インドで設立し同国初のユニコーン(企業価値が高い新興企業)に成長した、ソフトバンクグループも出資するモバイル向け広告大手インモビ(InMobi、本社シンガポール)——。その子会社グランス(Glance、同シンガポール)は人工知能(AI)を活用し、アンドロイドスマートフォン(スマホ)のロック画面に広告やニュース、ゲームなど各コンテンツを表示できる技術が強みだ。グランスは8月、日本でのサービス提供開始を発表。今後数年間かけ、日本のアンドロイドスマホ新規販売台数のうち30~40%へのサービス提供を目指す。インモビグループ共同創業者でグランス社長のピユシュ・シャー氏と、グランス完全子会社グランス・ジャパンの市場開発責任者の井藤理人(まさと)氏がNNAの単独インタビューに応じた。
グランス独自技術によりスマホロック画面に表示されたコンテンツ。クリックすると詳細を見ることができる(同社提供)
——グランスの事業概要は。
シャー社長:グランスはアプリではなく、さまざまなメーカー製のアンドロイドスマホに販売前からインストールしている独自機能だ。スマホのロック画面にゲームやニュース、スポーツ、ライフスタイル、ファッション、エンターテインメント、ショッピングなど、各コンテンツを表示できる。
グランスの機能は、インドやインドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、メキシコ、ブラジルなど、世界各地のアンドロイドスマホ4億5,000万台超で搭載している。主力市場のインドとインドネシアでは計2億3,000万人(インド2億人、インドネシア3,000万人)の利用者がいる。
中でもインドは最大市場だ。韓国・サムスン電子や中国・小米科技(シャオミ)、中国・OPPO広東移動通信(オッポ)、米モトローラ・モビリティなど、私たちが提携するブランドのスマホに機能を搭載している。インドで販売するスマホのほぼ7割に私たちの機能をあらかじめ組み込んでいる。
私たちの目標は、世界中のスマホ10億台超にグランスの機能を搭載することだ。その計画の一環として、日本でサービス提供を始めた。
■アンドロイドスマホの価値「強化できる」
——日本市場をどうみているか。
シャー社長:日本は、私たちがサービス提供する最初の先進国だ。攻略が難しい市場であることを理解している。これまで多くの投資やコミットメント、忍耐が必要だった。井藤さんを筆頭とする現地法人も立ち上げた。私たちにとって非常に大きな一歩だ。日本市場はアップルスマホのシェアが高いが、グランスはアンドロイドスマホの価値を強化できる。
——日本での提携先は。
井藤責任者:通信会社ソフトバンクはもちろん、スマホメーカーは4月にシャオミ、7月にはモトローラと提携した。ロック画面に表示するコンテンツの関係で、日本の大手出版社とも手を結んだ。グランスの機能は、ソフトバンクが取り扱うシャオミとモトローラスマホの一部で利用できる。この先の数四半期で、他社製スマホへの普及を目指す。
日本の利用者がまず目にする画面はニュースやゲーム、トレンドコンテンツだ。ヤフーニュースやLINEマンガ、レシピ動画サービス「kurashiru(クラシル)」、宿泊予約サイト「一休.com」、野球試合のライブ動画配信「ベースボールLIVE」、情報サイト「オールアバウト」がコンテンツを提供する。
このようなコンテンツ提供業者はグランスによって大勢の適切な消費者にリーチできる。今後数四半期かけ、他のコンテンツ提供大手もグランスを通じた発信を始める見込みだ。
NNAの単独インタビューに応じたピユシュ・シャー氏(左)と井藤理人氏=8月(NNA撮影)
■高齢層から好意的な反応
——日本ビジネスの目標は。
シャー社長:この先数年間で、日本のアンドロイドスマホ新規販売台数の少なくとも30~40%でグランスの機能を利用できるようにする。日本の利用者は年齢層が高いので、適切なコンテンツを提供できるように努力する。
実際、日本の高齢層から好意的な反応を得ている。インターネットで検索しなくても、どのアプリをダウンロードすればいいか分からなくても、高齢層がコンテンツを見つけることができるのは本当に素晴らしいことだ。
——日本メンバーの人数は。増員する予定はあるか。
井藤責任者:7月に設立した東京オフィスは今、5人いる。
シャー社長:インド拠点メンバーを含めると、計15~20人が日本ビジネスに関わっている。今後2~3年かけ、日本メンバーだけで25~30人近くになると思う。
——ソフトバンクグループはどのようにサポートしているか。
シャー社長:ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)はインモビへの投資家だが、今回はソフトバンク通信部門とグランスが直接提携した。通信部門が私たちの価値を高く評価したからだ。SVFが仲介したことは確かだが、通信部門が私たちのサービスを理解し、提携することに価値を見いだした。
(聞き手=Atul Ranjan)
<メモ>グランス
