インドの首都ニューデリーで17日、自動車の国際展示会「バーラト・モビリティー・グローバル・エキスポ2025」が開幕した。乗用車部門は最大手のスズキが同社初の電気自動車(EV)を発表した。主要メーカーでは、韓国・現代自動車が展開中のEVから価格を約6割落とした新EVを公開。タタ・モーターズは1990年代に人気を誇ったスポーツタイプ多目的車(SUV)をEV版として復活させるなど、本格的なEV市場の形成をにらみ、EVの大衆モデル展開が目立った。
スズキ初のEV「eビターラ」を公開した同社の鈴木俊宏社長(左)と子会社マルチ・スズキの竹内寿志社長=17日、首都ニューデリー(NNA撮影)
17日に開幕した展示会は同日午前にモディ首相が視察に訪れ、午後からメーカーによるイベントが始まった。
スズキは、世界戦略車で同社初のEVとなる小型SUV「eビターラ」を発表した。インドで生産を一極集中し、インドでの国内販売と日本や欧州、中東、アフリカなどへの輸出を効率的に推し進める。eビターラの製造に当たっては、EV専用ラインも含め210億ルピー(約380億円)以上を投じた。
充電インフラの拡大にも取り組む。家庭用充電器を設置サポートとともに提供するほか、第1段階として上位100都市で急速充電ネットワークを整備。また、1,500カ所以上にEV対応のサービス拠点を設け、1,000都市以上をカバーする計画だ。専用のモバイル・アプリも導入し、充電切れや故障など走行中の不安解消に役立つ情報を届ける。
マルチ・スズキの竹内寿志社長は、インドでは「イー・フォー・ミー(e for me)」を標ぼうし、EVと充電インフラの包括的アプローチに取り組む方針を示した=17日、首都ニューデリー(NNA撮影)
マルチ・スズキの竹内寿志社長は、「最大の目標は顧客のために電気エコ・ソリューションを創出することだ」と述べ、インドで「イー・フォー・ミー(e for me)」を標ぼうし、EV車種を展開していく。
スズキが国際展示会で掲示したEVのプラットフォーム。車体の底に位置する茶色の部分がバッテリーとなる=17日、首都ニューデリー(NNA撮影)
スズキは業務資本提携するトヨタ自動車と昨年10月、スズキが開発し、西部グジャラート州の工場で25年春から生産開始予定のEVをトヨタにOEM(相手先ブランドによる生産)供給すると発表している。今回、トヨタはコンセプトモデルとして「アーバンBEV(電気のみで走行する車)」を展示しており、スズキのeビターラをベースにしたOEM供給車両とみられる。
トヨタ自動車はEVのコンセプトモデルを展示。資本業務提携するスズキがOEM供給することが決まっている=17日、首都ニューデリー(NNA撮影)
■クレタのブランド力で売り込み
乗用車市場でシェア2位の現代自動車は、主力車種の小型SUV「クレタ」のEV版「クレタ・エレクトリック」を発表した。現代自のインド子会社、ヒュンダイ・モーター・インディア(HMIL)にとって、「IONIQ5(アイオニックファイブ)」に続くEVとなる。
現代自のインド子会社、ヒュンダイ・モーター・インディアはEVの大衆モデル「クレタ・エレクトリック」を発表。価格は179万9,000ルピー~となる=17日、首都ニューデリー(NNA撮影)
アイオニックファイブの販売価格が450万ルピー~であるのに対し、クレタ・エレクトリックは約180万ルピー~となる。価格を6割落とした上、内燃機関(ICE)車版「クレタ」の知名度の高さを活用し、大衆モデルを構築していく。国内1万カ所にある充電設備へのアクセス情報をモバイル・アプリを通じて提供するほか、向こう7年間に公共急速充電スタンドを約600カ所に設置する目標を掲げる。
■往年の名車で「中年」世代を刺激
EV市場で約6割のシェアを持つタタ・モーターズはSUVの旗艦モデル「ハリアー」のEV版「ハリアー.ev」と、1990年代初めに発売し人気を博したSUV「シエラ」のEV版「タタ・シエラ」、高級EVのコンセプトモデル「アビニャ」をお披露目した。ハリアー.evは3月に価格を公表する予定だ。
タタ・モーターズが公開した「ハリアー.ev」(右)と「タタ・シエラ」。シエラは90年代を代表するモデル。全面改良しICE版、EV版の双方を売り込む=17日、首都ニューデリー(NNA撮影)
