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【イオン第2創業】「ワオン」でイオン経済圏顧客囲い込み、EC連携も

イオングループが、2014年1月のベトナムでのショッピングモール1号店開業から12年目に入り第2の創業ともいえる進化を遂げている。24年10月には共通ポイント「WAON(ワオン)」をベトナムで導入。グループで顧客IDを共通化しポイントを統合することで、イオン経済圏を構築し、グループ間のシナジー効果を狙う。将来的にグループ横断で顧客の購買データや決済情報の分析を行い、広告戦略や商品開発にも生かしていく計画だ。電子商取引(EC)にもポイントを付与し、実店舗がない地方の消費者へも経済圏を広げる。イオンベトナムの古澤康之前社長(現イオンリテール社長)は「長年思い描いていた構想が、やっと形になってきた」と語り、ワオンの効果に期待する。

イオングループは、24年10月から共通ポイント「ワオン」をベトナムで導入している(イオンベトナム提供)

ワオンポイントは、現在は総合スーパー「イオン」と中型スーパー「マックスバリュ」など計59店舗で導入し、客の約6割が使用している。25年中にグループ共通でワオンポイントの管理が行えるアプリを開発し、グループ会社が運営するショッピングモール「イオンモール」やコンビニエンスストア「ミニストップ」、小型スーパー「シティマート」、子ども向けの遊戯施設「イオンファンタジー」などでも使えるようにする予定だ。
ワオンポイントは1万ドン(約58円)の購入ごとに1ポイントためることができ、100ポイントたまると1万ドンのバウチャーと交換できる仕組みだ。古澤氏は、今後は「ポイント2倍デー」など購入を促す仕掛けを作っていくと述べた。
これまでイオングループ各社はポイントをバラバラに管理していたが、一元管理することでグループ各店への来店の動機をつくることができるとともに、「グループ横断で顧客の購買データを分析できるという意味は大きい」という。
■ECもポイント連携
ワオンポイントの導入で、イオンベトナムのECサイトも実店舗とのポイント連携ができるようになった。ECは23年に開始した。店舗の周辺地域は自社配送員、その他の地域は外部の配送員という体制をとり、全国配送も手がける。古澤氏は、「ベトナム全土63省市のうち既に53省市から注文があり、想像以上の反響の大きさに驚いている」と語る。
これまでポイントが付かなかったECにワオンを付与することで、ネット比率の引き上げを見込む。現状ではECは売上高の数%にとどまるが、1割まで伸ばすことを当面の目標にしている。
ECでの売り上げは現在、食品が大半を占めるが、家具や日用品「ホームコーディ」、若者向け低価格衣料品「マイクローゼット」、化粧品やヘルスケア商品「グラムビューティーク」といったプライベートブランド(PB)を強化して、食品以外の売り上げも伸ばしていく。
■データを分析、商品開発や広告戦略に
ワオンやECといったデジタルトランスフォーメーション(DX)の起爆剤となるのが、民間商業銀行サウスイーストアジア銀行(SEAバンク)傘下の郵政通信ファイナンス(PTF)のイオンフィナンシャルサービスによる買収だ。
個人向けローンやクレジットカードの発行の提供が可能となり、日本のイオンの基盤である「小売り」「商業デベロッパー」「金融」の3本柱がベトナムでもそろう。PTFのノウハウを手に入れることで、サービスのラインアップを拡充するだけでなく、顧客の決済情報に基づく消費行動の解析度を上げていく。ポイントサービスとクレジットカードの情報を分析することで消費者のニーズを先取りした商品開発や、カスタマージャーニー(消費者が商品の購入、利用に至るまでの流れ)に合ったマーケティングの高度化につなげていくという。
■長年の構想、ようやく形に
ベトナムでのポイント経済圏確立は、イオンが「長年思い描いてきた夢」だった。構想自体は古澤氏の着任前の17年頃からあったが、グループ各社がそれぞれ運用しているシステムごと刷新する一大プロジェクトであったため実現に時間を要した。
イオンは日本でも、ポイント経済圏の拡大に向けてグループ全社へのワオンポイント導入を進め、一本化を目指しているが既に巨大化した日本での事業に横ぐしを刺すのは至難の業だ。比較的規模が小さいベトナム事業も一元化するなら今のうちだった。古澤氏は「ベトナム在任中にグループ共通のポイント基盤を作るつもりだった」と思いを語る。
古澤氏は10年代半ばに中国に赴任し急速なキャッシュレス化やECの爆発的な普及を目の当たりにした。21年にベトナム赴任後はコロナ禍を経験し、ようやくワオン導入にこぎつけた。「長年思い描いていた構想が、やっと形になってきた」と破顔した。
古澤氏は3月1日付でイオンリテールの社長に就任し、ベトナム事業は手塚大輔氏(前イオングローバルSCM社長)に託した。