2019年に設立。複数のデジタルサービスを運営するテクノロジー企業。提供サービスの一つのグランスは、スマホロック画面を通じ、利用者がアプリをダウンロードしたり、ネット検索したりすることなく、利用者ごとに応じたコンテンツを表示できる。グランスの機能は現在、世界中のスマホ4億5,000万台超で使える。
会社としてのグランスは、インモビの非連結子会社で本社はシンガポール。インドのジオ・プラットフォームズ、米国のグーグル、ミスリル・キャピタルから出資を受けている。
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シャー社長:グランスはアプリではなく、さまざまなメーカー製のアンドロイドスマホに販売前からインストールしている独自機能だ。スマホのロック画面にゲームやニュース、スポーツ、ライフスタイル、ファッション、エンターテインメント、ショッピングなど、各コンテンツを表示できる。
グランスの機能は、インドやインドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、メキシコ、ブラジルなど、世界各地のアンドロイドスマホ4億5,000万台超で搭載している。主力市場のインドとインドネシアでは計2億3,000万人(インド2億人、インドネシア3,000万人)の利用者がいる。
中でもインドは最大市場だ。韓国・サムスン電子や中国・小米科技(シャオミ)、中国・OPPO広東移動通信(オッポ)、米モトローラ・モビリティなど、私たちが提携するブランドのスマホに機能を搭載している。インドで販売するスマホのほぼ7割に私たちの機能をあらかじめ組み込んでいる。
私たちの目標は、世界中のスマホ10億台超にグランスの機能を搭載することだ。その計画の一環として、日本でサービス提供を始めた。
■アンドロイドスマホの価値「強化できる」
——日本市場をどうみているか。
シャー社長:日本は、私たちがサービス提供する最初の先進国だ。攻略が難しい市場であることを理解している。これまで多くの投資やコミットメント、忍耐が必要だった。井藤さんを筆頭とする現地法人も立ち上げた。私たちにとって非常に大きな一歩だ。日本市場はアップルスマホのシェアが高いが、グランスはアンドロイドスマホの価値を強化できる。
——日本での提携先は。
井藤責任者:通信会社ソフトバンクはもちろん、スマホメーカーは4月にシャオミ、7月にはモトローラと提携した。ロック画面に表示するコンテンツの関係で、日本の大手出版社とも手を結んだ。グランスの機能は、ソフトバンクが取り扱うシャオミとモトローラスマホの一部で利用できる。この先の数四半期で、他社製スマホへの普及を目指す。
日本の利用者がまず目にする画面はニュースやゲーム、トレンドコンテンツだ。ヤフーニュースやLINEマンガ、レシピ動画サービス「kurashiru(クラシル)」、宿泊予約サイト「一休.com」、野球試合のライブ動画配信「ベースボールLIVE」、情報サイト「オールアバウト」がコンテンツを提供する。
このようなコンテンツ提供業者はグランスによって大勢の適切な消費者にリーチできる。今後数四半期かけ、他のコンテンツ提供大手もグランスを通じた発信を始める見込みだ。
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■高齢層から好意的な反応
——日本ビジネスの目標は。
シャー社長:この先数年間で、日本のアンドロイドスマホ新規販売台数の少なくとも30~40%でグランスの機能を利用できるようにする。日本の利用者は年齢層が高いので、適切なコンテンツを提供できるように努力する。
実際、日本の高齢層から好意的な反応を得ている。インターネットで検索しなくても、どのアプリをダウンロードすればいいか分からなくても、高齢層がコンテンツを見つけることができるのは本当に素晴らしいことだ。
——日本メンバーの人数は。増員する予定はあるか。
井藤責任者:7月に設立した東京オフィスは今、5人いる。
シャー社長:インド拠点メンバーを含めると、計15~20人が日本ビジネスに関わっている。今後2~3年かけ、日本メンバーだけで25~30人近くになると思う。
——ソフトバンクグループはどのようにサポートしているか。
シャー社長:ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)はインモビへの投資家だが、今回はソフトバンク通信部門とグランスが直接提携した。通信部門が私たちの価値を高く評価したからだ。SVFが仲介したことは確かだが、通信部門が私たちのサービスを理解し、提携することに価値を見いだした。
(聞き手=Atul Ranjan)
<メモ>グランス
2019年に設立。複数のデジタルサービスを運営するテクノロジー企業。提供サービスの一つのグランスは、スマホロック画面を通じ、利用者がアプリをダウンロードしたり、ネット検索したりすることなく、利用者ごとに応じたコンテンツを表示できる。グランスの機能は現在、世界中のスマホ4億5,000万台超で使える。
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