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各国の外資奨励政策の概要

1. 日本

日本では、OECD加盟国と比較しても対内直接投資残高が低く(2021年末時点で、対GDP比が加盟国平均67%に対して、日本は8.0%)、少子高齢化の進展に伴う人口減少を克服する経済成長の実現のため、海外からの人材・技術・資金を呼び込むことで日本経済全体の成長力の強化や地域経済の活性化を図るべく、2021年6月に「対日直接投資促進戦略」を策定し、目標値を設定して、様々な施策を実施しています。

(1) 政策目標(Key Performance Indicator)・補助指標
対日直接投資残高を2030年に80兆円、対GDP比12%を達成することを政策目標としています。また、量的拡大以外の補助指標として、①外国企業・外資系企業の日本での事業活動の成果としての付加価値額を2030年度34兆円(2018年度17兆円)にすること、②東京集中の緩和として、東京以外の外資系企業数を2026年に10,000社(2016年4.262社42.9%)にすること、③海外からの経営・管理人材の入国者数を2030年に20万人(2019年95,248人)に増加させることを目安として掲げています。

(2) 3つの柱
戦略では、以下の3点を基本的な柱として、国内の産業・教育体制の改革や地方自治体支援策等と組み合わせた形で、担当省庁の下で施策を実施しています。
① デジタル・グリーンの新市場の創造とイノベーション・エコシステムの構築
② グローバルな環境変化に対応したビジネス環境整備の加速
③ 地域の強みを生かした官民連携による投資環境の整備

(3) 具体的な対応
日本への投資を検討している、または日本での事業拡大を検討している外国人・企業に対する具体的な対応のため、JETROの対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC: Invest Japan Business Support Center)(https://www.jetro.go.jp/invest/jetros_support/ibsc/)を外資系企業からの規制・制度に関する要望や各種相談等を受け付ける一元的窓口と位置づけて、各種の情報発信を行っています。

2.タイ

タイでは、投資奨励及び産業振興を目的として、1977年に投資奨励法が制定されています。また、産業振興法に基づき、首相府の下にタイ投資委員会(BOI)が設置されています。タイ投資委員会は、投資奨励法に基づき、奨励産業や恩典等の投資奨励政策を定めるとともに、投資に関する支援を行っています。タイ投資委員会には、日本(東京、大阪)を含む16か所の海外事務所があり、事務局のほか、ワンストップサービスセンター(ビザ・労働許可証)、ワンスタートワンストップ投資センター(OSOS)、7つの地方事務局があり、様々な投資に関する支援を受けることができます。
また、タイでは、投資奨励政策として、基礎的恩典、メリットによる追加恩典及びその他の政策、特別措置が設けられています。

(1) 基礎的恩典
基礎的恩典には、業種に基づく恩典と技術に基づく恩典があります。

① 業種に基づく恩典
農業・バイオ・医療産業、先進製造業、基礎・裾野産業および創造・デジタル産業・高付加価値サービスに関する事業に対して最長8年間法人税が免除されます。また、機械の輸入関税の免除、原材料及び必要資材の輸入関税の1年間の免除等のインセンティブや税制以外の恩典(外国人技術者・専門家の入国・就労許可、土地の所有権の許可、タイ国外への外貨送金の許可等)があります。

② 技術に基づく恩典
バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、先端材料技術およびデジタルテクノロジーに関する事業に対して最長10年間法人税が免除されます。また、同様に、機械の輸入関税の免除、原材料及び必要資材の輸入関税の1年間の免除等のインセンティブや税制以外の恩典があります。

(2) メリットによる追加恩典
メリットによる追加恩典には、競争力向上のための追加恩典、地方分散のための追加恩典及び工業用地開発のための追加恩典があります。

① 競争力向上のための追加恩典
以下のとおり法人税が免税されます(投資または支出に対する金額)。
・ 技術及びイノベーションの研究開発 300%
・ 技術・人材開発基金、教育機関、科学技術分野の専門訓練センターに対する支援 100%
・ 科学技術分野のインターンシップの学生に対する技術及びイノベーションのスキルを向上させるためのトレーニング又は職業訓練の実施 200%
・ タイ国内で開発された技術のライセンス料 200%
・ 高度技術訓練 200%
・ タイ国内の原材料及び部品メーカーの開発 200%
・ 製品及びパッケージデザイン 200%

② 地方分散のための追加恩典
特定の業種につき、1人当たりの国民所得の低い20県に立地する場合に、5年間にわたり法人税を50%減税又は法人税免除期間が3年間追加されます。

③ 工業用地開発のための追加恩典
特定の業種につき、工業団地又は奨励される工業地区に立地する場合に、法人税免除期間が1年追加されます。

(3) その他の政策および特別措置
① 南部国境地域における投資奨励措置および南部国境地域におけるモデル都市企画に基づく投資奨励措置
南部国境県における投資の促進およびモデル都市計画の実現を行い、住民所得を創出することを目的とした制度です。対象業種は、ボディケア製品の製造、建築資材製造事業及び公共施設プロジェクトのための高圧コンクリート製品の製造、日用品用プラスティック製品の製造、パルプあるいは紙による製品の製造、工場・倉庫用建物の開発等です。条件として、最低投資金額(土地代及び運転資金を除く)が50万バーツ以上であること、タイ国内中古機械の使用は、その上限を1000万バーツとし、中古機械の金額の4分の1以上を新品の機械に投資することが必要です。
恩典としては、機械の輸入関税の免除、法人税の8年間の免除(上限なし)、輸送費、電気代水道代の2倍までを15年又は20年間控除、インフラの設置費または建設費の25%控除等の措置を受けることができます。同措置の適用を受けるためには、2022年の最終営業日までに申請が必要です。

② 特別経済開発区(SEZ)における投資奨励措置
近隣国との経済的連携の構築とASEAN経済共同体の発足に備えて設けられた、特別経済開発区における投資措置です。
特定の業種につき、投資額に相当した金額を上限として8年間の法人税免除、追加の法人税の5年間50%減税、機械の輸入関税の免除、法人税の8年間の免除(上限なし)、輸送費、電気代及び水道代の2倍までを10年間控除、インフラの設置費又は建設費の25%控除等の措置を受けることができます。本措置についても、2022年の最終営業日までに申請が必要です。