ワオンポイントの導入に期待を示す古澤氏=2月、ホーチミン市
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ワオンポイントは、現在は総合スーパー「イオン」と中型スーパー「マックスバリュ」など計59店舗で導入し、客の約6割が使用している。25年中にグループ共通でワオンポイントの管理が行えるアプリを開発し、グループ会社が運営するショッピングモール「イオンモール」やコンビニエンスストア「ミニストップ」、小型スーパー「シティマート」、子ども向けの遊戯施設「イオンファンタジー」などでも使えるようにする予定だ。
ワオンポイントは1万ドン(約58円)の購入ごとに1ポイントためることができ、100ポイントたまると1万ドンのバウチャーと交換できる仕組みだ。古澤氏は、今後は「ポイント2倍デー」など購入を促す仕掛けを作っていくと述べた。
これまでイオングループ各社はポイントをバラバラに管理していたが、一元管理することでグループ各店への来店の動機をつくることができるとともに、「グループ横断で顧客の購買データを分析できるという意味は大きい」という。
■ECもポイント連携
ワオンポイントの導入で、イオンベトナムのECサイトも実店舗とのポイント連携ができるようになった。ECは23年に開始した。店舗の周辺地域は自社配送員、その他の地域は外部の配送員という体制をとり、全国配送も手がける。古澤氏は、「ベトナム全土63省市のうち既に53省市から注文があり、想像以上の反響の大きさに驚いている」と語る。
これまでポイントが付かなかったECにワオンを付与することで、ネット比率の引き上げを見込む。現状ではECは売上高の数%にとどまるが、1割まで伸ばすことを当面の目標にしている。
ECでの売り上げは現在、食品が大半を占めるが、家具や日用品「ホームコーディ」、若者向け低価格衣料品「マイクローゼット」、化粧品やヘルスケア商品「グラムビューティーク」といったプライベートブランド(PB)を強化して、食品以外の売り上げも伸ばしていく。
■データを分析、商品開発や広告戦略に
ワオンやECといったデジタルトランスフォーメーション(DX)の起爆剤となるのが、民間商業銀行サウスイーストアジア銀行(SEAバンク)傘下の郵政通信ファイナンス(PTF)のイオンフィナンシャルサービスによる買収だ。
個人向けローンやクレジットカードの発行の提供が可能となり、日本のイオンの基盤である「小売り」「商業デベロッパー」「金融」の3本柱がベトナムでもそろう。PTFのノウハウを手に入れることで、サービスのラインアップを拡充するだけでなく、顧客の決済情報に基づく消費行動の解析度を上げていく。ポイントサービスとクレジットカードの情報を分析することで消費者のニーズを先取りした商品開発や、カスタマージャーニー(消費者が商品の購入、利用に至るまでの流れ)に合ったマーケティングの高度化につなげていくという。
■長年の構想、ようやく形に
ベトナムでのポイント経済圏確立は、イオンが「長年思い描いてきた夢」だった。構想自体は古澤氏の着任前の17年頃からあったが、グループ各社がそれぞれ運用しているシステムごと刷新する一大プロジェクトであったため実現に時間を要した。
イオンは日本でも、ポイント経済圏の拡大に向けてグループ全社へのワオンポイント導入を進め、一本化を目指しているが既に巨大化した日本での事業に横ぐしを刺すのは至難の業だ。比較的規模が小さいベトナム事業も一元化するなら今のうちだった。古澤氏は「ベトナム在任中にグループ共通のポイント基盤を作るつもりだった」と思いを語る。
古澤氏は10年代半ばに中国に赴任し急速なキャッシュレス化やECの爆発的な普及を目の当たりにした。21年にベトナム赴任後はコロナ禍を経験し、ようやくワオン導入にこぎつけた。「長年思い描いていた構想が、やっと形になってきた」と破顔した。
古澤氏は3月1日付でイオンリテールの社長に就任し、ベトナム事業は手塚大輔氏(前イオングローバルSCM社長)に託した。
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