東南アジアの主要3カ国(タイ、ベトナム、インドネシア)を訪れる日本人の数が、依然として新型コロナウイルス禍前の2019年の水準に回復していない。各国とも24年の外国人旅行者数は19年を下回っているが、日本人の減少率は市場全体の縮小幅を大きく上回っている。また円安などの影響もあり、タイとインドネシアでは訪日旅行者のほうが、両国を訪れた日本人より多い逆転現象が起きている。
2024年に東南アジアの主要国を訪れた日本人の数は新型コロナウイルス禍前の19年の水準を下回っている=24年4月、タイ・バンコク近郊(NNA撮影)
3カ国が発表した24年の外国人旅行者統計をNNAがまとめた。3カ国の外国人旅行者数は、タイが新型コロナ禍前の19年比で11%減の3,554万6,000人、ベトナムが同2%減の1,758万4,000人、インドネシアが同14%減の1,390万2,000人だった。
日本人の3カ国の訪問者数はそれぞれ、タイが19年比42%減の105万1,000人、ベトナムは同25%減の71万1,000人、インドネシアは同35%減の33万9,000人で、減少率は各国の市場全体の縮小率を大幅に上回った。
国・地域別の訪問者数で日本の順位を見ると、タイでは8位(19年から2ランク下落)、ベトナムでは5位(同2ランク下落)、インドネシアでは11位(同4ランク下落)となっている。とりわけ、インドネシアでの順位変動が大きく、14年は日本人の訪問者数は5位だったが、19年に7位となり、コロナ禍以降はトップ10圏外に落ち込んでいる。

ただ、訪問者数が減ったのは日本だけではなく、3カ国で旅行者数の上位に入ってきた中国人も19年比では大幅に減少した。24年にタイを訪れた中国人は19年比39%減の673万3,000人で、インドネシアでは同42%減の119万9,000人と19年の2位から4位に後退し、ベトナムでは同36%減の373万8,000人と19年の1位から2位に下がった。
一方、19年比で増加しているのが、タイではマレーシア人(19%増の495万2,000人)、ロシア人(18%増の174万5,000人)、インド人(7%増の212万9,000人)など。ベトナムは韓国人が6%増の456万9,000人で首位となり、台湾が39%増の128万9,000人と大きく伸びた。インドネシアではオーストラリアが21%増の167万1,000人で、19年の4位から2位に浮上した。

■円安が訪日旅行を後押し
日本人の東南アジア主要国への訪問者の減少に伴い、タイとインドネシアでは訪日旅行者数が、日本人の両国への訪問者を上回った。
24年のタイからの訪日旅行者は、19年比で13%減の114万9,000人となるが、タイを訪れた日本人より9%多かった。インドネシアからの訪日旅行者は 同25%増の51万8,000人で、インドネシアを訪問した日本人より53%多かった。
逆転現象が起きている背景には、円が米ドルだけでなく、アジア通貨に対しても下落している影響がある。タイとインドネシアの中央銀行が発表している、円に対するバーツ(1月時点)とルピア(2月時点)の買値は、19年1月時点と比べてそれぞれ25%、18%下落している。日本人が渡航をためらいがちな一方、インドネシア人の女性会社員は「円安になっているので年に1回は日本へ旅行に行く」と話す。
タイとインドネシアでは訪日旅行者の数が、現地を訪れる日本人を上回っている=2月、インドネシア・ジャカルタ特別州(NNA撮影)
旅行大手JTBが1月に発表した旅行動向に関する調査では、為替相場が落ち着けば海外旅行自体の回復が見込まれるとしている。
調査結果によると、25年の海外旅行の意向(回答者数3,095人)は、「行く予定」が21.1%、「行かない予定」は78.9%だった。「行く予定」の人の旅行先(複数回答)としては「韓国」が30.4%、「台湾」が26.4%、「ハワイ」が24.2%、「欧州」が18.4%で、「東南アジア」は12.9%だった。
25年に「海外旅行に行かない理由」(複数回答、回答者数2,443人)として、「旅行費用が高いから」が33.6%、「家計に余裕がないから」が26.4%、「円安だから」が24.4%などとなった。


object(WP_Post)#9560 (24) {
["ID"]=>
int(24995)
["post_author"]=>
string(1) "3"
["post_date"]=>
string(19) "2025-02-25 00:00:00"
["post_date_gmt"]=>
string(19) "2025-02-24 15:00:00"
["post_content"]=>
string(6531) "東南アジアの主要3カ国(タイ、ベトナム、インドネシア)を訪れる日本人の数が、依然として新型コロナウイルス禍前の2019年の水準に回復していない。各国とも24年の外国人旅行者数は19年を下回っているが、日本人の減少率は市場全体の縮小幅を大きく上回っている。また円安などの影響もあり、タイとインドネシアでは訪日旅行者のほうが、両国を訪れた日本人より多い逆転現象が起きている。[caption id="attachment_24996" align="aligncenter" width="620"]
2024年に東南アジアの主要国を訪れた日本人の数は新型コロナウイルス禍前の19年の水準を下回っている=24年4月、タイ・バンコク近郊(NNA撮影)[/caption]
3カ国が発表した24年の外国人旅行者統計をNNAがまとめた。3カ国の外国人旅行者数は、タイが新型コロナ禍前の19年比で11%減の3,554万6,000人、ベトナムが同2%減の1,758万4,000人、インドネシアが同14%減の1,390万2,000人だった。
日本人の3カ国の訪問者数はそれぞれ、タイが19年比42%減の105万1,000人、ベトナムは同25%減の71万1,000人、インドネシアは同35%減の33万9,000人で、減少率は各国の市場全体の縮小率を大幅に上回った。
国・地域別の訪問者数で日本の順位を見ると、タイでは8位(19年から2ランク下落)、ベトナムでは5位(同2ランク下落)、インドネシアでは11位(同4ランク下落)となっている。とりわけ、インドネシアでの順位変動が大きく、14年は日本人の訪問者数は5位だったが、19年に7位となり、コロナ禍以降はトップ10圏外に落ち込んでいる。