③ 効率向上措置
生産効率の向上を目的とした、省エネ、代替エネルギー使用、環境負荷軽減のための機械の入れ替えや、研究開発やエンジニアリングデザインへの支援及びデジタル技術の導入を促進することを目的とした制度です。本措置の対象となるのは、タイ投資委員会が発表した投資奨励対象業種に該当する事業であり、法人所得税の免除または減税期間が終了し、もしくは法人所得税免除の恩典が付与されていない事業です。
条件として、土地代及び運転資金を除く投資金額が100万バーツ以上であることが必要です。ただし、中小企業(タイ国籍自然人による株主比率は資本金の51%以上であること、奨励申請者の全部の被奨励事業と非奨励事業の収入を合算し、被奨励事業の運営により初めて収入が発生した日から最初の3年間の年間収入が合計5億バーツ未満であること)による事業は土地代及び運転資金を除く投資金額が50万バーツ以上であることが必要です。本措置についても、2022年の最終営業日までに申請が必要です。

3.マレーシア

(1) 優遇税制
マレーシアでは、投資促進法(Promotional of Investment Act 1986)、所得税法、関税法、物品税法など、様々な法令により税制上の優遇措置が認められます。
① パイオニアステータス
パイオニアステータスは、奨励事業または奨励製品にかかる事業(製造業、食品加工業、農業、ホテル業、研究開発、観光業など)から得た所得の全部または一部について、生産開始日から5年間に限り、法定所得の70%が免税となる措置です。同政策の下では、国家的・戦略的に重要なプロジェクトについては、所得税の全額免除が10年間認められる場合があります。パイオニアステータス期間中の未処理損失および未処理控除は、パイオニアステータス期間の終了から7年間を上限に繰り越し可能であり、同一の奨励事業または奨励製品に関する事業の所得から控除することができます。

② 投資控除(ITA)
投資控除は、奨励事業を営むまたは奨励製品を生産する会社(製造業、食品加工業、農業、ホテル業、研究開発、観光業など)につき、最初に適格資本的支出が発生した日から5年間に発生した適格資本的支出(工場、機械設備などに対する支出)の60%の投資控除が認められます。この控除額を用いて、各賦課年度の法定所得を最大70%まで控除することができます。また、未利用の控除額は、翌年以降に繰越すことができます。ただし、この投資控除制度はパイオニアステータスと併用することはできません。

③ 再投資控除(RA)
再投資控除は、36カ月以上事業を営んでいる居住会社であることなどの一定の条件を満たす会社に対し、工場や機械設備などへの適格資本的支出の60%の投資控除を認めています。
この控除額を用いて各賦課年度の法定所得を最大70%まで控除することができ、未利用の控除額は翌年以降に繰り越すことができます。パイオニアステータスまたは投資税額控除を利用している会社は、その期間中再投資控除を併用することはできません。

(2) 自動化に関する優遇措置
労働集約型の製造業を対象として自動化を促すための優遇措置が設けられています。
ゴム、プラスティック、木材、家具、繊維の製造業(これらをカテゴリー1とする)は、2023年までに自動化に伴って生ずる適格資本支出に対して最初のRM400万について、20%+80%の加速度償却および100%相当額の免税を受けることができます。また、カテゴリー1以外の製造業(カテゴリー2とされる)は、2023年までに自動化に伴って生ずる適格資本支出に対して最初のRM200万について、20%+80%の加速度償却および100%相当額の免税を受けることができます。
マレーシアで設立され、36カ月以上製造事業を行っている法人が対象となります。自動化の設備は直接製造に使用されるものでなければなりません。

(3) インダストリー4.0(Industry 4WRD)
インダストリー4.0は、マレーシアの中小企業の生産性向上およびスマートマニュファクチュアリング化を目指す方針です。
インダストリー4.0の導入を検討する企業は、生産現場の技術導入に対する準備状況を診断する実現可能性評価(RA:Readiness Assessment)を行います。RAを実施した企業のうちインダストリー4.0のための研究開発や教育訓練、設備の現代化や更新、新技術のライセンス取得や購入、国際標準/認証の取得に係る費用に対して、補助金を申請することができます。政府と企業が補助金を出し合うマッチング補助金となり、負担率は政府:企業=60:40となっています。

(4) 環境技術(グリーン・テクノロジー)に関する優遇措置
マレーシア環境技術公社(MyHIJAU)のリストにおいて承認された環境投資減税(GITA)対象資産を取得する場合に、申請により当該対象資産について100%の投資控除を受けることができます。環境投資減税対象資産は、エネルギー効率、再生可能エネルギー、ごみ処理、水処理、建物のいずれかの領域で環境に資する資産となります。環境技術プロジェクトを行う会社や環境技術関連のサービスを提供する会社は、申請によりサービスから得る所得の免税などを受けられる可能性があります。

4.ミャンマー

(1) 投資法
① 租税優遇措置
(a) 所得税の免税対象業種
投資促進分野通達に規定された業種に該当する場合、所得税の免税措置の申請が可能となります(投資法75条(c))。
(b) 関税およびその他の内国税の免税および減税
投資家からの申請によって、ミャンマー投資委員会は、関税その他の国内税の免税または減税を許可することができます(投資法77条)。
② 土地の長期賃貸借
MIC許可または是認(Endorsement)および土地権利認可を得ることで、土地または建物を最大50年間賃借でき、さらに10年の延長を2回まで認められます(投資法50条)。
(2) 経済特区法
① 租税優遇措置
投資家および開発者に対する租税優遇措置は下表のとおりです(経済特区法32条、40条、44条、45条、48条、49条、50条、51条、52条)。

