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【ビジネスノート】ジョホール海峡に浮かぶ夢 碧桂園の「森林都市」

マレーシア・ジョホール州に人工島を造成して新たな都市をゼロからつくる「フォレスト・シティー」計画。これを手がける香港上場の中国不動産大手、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)が深刻な経営悪化に直面している。総事業費1,000億米ドル(約14兆8,100億円)という空前の巨大プロジェクトは、どこへ向かうのか。【NNA香港 菅原真央、NNAマレーシア Charlotte Chong】

フォレスト・シティーには60棟以上のマンションと100棟以上のビラが建つ(NNA撮影)

フォレスト・シティーは、シンガポールから直線距離でわずか2キロメートルの位置にある。シンガポール西部トゥアスの国境検問所を通り、国境橋「セカンドリンク」を渡れば現地までは車で20分。地図を見る限り絶好の立地だが、現実はそうでもないことにすぐに気づくこととなる。
取材で宿泊したのは、ランドマーク的な存在の「フォレスト・シティー・マリーナ・ホテル」。訪れたのは昨年9月の平日だったが、フロントの女性によると「満室」だという。しかし、フロントスタッフは1人のみで、ロビーのバーも営業していない。283室を有する客室の実際の稼働率が気になる。

フォレスト・シティー・マリーナ・ホテルの朝食バイキング。4~5組いた客はいずれも中華系で、中国語が飛び交った(NNA撮影)

シンガポールから来たキリスト教関連団体の男性(50代)は、会合のため4日間ホテルに滞在すると話した。「広い場所が必要で、シンガポールから近く、価格も合理的だったため決めた」。碧桂園を巡るニュースも耳にしており「来るまではフォレスト・シティーが機能しているか心配だった」と顔をしかめた。
ホテル周辺を離れた住宅エリアでは、清掃員や建設作業員などの労働者を除き、人の姿がぐんと減る。マンション1階部分の飲食店はほとんどが中華料理店だ。中国メーカーの食品や生活用品などを置くスーパーマーケットもあるものの、生鮮食品が少なく個人商店のような規模。約9,000人とされる住民を支える生活感はない。

スーパーでは中国製の食品が売られている。店の規模は小さい(NNA撮影)

■コロナで計画停滞、ゴーストタウン化
フォレスト・シティーは、碧桂園が2015年からジョホール王室や同州政府の支援を受ける地場企業と共同で開発を進めている。マレーシアとシンガポールにまたがる4つの人工島を埋め立て造成し、住宅やオフィスタワー、商業施設、教育機関などを建設する巨大プロジェクトで最終的に70万人が住む計画だ。
碧桂園は経営状況の悪化が表面化し、昨年10月には米ドル建て社債の利払いを期限までにできなかった。23年6月中間期決算は純損益が489億3,200万人民元(約1兆185億円)の赤字となり、前年同期の黒字から巨額赤字に転落した。
碧桂園は同8月、フォレスト・シティー事業を計画通りに推進するとの声明を発表した。「安全かつ安定している」とし、人工島内での不動産販売も順調だと強調する。

夜のフォレスト・シティー。マンションの明かりのまばらさが目立つ(NNA撮影)

フォレスト・シティーは一時、資本の国外流出を阻止しようとする中国政府の方針や新型コロナウイルス感染症の影響などで計画が停滞し、ゴーストタウン化したことが話題となった。その後は徐々に活気を取り戻しているものの、人けを感じたのはホテルと隣接するショッピングモールの周辺のみだった。
ショッピングモールのフロアマップには飲食店やアパレル店、家具店など約30店舗が掲載されているが、実際に営業しているのは一部のみ。このほど施設内にスーパーをオープンした中国人オーナーの孫奇超さん(30代男性)は「コロナ前はとてもにぎやかだった。最近は人が戻ってきている」と主張した。
一番にぎわっていたのは免税店。フォレスト・シティーは「免税特区」に指定されているため、酒類などが免税で購入できる。「アサヒスーパードライ」の320ミリリットル缶は4.8リンギ(約150円)で、市内の約半額だ。

閑散とするショッピングモール。免税店にのみ数組の客がいた(NNA撮影)

■バス1時間に1本、タクシーも来ない
交通とインフラの脆弱(ぜいじゃく)さも人を遠ざけている。シャトルバスが3路線あるものの、多くても1時間に1本程度だ。
タクシーもつかまりにくい。タクシー運転手の女性(60代)は「(観光で)滞在する人は多くない。需要が少ないのでタクシーが入ってこず、出かけるのは難しいと思う」と指摘した。
7月にはマレー半島と人工島をつなぐ連絡道路で崩落事故が発生した。タクシー運転手は「大雨の影響のようだ」と話したが、埋め立て地である人工島の地盤の弱さが懸念される。
人工島のインターナショナルスクールで教員として働く米国人のイアン・ペティグリューさん(男性)は「この事故が起こる前から、設備に対して心配はしていた。建物の安全性についても若干の不安がある」と話す。

