第317回
大内さん:みらい先生、こんにちは。
みらい:大内さん、シンガポールの海外勤務生活はいかがでしょうか?
大内さん:実は、来月に5年間のシンガポール子会社勤務が終了して、日本に帰国することになりました。
みらい:そうですか。帰国の準備が忙しくなりますね。
大内さん:シンガポール赴任の間、シンガポールドルで給与を受け取っていましたので、シンガポールで定期預金をしていました。日本に帰国した後、定期預金の満期を迎えるため、日本円に換金しようと思いますが、その際に、日本で課税されるでしょうか。
みらい:円安になり、為替差益が出そうですね。日本に帰国した場合には、大内さんは日本の居住者となり、この為替差益に対して日本で課税されます。
大内さん:海外赴任期間中に得た収入の一部を現地通貨で預金しているだけですが、それでも課税されてしまうのですか。
みらい:為替差益は、シンガポールドルを保有している時点ではまだ確定していませんが、シンガポールドルから日本円に換金した時点で確定します。そのため、非居住者期間中の預金であっても、日本円に換金した時点で日本の居住者であれば、雑所得として日本で課税されることになります。
大内さん:わかりました。シンガポールドルのまま持っていれば課税されないということでしたら、日本円にするかどうか、もう少し考えてみます。
みらい:ちなみに、日本に帰国して以降、海外の銀行の定期預金に係る預金利息は日本で利子所得の課税対象となりますよ。
大内さん:利息も日本で課税されるのですか。
みらい:日本の銀行であれば、利息は国内で支払われるため、源泉徴収されて納税が完結します。しかし、海外の銀行では、国外で支払われることになり、源泉徴収されずに納税関係が完了しないことから利子所得としてご自身で確定申告を行っていただく必要があります。ただし、年収2,000万円以下の会社員の方の場合は、給料や退職金以外のその他の所得が年間20万円以下であれば少額不追求ということで所得税の確定申告は不要というルールがあります。一方、住民税には所得税のようなルールがないため別途住民税の申告という手続きが必要になってしまいます。
大内さん:利息なので、20万円を超えそうにありませんので、所得税については安心しました。でも、住民税だけは別途申告しなくてはならないのですね。その場合に、日本円に換算するときのレートは、どんなものを使用すればいいのでしょうか。
みらい:利子収入の換算レートは、「利払い期日の最終の電信買相場(T.T.B)によることになります。「支払日」ではないことに、注意してください。ところで、所得税について確定申告する場合にはその他の所得金額が20万円以下であってもすべての所得を申告する必要があります。例えば、医療費控除や株式等の譲渡損失の繰越控除を受けるために確定申告を行う場合には、注意が必要です。
大内さん:分かりました。海外銀行の外貨預金について、外貨のまま持っていれば、利子所得が関係し、日本で換金すれば、為替差益が関係するということですね。
みらい:為替相場が円安になっていれば、為替差益となり、円高になっていれば、為替差損が生じることになります。為替差損だけであれば、確定申告は不要です。
大内さん:なるほど、大変勉強になりました。
みらい:為替相場の予想はなかなか難しいので、くれぐれも気をつけてくださいね。
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大内さん:実は、来月に5年間のシンガポール子会社勤務が終了して、日本に帰国することになりました。
みらい:そうですか。帰国の準備が忙しくなりますね。
大内さん:シンガポール赴任の間、シンガポールドルで給与を受け取っていましたので、シンガポールで定期預金をしていました。日本に帰国した後、定期預金の満期を迎えるため、日本円に換金しようと思いますが、その際に、日本で課税されるでしょうか。
みらい:円安になり、為替差益が出そうですね。日本に帰国した場合には、大内さんは日本の居住者となり、この為替差益に対して日本で課税されます。
大内さん:海外赴任期間中に得た収入の一部を現地通貨で預金しているだけですが、それでも課税されてしまうのですか。
みらい:為替差益は、シンガポールドルを保有している時点ではまだ確定していませんが、シンガポールドルから日本円に換金した時点で確定します。そのため、非居住者期間中の預金であっても、日本円に換金した時点で日本の居住者であれば、雑所得として日本で課税されることになります。
大内さん:わかりました。シンガポールドルのまま持っていれば課税されないということでしたら、日本円にするかどうか、もう少し考えてみます。
みらい:ちなみに、日本に帰国して以降、海外の銀行の定期預金に係る預金利息は日本で利子所得の課税対象となりますよ。
大内さん:利息も日本で課税されるのですか。
みらい:日本の銀行であれば、利息は国内で支払われるため、源泉徴収されて納税が完結します。しかし、海外の銀行では、国外で支払われることになり、源泉徴収されずに納税関係が完了しないことから利子所得としてご自身で確定申告を行っていただく必要があります。ただし、年収2,000万円以下の会社員の方の場合は、給料や退職金以外のその他の所得が年間20万円以下であれば少額不追求ということで所得税の確定申告は不要というルールがあります。一方、住民税には所得税のようなルールがないため別途住民税の申告という手続きが必要になってしまいます。
大内さん:利息なので、20万円を超えそうにありませんので、所得税については安心しました。でも、住民税だけは別途申告しなくてはならないのですね。その場合に、日本円に換算するときのレートは、どんなものを使用すればいいのでしょうか。
みらい:利子収入の換算レートは、「利払い期日の最終の電信買相場(T.T.B)によることになります。「支払日」ではないことに、注意してください。ところで、所得税について確定申告する場合にはその他の所得金額が20万円以下であってもすべての所得を申告する必要があります。例えば、医療費控除や株式等の譲渡損失の繰越控除を受けるために確定申告を行う場合には、注意が必要です。
大内さん:分かりました。海外銀行の外貨預金について、外貨のまま持っていれば、利子所得が関係し、日本で換金すれば、為替差益が関係するということですね。
みらい:為替相場が円安になっていれば、為替差益となり、円高になっていれば、為替差損が生じることになります。為替差損だけであれば、確定申告は不要です。
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