タイのイージー航空(EZYエアライン)が、年内に南部を起点とした短距離のチャーター便運航を開始することがNNAの取材で分かった。「空飛ぶ乗り合いバン」をキャッチフレーズに、交通網が発展途上の南部でニッチな路線に特化した事業を展開し、競合ひしめく航空市場でリージョナルエアラインとしての地位確立を目指す。
イージー航空が所有するセスナ208B型機(同社提供)
イージー航空は、米テキストロン・アビエーション社製の軽飛行機「セスナ」をタイで販売するMランダーチが設立した航空会社。昨年7月にタイ民間航空局(CAAT)から航空運航免許(AOL)を取得しており、まもなく航空運送事業許可(AOC)が下りる見通し。現在はセスナを1機所有。座席数は10席。11月をめどに南部のハジャイ国際空港を拠点にスラタニ、ナコンシータマラート、ベトン(ヤラー県)を結ぶ3路線でチャーター便の運航を始める。ベトン線のチャーター料金は7万バーツ(約30万円)台、ナコンシータマラート線は8万バーツ台、スラタニ線は8万5,000バーツ台で検討している。
イージー航空のアティチャート・マーケティング・マネジャーは、「南部では道路や鉄道の整備が不十分で、隣の県に移動するだけでも3~5時間かかってしまう」と説明。「一言で南部といっても、他の地方とは違い南北に細長く伸びており、端から端まで縦断する車道ルートは約1,300キロメートルにも及ぶ。また南部はモンスーンの影響を受けやすく洪水が頻発するにもかかわらず、主要の交通網が限られており、一部が封鎖されると移動もままならない状況に陥る」と述べた。
一方、近年は南部に拠点や支部を構える企業が増加傾向にあるという。定期便よりも割高にはなるが、一般利用だけでなくビジネス目的でのチャーター便需要が見込めると判断し、新事業の開始に踏み込んだ。アティチャート氏は、一般利用が4割、政府機関と旅行代理店やホテル経営などの民間企業の利用がそれぞれ3割になると見込んでいる。
「イージー航空はタイで初めてとなる超短距離路線のパイオニアとして地位を確立する」と意気込みを語るアティチャート氏=タイ・ノンタブリ県(NNA撮影)
■28年には9機体制へ
来年の4月にはセスナ機を新たに調達し、2機体制で定期便の運航を始める予定。定期便の価格は、3路線とも1席当たり3,000~4,000バーツ台となる見通し。
その後、26年には5機体制、28年には9機体制とする計画。ハジャイを拠点に、南部ナラティワート県やプーケット県、クラビ県、トラン県を結ぶ路線を拡大するほか、計画の第2フェーズでは、南部フアヒン空港を拠点に、首都バンコク線と、スラタニ線の就航も目指す。将来的には第3フェーズとして東北部と東部域内の路線、第4フェーズとして北部域内の路線の就航を検討している。いずれも、セスナ機を利用した1時間以内の超短距離路線となる。
アティチャート氏は、「イージー航空は他の航空会社と異なり、超小型機のみを運用するニッチ市場に特化しているため、観光需要の増減による価格競争の影響をほとんど受けない」と語る。特に南部の医療機関の集積地となっているハジャイでは、長時間の移動に耐えることができない患者や高齢者向けのサービスとしての需要が見込めるという。また、10席という座席数がツアーを組む上でハードルが低く、個人事業主や小規模の旅行代理店、ホテル経営者から好評を得ていると話した。
タイ政府が推進する大規模インフラ開発構想「ランドブリッジ」や、タイ高速道路公団が進めるサムイ島の橋梁(きょうりょう)建設についてアティチャート氏は、「いずれも人の流入が見込めるため、南部で開業するイージー航空にとっては頼もしい追い風になる」とコメント。タイの航空業界は、年内に新型コロナウイルス流行前の19年水準までの完全回復は見込めないとしつつも、新会社が多く見られ活発になるとの見通しを示した。
■事業許可の承認待ちは7社
CAATによると、24年にAOCを取得した会社は◇バンコク・ヘリコプター・サービシズ◇アドバンス・アビエーション◇アジアン・エアロスペース・サービシズ◇パタヤ・エアウェイズ——の4社。8月16日時点でAOCの審査を受けている企業はMランダーチやリアリー・クール・エアラインズなど計7社となる。