フォレスト・シティーから見えるシンガポールとマレーシアをつなぐ国境橋「セカンドリンク」(NNA撮影)

■「完売」主張するも、4分の1が売れ残る
フォレスト・シティーには現在、60棟以上のマンションと100棟以上の一戸建て・半戸建てビラがある。人工島内のセールスギャラリーには各物件のモデルルームが設けられている。島全体の巨大な完成予想模型もあり、林立するいくつもの高層マンションに「SOLD OUT」の札が掛けられていた。
現地の不動産代理店によると、9月時点では完成済みの約2万5,000戸のうち、6,000戸が売れ残っていた。オーナーは中国人が45%、韓国人が30~40%、その他がベトナム人やインドネシア人だという。
フォレスト・シティーは「シンガポールの4分の1の価格」をうたっている。販売価格は2ベッドルームで50万~80万リンギ、賃貸では月1,000~1,400リンギ。ジョホール州では外国人は100万リンギ以上の不動産しか購入できない規定があるが、フォレスト・シティーは特例で50万リンギ以上で購入が可能だという。
営業担当者は「価格はコロナ期間中に下がり、現在もまだ上がっていない。ただ、今後は上昇するはずだ。購入を考えている人には今すぐ買うよう勧めている」と強調した。

「SOLD OUT」の札が掛けられた建築模型(NNA撮影)

■家族で週末に滞在「混雑なく良い」
コロナ禍で人が消えたフォレスト・シティーは回復途上にある。ただ、不動産オーナーや住人は落ち着いたこの環境を気に入っている。高層マンションが立ち並ぶエリアを抜けると、ヤシの木が植えられた白い人工ビーチでバケーションを楽しむ数組の家族の姿があった。
リムジン会社を経営するマレー系シンガポール人のアスリさん(60代男性)は、親族の子どもの学校が休みとなる週末に当地を訪れ、家族でのんびり過ごす生活を続けている。シンガポールの自宅からは車で30~45分。「ここは混雑しておらず、荒廃しているわけでもないので、非常に良い」と評価する。
アスリさんは昨年4月に引き渡しが開始されたマンション「レガリア・パーク(観瀾海)」に住宅を所有する。購入価格は50万リンギ(約1,565万円)で「われわれにとっては非常にリーズナブルだ」と話す。リタイア後はここで暮らすことも視野に入れている。
ジョホール州のタンジュンプルパス港(PTP)でコーディネーターとして働く男性(20代)は、フォレスト・シティーのマンション「アタラクシア・パーク(海悦湾)」で2ベッドルームの部屋を借りている。家賃は駐車場2台分込みで1,100リンギで、職場近くの村にある高級アパートより安い。「オープン当初に比べると、今は静かすぎず良くなった」と語る。

フォレスト・シティーの人工ビーチ。海はワニが出るとして遊泳禁止になっている(NNA撮影)

──────────────────────────────
■政府が金融特区の構想、不動産店「今が買い時」
ゴーストタウン化に開発母体の経営危機と、負のイメージがつきまとうフォレスト・シティーだが、発展を信じて投資した不動産オーナーたちに一筋の光が差し込んだ。マレーシア政府による金融特区の設置構想だ。物件の売れ残りが目立つ中、不動産代理店は今が買い時だと強調する。
マレーシアのアンワル・イブラヒム首相兼財務相は昨年8月、フォレスト・シティーに金融特区を設置する構想を明らかにした。特区内で事業を展開する企業を対象に優遇措置を設け、海外からの投資を誘致するという。
フォレスト・シティーに不動産を所有するオーナーにとっては朗報だ。中国浙江省杭州に住む陳さん夫妻は、休暇と部屋の整理を兼ねて数年ぶりにフォレスト・シティーを訪れた。
所有するのは初期に販売されたマンション「セルリアン・ベイ(中国語名:海藍湾)」。環境が良く、とても住みやすいが、投資の観点からは失敗だったと感じている。今住宅を売ると、購入価格を下回ってしまうためだ。
陳さん夫妻は金融特区構想を機に、住宅を賃貸に出すことを決めた。「この政策はわれわれに希望をもたらしてくれる。間違いなく状況は今より改善するはずだ」と力を込めた。
■政府の発表後「変化あった」
マレーシアCIMB銀行のフォレスト・シティー支店のンガイ・ソーペン支店長は「長期的にはポテンシャルがある場所。金融特区になれば、さらに多くの活動がここで生まれる」との見通しを示した。「碧桂園の経営難の問題はあるが、存続できると信じている」とも述べた。
現地の不動産代理店の担当者も政府の発表後、問い合わせに「変化があった」と話す。
11月には、ジョホール州のイブラヒム・イスカンダル州王(今年1月31日にマレーシア国王に即位)がシンガポールメディアのインタビューで、首都クアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道(HSR)計画を再開し、フォレスト・シティーを経由するルートを建設したい考えを示した。実現すれば、フォレスト・シティーの盛り上げに大きく貢献しそうだ。(菅原真央、Charlotte Chong)

