第289回
上田さん:みらい先生、ご無沙汰しております。以前ご相談した弊社ホーチミン支店ですが、新型コロナウイルス禍の影響もあり業績が落ち込んでおりました。徐々に回復をしてきましたが、まだまだ厳しい状況が続いております。これまで以上に日本本社との連携を強化していく必要があるため、弊社役員が3年程度ホーチミン支店に赴任する案が出ています。
みらい:出張ではなく駐在されるのですか?
上田さん:はい。日本本社もかねて中長期計画として海外事業に力を入れております。海外支店の事業を強化するため役員自ら最前線で活躍してもらうことで、ベトナムでの事業を軌道に乗せ、会社を確実に成長させたい狙いがあります。他拠点への展開も視野に入れており、海外における事業展開はわが社の一大プロジェクトとなっています。
みらい:それは力が入りますね。御社としても社運をかけたプロジェクトですね。
上田さん:そこで、みらい先生にご相談ですが、海外に赴任する役員の役員報酬に対してはどのように源泉徴収すればよいのでしょうか?
みらい:今回赴任される役員の方の職務内容によりますね。日本法人の役員としての勤務に基づく役員報酬であれば、国内国外の勤務を問わず、また国内国外での支払いを問わず、全て合わせて日本で源泉徴収をする必要があります。
上田さん:なるほど。役員と従業員での取り扱いは異なりますか?今回赴任する予定の役員は、ホーチミン支店の支店長として常時勤務すると聞いています。その報酬は現地支店から直接本人に支払われる予定です。
みらい:従業員の場合、1年以上の海外勤務であれば非居住者となりますので、国外勤務に基づく給与について日本では課税されません。しかし、日本法人の役員の場合は、勤務地が国外であってもその役員報酬の全額が国内源泉所得となりますので、報酬金額に対して20.42%の源泉徴収を行うことになります。
上田さん:日本では役員ですが、ベトナム現地で従業員とみられることもあるのでしょうか。
みらいさん:はい。日本法人の役員であっても、赴任先での職務内容によっては、日本での「使用人兼務役員」の場合と同様にその報酬が「使用人分」であるとみなされ、先ほど説明した日本での源泉徴収が不要となるケースがあります。今回の場合、ホーチミン支店の支店長として常時勤務するとのことですので、このケースに該当する可能性がありますね。その報酬が使用人分である場合には、勤務地が国外であれば国外勤務に基づく給与となり、日本での源泉徴収は必要ありません。現地での税務手続きのみとなります。
上田さん:なるほど、みらい先生に相談しておいてよかったです。出国する前に職務内容や給与の支払い方法などについてよく検討しておく必要がありますね。
みらい:そうですね。あともう一点、役員報酬や従業員給与等については、両国の所得税や日越租税条約により、課税の取り扱いが定められています。課税関係については、これらを確認してくださいね。
上田さん:わかりました。みらい先生、ありがとうございました!
みらい:海外赴任者に対する給与の取り扱いや、現地での課税については注意が必要ですので、また何かあればいつでもご相談くださいね。
筆者:みらいコンサルティンググループ/提供:NNA(先行連載)
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みらい:出張ではなく駐在されるのですか?
上田さん:はい。日本本社もかねて中長期計画として海外事業に力を入れております。海外支店の事業を強化するため役員自ら最前線で活躍してもらうことで、ベトナムでの事業を軌道に乗せ、会社を確実に成長させたい狙いがあります。他拠点への展開も視野に入れており、海外における事業展開はわが社の一大プロジェクトとなっています。
みらい:それは力が入りますね。御社としても社運をかけたプロジェクトですね。
上田さん:そこで、みらい先生にご相談ですが、海外に赴任する役員の役員報酬に対してはどのように源泉徴収すればよいのでしょうか?
みらい:今回赴任される役員の方の職務内容によりますね。日本法人の役員としての勤務に基づく役員報酬であれば、国内国外の勤務を問わず、また国内国外での支払いを問わず、全て合わせて日本で源泉徴収をする必要があります。
上田さん:なるほど。役員と従業員での取り扱いは異なりますか?今回赴任する予定の役員は、ホーチミン支店の支店長として常時勤務すると聞いています。その報酬は現地支店から直接本人に支払われる予定です。
みらい:従業員の場合、1年以上の海外勤務であれば非居住者となりますので、国外勤務に基づく給与について日本では課税されません。しかし、日本法人の役員の場合は、勤務地が国外であってもその役員報酬の全額が国内源泉所得となりますので、報酬金額に対して20.42%の源泉徴収を行うことになります。
上田さん:日本では役員ですが、ベトナム現地で従業員とみられることもあるのでしょうか。
みらいさん:はい。日本法人の役員であっても、赴任先での職務内容によっては、日本での「使用人兼務役員」の場合と同様にその報酬が「使用人分」であるとみなされ、先ほど説明した日本での源泉徴収が不要となるケースがあります。今回の場合、ホーチミン支店の支店長として常時勤務するとのことですので、このケースに該当する可能性がありますね。その報酬が使用人分である場合には、勤務地が国外であれば国外勤務に基づく給与となり、日本での源泉徴収は必要ありません。現地での税務手続きのみとなります。
上田さん:なるほど、みらい先生に相談しておいてよかったです。出国する前に職務内容や給与の支払い方法などについてよく検討しておく必要がありますね。
みらい:そうですね。あともう一点、役員報酬や従業員給与等については、両国の所得税や日越租税条約により、課税の取り扱いが定められています。課税関係については、これらを確認してくださいね。
上田さん:わかりました。みらい先生、ありがとうございました!
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