次世代電池として注目が集まるナトリウムイオン電池の開発・生産を巡って、中国企業の動きが活発化している。従来の電池に比べコストが低いことや性能が気温に左右されにくいことなどから、自動車業界などからの引き合いが今後強まるとみられる中、寧徳時代新能源科技(CATL)をはじめとする電池大手が開発に着手。今年は“量産元年”を迎えるといわれており、今後急速に生産能力が拡大する見通しだ。
現在国内でナトリウムイオン電池を生産するのは北京中科海ノウ科技(ノウ=金へんに内)のみとされ、年産能力は2ギガワット時。ただ複数の上場企業が開発・生産計画を策定している。
今年に入ってからは関連事業の投資案件が相次ぎ発表されており、直近1カ月では、深セン市雄韜電源科技や広東科翔電子科技など複数社がナトリウムイオン電池工場を建設する計画を明らかにした。澎湃新聞などによると、電動二輪車メーカーの雅迪科技集団は今月17日、傘下電池メーカーの華宇新能源科技とともにナトリウムイオン電池事業の新会社を立ち上げると発表した。
浙商証券によると、国軒高科や恵州億緯リ能(リ=金へんに里、EVEエナジー)、欣旺達電子(SUNWODA)のリチウムイオン電池3社がナトリウムイオン電池の研究開発(R&D)と技術蓄積に乗り出している。上海派能能源科技と江蘇百川高科新材料は初期の試験生産を進めており、広州鵬輝能源科技と同興環保科技、江蘇伝芸科技の3社は中期の試験生産段階にある。
CATLは年内に量産体制に入る見通し。小型車への搭載から始める計画で、まずは上海汽車集団の小型車「科莱威(クレバー)」に搭載することが決まったとの観測が出ている。山西華陽集団新能や孚能科技(カン州)(カン=へんが章でつくりが夂の下に貢)など複数社も近く量産を始める予定だ。
雅迪科技集団は新会社を通じ、電動二輪車向けとしては初のナトリウムイオン電池の大規模生産を今夏に始める方針。10分で8割の充電が可能という。
完成車メーカーにも動きがあり、安徽江淮汽車集団は2月末、ナトリウムイオン電池を搭載した試作車を中国自動車業界で初めて公開した。試作車は乗用車ブランド「思皓(SOL)」の一車種として発表しており、電池容量は25キロワット時で、航続距離は252キロメートル。最速15~20分で充電が完了する。
新エネルギー分野の調査会社、起点研究院(SPIR)は、ナトリウムイオン電池の正極材、負極材、電解液などのサプライチェーン(供給網)が整い始める中、「2023年はナトリウムイオン電池の量産元年になる」と指摘。国内の23年の出荷量は12ギガワット時になると見通した。
■市場急拡大へ
ナトリウムイオン電池は現在主流のリチウムイオン電池に替わる2次電池として注目を集めている。
最大の強みは低コスト。主材料のナトリウムが世界中に遍在していることから、電池メーカーは原材料の調達コストを抑えられる。北京中科海ノウ科技によると、電池向け炭酸リチウム価格が現在の約半分となる1トン当たり15万元(約288万円)まで下がっても、ナトリウムイオン電池の原材料コストはリチウムイオン電池より3~4割低いという。
気温の変化に対する耐性も魅力。氷点下40度の状況下でも電池性能は平温時の7割を維持し、80度の高温下でも使用できるという。発熱や爆発といった事故の危険性が低いこともメリットとなる。
今後はナトリウムイオン電池の存在感が急速に強まるとみられ、新エネルギー関連の研究を行う中国のシンクタンク、EVタンクは2月に発表したリポートで「ナトリウムイオン電池の30年の国内出荷量が347ギガワット時になる」と予測した。EVタンクは今年の出荷量を約3ギガワット時、25年の出荷量を約20ギガワット時とそれぞれ予測しており、20年代後半に急速に増えるとみている。初期は電池消費量が比較的少ない二輪車・三輪車への搭載が進み、その後、性能の向上に伴って自動車や蓄電設備への搭載が拡大するとの見方を示した。