投資家および開発者に対する租税優遇措置


② 土地の長期賃貸借
経済特区法に基づく投資許可を取得した会社は、土地を最大50年間賃借でき、さらに25年間の延長が認められます(経済特区法79条)。

5.メキシコ

メキシコには、外資のみに適用される税制優遇策などの外資奨励策はありませんが、外資・内資を問わず適用される優遇策がいくつかありますので、主要な3つを簡単に紹介します。
(1) 産業分野別促進プログラム (PROSEC; Programas de Promoción Sectorial)
特定の製品を製造する法人を対象とした税優遇策であり、特定の製品の生産に使用される部品・原材料、設備機器などを優遇関税率で輸入することができます。対象となる産業分野は、自動車および自動車部品、化学、ゴムおよびプラスティック製造、電機、食品など24種が指定されており、所定の製品の製造のために輸入される指定品目について、0%や5%などの優遇税率が適用されます。

(2) IMMEX(Industria Manufacturera, Maquiladora y de Servicios de Exportación)プログラム
製造、加工などの目的で商品を一時輸入する製造事業者や輸出関連サービスを提供する事業者が関税(Impuesto General de Importación)や付加価値税(Impuesto al Valor Agregado: IVA)の支払いを、所定の期間、留保されるなどの輸出促進のための税優遇策です。適用を受ける場合、次の5つのカテゴリーのいずれかにおいて認可を取得する必要があります。

(3) 経済特区
北部国境地帯特区(Zonas Libre de Frontera Norte)では、所得税(Impuesto sobre la Renta: ISR)について、当該地域内に税務住所または支店や出張所、その他の施設を有する場合で、当該地域での収入が総収入の少なくとも90%を占める場合、当該地域での収入に対して税率30%が20%に、また、IVAについては、当該地域の事業所や施設において物品の譲渡、サービス提供、物品のリースに関する活動を行う法人もしくは個人事業者の場合、税率16%が8%に引き下げられます。なお、金融業、農業、畜産業、漁業、林業、専門サービス・士業、マキラドーラ・オペレーション(保税委託加工)などを行う事業者や、不動産譲渡、無形資産の一時的使用や享受、デジタルコンテンツの提供などには適用されない、物品の引渡しやサービスの提供が当該地域内で実行されなければならないなどの一定の条件があることに留意する必要があります。

対象地域は、バハ・カリフォルニア州、ソノラ州、チワワ州、コアウイラ州、ヌエボレオン州、タマウリパス州の43市町村です。
同様に、南部のキンタナロー州、チアパス州、カンペチェ州、タバスコ州の23市町村でも、同じ減税措置が適用されます。

6.バングラデシュ

バングラデシュ政府は、外資・内資問わず投資を奨励するために、法人税の免除又は減税、資本設備及び原材料に対する輸入関税の減税、VATの減税等、様々な優遇措置をもうけています。毎年制定される財政法(Finance Act)及び通達(Statutory Regulatory Orders)にて優遇措置が見直されるため、確認が必要です。本稿では、主要なものとして、所得税条例に基づく免税措置、輸出志向産業に対する優遇措置、経済特区及び輸出加工区への進出企業に対する優遇措置を紹介します。

(1) 所得税条例第46BBに基づく免税措置
所得税条例(1984)第46BBに基づき、2019年7月1日から2024年6月30日の間に新規に設立された企業は事業分野及び事業地域によって、5年間又は10年間、一定の割合で法人税の免税を受けることができます。事業分野は、農業機械、自動車及びその部品、電子機器の基本部品、玩具、家具、LEDテレビ、家電製品、コンピューターハードウェア、電気変圧器の製造を含む33の事業が対象となります。

(2) 所得税条例第46CCに基づく免税措置
所得税条例(1984)第46CCに基づき、2019年7月1日から2024年6月30日の間に設立されたインフラ設備(輸出加工区、高架道路、ハイテクパーク、ITパーク、再生可能エネルギー地下鉄、廃棄物処理プラント等19分野)に従事した企業は操業開始日から10年間、法人税の減税を受けることができます。

(3) 輸出志向産業に対する優遇措置
輸出志向産業(製品及びサービスの80%超の輸出)は、経済特区又は輸出加工区の内外問わず、以下の優遇措置を享受することができます(BIDAウェブサイト:https://bida.gov.bd/incentives)。
・ 輸出から生じた所得の50%にかかる法人税の免税(減税率を適用していない場合)
・ タバコ商品を除き輸出関税免除
・ 保税倉庫の設備
・ 税払い戻し制度
・ 特定の業界の輸出者は、一定の条件のもとで補助金又は金銭的インセンティブというかたちで、更なる優遇措置を追加で享受することができる。

(4) 経済特区への進出企業に対する優遇措置
ディベロッパーに対するインセンティブが15項目、投資家(Unit Investors)に対するインセンティブが、以下の項目を含む39項目挙げられています(BEZAウェブサイト:https://www.beza.gov.bd/investing-in-zones/incentive-package/)。
・ 法人税の減税(10年間)
・ 外国人駐在員の所得税の50%免除(3年間)
・ 資本設備及び建築資材に対する輸入関税の免除
・ 国内関税一般地域での完成品の販売が可能(前年度の輸出量の20%)
・ 輸出にかかる関税の免除
・ 製造に関する光熱費に対するVATの免除

(5) 輸出加工区への進出企業に対する優遇措置
投資家に対して、財政的インセンティブ、非財政的インセンティブ、優遇措置がもうけられています(BEPZAウェブサイト https://www.bepza.gov.bd/content/incentives-facilities)。
・ 法人税の免除(設立年及び地域により、5年間、7年間又は10年間)
・ 建設資材、機械、設備、部品等の輸入関税免除
・ 原材料の輸入関税および完成品の輸出関税免除
・ 国内一般関税地域からの輸入及び同地域への販売(10%)
・ 資本金及び配当の本国への送金許可
・ 委託加工形態による輸出入の許可

(6) その他
ハイテクパークへの進出企業やIT企業に対する優遇措置や官民連携プロジェクト(PPP)に対するインセンティブなどが設けられています。

7.フィリピン

(1) フィリピンにおける外資奨励政策の概要
企業復興税制(CREATE)法において、投資委員会(BOI)とフィリピン経済区庁(PEZA)における優遇制度が統一されました。具体的には、税制上の優遇措置を提供する分野を定めた「戦略的投資優先計画(SIPP)」が承認されています。

