昨年10月のパレスチナ・ガザ地区での戦闘開始から7日で10カ月。世界最大のイスラム教徒を抱えるインドネシアではイスラエルの侵攻に抗議するため、一部の欧米ブランドの不買運動が継続している。親イスラエルと見なされた米系の「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」や「スターバックス」などが標的だ。これらのブランドを展開する地場企業は赤字が続いており、米資本とは無関係だと強調するが効果は薄い。先月末にイスラム組織ハマスの最高指導者が暗殺されたことによる中東情勢のさらなる悪化から、不買運動は今後も続く可能性がある。
不買運動の標的になったKFCの運営会社は、昨年10月以降に大幅な赤字を計上し経営が圧迫されている=8月、ジャカルタ特別州(NNA撮影)
KFCなどをフランチャイズ展開するファストフード・インドネシアによると、同社の2024年1~6月期決算は、純損益が3,488億3,004万ルピア(約31億2,700万円)の赤字(前年同期は55億6,448万ルピアの赤字)、売上高が前年同期比20%減の2兆4,809億ルピアだった。
地域別売上高を見ると、前年同期比で下落幅が最も大きかったのは西ジャワ州バンドンの27.4%減。以下は、南スマトラ州パレンバン(24.8%減)、北スマトラ州メダン(24.4%減)、首都ジャカルタ(21.7%減)が続いた。全国的に売り上げが落ち込んでいる。
同社の23年末時点での運営店舗数はKFCが754店舗、「タコベル」が8店舗となっている。
同社はもともと新型コロナウイルス禍での業績不振から抜け出せず、赤字体質が続いていた。だが、昨年10月以降のガザ地区でのイスラエルによる侵攻に伴い、米国のKFC経営陣が親イスラエルと見なされて世界的にKFCの不買運動が起きると、インドネシアでも標的となった。
インドネシア証券取引所(IDX)によると、ファストフード・インドネシアは、同社創業家のグラエル・プラタマが40%、財閥サリム・グループの持ち株会社インドリテル・マクムル・インターナショナルが35.84%を保有する地場企業で、米国のKFC資本は入っていない。
ファストフード・インドネシアの資産は、コロナ禍と不買運動の影響による赤字拡大で、負債が急増している。金融機関からの長期借入金の増加などにより、6月末の総資産に占める負債の割合は88%で、コロナ禍前の19年末の51%から上昇している。
ファストフード・インドネシアは昨年来、不買運動が売り上げの押し下げ要因になっていることを認めた上で、影響を最小限にするためにプロモーションを強化してきたが、不買運動の長期化により厳しい経営状況が続いている。
一方、KFCに対する不買運動の呼び掛けは、中国系動画投稿サービス「TikTok(ティックトック)」やX(旧ツイッター)などの交流サイト(SNS)で続いている。Xでは「生涯ボイコットしよう。KFCスタイルのフライドチキンが食べたいなら屋台でも買える。イスラム教徒が経営する店もある」などの投稿が散見される。
■スタバの赤字、3四半期連続に
不買運動の標的となったスターバックスなどをフランチャイズ展開する、MAPボガ・アディプルカサも23年第4四半期(10~12月)以降、赤字が続いている。同社が発表した1~6月期決算は、純損益が501億1,600万ルピアの赤字(前年同期は526億3,600万ルピアの黒字)、売上高が前年同期比19%減の1兆6,257億ルピアだった。
不買運動の影響を受けているスターバックスの運営会社は23年第4四半期から3四半期連続で赤字となり、不採算店の閉鎖などを行っている=8月、ジャカルタ特別州(NNA撮影)
4~6月期の純損失は278億8,200万ルピアと、1~3月期の222億3,400万ルピアから拡大。四半期ベースの赤字は3期連続となった。
MAPボガ・アディプルカサは、6月末に開いた投資家向け説明会で、不買運動の影響を受けていることを認めた上で、同社はインドネシア企業であり、イスラエルや米国とは関係がないことを強調した。インドネシア産のコーヒーを加工し、従業員もインドネシア人だと説明。スターバックスは、地元のコーヒー農家も支援していると述べた。
また、業績の悪化に伴い、新規店舗の開設の延期や不採算店舗の閉鎖を行っていると説明した。3月末時点の国内のスターバックス店舗数は607店舗となっている。
■ユニリーバ、ブランドイメージの回復図る
イスラエルの攻撃の長期化で不買運動が定着したことにより、標的となったブランドが取り組んでいるイメージ回復は容易ではない。不買運動の影響を受けた、英食品・家庭用品大手ユニリーバのインドネシア法人ユニリーバ・インドネシアは、上半期(1~6月)に消費者からの信頼回復を図るため、国内7都市でイスラム寄宿学校の女子学生ら70万人以上に対し、同社製品などを通じて支援する活動を実施した。
