万件の規模。4級都市は500万件未満、5級都市は約250万件となり、地方小規模都市が全体に占める割合はまだ小さいが、今後も伸びが期待できる流れにある。
地方での消費拡大は大手チェーンによる市場開拓の進行が背景にある。1~2級都市のコーヒー市場の開拓に飽和感が漂う中、各社はコーヒーの消費習慣が浸透していない県レベルの市場に注目。新興の「ラッキンコーヒー(瑞幸コーヒー)」や米「スターバックス」などの大手は地方の開拓に力を入れている。スターバックスは県レベル市場の消費者は消費の潜在力が高いとみて、市場の開拓を急ぐ方針だ。

中国の小規模都市を含む地方部でコーヒーの消費が急拡大している。下沈市場(地方都市以下の地域と農村部)の開拓に力を入れる大手コーヒーチェーンの動きが背景の一つで、地方に根差したコーヒーブランドも誕生している。コーヒー文化が地方に広がることで、市場は今後も成長に向かいそうだ=上海市

地方での展開を主力とするブランドも複数登場している。このうち「幸運カ(カ=口へんに加)」は4~5級都市を中心に出店。「庫迪コーヒー」は3級都市以下で150店以上を運営する。地方ブランドは安さを武器にするケースが目立ち、幸運カはコーヒー1杯5元(約97円)、庫迪コーヒーは9.9元からそれぞれ提供している。
3級以下の都市にあるコーヒーショップの数は今年1月時点で約4,000店となり、全体の4分の1にとどまるとされる。1人当たりの年間消費量は1級都市が326杯、2級都市が261杯に上るのに対し、全国平均では9杯。業界は地方市場に発展余地が大きいとみている。
コーヒーショップの分布は大都市がオフィスエリアに集中しているのに対し、地方になればなるほどショッピングエリアに集まっている特徴がある。地方都市でのコーヒーショップの利用は「雰囲気を楽しむため」や「友人らとのおしゃべり」が主体という。
■コロナ禍の影響限定的
新型コロナの流行が断続的に広がった22年もコーヒー市場を巡る企業の動きは活発化した。
飲食店関連のアプリ「窄門餐眼」によると、主要コーヒーチェーンが22年に出店した店舗数は計6,000店を突破。ラッキンコーヒーやスターバックス、マクドナルドのブランド「麦コーヒー(マックカフェ)」が出店数上位で、このうちラッキンコーヒーは2,200店近く出した。「マナーコーヒー」は241店、「Mスタンド」は162店だった。
コンサルティング会社の灼識諮詢(CIC)の張辰ガイ総監(ガイ=りっしんべんに山に己)は、中国コーヒー業界のブランド化、チェーン化が出店増の背景にあり、ブランド企業の出店加速がコーヒー文化の全国的な普及につながり、今後の市場を押し上げる原動力になるとの見方を示した。
企業情報サイトの企査査によると、コーヒー提供を業務内容に含む企業の22年1~11月の新設数は1万3,736社。
コーヒーの普及は特に新型コロナが全国的にまん延した22年末にコーヒーの販売が伸びたことからも見て取れる。オンラインによるデリバリーサービスが発展していることも追い風となった。東呉証券によると、マナーコーヒーは22年11月の1~2級都市での注文件数が前月比で5%増えた。「芳野コーヒー」の創業者、付琳氏は「通年にわたってコーヒー豆の販売は新型コロナ禍の影響を受けなかった。市民の間でコーヒーが根付いた表れ」と述べた。
■新競争局面へ
ただ競争局面にも新たな変化が生まれている。CICの張氏は「消費者の間では、コーヒーの品質を追求する動きが出ている」と指摘。コーヒーの産地やコーヒー豆の品種特性、焙煎(ばいせん)具合などといった風味の差異を楽しむ層が増えている。コーヒーの大衆化と供給側の同質化が進む中、今後は他社との差別化や高品質、コストパフォーマンスの特性を持つブランドが市場で優勢になると見通した。
上海市を本拠とする「永璞コーヒー」の創業者は、「出店競争が激化する中でもコーヒーの全国的な浸透率は10%に満たない」とみて、将来的な市場拡大の余地が大きいとの考え。良質な商品・サービスの提供体制、良好な出店地の選択、合理的な企業戦略がコーヒーブランドの発展につながると述べた。
下沈市場は全人口の7割近くを占めるという圧倒的な人口の厚みが魅力で、地方の所得向上とともに消費市場としても注目を集め始めている。中でもコーヒー業界は下沈市場の開拓が先行しているとされる。これまで地方になかったコーヒー文化が徐々に根付きつつある現状を踏まえると、大都市にしかなった商品・サービスが今後地方にも広がる可能性はありそうだ。

