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ムンバイ初のユニクロが誕生きょう開店、デリー並み増店意欲

インド西部ムンバイで6日、カジュアル衣料品店「ユニクロ」が初めて新規開店する。ファーストリテイリングの完全子会社ユニクロ・インドの清智彦(せい・ともひこ)最高経営責任者(CEO)は5日、各メディアの取材に応じ、すでに7店があるデリー首都圏を引き合いに「デリー首都圏と同様、ムンバイでも店を増やしたい」と増店に意欲を示した。ムンバイで10月中にもう1店をオープンすることも明らかにした。

インド西部ムンバイ初のユニクロとして6日に開店する「ユニクロ フェニックスマーケットシティモール店」=5日、ムンバイ(NNA撮影)

ユニクロは2019年10月に首都ニューデリーで1号店を開店以来、北部で新店を相次いでオープン。北部以外の店は6日に開店するムンバイの店が初めてで、11店目となる。
6日開店の新店は、ムンバイ東部の商業地域クラ地区のショッピングモール「フェニックスマーケットシティ」内にあり、店名は「ユニクロ フェニックスマーケットシティモール店」。モール付近は娯楽を含めたにぎやかな若者文化の街として発展している。
店は地上1階と地下1階の2フロアに分かれ、ウルトラライトダウン、ヒートテック、フリースなど、男性から女性、乳幼児向けまで幅広い商品をそろえる。営業時間は午前11時~午後9時半、売場面積は約1,068平方メートル。地上と地下をつなぐエスカレーター脇の壁面には、地元ムンバイの建築家兼イラストレーターのアシャンティ・ミラー氏によるアート作品を展示した。インド門やカッティングチャイなど、ムンバイの街や生活の様子が描かれている。
ユニクロ・インドの清CEOは5日、フェニックスマーケットシティモール店で開いた記者会見で、「ユニクロの『LifeWear(ライフウエア)』をムンバイの人々に提供できることに興奮している」と話した。ユニクロのライフウエアには「シンプル」や「上質」「長く使える」といった価値を込めているという。また、ムンバイ2店目は、ゴレガオン地区のオベロイ・モールで10月20日に開店すると表明。売場面積は約700平方メートルで、グランドフロアに設ける。

エスカレーター脇の壁面に、ムンバイの建築家兼イラストレーターによるアート作品を展示=5日、ユニクロのフェニックスマーケットシティモール店(NNA撮影)

記者の質疑に対応するユニクロ・インドの清智彦CEO(右)=5日、ユニクロのフェニックスマーケットシティモール店(NNA撮影)

■インド開店3年目で黒字化
ファストリは18年5月、インドでの出店を見据え、100%子会社となるユニクロ・インドを設立。19年10月、ユニクロの24カ国・地域目の店かつインド1号店として、ニューデリー南部の商業施設アンビエンス・モール内に「アンビエンスモール・バサントクンジ店」を開店した。その後、ハリヤナ州グルガオンやウッタルプラデシュ州ノイダ、同州ラクノー、パンジャブ州など、北部のみで増店。23年4月にはインド初の路面店もオープンした。

オンライン販売にも力を入れている。ファストリは20年10月、インドでオンライン販売を始めたと発表した。新型コロナウイルス流行に伴う消費者の外出自粛などを背景に、ウルトラライトダウンやヒートテックなど2万点以上の商品でスタート。21年7月にはオンライン販売サイト「UNIQLO.COM」の正式運用を始めた。
商品の現地調達も強化中だ。インドでは現在、17の縫製工場と六つの生地工場と提携。これらの工場はインド国内だけでなく、世界各地のユニクロ向けに輸出もしている。提携工場は今後も増やす方針だ。
ユニクロ・インドの業績は好調だ。21/22年度(21年4月~22年3月)の純利益は2億1,491万ルピー(約3億8,400万円)となり、インド開店3年目で初の通期黒字を早くも達成。出店先の選定や中間所得層をターゲットにした価格設定が功を奏したとみられる。直近の業績をみても、22/23年度は売上高が前年度比60.0%増の62億1,862万ルピー、純利益が3.2倍の6億8,131万ルピーだった。
ユニクロのインド国内の従業員数はムンバイの新店を含めて約400人で、ストア・マネジャーの90%はインド人。日本人従業員はわずか10人前後だという。

■日本・中国以外の地域が成長中
ファストリの各事業の中でも、ユニクロはグループ全体の売上高の8割以上を占める主力事業だ。ファストリの22年9月~23年5月期の連結決算を見ると、売上高が前年同期比21%増の2兆1,435億円、純利益は0.3%増の2,385億円。ファストリの売上高のうちユニクロ事業(店舗は25カ国・地域で計2,440店)は84%を占めて1兆8,073億円だった。
ユニクロ事業は、日本と中国の存在感が依然高いものの、インドを含むその他の地域も成長し始めている。9月~5月期の売上高を地域別にみると、日本が7,097億円(構成比39%、店舗数は807店)、中国・香港・台湾が4,763億円(26%、1,033店)、韓国・東南アジア・インド・豪州が3,429億円(19%、468店)、北米・欧州が2,783億円(15%、132店)——だった。

ファストリは現在、海外ユニクロ事業をグループ成長の柱に位置付け、各国で出店加速と電子商取引(EC)強化に取り組んでいる。インドを含む各地域は確立したブランドポジションを一層高め、継続的な事業拡大を目指す。3~5月期の韓国・東南アジア・インド・豪州は、シンガポール、タイ、インド、オーストラリアの業績が好調で、前年同期に比べて大幅な増収を達成。特にEC売上高は3割増だった。
■有識者「現地調達でコスト減」
地場コンサルティング会社ネックスダイムのストラテジック・イニシアチブ担当ディレクター、マニク・アボット(Manik Abbott)氏はNNAの取材に対し、「ユニクロは国際ブランドとしての価値と品質をインド人消費者に提供できている上、特定地域に集中して店を構えて話題を集めている」と指摘。さらに、「商品の現地調達に力を入れ、コスト減に取り組んでいる」と評価し、「インドにはユニクロを支える原材料や労働者、製造インフラがそろっている」と説いた。
一方、ユニクロがインド事業の好調をこの先も維持するためには、「ファッションのトレンドに後れを取らない能力と、インド人消費者が重きを置く価格戦略をうまく実施し続けることが大事だ」とコメントした。

