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スズキEVは24年11月ごろ量産開始、新工場も

スズキグループは、同グループの乗用車として初めて販売する電気自動車(EV)の量産を2024年11月前後に始める。生産場所はインド西部グジャラート州の工場で、敷地内の既存3工場のうち第3工場にEV生産ラインを増設中。この増設とは別に、同じ敷地内で第4工場の新設を検討している。第4工場は今から3~4年以内に稼働させ、EVを生産する。複数の関係者への取材で分かった。

スズキグループが世界初公開したEVの試作版「eVX」=2023年1月、インド北部グレーターノイダ(NNA撮影)

複数の関係者によると、スズキ初の乗用EVはスポーツタイプ多目的車(SUV)。全長は4メートルを超えるとみられる。量産開始は当初、24年9~10月だったものの、現在は同11~12月に遅れる可能性が出ている。
年産台数は生産初期の25年度(25年4月~26年3月)が約12万台。約8万台は「欧州向け」、約4万台は「欧州・日本以外の全世界向け(インドを含む)」、3,000台弱は「日本向け」だ。
ピーク時の29年度は約17万台で、約9万台が「全世界向け」、約8万台が「欧州向け」、約3,000台が「日本向け」になる見通し。
量産開始から年数が経過するにつれ、仕向け別の生産台数はインドを含む「全世界向け」が最多になる。これは、インドが経済成長で販売が増えることに加え、南アフリカや台湾など多様な国・地域で売ることで、このカテゴリー全体の販売が伸びると考えているようだ。スズキにとってインドは、EVの販売先である以上に、生産・輸出拠点としての役割に重きがある。
「欧州向け」と「全世界向け」のどちらに属するかは不明だが、トルコも販売先の一つに挙がっている。
■提携先のトヨタも協力
車台(プラットフォーム)や電動パワートレイン(動力機構)は提携先のトヨタグループが協力している。
車台はスズキとトヨタが共同開発したもので、駆動モーターはトヨタ系自動車部品メーカーのアイシン製、電池はトヨタの調達先の一つである中国・比亜迪(BYD)製を使う。電池は当面、中国からインドへの輸入に頼るものの、駆動モーターやインバーターを組み合わせた駆動装置「イーアクスル」はトヨタのインド子会社トヨタ・キルロスカ・オートパーツ(TKAP)が組み立て生産する話が出ている。
トヨタはEVブランド「bZ(ビーズィー)」シリーズで、アイシン製の駆動モーターやBYD製電池を搭載した実績を持つ。そうしたトヨタの知見をスズキ初の乗用EVで役立てる。「スズキの開発車というより、スズキとトヨタの共同開発車および協業EVと言っていいと思う」(関係者)。
スズキ初の乗用EVはエンブレムを付け替えるなどし、トヨタ版を発売することも検討している。これまでもスズキとトヨタは生産車両の相互供給を積極的に実施。例えば、スズキが開発しトヨタが生産するSUVとして22年に発売した車種は、スズキが「グランド・ビターラ」、トヨタが「ハイライダー」として販売している。
スズキは、グジャラートの第4工場の投資額についてスズキ初の乗用EVの売れ行きを踏まえて判断する。また、グジャラート工場の隣接地でEV向け車載用電池の生産工場新設を考えており、BYDとの協業案も浮上している。
今回車種とは別のEV開発も進めており、中でも小型車サイズのEV投入は数年以内に実現しそうだ。
■試作版の航続距離は550キロ
スズキは22年3月、EVとEV電池を生産するため、グジャラート州の施設関連で今後1,044億5,000万ルピー(約1,800億円)を投資すると発表した。当時の発表によると、内訳は、EVを生産するためのグジャラート工場の生産増強が310億ルピー(稼働予定は25年)▽グジャラート工場の隣接地におけるEV電池工場の新設が730億ルピー(同26年)▽グジャラート州内への車両解体・リサイクル工場の新設が4億5,000万ルピー(同25年)——だった。
23年1月には、乗用EVの試作版「eVX」をインドで世界初公開した。試作版は全長4,300ミリメートル、全幅1,800ミリ、全高1,600ミリで、電池容量は60キロワット時、航続距離は最大550キロメートル。25年までに正式版を発売すると明らかにしていた。
スズキグループはグジャラート州の敷地内に三つの四輪車生産工場を持っている。第1工場は17年2月、第2工場は19年1月、第3工場は21年4月に稼働を始めた。3工場の年産能力は計75万台(EV生産ラインを増設する前)。
グジャラート工場は最近まで、親会社スズキのインド子会社スズキ・モーター・グジャラート(SMG)が運営してきた。しかし、親会社スズキが23年7月、主力のインド子会社マルチ・スズキに対し、SMG全株式を渡すと発表。11月までに取引を終えた。マルチ・スズキ直下にグジャラート工場を置くことにより、EVを含む四輪車生産を効率化することが主な狙いだった。
親会社スズキの広報担当者に対し、スズキ初の乗用EVの量産開始時期や年産台数、主要部品の製造元について尋ねたところ、同担当者は「商品計画についてはおこたえできません」とコメントした。

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年産台数は生産初期の25年度(25年4月~26年3月)が約12万台。約8万台は「欧州向け」、約4万台は「欧州・日本以外の全世界向け(インドを含む)」、3,000台弱は「日本向け」だ。
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量産開始から年数が経過するにつれ、仕向け別の生産台数はインドを含む「全世界向け」が最多になる。これは、インドが経済成長で販売が増えることに加え、南アフリカや台湾など多様な国・地域で売ることで、このカテゴリー全体の販売が伸びると考えているようだ。スズキにとってインドは、EVの販売先である以上に、生産・輸出拠点としての役割に重きがある。
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■提携先のトヨタも協力
車台(プラットフォーム)や電動パワートレイン(動力機構)は提携先のトヨタグループが協力している。
車台はスズキとトヨタが共同開発したもので、駆動モーターはトヨタ系自動車部品メーカーのアイシン製、電池はトヨタの調達先の一つである中国・比亜迪(BYD)製を使う。電池は当面、中国からインドへの輸入に頼るものの、駆動モーターやインバーターを組み合わせた駆動装置「イーアクスル」はトヨタのインド子会社トヨタ・キルロスカ・オートパーツ(TKAP)が組み立て生産する話が出ている。
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スズキ初の乗用EVはエンブレムを付け替えるなどし、トヨタ版を発売することも検討している。これまでもスズキとトヨタは生産車両の相互供給を積極的に実施。例えば、スズキが開発しトヨタが生産するSUVとして22年に発売した車種は、スズキが「グランド・ビターラ」、トヨタが「ハイライダー」として販売している。
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■試作版の航続距離は550キロ
スズキは22年3月、EVとEV電池を生産するため、グジャラート州の施設関連で今後1,044億5,000万ルピー(約1,800億円)を投資すると発表した。当時の発表によると、内訳は、EVを生産するためのグジャラート工場の生産増強が310億ルピー(稼働予定は25年)▽グジャラート工場の隣接地におけるEV電池工場の新設が730億ルピー(同26年)▽グジャラート州内への車両解体・リサイクル工場の新設が4億5,000万ルピー(同25年)——だった。
23年1月には、乗用EVの試作版「eVX」をインドで世界初公開した。試作版は全長4,300ミリメートル、全幅1,800ミリ、全高1,600ミリで、電池容量は60キロワット時、航続距離は最大550キロメートル。25年までに正式版を発売すると明らかにしていた。
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