(2) 企業復興税制(CREATE)法に基づく投資優遇措置の概要
投資優遇措置の概要は以下のとおりです。
(A) インカム・タックス・ホリデー(ITH)により、所得税の支払いが100%免除される場合があります。

(B) 特別法人所得税(SCIT)率の適用により、国税及び地方税に代えて、総所得5%が課される場合があります。
※適用を受けるには、事業内容、生産量、最低投資額その他の条件を満たす必要があります。

(C) 課税標準から許容される控除額が設定される場合があります。
例:課税年度に発生した人件費について、50%の控除
※控除を受けるには、重要国内市場企業に指定されていること等の条件が必要となります。

(D) 資本設備、原材料、予備部品、付属品等を輸入する際に免税となる場合があります。

(E) 輸入時の付加価値税(VAT)が免除される場合や、現地での購入時のVATゼロレートの適用の可能性があります。

(3) SIPPが定める投資優遇分野
SIPPは、投資優遇措置を受けられる優先活動のリストを提供しています。産業や活動は、Tier I、Tier II、Tier IIIに分類されます。

【Tier I】
2020年度投資優先計画にて投資優先分野と指定されている活動。ただし、通達第61号でTier II若しくはTier IIIに該当する場合を除く。

【Tier II】
フィリピン経済の強靭(きょうじん)性、競争性を高める活動。具体的には、グリーン・エコシステム、ヘルスケア、防衛関連、食料安全等の分野を含むものとされています。

【Tier III】
経済の変革を加速させる上で重要な活動。具体的には、研究開発、技術的に高度な製造業、イノベーション創出を促進する施設の設置等の分野を含むものとされています。

(4) 投資優遇措置の適用期間
企業は以下の期間において、税制優遇措置を受けることができます。なお、優遇措置を受けようとする企業は、戦略的投資優先計画及びガイドラインに別段の定めがない限り、登録日から3年以内に優遇措置を利用する必要があります。

・ 輸出企業と国内市場企業が「重要」に分類される場合
所在地と産業政策に応じて、4~7年間所得税が免除され、その後10年間法人税の特別税率又は控除が強化される場合があります。

・ 国内市場企業で「重要」に分類されない場合
4~7年間所得税が免除され、その後5年間特別法人税または控除が強化される場合があります。ただし、投資資本が5億ペソ以上の国内市場企業に限り、法人所得税の特別税率を適用することができます。

8.ベトナム
(1) 投資優遇分野
ベトナムでは、2021年1月施行の投資法(61/2020/QH14)に基づき、内資・外資にかかわらず共通の投資優遇措置が実施されています。同法が定める投資優遇分野は、次のとおりです(同法16条1項)。
・ 科学技術に関する法令に従ったハイテク活動、ハイテク支援産業製品、科学技術の成果物の研究、製造、開発
・ 新素材、新エネルギー、クリーンエネルギー、再生可能エネルギーの製造、付加価値30%以上の製品の製造、省エネルギー製品の製造
・ 電子製品、機械製品、農業機械、自動車、自動車部品の生産、造船
・ 優先的発展対象となる裾野産業製品リスト(裾野産業の発展に関する政令111/2015/ND-CP)に掲載されている製品の生産
・ IT技術、ソフトウエア、デジタルコンテンツの生産
・ 農産物、林産物、水産物の養殖、加工、植林、森林保護、製塩、漁業、漁業物流サービス、植物品種、動物品種、バイオテクノロジー製品の生産
・ 廃棄物の収集、処理、リサイクルまたは再利用
・ インフラ整備、運営、管理への投資、都市部での公共交通機関の整備
・ 幼児教育、一般教育、職業教育、高等教育
・ 診察、治療、医薬品、医薬原料の生産、医薬品の保管、新薬生産のための製剤技術、バイオテクノロジーに関する科学研究、医療機器の製造
・ 障害者またはプロのスポーツ選手のためのスポーツ施設に対する投資、文化遺産の保護と振興
・ 老人ホーム、メンタルヘルスセンター、枯葉剤被害者の治療センター、高齢者、障害者、孤児、ストリートチルドレンのためのケアセンターへの投資
・ 人民信用基金、マイクロファイナンス機関
・ バリューチェーンや産業クラスターを創出し、またはこれらに参加するための商品の生産やサービスの提供
投資優遇分野に関する詳細については、投資法の整備に関する政令(31/2021/ND-CP)で定められています。

(2) 投資優遇地域
投資法が定める投資優遇地域は、次のとおりです(同法16条2項)。
・ 経済・社会的条件が不利な地域及び極めて不利な地域
・ 工業団地、輸出加工区、ハイテクパーク、経済特区
投資優遇地域に関する詳細については、整備に関する政令(31/2021/ND-CP)で定められています。

(3) 投資優遇措置の内容
投資法が定める投資優遇措置の内容は、次のとおりです(同法15条1項)。
・ 法人所得税の優遇措置(一定期間または投資プロジェクト実行中の法人所得税の低率適用、免税・減税など、法人所得税法に規定される優遇措置)
・ 固定資産を形成するために輸入される物品、生産のための原材料、物資、部品に対する輸入税の免除
・ 土地使用税、土地使用料の減免
・ 課税所得の計算における、加速償却法の採用、損金算入できる費用の増加

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1. 日本

日本では、OECD加盟国と比較しても対内直接投資残高が低く(2021年末時点で、対GDP比が加盟国平均67%に対して、日本は8.0%)、少子高齢化の進展に伴う人口減少を克服する経済成長の実現のため、海外からの人材・技術・資金を呼び込むことで日本経済全体の成長力の強化や地域経済の活性化を図るべく、2021年6月に「対日直接投資促進戦略」を策定し、目標値を設定して、様々な施策を実施しています。 (1) 政策目標(Key Performance Indicator)・補助指標 対日直接投資残高を2030年に80兆円、対GDP比12%を達成することを政策目標としています。また、量的拡大以外の補助指標として、①外国企業・外資系企業の日本での事業活動の成果としての付加価値額を2030年度34兆円(2018年度17兆円)にすること、②東京集中の緩和として、東京以外の外資系企業数を2026年に10,000社(2016年4.262社42.9%)にすること、③海外からの経営・管理人材の入国者数を2030年に20万人(2019年95,248人)に増加させることを目安として掲げています。 (2) 3つの柱 戦略では、以下の3点を基本的な柱として、国内の産業・教育体制の改革や地方自治体支援策等と組み合わせた形で、担当省庁の下で施策を実施しています。 ① デジタル・グリーンの新市場の創造とイノベーション・エコシステムの構築 ② グローバルな環境変化に対応したビジネス環境整備の加速 ③ 地域の強みを生かした官民連携による投資環境の整備 (3) 具体的な対応 日本への投資を検討している、または日本での事業拡大を検討している外国人・企業に対する具体的な対応のため、JETROの対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC: Invest Japan Business Support Center)(https://www.jetro.go.jp/invest/jetros_support/ibsc/)を外資系企業からの規制・制度に関する要望や各種相談等を受け付ける一元的窓口と位置づけて、各種の情報発信を行っています。

