【後編】アンケートの前編では、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)への感染の恐怖と闘いつつ、日系企業が取り組んでいる安全対策などに焦点を当てた。今回は、各社が考える課題や今後の経済見通しなどについての声を取り上げる。課題としては、サプライチェーン(供給網)の中国依存や日韓ビジネスの停滞を懸念する回答が目立った。韓国経済の今後についてのコメントには「危機」「長期低迷」「連鎖破綻」といった悲観的な言葉が並んでおり、先行きへの不安が色濃くにじむ。
新型コロナウイルスの検査を行う医療従事者=3月10日、韓国・ソウル(NNA撮影)
「経済が大きく停滞するだろう。最終的にいつまで続き、どこまで回復できるのか。先行きが見えないことが最大の懸念だ」。ある日系企業トップのこの言葉が、いま韓国でビジネス展開する大多数の日系企業に通底する正直な感情だろう。
■業績悪化は不可避
「今回の事態が自社の事業や日系企業のビジネスにどのような影響を与えるか?」という質問に対しては、「中長期的な業績悪化が避けられない」「ただでさえ景気低迷による売り上げ不振が続いていたのに、さらに悪化要因が加わり先行きが思いやられる」「4月中に回復したとしても、年間では20~30%の売り上げダウンが避けられそうにない」といった業績の悪化を懸念する声が多い。
さらに「競合にシェアを奪われると以前の状態に戻すのが難しくなる」「(長期化すれば)事業縮小や撤退の検討もあり得る」といった先行きへの不安を吐露するコメントも散見された。
■サプライチェーンの課題露呈
部品・素材の調達を中国に依存している日系メーカーからは「サプライチェーンの一部が停滞することで生産全体に影響発生」「サプライチェーンの中国依存を分散する方向で見直しが行われるのではないか」「チャイナリスクへの対応が加速するだろう」「コスト優先の特定国に偏ったサプライチェーンは見直される」など、供給網の課題についての指摘が相次いだ。これらの見方に象徴されるように、供給網の一極集中が今後の課題としてクローズアップされている。
日系メーカーにとっては今回の事態がリスク分散を促すきっかけになるとみられるが、中国は市場としての存在感も大きく一朝一夕に進む話ではない。当面は、中国での生産体制の回復を待つしかなさそうだ。
■日韓ビジネスに度重なる冷や水
日系企業にとってつらいのは、昨年来の日本製品不買運動の傷が癒えない状況下で、新型肺炎の拡大というダブルパンチに見舞われた点だ。この状況を受けて「韓国での現地化を意識したビジネス展開が必要になる」「これまでの日韓間での事業展開から、韓国の現地市場をターゲットとしたビジネスへのシフトも検討する」など、新たな事業展開を模索し始めた企業もあるようだ
前編でも触れたが、日韓両国が9日に発動した互いの国に対する入国制限措置がいつ解除されるかにも注目が集まる。この措置により日系企業は、予定していた案件の先送りだけでなく、出張や赴任時期の延期など計画の変更を迫られる事態となった。日韓ビジネスの停滞だけでなく、改善の兆しが見えつつあった日韓関係にも再び暗雲が立ちこめている。
■韓国経済の春遠のく
では、今回の事態は韓国経済にどのような影響を与えるのか。「多くの中小企業にとっては存続に関わるレベルの大きな影響が出る」「人の往来が減って、航空業界や観光業界を中心に業績悪化が懸念される」といった経済悪化を予想する声が大勢を占めた。
中には「航空と関連各社の連鎖破綻」をはじめ、「サービス業での倒産の多発」「過去最悪に近いレベルまで経済が悪化」「世界同時株安から金融危機に陥る」「国の舵取り次第では財政破綻の可能性もあり得る」など危機的な状況を憂うコメントも散見された。季節は春がすぐそこまで来ているが、多くの日系企業が「韓国経済はしばらく冬の時代が続く」とみている。
■はらみ続ける感染リスク
新型肺炎の感染拡大はまだ予断を許さない状況が続く。アンケートでも「韓国はまだ新型肺炎感染の拡大期であり、予防を最優先して対応していく」「従業員のメンタル面でのフォローが中長期的な課題となる」「今後は日韓と日中以外にも拡大した事業継続計画(BCP)が必要になる可能性がある」など、事態の長期化を踏まえた対策の重要性を訴える声が目についた。
事態が長引けば長引くほど、人の心はささくれて疲弊する。「被害を最小限に抑えて事業を継続する」にはどう対応すべきか。日系企業にとっても、従業員へのメンタルヘルスケアを含むBCPの再点検が求められている。