セールスギャラリー内のモデルルーム。さまざまなタイプの部屋を見ることができる(NNA撮影)

※アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2024年2月号<https://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。

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取材で宿泊したのは、ランドマーク的な存在の「フォレスト・シティー・マリーナ・ホテル」。訪れたのは昨年9月の平日だったが、フロントの女性によると「満室」だという。しかし、フロントスタッフは1人のみで、ロビーのバーも営業していない。283室を有する客室の実際の稼働率が気になる。
[caption id="attachment_18263" align="aligncenter" width="620"]フォレスト・シティー・マリーナ・ホテルの朝食バイキング。4~5組いた客はいずれも中華系で、中国語が飛び交った(NNA撮影)[/caption]
シンガポールから来たキリスト教関連団体の男性(50代)は、会合のため4日間ホテルに滞在すると話した。「広い場所が必要で、シンガポールから近く、価格も合理的だったため決めた」。碧桂園を巡るニュースも耳にしており「来るまではフォレスト・シティーが機能しているか心配だった」と顔をしかめた。
ホテル周辺を離れた住宅エリアでは、清掃員や建設作業員などの労働者を除き、人の姿がぐんと減る。マンション1階部分の飲食店はほとんどが中華料理店だ。中国メーカーの食品や生活用品などを置くスーパーマーケットもあるものの、生鮮食品が少なく個人商店のような規模。約9,000人とされる住民を支える生活感はない。
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■コロナで計画停滞、ゴーストタウン化
フォレスト・シティーは、碧桂園が2015年からジョホール王室や同州政府の支援を受ける地場企業と共同で開発を進めている。マレーシアとシンガポールにまたがる4つの人工島を埋め立て造成し、住宅やオフィスタワー、商業施設、教育機関などを建設する巨大プロジェクトで最終的に70万人が住む計画だ。
碧桂園は経営状況の悪化が表面化し、昨年10月には米ドル建て社債の利払いを期限までにできなかった。23年6月中間期決算は純損益が489億3,200万人民元(約1兆185億円)の赤字となり、前年同期の黒字から巨額赤字に転落した。
碧桂園は同8月、フォレスト・シティー事業を計画通りに推進するとの声明を発表した。「安全かつ安定している」とし、人工島内での不動産販売も順調だと強調する。
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フォレスト・シティーは一時、資本の国外流出を阻止しようとする中国政府の方針や新型コロナウイルス感染症の影響などで計画が停滞し、ゴーストタウン化したことが話題となった。その後は徐々に活気を取り戻しているものの、人けを感じたのはホテルと隣接するショッピングモールの周辺のみだった。
ショッピングモールのフロアマップには飲食店やアパレル店、家具店など約30店舗が掲載されているが、実際に営業しているのは一部のみ。このほど施設内にスーパーをオープンした中国人オーナーの孫奇超さん(30代男性)は「コロナ前はとてもにぎやかだった。最近は人が戻ってきている」と主張した。
一番にぎわっていたのは免税店。フォレスト・シティーは「免税特区」に指定されているため、酒類などが免税で購入できる。「アサヒスーパードライ」の320ミリリットル缶は4.8リンギ(約150円)で、市内の約半額だ。
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■バス1時間に1本、タクシーも来ない
交通とインフラの脆弱(ぜいじゃく)さも人を遠ざけている。シャトルバスが3路線あるものの、多くても1時間に1本程度だ。
タクシーもつかまりにくい。タクシー運転手の女性(60代)は「(観光で)滞在する人は多くない。需要が少ないのでタクシーが入ってこず、出かけるのは難しいと思う」と指摘した。
7月にはマレー半島と人工島をつなぐ連絡道路で崩落事故が発生した。タクシー運転手は「大雨の影響のようだ」と話したが、埋め立て地である人工島の地盤の弱さが懸念される。
人工島のインターナショナルスクールで教員として働く米国人のイアン・ペティグリューさん(男性)は「この事故が起こる前から、設備に対して心配はしていた。建物の安全性についても若干の不安がある」と話す。
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■「完売」主張するも、4分の1が売れ残る