ただ、訪問者数が減ったのは日本だけではなく、3カ国で旅行者数の上位に入ってきた中国人も19年比では大幅に減少した。24年にタイを訪れた中国人は19年比39%減の673万3,000人で、インドネシアでは同42%減の119万9,000人と19年の2位から4位に後退し、ベトナムでは同36%減の373万8,000人と19年の1位から2位に下がった。
一方、19年比で増加しているのが、タイではマレーシア人(19%増の495万2,000人)、ロシア人(18%増の174万5,000人)、インド人(7%増の212万9,000人)など。ベトナムは韓国人が6%増の456万9,000人で首位となり、台湾が39%増の128万9,000人と大きく伸びた。インドネシアではオーストラリアが21%増の167万1,000人で、19年の4位から2位に浮上した。

■円安が訪日旅行を後押し
日本人の東南アジア主要国への訪問者の減少に伴い、タイとインドネシアでは訪日旅行者数が、日本人の両国への訪問者を上回った。
24年のタイからの訪日旅行者は、19年比で13%減の114万9,000人となるが、タイを訪れた日本人より9%多かった。インドネシアからの訪日旅行者は 同25%増の51万8,000人で、インドネシアを訪問した日本人より53%多かった。
逆転現象が起きている背景には、円が米ドルだけでなく、アジア通貨に対しても下落している影響がある。タイとインドネシアの中央銀行が発表している、円に対するバーツ(1月時点)とルピア(2月時点)の買値は、19年1月時点と比べてそれぞれ25%、18%下落している。日本人が渡航をためらいがちな一方、インドネシア人の女性会社員は「円安になっているので年に1回は日本へ旅行に行く」と話す。
[caption id="attachment_24997" align="aligncenter" width="620"]
タイとインドネシアでは訪日旅行者の数が、現地を訪れる日本人を上回っている=2月、インドネシア・ジャカルタ特別州(NNA撮影)[/caption]
旅行大手JTBが1月に発表した旅行動向に関する調査では、為替相場が落ち着けば海外旅行自体の回復が見込まれるとしている。
調査結果によると、25年の海外旅行の意向(回答者数3,095人)は、「行く予定」が21.1%、「行かない予定」は78.9%だった。「行く予定」の人の旅行先(複数回答)としては「韓国」が30.4%、「台湾」が26.4%、「ハワイ」が24.2%、「欧州」が18.4%で、「東南アジア」は12.9%だった。
25年に「海外旅行に行かない理由」(複数回答、回答者数2,443人)として、「旅行費用が高いから」が33.6%、「家計に余裕がないから」が26.4%、「円安だから」が24.4%などとなった。

"
["post_title"]=>
string(84) "邦人の東南ア訪問、回復鈍くタイとインドネシアは訪日が逆転"
["post_excerpt"]=>
string(0) ""
["post_status"]=>
string(7) "publish"
["comment_status"]=>
string(4) "open"
["ping_status"]=>
string(4) "open"
["post_password"]=>
string(0) ""
["post_name"]=>
string(198) "%e9%82%a6%e4%ba%ba%e3%81%ae%e6%9d%b1%e5%8d%97%e3%82%a2%e8%a8%aa%e5%95%8f%e3%80%81%e5%9b%9e%e5%be%a9%e9%88%8d%e3%81%8f%e3%82%bf%e3%82%a4%e3%81%a8%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%89%e3%83%8d%e3%82%b7%e3%82%a2"
["to_ping"]=>
string(0) ""
["pinged"]=>
string(0) ""
["post_modified"]=>
string(19) "2025-02-25 04:00:05"
["post_modified_gmt"]=>
string(19) "2025-02-24 19:00:05"
["post_content_filtered"]=>
string(0) ""
["post_parent"]=>
int(0)
["guid"]=>
string(34) "https://nnaglobalnavi.com/?p=24995"
["menu_order"]=>
int(0)
["post_type"]=>
string(4) "post"
["post_mime_type"]=>
string(0) ""
["comment_count"]=>
string(1) "0"
["filter"]=>
string(3) "raw"
}
- 国・地域別
-
インドネシア情報
- 内容別
-
ビジネス全般人事労務