今回のアンケート調査は3月5~9日に実施し、60社から有効回答を得た。内訳は製造業が30%(18社)、非製造業が60%(36社)、駐在員事務所が3.3%(2社)、その他が6.7%(4社)だった。回答企業の韓国拠点の所在地はソウル市が45社、京畿道が10社、釜山市が2社など。
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■業績悪化は不可避
「今回の事態が自社の事業や日系企業のビジネスにどのような影響を与えるか?」という質問に対しては、「中長期的な業績悪化が避けられない」「ただでさえ景気低迷による売り上げ不振が続いていたのに、さらに悪化要因が加わり先行きが思いやられる」「4月中に回復したとしても、年間では20~30%の売り上げダウンが避けられそうにない」といった業績の悪化を懸念する声が多い。
さらに「競合にシェアを奪われると以前の状態に戻すのが難しくなる」「(長期化すれば)事業縮小や撤退の検討もあり得る」といった先行きへの不安を吐露するコメントも散見された。
■サプライチェーンの課題露呈
部品・素材の調達を中国に依存している日系メーカーからは「サプライチェーンの一部が停滞することで生産全体に影響発生」「サプライチェーンの中国依存を分散する方向で見直しが行われるのではないか」「チャイナリスクへの対応が加速するだろう」「コスト優先の特定国に偏ったサプライチェーンは見直される」など、供給網の課題についての指摘が相次いだ。これらの見方に象徴されるように、供給網の一極集中が今後の課題としてクローズアップされている。
日系メーカーにとっては今回の事態がリスク分散を促すきっかけになるとみられるが、中国は市場としての存在感も大きく一朝一夕に進む話ではない。当面は、中国での生産体制の回復を待つしかなさそうだ。
■日韓ビジネスに度重なる冷や水
日系企業にとってつらいのは、昨年来の日本製品不買運動の傷が癒えない状況下で、新型肺炎の拡大というダブルパンチに見舞われた点だ。この状況を受けて「韓国での現地化を意識したビジネス展開が必要になる」「これまでの日韓間での事業展開から、韓国の現地市場をターゲットとしたビジネスへのシフトも検討する」など、新たな事業展開を模索し始めた企業もあるようだ
前編でも触れたが、日韓両国が9日に発動した互いの国に対する入国制限措置がいつ解除されるかにも注目が集まる。この措置により日系企業は、予定していた案件の先送りだけでなく、出張や赴任時期の延期など計画の変更を迫られる事態となった。日韓ビジネスの停滞だけでなく、改善の兆しが見えつつあった日韓関係にも再び暗雲が立ちこめている。
■韓国経済の春遠のく
では、今回の事態は韓国経済にどのような影響を与えるのか。「多くの中小企業にとっては存続に関わるレベルの大きな影響が出る」「人の往来が減って、航空業界や観光業界を中心に業績悪化が懸念される」といった経済悪化を予想する声が大勢を占めた。
中には「航空と関連各社の連鎖破綻」をはじめ、「サービス業での倒産の多発」「過去最悪に近いレベルまで経済が悪化」「世界同時株安から金融危機に陥る」「国の舵取り次第では財政破綻の可能性もあり得る」など危機的な状況を憂うコメントも散見された。季節は春がすぐそこまで来ているが、多くの日系企業が「韓国経済はしばらく冬の時代が続く」とみている。
■はらみ続ける感染リスク
新型肺炎の感染拡大はまだ予断を許さない状況が続く。アンケートでも「韓国はまだ新型肺炎感染の拡大期であり、予防を最優先して対応していく」「従業員のメンタル面でのフォローが中長期的な課題となる」「今後は日韓と日中以外にも拡大した事業継続計画(BCP)が必要になる可能性がある」など、事態の長期化を踏まえた対策の重要性を訴える声が目についた。
事態が長引けば長引くほど、人の心はささくれて疲弊する。「被害を最小限に抑えて事業を継続する」にはどう対応すべきか。日系企業にとっても、従業員へのメンタルヘルスケアを含むBCPの再点検が求められている。
今回のアンケート調査は3月5~9日に実施し、60社から有効回答を得た。内訳は製造業が30%(18社)、非製造業が60%(36社)、駐在員事務所が3.3%(2社)、その他が6.7%(4社)だった。回答企業の韓国拠点の所在地はソウル市が45社、京畿道が10社、釜山市が2社など。
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