DOWAホールディングス傘下で環境・リサイクル事業を担うDOWAエコシステム(東京都千代田区)は、有害産業廃棄物の適正な処理が課題となっているインドネシアで、日本の技術を活用した処理施設を運営する。廃棄物の成分を分析した上での処理方法の提案から、運搬、最終処分までを一貫して担う。2月から本格稼働した東ジャワ州ラモンガン県の処理拠点を管理するDOWAエコシステム・インドネシア(DESI)の立川尊信代表取締役に話を聞いた。
2月から本格稼働した東ジャワ州ラモンガン県の処理拠点を管理するDOWAエコシステム・インドネシア(DESI)の立川代表取締役(同社提供)
——DESIでは主にどのような廃棄物を処理しているのか。
埋め立て最終処分場を備える総合的な産業廃棄物の処理拠点として、約600種類の廃棄物を扱うことができる。有害産業廃棄物の処理が9割を占め、例えば◇工業団地で排水処理後に出たスラッジ(汚泥)◇病院併設の焼却炉から発生する焼却灰◇工場で化学物質などが付着した包装容器◇塗料◇酸、アルカリ、重金属などを含んだ廃棄物——などを処理する。業種・分野別では製造業や機械、製薬、食品、繊維、石油・ガスなど多種多様だ。
——廃棄物処理の工程は。
まずは廃棄物のサンプルを受け取り、処理施設内の研究室で分析し、処理方法を検討する。処理を依頼する企業などから事前に入手した廃棄物の成分の情報と、検査結果が異なる場合もあり、分析は安全・適正に処理するためには欠かせない工程だ。分析結果に基づき、中間処理や最終処分、リサイクルなどをする。
——中間処理や最終処分はどのように行っているのか。
中間処理では、液体の場合、薬剤を混ぜ合わせて中和する中和処理や活性汚泥法による生物処理を行う。処理後に水質を分析し、放流基準を満たしていることを確認した上で川に流す。
埋め立て最終処分に関しては、前処理が必要になる廃棄物も多い。埋め立て前の処理としては、コンクリート製のピットの中で、廃棄物と薬剤、充塡(じゅうてん)剤などを混ぜ合わせて形状・性状を安定化させる処理や、おがくずや石灰石などを混ぜて固形化し、さらにセメントなどを入れて重金属が水に溶け出さないようにする不溶化処理などがある。
——リサイクルについては。
現段階では、受け入れた廃棄物を選別し、金属や紙などのリサイクルできるものは専門業者に売却する。 そのほか、セメント工場で焼却する代替燃料や原料としての活用などに向けて話を進めている最中だ。リサイクルできるものはもちろんするが、まずは環境に悪影響を与えず適正に処理することが最優先で、インドネシアの現状を考えた際には最後のとりでとなる最終処分場の整備が不可欠だと見ている。その上で、リサイクルやリユースなどを強化していくことになる。
——インドネシアの有害産業廃棄物の処理について課題と感じる点は。
インドネシアの環境関連規制や制度については、排出者責任や排出事業者側が廃棄物の内容や種類、依頼する運搬業者や処理業者を記録する「マニフェスト制度」、違反した際の罰則などが整備されており、中には日本より厳しい基準のものもある。ただ、全体的にどの地域・業種から、どういった産業廃棄物が発生し、どこでどのように処理されているのかなどを一括で確認できる正確な統計データはないため、こうした仕組みはあるほうが望ましい。
また運搬、一時保管、中間処理、リサイクル、最終処分でそれぞれ許認可が異なり、各分野を総合的に担う業者が少ないことから自社の廃棄物が実際に最初から最後までどういった工程で処理されているのか、詳細が見えにくい場合も多い。
——課題にどのように対応していくのか。
持続可能な社会を目指す中、今後違反への取り締まりがさらに厳しくなっていくことは確かである。企業が環境リスク面で心配することなく、安心して事業に取り組めるよう運搬から最終処分まで一貫したサービスを提供していきたい。(聞き手=上村夏美)
<プロフィル>
1973年生まれ、佐賀県出身。96年にDOWAホールディングス入社。2009年から15年まで、DOWAグループの有害廃棄物処理の第1拠点である、西ジャワ州ボゴール県のプラサダ・パムナ・リンバ・インダストリ(PPLi)で事業企画や新規事業を担う。15年から日本でDOWAエコシステム・インドネシア(DESI)の立ち上げを担当した後、21年6月にDESI取締役に着任。4月から現職。