市場では、中国の電動二輪車向け電池市場ではナトリウムイオン電池のシェアが25年に35%となり、リチウムイオン電池の15%を大幅に上回るとの予測がある。天風証券は、24年から低価格帯の乗用車からナトリウムイオン電池の採用が進むと予測した。将来的には最大の出荷先は蓄電設備になる見通しだ。
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今年に入ってからは関連事業の投資案件が相次ぎ発表されており、直近1カ月では、深セン市雄韜電源科技や広東科翔電子科技など複数社がナトリウムイオン電池工場を建設する計画を明らかにした。澎湃新聞などによると、電動二輪車メーカーの雅迪科技集団は今月17日、傘下電池メーカーの華宇新能源科技とともにナトリウムイオン電池事業の新会社を立ち上げると発表した。
浙商証券によると、国軒高科や恵州億緯リ能(リ=金へんに里、EVEエナジー)、欣旺達電子(SUNWODA)のリチウムイオン電池3社がナトリウムイオン電池の研究開発(R&D)と技術蓄積に乗り出している。上海派能能源科技と江蘇百川高科新材料は初期の試験生産を進めており、広州鵬輝能源科技と同興環保科技、江蘇伝芸科技の3社は中期の試験生産段階にある。
CATLは年内に量産体制に入る見通し。小型車への搭載から始める計画で、まずは上海汽車集団の小型車「科莱威(クレバー)」に搭載することが決まったとの観測が出ている。山西華陽集団新能や孚能科技(カン州)(カン=へんが章でつくりが夂の下に貢)など複数社も近く量産を始める予定だ。
雅迪科技集団は新会社を通じ、電動二輪車向けとしては初のナトリウムイオン電池の大規模生産を今夏に始める方針。10分で8割の充電が可能という。
完成車メーカーにも動きがあり、安徽江淮汽車集団は2月末、ナトリウムイオン電池を搭載した試作車を中国自動車業界で初めて公開した。試作車は乗用車ブランド「思皓(SOL)」の一車種として発表しており、電池容量は25キロワット時で、航続距離は252キロメートル。最速15~20分で充電が完了する。
新エネルギー分野の調査会社、起点研究院(SPIR)は、ナトリウムイオン電池の正極材、負極材、電解液などのサプライチェーン(供給網)が整い始める中、「2023年はナトリウムイオン電池の量産元年になる」と指摘。国内の23年の出荷量は12ギガワット時になると見通した。
■市場急拡大へ
ナトリウムイオン電池は現在主流のリチウムイオン電池に替わる2次電池として注目を集めている。
最大の強みは低コスト。主材料のナトリウムが世界中に遍在していることから、電池メーカーは原材料の調達コストを抑えられる。北京中科海ノウ科技によると、電池向け炭酸リチウム価格が現在の約半分となる1トン当たり15万元(約288万円)まで下がっても、ナトリウムイオン電池の原材料コストはリチウムイオン電池より3~4割低いという。
気温の変化に対する耐性も魅力。氷点下40度の状況下でも電池性能は平温時の7割を維持し、80度の高温下でも使用できるという。発熱や爆発といった事故の危険性が低いこともメリットとなる。
今後はナトリウムイオン電池の存在感が急速に強まるとみられ、新エネルギー関連の研究を行う中国のシンクタンク、EVタンクは2月に発表したリポートで「ナトリウムイオン電池の30年の国内出荷量が347ギガワット時になる」と予測した。EVタンクは今年の出荷量を約3ギガワット時、25年の出荷量を約20ギガワット時とそれぞれ予測しており、20年代後半に急速に増えるとみている。初期は電池消費量が比較的少ない二輪車・三輪車への搭載が進み、その後、性能の向上に伴って自動車や蓄電設備への搭載が拡大するとの見方を示した。
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