フォレスト・シティーには現在、60棟以上のマンションと100棟以上の一戸建て・半戸建てビラがある。人工島内のセールスギャラリーには各物件のモデルルームが設けられている。島全体の巨大な完成予想模型もあり、林立するいくつもの高層マンションに「SOLD OUT」の札が掛けられていた。
現地の不動産代理店によると、9月時点では完成済みの約2万5,000戸のうち、6,000戸が売れ残っていた。オーナーは中国人が45%、韓国人が30~40%、その他がベトナム人やインドネシア人だという。
フォレスト・シティーは「シンガポールの4分の1の価格」をうたっている。販売価格は2ベッドルームで50万~80万リンギ、賃貸では月1,000~1,400リンギ。ジョホール州では外国人は100万リンギ以上の不動産しか購入できない規定があるが、フォレスト・シティーは特例で50万リンギ以上で購入が可能だという。
営業担当者は「価格はコロナ期間中に下がり、現在もまだ上がっていない。ただ、今後は上昇するはずだ。購入を考えている人には今すぐ買うよう勧めている」と強調した。
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■家族で週末に滞在「混雑なく良い」
コロナ禍で人が消えたフォレスト・シティーは回復途上にある。ただ、不動産オーナーや住人は落ち着いたこの環境を気に入っている。高層マンションが立ち並ぶエリアを抜けると、ヤシの木が植えられた白い人工ビーチでバケーションを楽しむ数組の家族の姿があった。
リムジン会社を経営するマレー系シンガポール人のアスリさん(60代男性)は、親族の子どもの学校が休みとなる週末に当地を訪れ、家族でのんびり過ごす生活を続けている。シンガポールの自宅からは車で30~45分。「ここは混雑しておらず、荒廃しているわけでもないので、非常に良い」と評価する。
アスリさんは昨年4月に引き渡しが開始されたマンション「レガリア・パーク(観瀾海)」に住宅を所有する。購入価格は50万リンギ(約1,565万円)で「われわれにとっては非常にリーズナブルだ」と話す。リタイア後はここで暮らすことも視野に入れている。
ジョホール州のタンジュンプルパス港(PTP)でコーディネーターとして働く男性(20代)は、フォレスト・シティーのマンション「アタラクシア・パーク(海悦湾)」で2ベッドルームの部屋を借りている。家賃は駐車場2台分込みで1,100リンギで、職場近くの村にある高級アパートより安い。「オープン当初に比べると、今は静かすぎず良くなった」と語る。
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──────────────────────────────
■政府が金融特区の構想、不動産店「今が買い時」
ゴーストタウン化に開発母体の経営危機と、負のイメージがつきまとうフォレスト・シティーだが、発展を信じて投資した不動産オーナーたちに一筋の光が差し込んだ。マレーシア政府による金融特区の設置構想だ。物件の売れ残りが目立つ中、不動産代理店は今が買い時だと強調する。
マレーシアのアンワル・イブラヒム首相兼財務相は昨年8月、フォレスト・シティーに金融特区を設置する構想を明らかにした。特区内で事業を展開する企業を対象に優遇措置を設け、海外からの投資を誘致するという。
フォレスト・シティーに不動産を所有するオーナーにとっては朗報だ。中国浙江省杭州に住む陳さん夫妻は、休暇と部屋の整理を兼ねて数年ぶりにフォレスト・シティーを訪れた。
所有するのは初期に販売されたマンション「セルリアン・ベイ(中国語名:海藍湾)」。環境が良く、とても住みやすいが、投資の観点からは失敗だったと感じている。今住宅を売ると、購入価格を下回ってしまうためだ。
陳さん夫妻は金融特区構想を機に、住宅を賃貸に出すことを決めた。「この政策はわれわれに希望をもたらしてくれる。間違いなく状況は今より改善するはずだ」と力を込めた。
■政府の発表後「変化あった」
マレーシアCIMB銀行のフォレスト・シティー支店のンガイ・ソーペン支店長は「長期的にはポテンシャルがある場所。金融特区になれば、さらに多くの活動がここで生まれる」との見通しを示した。「碧桂園の経営難の問題はあるが、存続できると信じている」とも述べた。
現地の不動産代理店の担当者も政府の発表後、問い合わせに「変化があった」と話す。
11月には、ジョホール州のイブラヒム・イスカンダル州王(今年1月31日にマレーシア国王に即位)がシンガポールメディアのインタビューで、首都クアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道(HSR)計画を再開し、フォレスト・シティーを経由するルートを建設したい考えを示した。実現すれば、フォレスト・シティーの盛り上げに大きく貢献しそうだ。(菅原真央、Charlotte Chong)
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