シエラは全面改良し、ICE版とともにEV版としても復活させた。タタ・モーターズの乗用車部門と電動車部門を率いるシャイレシュ・チャンドラ氏はNNAに対し、「シエラは90年代に20代だった(自身も含め)若者の誰もが手に入れたい車だった」と話し、現在の40~50代以上の「記憶」を刺激し、EVの支持層を押し広げる戦略だ。
■スポーツカーやリムジンも登場
一方、国内外の新興メーカーも会場を沸かせた。
地場新興メーカーでは、インドのコングロマリット(複合企業)JSWグループと中国自動車大手の上海汽車集団(SAICモーター)の合弁会社、JSW MGモーター・インディアは17日、電動スポーツカー「MG サイバースター」と、3列シートの電動リムジン「MG M9」を発表した。同日に事前予約を開始し、発売は今年中を予定している。
これら2車種の投入で、JSW MGモーター・インディアのEVの展開車種は5種類となる。
海外勢では、中国のEVメーカー大手、比亜迪(BYD)が18日、SUV「シーライオン(海獅)7」を披露した。同日に予約受け付けを始めた。インドでは、セダン「シール(海豹)」と、SUV「アットスリー(ATTO3)」、多目的車(MPV)「eマックス7」に続き4車種目となる。
BYDは18日、「シーライオン(海獅)7」を公開。同日に予約受け付けを始めた=首都ニューデリー(NNA撮影)
会場では、「シーライオン6」と「ヤンワンU8」も陳列した。BYDは同日、今月末までに販売店網を40カ所にすることも明らかにした。
今年、インド市場参入を予定しているベトナムのEVメーカー、ビンファストは18日、第1弾の投入モデルとしてSUVの「VF6」と「VF7」の2車種を公開した。2025年下期(25年7~12月)の早い段階での発売を目指す。
インドに進出を果たしたベトナムのEVメーカー、ビンファストは第1弾として「VF6」と「VF7」を今年中に発売する=18日、首都ニューデリー(NNA撮影)
ビンファストにとって、VF6とVF7の各右ハンドル版を発売するのはインドが初めて。これら2車種のほかに、足元のベトナムやフィリピン、タイ、インドネシアなどで販売している「VF3」「VFe34」「VF8」「VF9」も展示した。
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17日に開幕した展示会は同日午前にモディ首相が視察に訪れ、午後からメーカーによるイベントが始まった。
スズキは、世界戦略車で同社初のEVとなる小型SUV「eビターラ」を発表した。インドで生産を一極集中し、インドでの国内販売と日本や欧州、中東、アフリカなどへの輸出を効率的に推し進める。eビターラの製造に当たっては、EV専用ラインも含め210億ルピー(約380億円)以上を投じた。
充電インフラの拡大にも取り組む。家庭用充電器を設置サポートとともに提供するほか、第1段階として上位100都市で急速充電ネットワークを整備。また、1,500カ所以上にEV対応のサービス拠点を設け、1,000都市以上をカバーする計画だ。専用のモバイル・アプリも導入し、充電切れや故障など走行中の不安解消に役立つ情報を届ける。
[caption id="attachment_24322" align="aligncenter" width="620"]マルチ・スズキの竹内寿志社長は、インドでは「イー・フォー・ミー(e for me)」を標ぼうし、EVと充電インフラの包括的アプローチに取り組む方針を示した=17日、首都ニューデリー(NNA撮影)[/caption]
マルチ・スズキの竹内寿志社長は、「最大の目標は顧客のために電気エコ・ソリューションを創出することだ」と述べ、インドで「イー・フォー・ミー(e for me)」を標ぼうし、EV車種を展開していく。
[caption id="attachment_24323" align="aligncenter" width="620"]スズキが国際展示会で掲示したEVのプラットフォーム。車体の底に位置する茶色の部分がバッテリーとなる=17日、首都ニューデリー(NNA撮影)[/caption]
スズキは業務資本提携するトヨタ自動車と昨年10月、スズキが開発し、西部グジャラート州の工場で25年春から生産開始予定のEVをトヨタにOEM(相手先ブランドによる生産)供給すると発表している。今回、トヨタはコンセプトモデルとして「アーバンBEV(電気のみで走行する車)」を展示しており、スズキのeビターラをベースにしたOEM供給車両とみられる。
