マレーシアでは近年、多くの半導体企業の進出を受けて、人材への需要が急増している。特に女性の採用や国を超えた人材の共有が求められるようになった。ただ、東南アジアでは各国でエンジニアを共有する例が欧州連合(EU)などに比べると極めて低く、業界関係者からは若手人材へのインターンシップ(職業体験)提供や事業のデジタル化などを推進する施策が必要との見方が示されている。
「セミコン・東南アジア2023」で行われた東南アジア各国の関係者討論会でも、人材確保の必要性について意見が出た(SEMI東南アジア支部のフェイスブックより)
5月下旬にペナン州で開かれた東南アジア最大規模の半導体産業展示会「セミコン・東南アジア2023」に出展した米半導体製造装置大手ラムリサーチの現地法人ラムリサーチ・インターナショナル・マレーシアのスーンKクエック・マネジングディレクター兼ゼネラルマネジャーによると、マレーシアには約50年前から各国の半導体メーカーが参入していたことから、人材の確保には長く困らなかった。しかし、近年は進出企業が増えたことで人材獲得競争が激しくなっているという。
スーン氏は、人材を確保するために女性の採用を強化していると説明。「政府は女性に科学・技術・工学・数学を体系的に学ぶ『STEM教育』を受けることを推奨するだけでなく、技術職への就職をアピールする必要がある。また、労働政策の強化や雇用主への支援など総合的なアプローチを求めたい」と述べた。
一方、スイスのSTマイクロエレクトロニクスの現地法人のタン・チュンセン副社長兼ゼネラルマネジャーは東南アジア全体での人材共有を奨励している。
これに対し、マレーシア投資貿易産業省傘下のマレーシア投資開発庁(MIDA)のノル・スジヤン・ティ・ディレクター(電気・電子部門)は、「東南アジア諸国連合(ASEAN)から参加できるインターンシップを提供することで国境を超えた人材の共有を後押しできる。ASEAN各国の教育省は技術研究所などと協力することで、将来の才能を育てることも可能だ」と企業の人材獲得支援に意欲を示した。
また、ペナン州投資委員会(インベスト・ペナン)の同州首相特別投資顧問のセリ・リーカーチュン氏は、「近年は、技術を活用することで自国にいながら他国で行われている事業に携わる働き方もできる」と主張。シンガポール経済開発庁(EDB)のエドマンド・モック副社長補佐(半導体部門)も「半導体産業もデジタル化を推進し、パソコンがあれば遠隔でも仕事ができるような環境を目指すべきだ」と話す。
米会計事務所大手デロイトは、2021年の世界の半導体業界の直接雇用者数を200万人と推定。30年までにさらに100万人以上の熟練労働者が必要になると見込んでいる。
人材紹介大手ジェイエイシーリクルートメント(JAC)の現地法人、JACリクルートメント・マレーシアによると、21年に米インテルがマレーシアに置く半導体工場の機能強化を発表して以降、昨年から今年にかけて日系を含む取引先企業が相次いでマレーシアに進出。進出企業に人材を取られた企業が補充の人員を探しているため、ペナン州では特に半導体関係の求人が増えているという。
また、マレーシアでは引っ越しを伴う転職を望む人材は多くないため、ペナン州を含むマレー半島北部で人材の争奪戦が起こっている。特にファクトリーオートメーション(FA)などの機械・装置に詳しいセールスエンジニア、ソフトウエア、ハードウエア、ソリッドステートドライブ(SSD)などアプリに詳しい人材の需要が拡大している。
■地場QES、インド進出を検討
マレーシアの半導体関連企業は、新型コロナウイルス禍の収束を受けて海外事業の拡大にも動いている。半導体の検査装置や製造機器を取り扱う地場QESグループは、インドへの進出を検討している。同社のアリシア・チャン氏(グループ・マネジングディレクター上級個人秘書)は、既に東南アジア市場は十分にカバーできているとした上で、「インドは政府も半導体産業の発展に多くの資金を投じている。市場の潜在性が高く、急成長が見込める」と意気込む。「24年の半導体業界の本格回復を見越して進出の準備を進めている」と述べた。
QESは今年1月、中国に事務所を設立。このほか、シンガポールやタイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア、香港に拠点を構える。
国際的な半導体産業団体SEMI(本部・米国)のアジット・マノチャ社長兼最高経営責任者(CEO)によると、半導体業界はまだ需要の減退が見られ、各社の収益に多少の影響はあるが、24年には生産量が増加する見通しだ。
「セミコン・東南アジア2023」に参加したQESグループのチャン氏(左)は、インド進出を検討していると明らかにした=5月24日、ペナン州(NNA撮影)
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一方、スイスのSTマイクロエレクトロニクスの現地法人のタン・チュンセン副社長兼ゼネラルマネジャーは東南アジア全体での人材共有を奨励している。
これに対し、マレーシア投資貿易産業省傘下のマレーシア投資開発庁(MIDA)のノル・スジヤン・ティ・ディレクター(電気・電子部門)は、「東南アジア諸国連合(ASEAN)から参加できるインターンシップを提供することで国境を超えた人材の共有を後押しできる。ASEAN各国の教育省は技術研究所などと協力することで、将来の才能を育てることも可能だ」と企業の人材獲得支援に意欲を示した。
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米会計事務所大手デロイトは、2021年の世界の半導体業界の直接雇用者数を200万人と推定。30年までにさらに100万人以上の熟練労働者が必要になると見込んでいる。
人材紹介大手ジェイエイシーリクルートメント(JAC)の現地法人、JACリクルートメント・マレーシアによると、21年に米インテルがマレーシアに置く半導体工場の機能強化を発表して以降、昨年から今年にかけて日系を含む取引先企業が相次いでマレーシアに進出。進出企業に人材を取られた企業が補充の人員を探しているため、ペナン州では特に半導体関係の求人が増えているという。
また、マレーシアでは引っ越しを伴う転職を望む人材は多くないため、ペナン州を含むマレー半島北部で人材の争奪戦が起こっている。特にファクトリーオートメーション(FA)などの機械・装置に詳しいセールスエンジニア、ソフトウエア、ハードウエア、ソリッドステートドライブ(SSD)などアプリに詳しい人材の需要が拡大している。
■地場QES、インド進出を検討
マレーシアの半導体関連企業は、新型コロナウイルス禍の収束を受けて海外事業の拡大にも動いている。半導体の検査装置や製造機器を取り扱う地場QESグループは、インドへの進出を検討している。同社のアリシア・チャン氏(グループ・マネジングディレクター上級個人秘書)は、既に東南アジア市場は十分にカバーできているとした上で、「インドは政府も半導体産業の発展に多くの資金を投じている。市場の潜在性が高く、急成長が見込める」と意気込む。「24年の半導体業界の本格回復を見越して進出の準備を進めている」と述べた。
QESは今年1月、中国に事務所を設立。このほか、シンガポールやタイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア、香港に拠点を構える。
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