韓国のソウル首都圏で新型コロナウイルス感染症が再び猛威を振るい始めた。複数のカトリック教会で集団感染が起きたため、5日連続で新規感染者数が100人を上回った。韓国政府はソウル首都圏での警戒レベルを「2段階」に引き上げ、集会やイベントの開催を制限。一部の学校授業を遠隔授業に切り替え、プロスポーツの観客動員も再び禁止された。2~3月にかけて新興宗教団体で発生した大規模なクラスター(感染者集団)と同じ轍を踏むのではないかとの懸念が広がっている。
現在の感染状況は、大流行の初期段階にすぎないと認識している——。韓国保健福祉省傘下の疾病管理本部で新型コロナの防疫対策を指揮する鄭銀敬(チョン・ウンギョン)本部長は18日、厳しい表情でこのように述べた。韓国の新規感染者数は8月1~12日が30~50人程度で推移していたが、13日に7月25日(113人)以来20日ぶりに100人を突破し、15日には279人まで急増した。16日は197人と200人を下回ったが、17日には再び246人と増加に転じた。
韓国政府は感染者が急増したソウル市と京畿道、両市・道に隣接する仁川市について、防疫対策として実施している「社会的距離」の警戒レベルを2段階に引き上げ、◇不要不急の外出自粛◇室内で50人以上、屋外で100人以上の集会やイベントの開催自制◇スポーツ競技の無観客開催◇学校や幼稚園など教育機関に対する遠隔授業への切り替え——を勧告した。
丁世均(チョン・セギュン)首相も18日午後に記者会見を開き、「厳格化された社会的距離の措置は、日常を守るための最後選択。感染をこれ以上拡大させないため、首都圏に暮らす人々の積極的な賛同と実践が必要だ」と強調した。
■宗教発クラスター再発に国民怒り
韓国で感染者が急激に増えたのは、複数のカトリック教会で集団感染が相次いで発生したためだ。とりわけ、ソウル市城北区に本拠を置くサラン第一教会の感染者が多く、中央防疫対策本部よると18日までに計457人の感染が確認された。このほか、ソウル・汝矣島(永登浦区)の大型教会や京畿道竜仁市の教会でもクラスターが発生した。
韓国では大邱市の新興宗教団体「新天地教会」での集団感染をきっかけに、2~3月に感染者数が爆発的に増えた苦い経験がある。サラン第一教会は約4,000人の信徒を抱える比較的大きな教派だ。疾病管理本部によると、すでに大邱市や慶尚南道で同教会を発端とする3次感染が見つかっており、新天地教会発の二の舞いになるのではないかという懸念が広がっている。
また、サラン第一教会の一部の信徒が、8月15日にソウル・光化門広場(鍾路区)で開かれた文在寅(ムン・ジェイン)政権糾弾の大規模集会に参加した事実も明らかになった。集会を主導したサラン第一教会のチョン・グァンフン担任牧師も、17日午後に新型コロナへの感染が確認された。同集会には全国各地から多くの人が参加しており、感染が全国に拡大する恐れもある。南東部の浦項市では340人以上の市民が同集会に参加し、すでに2人の感染が明らかになっている。
防疫当局は集会参加者の把握を急いでいるが、連絡が取れない信徒も多く調査は難航している。そもそも、ソウル市は8月15日の集会開催を禁止していた。宗教団体がこれを破って開催を強行したことに対しても国民の怒りが向かっている。
■在宅勤務に逆戻り
ソウル首都圏での感染者急増を受け、通常勤務に戻していた企業が再び在宅勤務を再開する動きが目立ち始めた。ポータル大手のネイバーは、8月末まで全面的な在宅勤務に切り替えると発表。同社は2月から4月末まで全面的な在宅勤務を実施していたが、5月からは在宅勤務のペースを1週間に3日に緩和していた。
このほか、IT大手のカカオや無料対話アプリ「LINE」を運営するLINEの韓国法人、LINEコリアも在宅勤務を再開している。
いずれも感染拡大を予防するための措置だが、長期間の在宅勤務に対する疲労感を訴える声も聞こえる。板橋新都市(京畿道城南市)のあるIT企業で勤務するキム・チョンジュさん(30代・女性)はNNAに対し、「ようやく通常勤務に戻ったと思った矢先の在宅勤務再開に、正直疲れも感じている」と話した。
■感染継続なら「3段階」の可能性も
全国レベルでの2段階実施については、18日時点では「勧告」にとどまっているが、防疫当局は感染者の増加が今後も続いた場合には最も厳しい「3段階」への引き上げも視野に入れる。8月5日~18日の2週間の1日平均感染者数は82.79人と、3段階の発令条件である「2週間の平均感染者が100人以上」に迫る水準となっている。
疾病管理本部のクォン・ジュンオク副本部長は「防疫が重大な岐路にある。感染拡大を抑制できないならば、警戒レベルの『第3段階』への引き上げを考慮しなければならない」と述べた。
第3段階に引き上げられた場合、全ての企業に対して可能な限りの在宅勤務やテレワークが義務付けられ、10人以上の全ての集会・イベントとスポーツ競技は開催禁止となる。学校も、休校か完全な遠隔授業に切り替えなければならない。
