再生可能エネルギー事業の開発などを手がけるサントモ・リソース(東京都千代田区)が、インドネシアでバッテリー交換式電動バイクのレンタル事業に商機を見いだしている。これまでは販売だけだったが、バイクタクシーの運転手への貸し出しを開始した。同時に展開しているバッテリー交換ステーションの運営事業では、太陽光発電を活用した充電や、中古バッテリーの二次利用の実証実験を進めており、脱炭素社会の実現に向けて電動バイクのエコシステム構築を目指している。
サントモが開催した電動バイクのレンタルプログラムに参加したバイクタクシー運転手(SGPM提供)
サントモは2022年、スラウェシ島以東のインドネシア東部地域で、地場ブランドのバッテリー交換式電動バイク「Smoot」の販売代理業に参入。23年にはインドネシア子会社サントモ・グリーン・パワー・マネジメント(SGPM)が、南スラウェシ州マカッサル市に直営店をオープンした。
Smootは、23年に政府が開始した電動バイクの購入補助金の対象で、適用後の販売価格は1台1,400万~1,590万ルピア(約13万6,000~15万5,000円)。主なターゲットは、オンライン配車・配送サービス会社に登録するバイク運転手としている。
SGPMの山口隼太郎社長によれば、バイクタクシー運転手の1日当たりの平均走行距離は140キロメートルに上る。バッテリー交換式電動バイクに乗り換えてもらえれば、給油の待ち時間がなくなり稼働時間が増えるほか、燃油代を抑えられるため、収入増につながると考えた。
だが、営業活動を進めていくにつれて、バイクタクシー運転手の多くが電動バイクを購入できない事情があることが分かってきた。
マカッサル市の24年の月額最低賃金は約364万ルピア。山口氏によると、バイクタクシーの運転手の1日の収入は、稼働時間が比較的多い人で15万~20万ルピアほど。電動バイクの価格は、月額最低賃金の3.8~4.4カ月分に相当する。さらにバイクタクシー運転手の多くは、電動バイクを購入できるだけのまとまった現預金を持ち合わせておらず、金融機関の与信審査に通るのも難しい人が少なくないことが、販売の足かせとなっている。
■1日3万5,000ルピアでレンタル
インドネシア政府は補助金の導入などで電動バイクの普及に力を入れてはいるものの、昨年に補助金が支給されたのは全車種で1万数千台程度と、二輪車市場の規模に比べればまだ少ない。SGPMの山口氏はこの理由について、◇電動バイクがまだアーリーステージ(初期段階)の製品で、マジョリティーがガソリンバイクから離れていない◇ディーラーなどアフターサービスの拠点が不足している◇中古車市場ができていない——ことの3点を挙げる。
こうした課題の解決策としてサントモが考えたのが、自社で電動バイクを資産として保有し、運転手に直接レンタルすることだ。1日のレンタル料は3万5,000ルピア(税込み)と、運転手の負担にならない程度に抑えた。約1年半で初期費用を回収できる金額と見込んで設定した。
レンタル台数は3月末時点で101台。これとは別に、レンタル会社を経由して運転手に貸与した電動バイクも約50台となり、マカッサル市だけで合計約150台のレンタル電動バイクが稼働している。
サントモがこれまでに販売した電動バイクは232台。今後も販売を続けるものの、レンタル事業に力を入れる。マカッサル市を皮切りに、西ヌサトゥンガラ州ロンボク島でトライアルとしてレンタルを開始したほか、北スラウェシ州マナドにも年内に進出を計画している。
■太陽光で充電、中古バッテリーの活用も
サントモはまた、電動バイクの利用による二酸化炭素(CO2)の排出削減効果をさらに高めるため、太陽光発電を活用してバッテリー交換ステーションで充電する実証試験にも乗り出した。実証試験では十分な日射量があることを確認し、バッテリーの残量にも左右されるが、2~4時間でフル充電できると見込む。今後は、夜間にも充電できるように国営電力PLNへのグリッド(送電網)に接続することも検討している。
実証試験では太陽光発電システムから直接バッテリー充電ステーションに充電している。今後は屋根置き型の太陽光発電パネルの使用も検討する(SGPM提供)
将来的には、再生可能エネルギー由来の電気を100%使って充電したバッテリーで走行する電動バイクの実現を目指す。
電動バイクの普及後には、使用済みのバッテリーが大量に発生することが見込まれる中で、サントモは中古バッテリーのリユース(再利用)にも取り組み始めた。
バッテリーの家庭用充電装置を用いて専用の給電装置を独自に開発し、電化製品が使えるように実証試験を実施している。商用化できれば、イベント会場や未電化地域、契約電力の低い一般家庭でも電気が使えるようになるが、装置のコスト低減が課題となる。