2.タイ

タイでは、投資奨励及び産業振興を目的として、1977年に投資奨励法が制定されています。また、産業振興法に基づき、首相府の下にタイ投資委員会(BOI)が設置されています。タイ投資委員会は、投資奨励法に基づき、奨励産業や恩典等の投資奨励政策を定めるとともに、投資に関する支援を行っています。タイ投資委員会には、日本(東京、大阪)を含む16か所の海外事務所があり、事務局のほか、ワンストップサービスセンター(ビザ・労働許可証)、ワンスタートワンストップ投資センター(OSOS)、7つの地方事務局があり、様々な投資に関する支援を受けることができます。 また、タイでは、投資奨励政策として、基礎的恩典、メリットによる追加恩典及びその他の政策、特別措置が設けられています。 (1) 基礎的恩典 基礎的恩典には、業種に基づく恩典と技術に基づく恩典があります。 ① 業種に基づく恩典 農業・バイオ・医療産業、先進製造業、基礎・裾野産業および創造・デジタル産業・高付加価値サービスに関する事業に対して最長8年間法人税が免除されます。また、機械の輸入関税の免除、原材料及び必要資材の輸入関税の1年間の免除等のインセンティブや税制以外の恩典(外国人技術者・専門家の入国・就労許可、土地の所有権の許可、タイ国外への外貨送金の許可等)があります。 ② 技術に基づく恩典 バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、先端材料技術およびデジタルテクノロジーに関する事業に対して最長10年間法人税が免除されます。また、同様に、機械の輸入関税の免除、原材料及び必要資材の輸入関税の1年間の免除等のインセンティブや税制以外の恩典があります。 (2) メリットによる追加恩典 メリットによる追加恩典には、競争力向上のための追加恩典、地方分散のための追加恩典及び工業用地開発のための追加恩典があります。 ① 競争力向上のための追加恩典 以下のとおり法人税が免税されます(投資または支出に対する金額)。 ・ 技術及びイノベーションの研究開発 300% ・ 技術・人材開発基金、教育機関、科学技術分野の専門訓練センターに対する支援 100% ・ 科学技術分野のインターンシップの学生に対する技術及びイノベーションのスキルを向上させるためのトレーニング又は職業訓練の実施 200% ・ タイ国内で開発された技術のライセンス料 200% ・ 高度技術訓練 200% ・ タイ国内の原材料及び部品メーカーの開発 200% ・ 製品及びパッケージデザイン 200% ② 地方分散のための追加恩典 特定の業種につき、1人当たりの国民所得の低い20県に立地する場合に、5年間にわたり法人税を50%減税又は法人税免除期間が3年間追加されます。 ③ 工業用地開発のための追加恩典 特定の業種につき、工業団地又は奨励される工業地区に立地する場合に、法人税免除期間が1年追加されます。 (3) その他の政策および特別措置 ① 南部国境地域における投資奨励措置および南部国境地域におけるモデル都市企画に基づく投資奨励措置 南部国境県における投資の促進およびモデル都市計画の実現を行い、住民所得を創出することを目的とした制度です。対象業種は、ボディケア製品の製造、建築資材製造事業及び公共施設プロジェクトのための高圧コンクリート製品の製造、日用品用プラスティック製品の製造、パルプあるいは紙による製品の製造、工場・倉庫用建物の開発等です。条件として、最低投資金額(土地代及び運転資金を除く)が50万バーツ以上であること、タイ国内中古機械の使用は、その上限を1000万バーツとし、中古機械の金額の4分の1以上を新品の機械に投資することが必要です。 恩典としては、機械の輸入関税の免除、法人税の8年間の免除(上限なし)、輸送費、電気代水道代の2倍までを15年又は20年間控除、インフラの設置費または建設費の25%控除等の措置を受けることができます。同措置の適用を受けるためには、2022年の最終営業日までに申請が必要です。 ② 特別経済開発区(SEZ)における投資奨励措置 近隣国との経済的連携の構築とASEAN経済共同体の発足に備えて設けられた、特別経済開発区における投資措置です。 特定の業種につき、投資額に相当した金額を上限として8年間の法人税免除、追加の法人税の5年間50%減税、機械の輸入関税の免除、法人税の8年間の免除(上限なし)、輸送費、電気代及び水道代の2倍までを10年間控除、インフラの設置費又は建設費の25%控除等の措置を受けることができます。本措置についても、2022年の最終営業日までに申請が必要です。 ③ 効率向上措置 生産効率の向上を目的とした、省エネ、代替エネルギー使用、環境負荷軽減のための機械の入れ替えや、研究開発やエンジニアリングデザインへの支援及びデジタル技術の導入を促進することを目的とした制度です。本措置の対象となるのは、タイ投資委員会が発表した投資奨励対象業種に該当する事業であり、法人所得税の免除または減税期間が終了し、もしくは法人所得税免除の恩典が付与されていない事業です。 条件として、土地代及び運転資金を除く投資金額が100万バーツ以上であることが必要です。ただし、中小企業(タイ国籍自然人による株主比率は資本金の51%以上であること、奨励申請者の全部の被奨励事業と非奨励事業の収入を合算し、被奨励事業の運営により初めて収入が発生した日から最初の3年間の年間収入が合計5億バーツ未満であること)による事業は土地代及び運転資金を除く投資金額が50万バーツ以上であることが必要です。本措置についても、2022年の最終営業日までに申請が必要です。