[caption id="attachment_24328" align="aligncenter" width="620"]トヨタ自動車はEVのコンセプトモデルを展示。資本業務提携するスズキがOEM供給することが決まっている=17日、首都ニューデリー(NNA撮影)[/caption]
■クレタのブランド力で売り込み
乗用車市場でシェア2位の現代自動車は、主力車種の小型SUV「クレタ」のEV版「クレタ・エレクトリック」を発表した。現代自のインド子会社、ヒュンダイ・モーター・インディア(HMIL)にとって、「IONIQ5(アイオニックファイブ)」に続くEVとなる。
[caption id="attachment_24324" align="aligncenter" width="620"]現代自のインド子会社、ヒュンダイ・モーター・インディアはEVの大衆モデル「クレタ・エレクトリック」を発表。価格は179万9,000ルピー~となる=17日、首都ニューデリー(NNA撮影)[/caption]
アイオニックファイブの販売価格が450万ルピー~であるのに対し、クレタ・エレクトリックは約180万ルピー~となる。価格を6割落とした上、内燃機関(ICE)車版「クレタ」の知名度の高さを活用し、大衆モデルを構築していく。国内1万カ所にある充電設備へのアクセス情報をモバイル・アプリを通じて提供するほか、向こう7年間に公共急速充電スタンドを約600カ所に設置する目標を掲げる。
■往年の名車で「中年」世代を刺激
EV市場で約6割のシェアを持つタタ・モーターズはSUVの旗艦モデル「ハリアー」のEV版「ハリアー.ev」と、1990年代初めに発売し人気を博したSUV「シエラ」のEV版「タタ・シエラ」、高級EVのコンセプトモデル「アビニャ」をお披露目した。ハリアー.evは3月に価格を公表する予定だ。
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シエラは全面改良し、ICE版とともにEV版としても復活させた。タタ・モーターズの乗用車部門と電動車部門を率いるシャイレシュ・チャンドラ氏はNNAに対し、「シエラは90年代に20代だった(自身も含め)若者の誰もが手に入れたい車だった」と話し、現在の40~50代以上の「記憶」を刺激し、EVの支持層を押し広げる戦略だ。
■スポーツカーやリムジンも登場
一方、国内外の新興メーカーも会場を沸かせた。
地場新興メーカーでは、インドのコングロマリット(複合企業)JSWグループと中国自動車大手の上海汽車集団(SAICモーター)の合弁会社、JSW MGモーター・インディアは17日、電動スポーツカー「MG サイバースター」と、3列シートの電動リムジン「MG M9」を発表した。同日に事前予約を開始し、発売は今年中を予定している。
これら2車種の投入で、JSW MGモーター・インディアのEVの展開車種は5種類となる。
海外勢では、中国のEVメーカー大手、比亜迪(BYD)が18日、SUV「シーライオン(海獅)7」を披露した。同日に予約受け付けを始めた。インドでは、セダン「シール(海豹)」と、SUV「アットスリー(ATTO3)」、多目的車(MPV)「eマックス7」に続き4車種目となる。
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会場では、「シーライオン6」と「ヤンワンU8」も陳列した。BYDは同日、今月末までに販売店網を40カ所にすることも明らかにした。
今年、インド市場参入を予定しているベトナムのEVメーカー、ビンファストは18日、第1弾の投入モデルとしてSUVの「VF6」と「VF7」の2車種を公開した。2025年下期(25年7~12月)の早い段階での発売を目指す。
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ビンファストにとって、VF6とVF7の各右ハンドル版を発売するのはインドが初めて。これら2車種のほかに、足元のベトナムやフィリピン、タイ、インドネシアなどで販売している「VF3」「VFe34」「VF8」「VF9」も展示した。"
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