産業ガス大手のエア・ウォーターはインドでバイオエネルギー事業に乗り出す。家畜ふん尿由来のバイオメタンの生産・供給に向けた調査事業が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募する脱炭素化・エネルギー転換に関する国際実証事業に採択された。牛の飼育頭数が世界有数のインドで、脱炭素化に貢献するバイオエネルギーのサプライチェーン(供給網)構築を目指す。
10月13日に、実証の実現性や普及可能性を検証する「実証要件適合性等調査」の実施予定先に決まった。本年度のインド案件としては初の採択となる。
活用されていない家畜のふん尿や農業・食品廃棄物を原料に、自社技術を活用してバイオガスからバイオメタンを精製する。バイオメタンは液化天然ガス(LNG)の代替燃料として、調理や工場稼働向け、圧縮天然ガス(CNG)車の燃料として供給することを想定している。
エア・ウォーターの担当者によると、インドの牛の飼育頭数は3億頭とされ、ふん尿由来のバイオメタン生産における潜在性が高い。インドには同社の産業ガス事業の基盤があることに加え、CNG車の普及によるバイオメタンの需要も想定できることから、インドでのバイオメタンのサプライチェーン構築に向けた調査事業の実施を決めた。
同社は北海道十勝地方で乳牛のふん尿由来のバイオメタンを生産・供給する実証事業を展開しており、2024年4月以降の事業化を目指している。北海道には乳牛82万頭がいるとされ、仮に全てのふん尿を活用した場合、北海道のLNG需要の約半分をまかなうことができるポテンシャルがあるという。
■事業化、最短で29年度
インドへの技術移転に向けた調査事業費として、NEDOが最大2,000万円を拠出する。12月以降に実際に調査を開始し、来年9月末で終了する。審査を経て認められれば、実証前調査に進む。その後の審査を経て、26年4月以降に実証研究を実施。最短で29年度以降に事業化を目指す。
12月以降に開始する調査では、バイオマス関連の可能性を探る。具体的には、原料の入手可能性や現地の利用状況、ニーズなどを複数の地域で調査する。
構築を目指すサプライチェーンは地産地消型。牛のふん尿は安定して入手できることから、主な原料と想定している。農業廃棄物も原料に活用できるため、農家の多い農村部での事業のポテンシャルが高いとみている。
インドで家畜ふん尿は堆肥や固形燃料として活用されているが、メタン発酵技術を使用することで堆肥化と比較して温室効果ガスを約8割削減できる。稲わらを原料とすれば大気汚染の原因となっている野焼きの削減に、食品廃棄物を原料とすればごみ・水質汚濁の低減に貢献することも期待できる。原料となる家畜ふん尿を酪農家から購入することで農村部での副収入を創出することも可能だ。
事業化が実現すれば、インド全土の複数地域でサプライチェーンを構築することを想定する。エア・ウォーターの担当者は「なんとしても事業化したい」と意気込みを語った。
経済成長が進むインドは、エネルギー起源の二酸化炭素(CO2)排出で世界第3位でもあり、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入が進んでいる。農業大国であることから、バイオマスの活用にも積極的だ。今年インドで開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では、インドと米国、ブラジルが主導する「国際バイオ燃料同盟(GBA)」が始動した。各国と連携してバイオ燃料の生産と使用を推進していく。
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活用されていない家畜のふん尿や農業・食品廃棄物を原料に、自社技術を活用してバイオガスからバイオメタンを精製する。バイオメタンは液化天然ガス(LNG)の代替燃料として、調理や工場稼働向け、圧縮天然ガス(CNG)車の燃料として供給することを想定している。
エア・ウォーターの担当者によると、インドの牛の飼育頭数は3億頭とされ、ふん尿由来のバイオメタン生産における潜在性が高い。インドには同社の産業ガス事業の基盤があることに加え、CNG車の普及によるバイオメタンの需要も想定できることから、インドでのバイオメタンのサプライチェーン構築に向けた調査事業の実施を決めた。
同社は北海道十勝地方で乳牛のふん尿由来のバイオメタンを生産・供給する実証事業を展開しており、2024年4月以降の事業化を目指している。北海道には乳牛82万頭がいるとされ、仮に全てのふん尿を活用した場合、北海道のLNG需要の約半分をまかなうことができるポテンシャルがあるという。
■事業化、最短で29年度
インドへの技術移転に向けた調査事業費として、NEDOが最大2,000万円を拠出する。12月以降に実際に調査を開始し、来年9月末で終了する。審査を経て認められれば、実証前調査に進む。その後の審査を経て、26年4月以降に実証研究を実施。最短で29年度以降に事業化を目指す。
12月以降に開始する調査では、バイオマス関連の可能性を探る。具体的には、原料の入手可能性や現地の利用状況、ニーズなどを複数の地域で調査する。
構築を目指すサプライチェーンは地産地消型。牛のふん尿は安定して入手できることから、主な原料と想定している。農業廃棄物も原料に活用できるため、農家の多い農村部での事業のポテンシャルが高いとみている。
インドで家畜ふん尿は堆肥や固形燃料として活用されているが、メタン発酵技術を使用することで堆肥化と比較して温室効果ガスを約8割削減できる。稲わらを原料とすれば大気汚染の原因となっている野焼きの削減に、食品廃棄物を原料とすればごみ・水質汚濁の低減に貢献することも期待できる。原料となる家畜ふん尿を酪農家から購入することで農村部での副収入を創出することも可能だ。
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経済成長が進むインドは、エネルギー起源の二酸化炭素(CO2)排出で世界第3位でもあり、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入が進んでいる。農業大国であることから、バイオマスの活用にも積極的だ。今年インドで開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では、インドと米国、ブラジルが主導する「国際バイオ燃料同盟(GBA)」が始動した。各国と連携してバイオ燃料の生産と使用を推進していく。"
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