同社の1~6月期決算は、純利益が前年同期比11%減の2兆4,667億ルピア、売上高は6%減の19兆439億ルピアと減収減益だった。下半期(7~12月)もユニリーバブランドへのネガティブな消費者心理の影響は続くと予測している。
ユニリーバ・インドネシアは親イスラエル企業と見なされたイメージを払拭するため、イスラム教徒の学生を支援する取り組みなどを実施している(同社提供)
■政府、ハマス指導者暗殺を非難
足元では、イスラム組織ハマスのハニヤ最高指導者が、7月31日に訪問先のイランで暗殺されたことを受け、インドネシア外務省は「地域の紛争を激化させ、進行中の交渉を頓挫させる可能性のある挑発的な行為だ」との声明を出し、暗殺行為を非難した。地元メディアによると、カタールで執り行われたハニヤ氏の葬儀にはユスフ・カラ前副大統領が参列した。3日にはパレスチナに連帯する市民集会が、ジャカルタの在インドネシア米国大使館前で開かれた。
ガザ保健当局によると、昨年10月の戦闘開始後のガザ側の死者は7月29日時点で少なくとも3万9,363人。負傷者は9万923人に上る。
インドネシア政府は中東問題に関して、イスラエルによるパレスチナの国家承認を前提とする「2国家解決」が唯一の解決策だと主張している。
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地域別売上高を見ると、前年同期比で下落幅が最も大きかったのは西ジャワ州バンドンの27.4%減。以下は、南スマトラ州パレンバン(24.8%減)、北スマトラ州メダン(24.4%減)、首都ジャカルタ(21.7%減)が続いた。全国的に売り上げが落ち込んでいる。
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同社はもともと新型コロナウイルス禍での業績不振から抜け出せず、赤字体質が続いていた。だが、昨年10月以降のガザ地区でのイスラエルによる侵攻に伴い、米国のKFC経営陣が親イスラエルと見なされて世界的にKFCの不買運動が起きると、インドネシアでも標的となった。
インドネシア証券取引所(IDX)によると、ファストフード・インドネシアは、同社創業家のグラエル・プラタマが40%、財閥サリム・グループの持ち株会社インドリテル・マクムル・インターナショナルが35.84%を保有する地場企業で、米国のKFC資本は入っていない。
ファストフード・インドネシアの資産は、コロナ禍と不買運動の影響による赤字拡大で、負債が急増している。金融機関からの長期借入金の増加などにより、6月末の総資産に占める負債の割合は88%で、コロナ禍前の19年末の51%から上昇している。
ファストフード・インドネシアは昨年来、不買運動が売り上げの押し下げ要因になっていることを認めた上で、影響を最小限にするためにプロモーションを強化してきたが、不買運動の長期化により厳しい経営状況が続いている。
一方、KFCに対する不買運動の呼び掛けは、中国系動画投稿サービス「TikTok(ティックトック)」やX(旧ツイッター)などの交流サイト(SNS)で続いている。Xでは「生涯ボイコットしよう。KFCスタイルのフライドチキンが食べたいなら屋台でも買える。イスラム教徒が経営する店もある」などの投稿が散見される。
■スタバの赤字、3四半期連続に
不買運動の標的となったスターバックスなどをフランチャイズ展開する、MAPボガ・アディプルカサも23年第4四半期(10~12月)以降、赤字が続いている。同社が発表した1~6月期決算は、純損益が501億1,600万ルピアの赤字(前年同期は526億3,600万ルピアの黒字)、売上高が前年同期比19%減の1兆6,257億ルピアだった。
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また、業績の悪化に伴い、新規店舗の開設の延期や不採算店舗の閉鎖を行っていると説明した。3月末時点の国内のスターバックス店舗数は607店舗となっている。
■ユニリーバ、ブランドイメージの回復図る
イスラエルの攻撃の長期化で不買運動が定着したことにより、標的となったブランドが取り組んでいるイメージ回復は容易ではない。不買運動の影響を受けた、英食品・家庭用品大手ユニリーバのインドネシア法人ユニリーバ・インドネシアは、上半期(1~6月)に消費者からの信頼回復を図るため、国内7都市でイスラム寄宿学校の女子学生ら70万人以上に対し、同社製品などを通じて支援する活動を実施した。
同社の1~6月期決算は、純利益が前年同期比11%減の2兆4,667億ルピア、売上高は6%減の19兆439億ルピアと減収減益だった。下半期(7~12月)もユニリーバブランドへのネガティブな消費者心理の影響は続くと予測している。
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