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[caption id="attachment_12749" align="aligncenter" width="620"]2月から本格稼働した東ジャワ州ラモンガン県の処理拠点を管理するDOWAエコシステム・インドネシア(DESI)の立川代表取締役(同社提供)[/caption]
——DESIでは主にどのような廃棄物を処理しているのか。
埋め立て最終処分場を備える総合的な産業廃棄物の処理拠点として、約600種類の廃棄物を扱うことができる。有害産業廃棄物の処理が9割を占め、例えば◇工業団地で排水処理後に出たスラッジ(汚泥)◇病院併設の焼却炉から発生する焼却灰◇工場で化学物質などが付着した包装容器◇塗料◇酸、アルカリ、重金属などを含んだ廃棄物——などを処理する。業種・分野別では製造業や機械、製薬、食品、繊維、石油・ガスなど多種多様だ。
——廃棄物処理の工程は。
まずは廃棄物のサンプルを受け取り、処理施設内の研究室で分析し、処理方法を検討する。処理を依頼する企業などから事前に入手した廃棄物の成分の情報と、検査結果が異なる場合もあり、分析は安全・適正に処理するためには欠かせない工程だ。分析結果に基づき、中間処理や最終処分、リサイクルなどをする。
——中間処理や最終処分はどのように行っているのか。
中間処理では、液体の場合、薬剤を混ぜ合わせて中和する中和処理や活性汚泥法による生物処理を行う。処理後に水質を分析し、放流基準を満たしていることを確認した上で川に流す。
埋め立て最終処分に関しては、前処理が必要になる廃棄物も多い。埋め立て前の処理としては、コンクリート製のピットの中で、廃棄物と薬剤、充塡(じゅうてん)剤などを混ぜ合わせて形状・性状を安定化させる処理や、おがくずや石灰石などを混ぜて固形化し、さらにセメントなどを入れて重金属が水に溶け出さないようにする不溶化処理などがある。
——リサイクルについては。
現段階では、受け入れた廃棄物を選別し、金属や紙などのリサイクルできるものは専門業者に売却する。 そのほか、セメント工場で焼却する代替燃料や原料としての活用などに向けて話を進めている最中だ。リサイクルできるものはもちろんするが、まずは環境に悪影響を与えず適正に処理することが最優先で、インドネシアの現状を考えた際には最後のとりでとなる最終処分場の整備が不可欠だと見ている。その上で、リサイクルやリユースなどを強化していくことになる。
——インドネシアの有害産業廃棄物の処理について課題と感じる点は。
インドネシアの環境関連規制や制度については、排出者責任や排出事業者側が廃棄物の内容や種類、依頼する運搬業者や処理業者を記録する「マニフェスト制度」、違反した際の罰則などが整備されており、中には日本より厳しい基準のものもある。ただ、全体的にどの地域・業種から、どういった産業廃棄物が発生し、どこでどのように処理されているのかなどを一括で確認できる正確な統計データはないため、こうした仕組みはあるほうが望ましい。
また運搬、一時保管、中間処理、リサイクル、最終処分でそれぞれ許認可が異なり、各分野を総合的に担う業者が少ないことから自社の廃棄物が実際に最初から最後までどういった工程で処理されているのか、詳細が見えにくい場合も多い。
——課題にどのように対応していくのか。
持続可能な社会を目指す中、今後違反への取り締まりがさらに厳しくなっていくことは確かである。企業が環境リスク面で心配することなく、安心して事業に取り組めるよう運搬から最終処分まで一貫したサービスを提供していきたい。(聞き手=上村夏美)
<プロフィル>
1973年生まれ、佐賀県出身。96年にDOWAホールディングス入社。2009年から15年まで、DOWAグループの有害廃棄物処理の第1拠点である、西ジャワ州ボゴール県のプラサダ・パムナ・リンバ・インダストリ(PPLi)で事業企画や新規事業を担う。15年から日本でDOWAエコシステム・インドネシア(DESI)の立ち上げを担当した後、21年6月にDESI取締役に着任。4月から現職。"
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