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《日系進出》佐渡のすし店が海外初進出地物と「和」を融合、ブンタウに

新潟県佐渡島に本店を置くすし店「弁慶」がこのほど、ベトナム南部バリアブンタウ省ブンタウ市に海外1号店をオープンした。ホーチミン市近郊の海岸リゾートとして国内外の観光客の人気が高まっている一方で、本格的な和食やすしを提供する店がないことに着目し、未開拓の地での挑戦を決めた。新潟で培った地物を生かす伝統とノウハウを武器に「佐渡から世界」に挑戦する。

ブンタウ店で寿司調理を担う弁慶の齋藤専務=4月、バリアブンタウ省

弁慶は1989年創業で、新潟・佐渡産の鮮魚と米にこだわったすし店を新潟県や東京都などで11店舗を展開している。ベトナム進出のきっかけは、アフターコロナを見据えた成長戦略として海外進出を検討していた小崎和彦社長が、県内でベトナム進出支援を手がけるベトナム人経営者から同国の潜在性を聞いたことだった。
■海岸リゾート、「本格すし」なく
1号店の出店先に選んだのは、最大都市のホーチミン市や首都ハノイ市ではなく、南部の「熱海」とも称される大都市近郊の観光地。ホーチミン市から車で2時間ほどの距離に位置し、週末に気軽に行けるリゾートとして人気が高まる一方で、本格的な和食やすし店がないと聞き、即断即決した。ベトナム人の経営者と共同出資で現地法人「ベトナム弁慶コーポレーション」を設立後、3月下旬に「SUSHI BENKEI」を開店した。
ホーチミン市など大都市では高額な賃料がネックとなることに加え、すでに多くの和食・すし店が進出しており、競争は激しい。ブンタウには地場企業が手がける日本式レストランはあるものの、日本人の板前が振る舞う本格的な和食やすし店はなく、「開拓のチャンスがある」とみた。
■地元水揚げの食材生かす
地元産の鮮魚やコメを生かす弁慶のノウハウはベトナムでも踏襲。ブンタウの港に毎朝通い、その日水揚げされたハタやイカ、シャコ、エビなど新鮮なネタの提供にこだわっている。使用するシャリもベトナム産のコシヒカリだ。
マグロやウニなどは日本から輸入しているが、ブンタウ店ですし調理を担う齋藤浩央専務は、「コスト面を考えても、できる限り地元の食材を生かしたい」と話し、今後も地元食材の調達を広げていく方針だ。
すしの価格は、ホーチミン市の日本すし店よりは低水準に設定しており、現在の客層はおよそ6~7割がベトナム人という。齋藤氏は、日本では少し流行が過ぎたと感じる「舟盛り」など、写真映えも重視するベトナム人の嗜好(しこう)に合わせることも意識しながら、「日本の本物のすしの提供にもこだわりたい」と強調。海外のすし店に多い「ロール系」はあえて扱わず、握りや細巻きで勝負している。
ブンタウにはこれまで本格的なすし店がなかった分、本格的なすしの魅力が浸透するまでは時間がかかるかもしれない。それでも自分たちがぶれてはだめだと考えている。「これが『日本のすし』という軸を大事にする」ことが競合の中で埋没を避ける道だと思うからだ。
■将来的に出店拡大も

市内初の本格的な寿司店として注目を集める(弁慶提供)

店の庭先には、新潟の県魚であるニシキゴイを日本から輸送して、「ニシキゴイ池」を設置するなど、来店客に県の伝統文化の魅力を感じてもらうことにもこだわった。
小崎氏は今後の展望について、「まずはブンタウの1号店でしっかりとした基盤を作っていくことが重要」と強調しながらも、「将来的にはホーチミン市など他省市にも出店を拡大していていきたい」と先を見据えた。

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■海岸リゾート、「本格すし」なく
1号店の出店先に選んだのは、最大都市のホーチミン市や首都ハノイ市ではなく、南部の「熱海」とも称される大都市近郊の観光地。ホーチミン市から車で2時間ほどの距離に位置し、週末に気軽に行けるリゾートとして人気が高まる一方で、本格的な和食やすし店がないと聞き、即断即決した。ベトナム人の経営者と共同出資で現地法人「ベトナム弁慶コーポレーション」を設立後、3月下旬に「SUSHI BENKEI」を開店した。
ホーチミン市など大都市では高額な賃料がネックとなることに加え、すでに多くの和食・すし店が進出しており、競争は激しい。ブンタウには地場企業が手がける日本式レストランはあるものの、日本人の板前が振る舞う本格的な和食やすし店はなく、「開拓のチャンスがある」とみた。
■地元水揚げの食材生かす
地元産の鮮魚やコメを生かす弁慶のノウハウはベトナムでも踏襲。ブンタウの港に毎朝通い、その日水揚げされたハタやイカ、シャコ、エビなど新鮮なネタの提供にこだわっている。使用するシャリもベトナム産のコシヒカリだ。
マグロやウニなどは日本から輸入しているが、ブンタウ店ですし調理を担う齋藤浩央専務は、「コスト面を考えても、できる限り地元の食材を生かしたい」と話し、今後も地元食材の調達を広げていく方針だ。
すしの価格は、ホーチミン市の日本すし店よりは低水準に設定しており、現在の客層はおよそ6~7割がベトナム人という。齋藤氏は、日本では少し流行が過ぎたと感じる「舟盛り」など、写真映えも重視するベトナム人の嗜好(しこう)に合わせることも意識しながら、「日本の本物のすしの提供にもこだわりたい」と強調。海外のすし店に多い「ロール系」はあえて扱わず、握りや細巻きで勝負している。
ブンタウにはこれまで本格的なすし店がなかった分、本格的なすしの魅力が浸透するまでは時間がかかるかもしれない。それでも自分たちがぶれてはだめだと考えている。「これが『日本のすし』という軸を大事にする」ことが競合の中で埋没を避ける道だと思うからだ。
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