カジュアル衣料販売店「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングのインド法人が、2021/22年度(21年4月~22年3月)に初めて黒字を達成したことが分かった。19年の進出から3年目での黒字化となった。戦略的な出店先の選定や価格設定が、早期の黒字達成につながったようだ。同社は今月29日に、8店舗目を開業する。日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によると、インドに進出する日系企業のうち、黒字見通しの企業は増加傾向にある。
ユニクロはインドでデリー首都圏を中心に7店舗展開している=23日、インド北部グルガオン(NNA撮影)
ユニクロの現地法人、ユニクロ・インディアの21/22年度の純損益は2億1,491万ルピー(約3億7,900万円)の黒字だった。前年度の3億6,197万ルピーの赤字から黒字転換した。インド企業省に提出された資料で明らかになった。
ファーストリテイリングの広報担当者はNNAの取材で、「通期決算での黒字の達成は、19年10月の1号店オープン以来初めてだ」と説明した。
インド法人の21/22年度の売上高は、前年度比63.8%増の39億1,700万ルピーだった。
■利益もたらす価格設定
インド事業を黒字化するには進出から5~10年を要し、東南アジア諸国連合(ASEAN)より時間がかかるという定説もあり、3年での黒字達成は早いともとれる。
ジェトロ・ニューデリー事務所の鈴木隆史所長(インド総代表)は、「一般論」と前置きした上で、迅速な業務の開始から業績の目標達成までには、「▽現地提携企業との連携▽ブランドの早期確立▽市場の特性・ターゲットに適した商品把握・投入・価格設定▽目まぐるしく変化するインドの規制に影響を受けないこと——などが求められる。ユニクロの事業展開でも同様の成功要因があったのではないか」とコメントした。
小売業界のコンサルタント会社、ワジル・アドバイザーズの創業者兼社長のハルミンダー・サニ(Harminder Sahni)氏は、戦略的な出店先や中間所得層をターゲットにした価格戦略などが黒字化につながったとの見方。「今後も激しい競争に直面しながらも好調を維持する」と予想した。
エコノミック・タイムズ(電子版)によると、地場コンサルティング会社サード・アイサイトの創業者であるデバンシュ・ダッタ氏は、「ZARA(ザラ)」や「H&M」といった競合に比べて少なくとも2割高い価格を設定する戦略が、原材料などのインフレ圧力がある中での利益確保につながったと述べている。
ファーストリテイリングは16年にインド南部ベンガルール(バンガロール)に生産管理の事務所を設置し、生産パートナーを通じてインドからの調達を開始した。インド国内に工場は所有していない。現地調達率は非開示だが、「当局の要件の達成に向けて順調に進んでいる」(広報担当者)。
同社は、19年のインド進出に際し、同国政府が海外直接投資(FDI)規制で求める「現地調達率30%(金額ベース)」を早期に実現することを目指す方針を示していた。
■海外事業は好調
ユニクロの当期の海外事業は好調だ。ファーストリテイリングの22年8月期第3四半期(22年3~5月)決算で、海外ユニクロ事業の売上高は前年同期比13.9%増の2,480億円、営業利益は5.6%増の324億円だった。同事業の売上高は、ファーストリテイリングの連結売上高の45%を占める。
同社の決算資料によると、インドでは同期に大幅な増収を記録し黒字化した。リネン製品やポロシャツといった夏物製品の販売が好調だった。
同社は足元の業績が好調なことから、22年8月期の通期決算の業績予想を上方修正した。インドを含むアジア・オセアニア地域では、6~8月期も全ての国で大幅な増収増益を見込んでいる。
■インドでは首都圏外で出店加速
ユニクロ・インディアは現在、国内で7店舗を展開する。首都ニューデリーでの1号店の開店を皮切りに、19年に計2店舗、20年に計4店舗を出店。今年に入ってからは、北部ウッタルプラデシュ州ラクノーに首都圏外で初の店舗を設置した。今月29日には首都圏外で2カ所目となる店舗を北部の連保直轄地チャンディガルのショッピングモール「ネクサスイランテ・モール」で開業する。
チャンディガルの同モールには今月、大創産業(広島県東広島市)も100円均一ショップ「ダイソー」のインド1号店を出店した。