そうなれば、国内消費が再び萎縮する恐れもある。経済協力開発機構(OECD)は11日、韓国の2020年の実質国内総生産(GDP)伸び率の見通しを6月から0.4ポイント上方修正したマイナス0.8%としたが、「感染第2波」が起きた場合のシナリオとして「マイナス2.0%に落ち込む」との見方も示している。
今回の感染拡大を抑制できなければ後者のシナリオに向かう可能性が高くなりそうだ。
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韓国政府は感染者が急増したソウル市と京畿道、両市・道に隣接する仁川市について、防疫対策として実施している「社会的距離」の警戒レベルを2段階に引き上げ、◇不要不急の外出自粛◇室内で50人以上、屋外で100人以上の集会やイベントの開催自制◇スポーツ競技の無観客開催◇学校や幼稚園など教育機関に対する遠隔授業への切り替え——を勧告した。
丁世均(チョン・セギュン)首相も18日午後に記者会見を開き、「厳格化された社会的距離の措置は、日常を守るための最後選択。感染をこれ以上拡大させないため、首都圏に暮らす人々の積極的な賛同と実践が必要だ」と強調した。
■宗教発クラスター再発に国民怒り
韓国で感染者が急激に増えたのは、複数のカトリック教会で集団感染が相次いで発生したためだ。とりわけ、ソウル市城北区に本拠を置くサラン第一教会の感染者が多く、中央防疫対策本部よると18日までに計457人の感染が確認された。このほか、ソウル・汝矣島(永登浦区)の大型教会や京畿道竜仁市の教会でもクラスターが発生した。
韓国では大邱市の新興宗教団体「新天地教会」での集団感染をきっかけに、2~3月に感染者数が爆発的に増えた苦い経験がある。サラン第一教会は約4,000人の信徒を抱える比較的大きな教派だ。疾病管理本部によると、すでに大邱市や慶尚南道で同教会を発端とする3次感染が見つかっており、新天地教会発の二の舞いになるのではないかという懸念が広がっている。
また、サラン第一教会の一部の信徒が、8月15日にソウル・光化門広場(鍾路区)で開かれた文在寅(ムン・ジェイン)政権糾弾の大規模集会に参加した事実も明らかになった。集会を主導したサラン第一教会のチョン・グァンフン担任牧師も、17日午後に新型コロナへの感染が確認された。同集会には全国各地から多くの人が参加しており、感染が全国に拡大する恐れもある。南東部の浦項市では340人以上の市民が同集会に参加し、すでに2人の感染が明らかになっている。
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■在宅勤務に逆戻り
ソウル首都圏での感染者急増を受け、通常勤務に戻していた企業が再び在宅勤務を再開する動きが目立ち始めた。ポータル大手のネイバーは、8月末まで全面的な在宅勤務に切り替えると発表。同社は2月から4月末まで全面的な在宅勤務を実施していたが、5月からは在宅勤務のペースを1週間に3日に緩和していた。
このほか、IT大手のカカオや無料対話アプリ「LINE」を運営するLINEの韓国法人、LINEコリアも在宅勤務を再開している。
いずれも感染拡大を予防するための措置だが、長期間の在宅勤務に対する疲労感を訴える声も聞こえる。板橋新都市(京畿道城南市)のあるIT企業で勤務するキム・チョンジュさん(30代・女性)はNNAに対し、「ようやく通常勤務に戻ったと思った矢先の在宅勤務再開に、正直疲れも感じている」と話した。
■感染継続なら「3段階」の可能性も
全国レベルでの2段階実施については、18日時点では「勧告」にとどまっているが、防疫当局は感染者の増加が今後も続いた場合には最も厳しい「3段階」への引き上げも視野に入れる。8月5日~18日の2週間の1日平均感染者数は82.79人と、3段階の発令条件である「2週間の平均感染者が100人以上」に迫る水準となっている。
疾病管理本部のクォン・ジュンオク副本部長は「防疫が重大な岐路にある。感染拡大を抑制できないならば、警戒レベルの『第3段階』への引き上げを考慮しなければならない」と述べた。
第3段階に引き上げられた場合、全ての企業に対して可能な限りの在宅勤務やテレワークが義務付けられ、10人以上の全ての集会・イベントとスポーツ競技は開催禁止となる。学校も、休校か完全な遠隔授業に切り替えなければならない。
そうなれば、国内消費が再び萎縮する恐れもある。経済協力開発機構(OECD)は11日、韓国の2020年の実質国内総生産(GDP)伸び率の見通しを6月から0.4ポイント上方修正したマイナス0.8%としたが、「感染第2波」が起きた場合のシナリオとして「マイナス2.0%に落ち込む」との見方も示している。
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