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第一財経日報系でデータ分析を手がけるDT財経が生活関連サービス「美団」のデータなどを基に報告をまとめた。
小規模都市のコーヒー消費の伸びが、沿海部大都市を大きく上回っていることが見て取れる。
美団を通じたコーヒーの2021年の注文件数は、地方の小規模都市を指す4級都市が前年比3.6倍、5級都市が3.5倍。沿海部大都市の1級都市(北京、上海、広東省深セン、同省広州)が2.7倍、新1級都市(1級都市に次ぐ規模の都市)が2.9倍、地方大都市の2級都市が2.4倍、地方都市の3級都市が3倍だった。全体的に強い伸びを示す中で、とりわけ地方小規模都市での消費拡大が目立った。
注文件数自体は大都市が中心で、1級都市は約2,300万件、新1級都市は約2,200万件で、2~3級都市は1,000万~1,400万件の規模。4級都市は500万件未満、5級都市は約250万件となり、地方小規模都市が全体に占める割合はまだ小さいが、今後も伸びが期待できる流れにある。
地方での消費拡大は大手チェーンによる市場開拓の進行が背景にある。1~2級都市のコーヒー市場の開拓に飽和感が漂う中、各社はコーヒーの消費習慣が浸透していない県レベルの市場に注目。新興の「ラッキンコーヒー(瑞幸コーヒー)」や米「スターバックス」などの大手は地方の開拓に力を入れている。スターバックスは県レベル市場の消費者は消費の潜在力が高いとみて、市場の開拓を急ぐ方針だ。
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地方での展開を主力とするブランドも複数登場している。このうち「幸運カ(カ=口へんに加)」は4~5級都市を中心に出店。「庫迪コーヒー」は3級都市以下で150店以上を運営する。地方ブランドは安さを武器にするケースが目立ち、幸運カはコーヒー1杯5元(約97円)、庫迪コーヒーは9.9元からそれぞれ提供している。
3級以下の都市にあるコーヒーショップの数は今年1月時点で約4,000店となり、全体の4分の1にとどまるとされる。1人当たりの年間消費量は1級都市が326杯、2級都市が261杯に上るのに対し、全国平均では9杯。業界は地方市場に発展余地が大きいとみている。
コーヒーショップの分布は大都市がオフィスエリアに集中しているのに対し、地方になればなるほどショッピングエリアに集まっている特徴がある。地方都市でのコーヒーショップの利用は「雰囲気を楽しむため」や「友人らとのおしゃべり」が主体という。
■コロナ禍の影響限定的
新型コロナの流行が断続的に広がった22年もコーヒー市場を巡る企業の動きは活発化した。
飲食店関連のアプリ「窄門餐眼」によると、主要コーヒーチェーンが22年に出店した店舗数は計6,000店を突破。ラッキンコーヒーやスターバックス、マクドナルドのブランド「麦コーヒー(マックカフェ)」が出店数上位で、このうちラッキンコーヒーは2,200店近く出した。「マナーコーヒー」は241店、「Mスタンド」は162店だった。
コンサルティング会社の灼識諮詢(CIC)の張辰ガイ総監(ガイ=りっしんべんに山に己)は、中国コーヒー業界のブランド化、チェーン化が出店増の背景にあり、ブランド企業の出店加速がコーヒー文化の全国的な普及につながり、今後の市場を押し上げる原動力になるとの見方を示した。
企業情報サイトの企査査によると、コーヒー提供を業務内容に含む企業の22年1~11月の新設数は1万3,736社。
コーヒーの普及は特に新型コロナが全国的にまん延した22年末にコーヒーの販売が伸びたことからも見て取れる。オンラインによるデリバリーサービスが発展していることも追い風となった。東呉証券によると、マナーコーヒーは22年11月の1~2級都市での注文件数が前月比で5%増えた。「芳野コーヒー」の創業者、付琳氏は「通年にわたってコーヒー豆の販売は新型コロナ禍の影響を受けなかった。市民の間でコーヒーが根付いた表れ」と述べた。
■新競争局面へ
ただ競争局面にも新たな変化が生まれている。CICの張氏は「消費者の間では、コーヒーの品質を追求する動きが出ている」と指摘。コーヒーの産地やコーヒー豆の品種特性、焙煎(ばいせん)具合などといった風味の差異を楽しむ層が増えている。コーヒーの大衆化と供給側の同質化が進む中、今後は他社との差別化や高品質、コストパフォーマンスの特性を持つブランドが市場で優勢になると見通した。
上海市を本拠とする「永璞コーヒー」の創業者は、「出店競争が激化する中でもコーヒーの全国的な浸透率は10%に満たない」とみて、将来的な市場拡大の余地が大きいとの考え。良質な商品・サービスの提供体制、良好な出店地の選択、合理的な企業戦略がコーヒーブランドの発展につながると述べた。
下沈市場は全人口の7割近くを占めるという圧倒的な人口の厚みが魅力で、地方の所得向上とともに消費市場としても注目を集め始めている。中でもコーヒー業界は下沈市場の開拓が先行しているとされる。これまで地方になかったコーヒー文化が徐々に根付きつつある現状を踏まえると、大都市にしかなった商品・サービスが今後地方にも広がる可能性はありそうだ。
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