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6日開店の新店は、ムンバイ東部の商業地域クラ地区のショッピングモール「フェニックスマーケットシティ」内にあり、店名は「ユニクロ フェニックスマーケットシティモール店」。モール付近は娯楽を含めたにぎやかな若者文化の街として発展している。
店は地上1階と地下1階の2フロアに分かれ、ウルトラライトダウン、ヒートテック、フリースなど、男性から女性、乳幼児向けまで幅広い商品をそろえる。営業時間は午前11時~午後9時半、売場面積は約1,068平方メートル。地上と地下をつなぐエスカレーター脇の壁面には、地元ムンバイの建築家兼イラストレーターのアシャンティ・ミラー氏によるアート作品を展示した。インド門やカッティングチャイなど、ムンバイの街や生活の様子が描かれている。
ユニクロ・インドの清CEOは5日、フェニックスマーケットシティモール店で開いた記者会見で、「ユニクロの『LifeWear(ライフウエア)』をムンバイの人々に提供できることに興奮している」と話した。ユニクロのライフウエアには「シンプル」や「上質」「長く使える」といった価値を込めているという。また、ムンバイ2店目は、ゴレガオン地区のオベロイ・モールで10月20日に開店すると表明。売場面積は約700平方メートルで、グランドフロアに設ける。
[caption id="attachment_15950" align="aligncenter" width="620"]エスカレーター脇の壁面に、ムンバイの建築家兼イラストレーターによるアート作品を展示=5日、ユニクロのフェニックスマーケットシティモール店(NNA撮影)[/caption]
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■インド開店3年目で黒字化
ファストリは18年5月、インドでの出店を見据え、100%子会社となるユニクロ・インドを設立。19年10月、ユニクロの24カ国・地域目の店かつインド1号店として、ニューデリー南部の商業施設アンビエンス・モール内に「アンビエンスモール・バサントクンジ店」を開店した。その後、ハリヤナ州グルガオンやウッタルプラデシュ州ノイダ、同州ラクノー、パンジャブ州など、北部のみで増店。23年4月にはインド初の路面店もオープンした。

オンライン販売にも力を入れている。ファストリは20年10月、インドでオンライン販売を始めたと発表した。新型コロナウイルス流行に伴う消費者の外出自粛などを背景に、ウルトラライトダウンやヒートテックなど2万点以上の商品でスタート。21年7月にはオンライン販売サイト「UNIQLO.COM」の正式運用を始めた。
商品の現地調達も強化中だ。インドでは現在、17の縫製工場と六つの生地工場と提携。これらの工場はインド国内だけでなく、世界各地のユニクロ向けに輸出もしている。提携工場は今後も増やす方針だ。
ユニクロ・インドの業績は好調だ。21/22年度(21年4月~22年3月)の純利益は2億1,491万ルピー(約3億8,400万円)となり、インド開店3年目で初の通期黒字を早くも達成。出店先の選定や中間所得層をターゲットにした価格設定が功を奏したとみられる。直近の業績をみても、22/23年度は売上高が前年度比60.0%増の62億1,862万ルピー、純利益が3.2倍の6億8,131万ルピーだった。
ユニクロのインド国内の従業員数はムンバイの新店を含めて約400人で、ストア・マネジャーの90%はインド人。日本人従業員はわずか10人前後だという。

■日本・中国以外の地域が成長中
ファストリの各事業の中でも、ユニクロはグループ全体の売上高の8割以上を占める主力事業だ。ファストリの22年9月~23年5月期の連結決算を見ると、売上高が前年同期比21%増の2兆1,435億円、純利益は0.3%増の2,385億円。ファストリの売上高のうちユニクロ事業(店舗は25カ国・地域で計2,440店)は84%を占めて1兆8,073億円だった。
ユニクロ事業は、日本と中国の存在感が依然高いものの、インドを含むその他の地域も成長し始めている。9月~5月期の売上高を地域別にみると、日本が7,097億円(構成比39%、店舗数は807店)、中国・香港・台湾が4,763億円(26%、1,033店)、韓国・東南アジア・インド・豪州が3,429億円(19%、468店)、北米・欧州が2,783億円(15%、132店)——だった。

ファストリは現在、海外ユニクロ事業をグループ成長の柱に位置付け、各国で出店加速と電子商取引(EC)強化に取り組んでいる。インドを含む各地域は確立したブランドポジションを一層高め、継続的な事業拡大を目指す。3~5月期の韓国・東南アジア・インド・豪州は、シンガポール、タイ、インド、オーストラリアの業績が好調で、前年同期に比べて大幅な増収を達成。特にEC売上高は3割増だった。
■有識者「現地調達でコスト減」
地場コンサルティング会社ネックスダイムのストラテジック・イニシアチブ担当ディレクター、マニク・アボット(Manik Abbott)氏はNNAの取材に対し、「ユニクロは国際ブランドとしての価値と品質をインド人消費者に提供できている上、特定地域に集中して店を構えて話題を集めている」と指摘。さらに、「商品の現地調達に力を入れ、コスト減に取り組んでいる」と評価し、「インドにはユニクロを支える原材料や労働者、製造インフラがそろっている」と説いた。
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