ジェトロが実施した日系企業の実態調査では、インドに進出する企業の中で、黒字見通しの日系企業は増加傾向にある。「2021年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」によると、インドに進出する日系企業のうち21年の営業利益見込みを黒字と予想した企業は61.5%だった。ニューデリー事務所の鈴木所長は、「09年からの推移を見ると、12年の40%を底に『黒字』と答える在インド日系企業の割合は増加傾向にある」と指摘した。
一方、インドに進出した日系の飲食店が新型コロナウイルス禍を経て閉店するなど、苦戦している企業もある。現地報道によると、米インターネット通販大手アマゾン・コムのインド事業も、13年の進出以来、いまだに黒字化していない。
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ファーストリテイリングの広報担当者はNNAの取材で、「通期決算での黒字の達成は、19年10月の1号店オープン以来初めてだ」と説明した。
インド法人の21/22年度の売上高は、前年度比63.8%増の39億1,700万ルピーだった。
■利益もたらす価格設定
インド事業を黒字化するには進出から5~10年を要し、東南アジア諸国連合(ASEAN)より時間がかかるという定説もあり、3年での黒字達成は早いともとれる。
ジェトロ・ニューデリー事務所の鈴木隆史所長(インド総代表)は、「一般論」と前置きした上で、迅速な業務の開始から業績の目標達成までには、「▽現地提携企業との連携▽ブランドの早期確立▽市場の特性・ターゲットに適した商品把握・投入・価格設定▽目まぐるしく変化するインドの規制に影響を受けないこと——などが求められる。ユニクロの事業展開でも同様の成功要因があったのではないか」とコメントした。
小売業界のコンサルタント会社、ワジル・アドバイザーズの創業者兼社長のハルミンダー・サニ(Harminder Sahni)氏は、戦略的な出店先や中間所得層をターゲットにした価格戦略などが黒字化につながったとの見方。「今後も激しい競争に直面しながらも好調を維持する」と予想した。
エコノミック・タイムズ(電子版)によると、地場コンサルティング会社サード・アイサイトの創業者であるデバンシュ・ダッタ氏は、「ZARA(ザラ)」や「H&M」といった競合に比べて少なくとも2割高い価格を設定する戦略が、原材料などのインフレ圧力がある中での利益確保につながったと述べている。
ファーストリテイリングは16年にインド南部ベンガルール(バンガロール)に生産管理の事務所を設置し、生産パートナーを通じてインドからの調達を開始した。インド国内に工場は所有していない。現地調達率は非開示だが、「当局の要件の達成に向けて順調に進んでいる」(広報担当者)。
同社は、19年のインド進出に際し、同国政府が海外直接投資(FDI)規制で求める「現地調達率30%(金額ベース)」を早期に実現することを目指す方針を示していた。
■海外事業は好調
ユニクロの当期の海外事業は好調だ。ファーストリテイリングの22年8月期第3四半期(22年3~5月)決算で、海外ユニクロ事業の売上高は前年同期比13.9%増の2,480億円、営業利益は5.6%増の324億円だった。同事業の売上高は、ファーストリテイリングの連結売上高の45%を占める。
同社の決算資料によると、インドでは同期に大幅な増収を記録し黒字化した。リネン製品やポロシャツといった夏物製品の販売が好調だった。
同社は足元の業績が好調なことから、22年8月期の通期決算の業績予想を上方修正した。インドを含むアジア・オセアニア地域では、6~8月期も全ての国で大幅な増収増益を見込んでいる。
■インドでは首都圏外で出店加速
ユニクロ・インディアは現在、国内で7店舗を展開する。首都ニューデリーでの1号店の開店を皮切りに、19年に計2店舗、20年に計4店舗を出店。今年に入ってからは、北部ウッタルプラデシュ州ラクノーに首都圏外で初の店舗を設置した。今月29日には首都圏外で2カ所目となる店舗を北部の連保直轄地チャンディガルのショッピングモール「ネクサスイランテ・モール」で開業する。
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