3.マレーシア

(1) 優遇税制 マレーシアでは、投資促進法(Promotional of Investment Act 1986)、所得税法、関税法、物品税法など、様々な法令により税制上の優遇措置が認められます。 ① パイオニアステータス パイオニアステータスは、奨励事業または奨励製品にかかる事業(製造業、食品加工業、農業、ホテル業、研究開発、観光業など)から得た所得の全部または一部について、生産開始日から5年間に限り、法定所得の70%が免税となる措置です。同政策の下では、国家的・戦略的に重要なプロジェクトについては、所得税の全額免除が10年間認められる場合があります。パイオニアステータス期間中の未処理損失および未処理控除は、パイオニアステータス期間の終了から7年間を上限に繰り越し可能であり、同一の奨励事業または奨励製品に関する事業の所得から控除することができます。 ② 投資控除(ITA) 投資控除は、奨励事業を営むまたは奨励製品を生産する会社(製造業、食品加工業、農業、ホテル業、研究開発、観光業など)につき、最初に適格資本的支出が発生した日から5年間に発生した適格資本的支出(工場、機械設備などに対する支出)の60%の投資控除が認められます。この控除額を用いて、各賦課年度の法定所得を最大70%まで控除することができます。また、未利用の控除額は、翌年以降に繰越すことができます。ただし、この投資控除制度はパイオニアステータスと併用することはできません。 ③ 再投資控除(RA) 再投資控除は、36カ月以上事業を営んでいる居住会社であることなどの一定の条件を満たす会社に対し、工場や機械設備などへの適格資本的支出の60%の投資控除を認めています。 この控除額を用いて各賦課年度の法定所得を最大70%まで控除することができ、未利用の控除額は翌年以降に繰り越すことができます。パイオニアステータスまたは投資税額控除を利用している会社は、その期間中再投資控除を併用することはできません。 (2) 自動化に関する優遇措置 労働集約型の製造業を対象として自動化を促すための優遇措置が設けられています。 ゴム、プラスティック、木材、家具、繊維の製造業(これらをカテゴリー1とする)は、2023年までに自動化に伴って生ずる適格資本支出に対して最初のRM400万について、20%+80%の加速度償却および100%相当額の免税を受けることができます。また、カテゴリー1以外の製造業(カテゴリー2とされる)は、2023年までに自動化に伴って生ずる適格資本支出に対して最初のRM200万について、20%+80%の加速度償却および100%相当額の免税を受けることができます。 マレーシアで設立され、36カ月以上製造事業を行っている法人が対象となります。自動化の設備は直接製造に使用されるものでなければなりません。 (3) インダストリー4.0(Industry 4WRD) インダストリー4.0は、マレーシアの中小企業の生産性向上およびスマートマニュファクチュアリング化を目指す方針です。 インダストリー4.0の導入を検討する企業は、生産現場の技術導入に対する準備状況を診断する実現可能性評価(RA:Readiness Assessment)を行います。RAを実施した企業のうちインダストリー4.0のための研究開発や教育訓練、設備の現代化や更新、新技術のライセンス取得や購入、国際標準/認証の取得に係る費用に対して、補助金を申請することができます。政府と企業が補助金を出し合うマッチング補助金となり、負担率は政府:企業=60:40となっています。 (4) 環境技術(グリーン・テクノロジー)に関する優遇措置 マレーシア環境技術公社(MyHIJAU)のリストにおいて承認された環境投資減税(GITA)対象資産を取得する場合に、申請により当該対象資産について100%の投資控除を受けることができます。環境投資減税対象資産は、エネルギー効率、再生可能エネルギー、ごみ処理、水処理、建物のいずれかの領域で環境に資する資産となります。環境技術プロジェクトを行う会社や環境技術関連のサービスを提供する会社は、申請によりサービスから得る所得の免税などを受けられる可能性があります。

4.ミャンマー

(1) 投資法 ① 租税優遇措置 (a) 所得税の免税対象業種 投資促進分野通達に規定された業種に該当する場合、所得税の免税措置の申請が可能となります(投資法75条(c))。 (b) 関税およびその他の内国税の免税および減税 投資家からの申請によって、ミャンマー投資委員会は、関税その他の国内税の免税または減税を許可することができます(投資法77条)。 ② 土地の長期賃貸借 MIC許可または是認(Endorsement)および土地権利認可を得ることで、土地または建物を最大50年間賃借でき、さらに10年の延長を2回まで認められます(投資法50条)。 (2) 経済特区法 ① 租税優遇措置 投資家および開発者に対する租税優遇措置は下表のとおりです(経済特区法32条、40条、44条、45条、48条、49条、50条、51条、52条)。 投資家および開発者に対する租税優遇措置 ② 土地の長期賃貸借 経済特区法に基づく投資許可を取得した会社は、土地を最大50年間賃借でき、さらに25年間の延長が認められます(経済特区法79条)。