サントモが実証試験用に試作した、中古バッテリーからテレビに直接給電する専用給電装置(SGPM提供)
サントモは、Smootのバッテリー耐用年数を4年と想定。どの程度の容量低下までバイクに使えるのかは今後検討していくが、新品バッテリーの5~6割程度の容量であれば、理論的には40型テレビを10時間程度は利用できると試算している。
一方、SGPMの親会社で、サントモ・リソースのグループ会社、グリーン・パワー・マネジメント(GPM、本社シンガポール)は、電動バイク事業の拡大に向けて年内に第三者割当増資を実施する。最大10億円の調達を見込んでいる。
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サントモは2022年、スラウェシ島以東のインドネシア東部地域で、地場ブランドのバッテリー交換式電動バイク「Smoot」の販売代理業に参入。23年にはインドネシア子会社サントモ・グリーン・パワー・マネジメント(SGPM)が、南スラウェシ州マカッサル市に直営店をオープンした。
Smootは、23年に政府が開始した電動バイクの購入補助金の対象で、適用後の販売価格は1台1,400万~1,590万ルピア(約13万6,000~15万5,000円)。主なターゲットは、オンライン配車・配送サービス会社に登録するバイク運転手としている。
SGPMの山口隼太郎社長によれば、バイクタクシー運転手の1日当たりの平均走行距離は140キロメートルに上る。バッテリー交換式電動バイクに乗り換えてもらえれば、給油の待ち時間がなくなり稼働時間が増えるほか、燃油代を抑えられるため、収入増につながると考えた。
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マカッサル市の24年の月額最低賃金は約364万ルピア。山口氏によると、バイクタクシーの運転手の1日の収入は、稼働時間が比較的多い人で15万~20万ルピアほど。電動バイクの価格は、月額最低賃金の3.8~4.4カ月分に相当する。さらにバイクタクシー運転手の多くは、電動バイクを購入できるだけのまとまった現預金を持ち合わせておらず、金融機関の与信審査に通るのも難しい人が少なくないことが、販売の足かせとなっている。
■1日3万5,000ルピアでレンタル
インドネシア政府は補助金の導入などで電動バイクの普及に力を入れてはいるものの、昨年に補助金が支給されたのは全車種で1万数千台程度と、二輪車市場の規模に比べればまだ少ない。SGPMの山口氏はこの理由について、◇電動バイクがまだアーリーステージ(初期段階)の製品で、マジョリティーがガソリンバイクから離れていない◇ディーラーなどアフターサービスの拠点が不足している◇中古車市場ができていない——ことの3点を挙げる。
こうした課題の解決策としてサントモが考えたのが、自社で電動バイクを資産として保有し、運転手に直接レンタルすることだ。1日のレンタル料は3万5,000ルピア(税込み)と、運転手の負担にならない程度に抑えた。約1年半で初期費用を回収できる金額と見込んで設定した。
レンタル台数は3月末時点で101台。これとは別に、レンタル会社を経由して運転手に貸与した電動バイクも約50台となり、マカッサル市だけで合計約150台のレンタル電動バイクが稼働している。
サントモがこれまでに販売した電動バイクは232台。今後も販売を続けるものの、レンタル事業に力を入れる。マカッサル市を皮切りに、西ヌサトゥンガラ州ロンボク島でトライアルとしてレンタルを開始したほか、北スラウェシ州マナドにも年内に進出を計画している。
■太陽光で充電、中古バッテリーの活用も
サントモはまた、電動バイクの利用による二酸化炭素(CO2)の排出削減効果をさらに高めるため、太陽光発電を活用してバッテリー交換ステーションで充電する実証試験にも乗り出した。実証試験では十分な日射量があることを確認し、バッテリーの残量にも左右されるが、2~4時間でフル充電できると見込む。今後は、夜間にも充電できるように国営電力PLNへのグリッド(送電網)に接続することも検討している。
[caption id="attachment_20203" align="aligncenter" width="620"]実証試験では太陽光発電システムから直接バッテリー充電ステーションに充電している。今後は屋根置き型の太陽光発電パネルの使用も検討する(SGPM提供)[/caption]
将来的には、再生可能エネルギー由来の電気を100%使って充電したバッテリーで走行する電動バイクの実現を目指す。
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