現在、AOCの承認待ちをしているサイアム・シープレーンはNNAに対し、「AOCの取得時期によるが、10月に不定期便の運航事業を開始する見通しだ」とコメント。一方、リアリー・クール・エアラインズは、事業の開始予定日を明かさなかったが、日本路線の就航を計画していると話した。
ANAホールディングスや格安航空会社(LCC)タイ・エアアジアXなどもこのほど、日タイ路線の増便を発表しており、タイの航空業界ではパイの奪い合いに注目が集まるとみられる。
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イージー航空のアティチャート・マーケティング・マネジャーは、「南部では道路や鉄道の整備が不十分で、隣の県に移動するだけでも3~5時間かかってしまう」と説明。「一言で南部といっても、他の地方とは違い南北に細長く伸びており、端から端まで縦断する車道ルートは約1,300キロメートルにも及ぶ。また南部はモンスーンの影響を受けやすく洪水が頻発するにもかかわらず、主要の交通網が限られており、一部が封鎖されると移動もままならない状況に陥る」と述べた。
一方、近年は南部に拠点や支部を構える企業が増加傾向にあるという。定期便よりも割高にはなるが、一般利用だけでなくビジネス目的でのチャーター便需要が見込めると判断し、新事業の開始に踏み込んだ。アティチャート氏は、一般利用が4割、政府機関と旅行代理店やホテル経営などの民間企業の利用がそれぞれ3割になると見込んでいる。[caption id="attachment_22036" align="aligncenter" width="620"]「イージー航空はタイで初めてとなる超短距離路線のパイオニアとして地位を確立する」と意気込みを語るアティチャート氏=タイ・ノンタブリ県(NNA撮影) [/caption]
■28年には9機体制へ
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その後、26年には5機体制、28年には9機体制とする計画。ハジャイを拠点に、南部ナラティワート県やプーケット県、クラビ県、トラン県を結ぶ路線を拡大するほか、計画の第2フェーズでは、南部フアヒン空港を拠点に、首都バンコク線と、スラタニ線の就航も目指す。将来的には第3フェーズとして東北部と東部域内の路線、第4フェーズとして北部域内の路線の就航を検討している。いずれも、セスナ機を利用した1時間以内の超短距離路線となる。
アティチャート氏は、「イージー航空は他の航空会社と異なり、超小型機のみを運用するニッチ市場に特化しているため、観光需要の増減による価格競争の影響をほとんど受けない」と語る。特に南部の医療機関の集積地となっているハジャイでは、長時間の移動に耐えることができない患者や高齢者向けのサービスとしての需要が見込めるという。また、10席という座席数がツアーを組む上でハードルが低く、個人事業主や小規模の旅行代理店、ホテル経営者から好評を得ていると話した。
タイ政府が推進する大規模インフラ開発構想「ランドブリッジ」や、タイ高速道路公団が進めるサムイ島の橋梁(きょうりょう)建設についてアティチャート氏は、「いずれも人の流入が見込めるため、南部で開業するイージー航空にとっては頼もしい追い風になる」とコメント。タイの航空業界は、年内に新型コロナウイルス流行前の19年水準までの完全回復は見込めないとしつつも、新会社が多く見られ活発になるとの見通しを示した。
■事業許可の承認待ちは7社
CAATによると、24年にAOCを取得した会社は◇バンコク・ヘリコプター・サービシズ◇アドバンス・アビエーション◇アジアン・エアロスペース・サービシズ◇パタヤ・エアウェイズ——の4社。8月16日時点でAOCの審査を受けている企業はMランダーチやリアリー・クール・エアラインズなど計7社となる。
現在、AOCの承認待ちをしているサイアム・シープレーンはNNAに対し、「AOCの取得時期によるが、10月に不定期便の運航事業を開始する見通しだ」とコメント。一方、リアリー・クール・エアラインズは、事業の開始予定日を明かさなかったが、日本路線の就航を計画していると話した。
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