5.メキシコ

メキシコには、外資のみに適用される税制優遇策などの外資奨励策はありませんが、外資・内資を問わず適用される優遇策がいくつかありますので、主要な3つを簡単に紹介します。 (1) 産業分野別促進プログラム (PROSEC; Programas de Promoción Sectorial) 特定の製品を製造する法人を対象とした税優遇策であり、特定の製品の生産に使用される部品・原材料、設備機器などを優遇関税率で輸入することができます。対象となる産業分野は、自動車および自動車部品、化学、ゴムおよびプラスティック製造、電機、食品など24種が指定されており、所定の製品の製造のために輸入される指定品目について、0%や5%などの優遇税率が適用されます。 (2) IMMEX(Industria Manufacturera, Maquiladora y de Servicios de Exportación)プログラム 製造、加工などの目的で商品を一時輸入する製造事業者や輸出関連サービスを提供する事業者が関税(Impuesto General de Importación)や付加価値税(Impuesto al Valor Agregado: IVA)の支払いを、所定の期間、留保されるなどの輸出促進のための税優遇策です。適用を受ける場合、次の5つのカテゴリーのいずれかにおいて認可を取得する必要があります。 (3) 経済特区 北部国境地帯特区(Zonas Libre de Frontera Norte)では、所得税(Impuesto sobre la Renta: ISR)について、当該地域内に税務住所または支店や出張所、その他の施設を有する場合で、当該地域での収入が総収入の少なくとも90%を占める場合、当該地域での収入に対して税率30%が20%に、また、IVAについては、当該地域の事業所や施設において物品の譲渡、サービス提供、物品のリースに関する活動を行う法人もしくは個人事業者の場合、税率16%が8%に引き下げられます。なお、金融業、農業、畜産業、漁業、林業、専門サービス・士業、マキラドーラ・オペレーション(保税委託加工)などを行う事業者や、不動産譲渡、無形資産の一時的使用や享受、デジタルコンテンツの提供などには適用されない、物品の引渡しやサービスの提供が当該地域内で実行されなければならないなどの一定の条件があることに留意する必要があります。 対象地域は、バハ・カリフォルニア州、ソノラ州、チワワ州、コアウイラ州、ヌエボレオン州、タマウリパス州の43市町村です。 同様に、南部のキンタナロー州、チアパス州、カンペチェ州、タバスコ州の23市町村でも、同じ減税措置が適用されます。

6.バングラデシュ

バングラデシュ政府は、外資・内資問わず投資を奨励するために、法人税の免除又は減税、資本設備及び原材料に対する輸入関税の減税、VATの減税等、様々な優遇措置をもうけています。毎年制定される財政法(Finance Act)及び通達(Statutory Regulatory Orders)にて優遇措置が見直されるため、確認が必要です。本稿では、主要なものとして、所得税条例に基づく免税措置、輸出志向産業に対する優遇措置、経済特区及び輸出加工区への進出企業に対する優遇措置を紹介します。 (1) 所得税条例第46BBに基づく免税措置 所得税条例(1984)第46BBに基づき、2019年7月1日から2024年6月30日の間に新規に設立された企業は事業分野及び事業地域によって、5年間又は10年間、一定の割合で法人税の免税を受けることができます。事業分野は、農業機械、自動車及びその部品、電子機器の基本部品、玩具、家具、LEDテレビ、家電製品、コンピューターハードウェア、電気変圧器の製造を含む33の事業が対象となります。 (2) 所得税条例第46CCに基づく免税措置 所得税条例(1984)第46CCに基づき、2019年7月1日から2024年6月30日の間に設立されたインフラ設備(輸出加工区、高架道路、ハイテクパーク、ITパーク、再生可能エネルギー地下鉄、廃棄物処理プラント等19分野)に従事した企業は操業開始日から10年間、法人税の減税を受けることができます。 (3) 輸出志向産業に対する優遇措置 輸出志向産業(製品及びサービスの80%超の輸出)は、経済特区又は輸出加工区の内外問わず、以下の優遇措置を享受することができます(BIDAウェブサイト:https://bida.gov.bd/incentives)。 ・ 輸出から生じた所得の50%にかかる法人税の免税(減税率を適用していない場合) ・ タバコ商品を除き輸出関税免除 ・ 保税倉庫の設備 ・ 税払い戻し制度 ・ 特定の業界の輸出者は、一定の条件のもとで補助金又は金銭的インセンティブというかたちで、更なる優遇措置を追加で享受することができる。 (4) 経済特区への進出企業に対する優遇措置 ディベロッパーに対するインセンティブが15項目、投資家(Unit Investors)に対するインセンティブが、以下の項目を含む39項目挙げられています(BEZAウェブサイト:https://www.beza.gov.bd/investing-in-zones/incentive-package/)。 ・ 法人税の減税(10年間) ・ 外国人駐在員の所得税の50%免除(3年間) ・ 資本設備及び建築資材に対する輸入関税の免除 ・ 国内関税一般地域での完成品の販売が可能(前年度の輸出量の20%) ・ 輸出にかかる関税の免除 ・ 製造に関する光熱費に対するVATの免除 (5) 輸出加工区への進出企業に対する優遇措置 投資家に対して、財政的インセンティブ、非財政的インセンティブ、優遇措置がもうけられています(BEPZAウェブサイト https://www.bepza.gov.bd/content/incentives-facilities)。 ・ 法人税の免除(設立年及び地域により、5年間、7年間又は10年間) ・ 建設資材、機械、設備、部品等の輸入関税免除 ・ 原材料の輸入関税および完成品の輸出関税免除 ・ 国内一般関税地域からの輸入及び同地域への販売(10%) ・ 資本金及び配当の本国への送金許可 ・ 委託加工形態による輸出入の許可 (6) その他 ハイテクパークへの進出企業やIT企業に対する優遇措置や官民連携プロジェクト(PPP)に対するインセンティブなどが設けられています。

