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外国人の本土団体旅行が再開旅行業回復へ、消費増にも追い風

中国政府は、外国人による中国本土への団体旅行の受け入れを再開した。国内の旅行代理店に対し、外国人を対象とする団体旅行の手配、航空券とホテルのセット販売などを許可した。国際クルーズ船の本土入港規制も緩和し、インバウンド市場の開放を一層推し進めた。新型コロナウイルスの発生を機に苦境に陥った旅行業界の回復を後押しするほか、インバウンド収入の増加を通じて国内消費の底上げを図る。
文化観光省が3月31日に本土への団体旅行の規制緩和を発表し、即日施行した。国内の旅行代理店が海外の同業者と共同で、旅行商品の開発などを手がけることも奨励。外国人の中国旅行に対するイメージ向上に努める方針を示した。
国際クルーズ船の寄港を巡っては、交通運輸省が3月30日に規制緩和を発表。まず上海市と広東省深セン市の港で半年から1年間、受け入れを再開する。その後は、旅行市場などの状況を見ながら、一層の緩和を行っていく方針だ。
中国政府は2020年の新型コロナウイルスの流行を機に、外国人の団体旅行、国際クルーズ船の寄港を禁止した。再開はいずれも約3年ぶり。
■ベトナムから早速入境
規制緩和に対する反応は上々だ。
ネットメディアの澎湃新聞によると、中国オンライン旅行会社(OTA)大手の携程集団(トリップドットコム・グループ)のプラットフォームでは、文化観光省の発表後30分間に本土行き航空券の検索数が従来の3倍に増えた。
発表の翌日には隣国の団体旅行者が早速入境。中国国営中央テレビ(CCTV)系のニュースサイト央視新聞によると、1日にはベトナムの団体旅行者計120人余りが同国に隣接する広西チワン族自治区に入境した。
中国はベトナムをはじめ14カ国と国境を接しており、携程集団傘下の研究機関は、遠方からの旅行だけでなく、隣国からの国境付近の都市への旅行も増えると見通した。
中国政府は2月以降、中国人の海外への団体旅行を段階的に解禁し、現在までに60カ国への団体旅行を可能にした。今回の政府の措置で、今後はアウトバウンドだけでなく、インバウンド市場も盛り上がる見通し。
中国OTA大手の同程旅行の研究機関は「海外旅行市場が双方向(アウトバウンドとインバウンド)で回復段階に入った」として、政府の措置を評価。旅行代理店、ホテル、交通など新型コロナ流行後に苦しんでいた業界の回復基調が一層固まったとの見方を示した。
■本来は10兆円市場
インバウンド市場の拡大は、今年の中国経済の鍵を握る消費回復に一定の貢献を果たすことになる。
文化観光省によると、2019年に中国本土を訪れた外国人旅行者(商務目的なども含む)は延べ3,188万人。外国人の本土での消費額は771億米ドル(約10兆2,400億円)に上る。20年春以降はこうした外国人の消費がほぼ消失し、中国経済の足かせになってきた。
ノービザによる個人旅行の受け入れや国際線の座席供給量の完全回復がまだ実現しておらず、直ちに19年の水準を回復するのは困難。ただ、今年に入ってからの消費回復の流れを一層盤石にする効果は見込めそうだ。
携程集団の19年のデータによると、外国人の人気訪問先は1位から上海、北京、広東省広州の順。こうした沿海部大都市の消費が団体旅行の受け入れ再開に伴って伸びる可能性がある。
中でも、日本からの団体旅行者の増加はインバウンド消費の拡大を図る上で重要。中国国家統計局によると、18年に日本から中国本土を訪れた旅行者は延べ269万人に達する。
国家統計局は19年の具体的な国別の旅行者数を公表していないが、携程集団によると、同年は日本のゴールデンウイークが長期化したことを背景に、日本からの旅行者が国別で最多になったという。
日本政府は中国からの入国者に対する新型コロナの水際対策を4月上旬にも緩和する方向で検討を進めている。実際に緩和されれば、日本人の帰国時の負担が解消され、訪中旅行の増加には追い風となる。

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■ベトナムから早速入境
規制緩和に対する反応は上々だ。
ネットメディアの澎湃新聞によると、中国オンライン旅行会社(OTA)大手の携程集団(トリップドットコム・グループ)のプラットフォームでは、文化観光省の発表後30分間に本土行き航空券の検索数が従来の3倍に増えた。
発表の翌日には隣国の団体旅行者が早速入境。中国国営中央テレビ(CCTV)系のニュースサイト央視新聞によると、1日にはベトナムの団体旅行者計120人余りが同国に隣接する広西チワン族自治区に入境した。
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中国政府は2月以降、中国人の海外への団体旅行を段階的に解禁し、現在までに60カ国への団体旅行を可能にした。今回の政府の措置で、今後はアウトバウンドだけでなく、インバウンド市場も盛り上がる見通し。
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■本来は10兆円市場
インバウンド市場の拡大は、今年の中国経済の鍵を握る消費回復に一定の貢献を果たすことになる。
文化観光省によると、2019年に中国本土を訪れた外国人旅行者(商務目的なども含む)は延べ3,188万人。外国人の本土での消費額は771億米ドル(約10兆2,400億円)に上る。20年春以降はこうした外国人の消費がほぼ消失し、中国経済の足かせになってきた。
ノービザによる個人旅行の受け入れや国際線の座席供給量の完全回復がまだ実現しておらず、直ちに19年の水準を回復するのは困難。ただ、今年に入ってからの消費回復の流れを一層盤石にする効果は見込めそうだ。
携程集団の19年のデータによると、外国人の人気訪問先は1位から上海、北京、広東省広州の順。こうした沿海部大都市の消費が団体旅行の受け入れ再開に伴って伸びる可能性がある。
中でも、日本からの団体旅行者の増加はインバウンド消費の拡大を図る上で重要。中国国家統計局によると、18年に日本から中国本土を訪れた旅行者は延べ269万人に達する。
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