7.フィリピン

(1) フィリピンにおける外資奨励政策の概要 企業復興税制(CREATE)法において、投資委員会(BOI)とフィリピン経済区庁(PEZA)における優遇制度が統一されました。具体的には、税制上の優遇措置を提供する分野を定めた「戦略的投資優先計画(SIPP)」が承認されています。 (2) 企業復興税制(CREATE)法に基づく投資優遇措置の概要 投資優遇措置の概要は以下のとおりです。 (A) インカム・タックス・ホリデー(ITH)により、所得税の支払いが100%免除される場合があります。 (B) 特別法人所得税(SCIT)率の適用により、国税及び地方税に代えて、総所得5%が課される場合があります。 ※適用を受けるには、事業内容、生産量、最低投資額その他の条件を満たす必要があります。 (C) 課税標準から許容される控除額が設定される場合があります。 例:課税年度に発生した人件費について、50%の控除 ※控除を受けるには、重要国内市場企業に指定されていること等の条件が必要となります。 (D) 資本設備、原材料、予備部品、付属品等を輸入する際に免税となる場合があります。 (E) 輸入時の付加価値税(VAT)が免除される場合や、現地での購入時のVATゼロレートの適用の可能性があります。 (3) SIPPが定める投資優遇分野 SIPPは、投資優遇措置を受けられる優先活動のリストを提供しています。産業や活動は、Tier I、Tier II、Tier IIIに分類されます。 【Tier I】 2020年度投資優先計画にて投資優先分野と指定されている活動。ただし、通達第61号でTier II若しくはTier IIIに該当する場合を除く。 【Tier II】 フィリピン経済の強靭(きょうじん)性、競争性を高める活動。具体的には、グリーン・エコシステム、ヘルスケア、防衛関連、食料安全等の分野を含むものとされています。 【Tier III】 経済の変革を加速させる上で重要な活動。具体的には、研究開発、技術的に高度な製造業、イノベーション創出を促進する施設の設置等の分野を含むものとされています。 (4) 投資優遇措置の適用期間 企業は以下の期間において、税制優遇措置を受けることができます。なお、優遇措置を受けようとする企業は、戦略的投資優先計画及びガイドラインに別段の定めがない限り、登録日から3年以内に優遇措置を利用する必要があります。 ・ 輸出企業と国内市場企業が「重要」に分類される場合 所在地と産業政策に応じて、4~7年間所得税が免除され、その後10年間法人税の特別税率又は控除が強化される場合があります。 ・ 国内市場企業で「重要」に分類されない場合 4~7年間所得税が免除され、その後5年間特別法人税または控除が強化される場合があります。ただし、投資資本が5億ペソ以上の国内市場企業に限り、法人所得税の特別税率を適用することができます。 8.ベトナム (1) 投資優遇分野 ベトナムでは、2021年1月施行の投資法(61/2020/QH14)に基づき、内資・外資にかかわらず共通の投資優遇措置が実施されています。同法が定める投資優遇分野は、次のとおりです(同法16条1項)。 ・ 科学技術に関する法令に従ったハイテク活動、ハイテク支援産業製品、科学技術の成果物の研究、製造、開発 ・ 新素材、新エネルギー、クリーンエネルギー、再生可能エネルギーの製造、付加価値30%以上の製品の製造、省エネルギー製品の製造 ・ 電子製品、機械製品、農業機械、自動車、自動車部品の生産、造船 ・ 優先的発展対象となる裾野産業製品リスト(裾野産業の発展に関する政令111/2015/ND-CP)に掲載されている製品の生産 ・ IT技術、ソフトウエア、デジタルコンテンツの生産 ・ 農産物、林産物、水産物の養殖、加工、植林、森林保護、製塩、漁業、漁業物流サービス、植物品種、動物品種、バイオテクノロジー製品の生産 ・ 廃棄物の収集、処理、リサイクルまたは再利用 ・ インフラ整備、運営、管理への投資、都市部での公共交通機関の整備 ・ 幼児教育、一般教育、職業教育、高等教育 ・ 診察、治療、医薬品、医薬原料の生産、医薬品の保管、新薬生産のための製剤技術、バイオテクノロジーに関する科学研究、医療機器の製造 ・ 障害者またはプロのスポーツ選手のためのスポーツ施設に対する投資、文化遺産の保護と振興 ・ 老人ホーム、メンタルヘルスセンター、枯葉剤被害者の治療センター、高齢者、障害者、孤児、ストリートチルドレンのためのケアセンターへの投資 ・ 人民信用基金、マイクロファイナンス機関 ・ バリューチェーンや産業クラスターを創出し、またはこれらに参加するための商品の生産やサービスの提供 投資優遇分野に関する詳細については、投資法の整備に関する政令(31/2021/ND-CP)で定められています。 (2) 投資優遇地域 投資法が定める投資優遇地域は、次のとおりです(同法16条2項)。 ・ 経済・社会的条件が不利な地域及び極めて不利な地域 ・ 工業団地、輸出加工区、ハイテクパーク、経済特区 投資優遇地域に関する詳細については、整備に関する政令(31/2021/ND-CP)で定められています。 (3) 投資優遇措置の内容 投資法が定める投資優遇措置の内容は、次のとおりです(同法15条1項)。 ・ 法人所得税の優遇措置(一定期間または投資プロジェクト実行中の法人所得税の低率適用、免税・減税など、法人所得税法に規定される優遇措置) ・ 固定資産を形成するために輸入される物品、生産のための原材料、物資、部品に対する輸入税の免除 ・ 土地使用税、土地使用料の減免 ・ 課税所得の計算における、加速償却法の採用、損金算入できる費用の増加" ["post_title"]=> string(36) "各国の外資奨励政策の概要" ["post_excerpt"]=> string(0) "" ["post_status"]=> string(7) "publish" ["comment_status"]=> string(4) "open" ["ping_status"]=> string(4) "open" ["post_password"]=> string(0) "" ["post_name"]=> string(108) "%e5%90%84%e5%9b%bd%e3%81%ae%e5%a4%96%e8%b3%87%e5%a5%a8%e5%8a%b1%e6%94%bf%e7%ad%96%e3%81%ae%e6%a6%82%e8%a6%81" ["to_ping"]=> string(0) "" ["pinged"]=> string(0) "" ["post_modified"]=> string(19) "2022-10-12 12:50:47" ["post_modified_gmt"]=> string(19) "2022-10-12 03:50:47" ["post_content_filtered"]=> string(0) "" ["post_parent"]=> int(0) ["guid"]=> string(33) "https://nnaglobalnavi.com/?p=6952" ["menu_order"]=> int(0) ["post_type"]=> string(4) "post" ["post_mime_type"]=> string(0) "" ["comment_count"]=> string(1) "0" ["filter"]=> string(3) "raw" }
 TNY国際法律事務所
ティエヌワイコクサイホウリツジムショ TNY国際法律事務所
世界11か国13拠点で日系企業の進出及び進出後のサポート

世界11か国13拠点(東京、大阪、佐賀、ミャンマー、タイ、マレーシア、メキシコ、エストニア、フィリピン、イスラエル、バングラデシュ、ベトナム、イギリス)で日系企業の進出及び進出後のサポートを行っている。具体的には、法規制調査、会社設立、合弁契約書及び雇用契約書等の各種契約書の作成、M&A、紛争解決、商標登記等の知財等各種法務サービスを提供している。

堤雄史(TNYグループ共同代表・日本国弁護士)、永田貴久(TNYグループ共同代表・日本国弁護士)

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