生活雑貨店「MUJI(無印良品)」としてインド最大の売場面積を誇る新店を開店し、再出発した良品計画——。西部ムンバイで1日にオープンした新店は「旗艦店」の位置付けで、売場面積は約1,000平方メートル。現在営業中の他2店(ムンバイ、北部ノイダ)より2倍以上広い。良品計画インド子会社の業績は、同国1号店を開店(2016年8月)して以来、7年連続赤字で苦戦が続く。新店の広い売り場を通じ、商品単体ではなく、企業理念でもある「感じ良い暮らし」をいかに見せることができるか。その成否がインド事業の行方を左右する。【鈴木健太】
売り場の広さを生かし、ベッドをインドで初めて2台展示した=無印良品のムンバイの新店(NNA撮影)
「この新店は売り場が広く、ベッドや机を複数展示できるようになった。大型家具を含む生活シーンを余裕持って展示できる。無印の商品をしっかり紹介したい」。良品計画のインド担当・商品課長、中村夏樹氏は新店を案内しながら、インド事業の再拡大に向けた意気込みを語った。
中村氏によると、これまでの国内店は売り場が狭く、家具を複数展示したり、衣服全体をハンガーにかけて見せたりするのが難しかった。特に衣服は畳んで商品棚に並べることが多く、消費者が手に取りづらかった。
新店は広さを生かし、ベッドをインドで初めて2台展示し、ハンガーにかけた衣服を増やした。インド事業の課題の一つ、女性服の売り場は入り口付近に配置。新店付近はオフィスが多く、働く女性の来店に期待を寄せる。
女性服の売り上げアップはインド事業の課題の一つ。衣服全体を見せるため、ハンガーにかけた展示を増やした=無印良品のムンバイの新店(NNA撮影)
■リライアンス系モールで開店
新店は、同じく1日に開店した地場財閥リライアンスグループが運営するショッピングモール「ジオ・ワールド・プラザ」内でオープンした。新店の売り場は1フロアで、日本の無印と同様、男性・女性・子供向け衣服、文房具、寝具、化粧品、スーツケースなど幅広い商品をそろえた。売場面積の拡大に伴い、品数を単純に増やすのではなく、通路を広くしたり、購入商品の刺しゅうサービスコーナーを設けたりした。
「この店にしかない特別な商品を売るというより、今まで十分見せることができなかった無印を分かりやすく見せる。それがこの店の一番のコンセプトだ」(中村氏)。気軽に立ち寄ってもらうため、コーヒーを飲める休憩スペースも店内に近く開設する。
無印良品のムンバイの新店が入居するショッピングモール「ジオ・ワールド・プラザ」。地場財閥リライアンスグループが運営する(NNA撮影)
■ヴィトン、グッチ、カルティエも
新店はもともと19年7月に開店する予定だったが、モール工事の遅れや新型コロナウイルス流行で大幅に後ずれした。現在営業中の無印は、今回の新店のほか、ムンバイの別店(売場面積約230平方メートル)、ノイダの店(約500平方メートル)の計3店がある。日本で新店を出す際の売場面積は約1,700平方メートル前後が最近多いものの、今回の約1,000平方メートルはインド最大だ。
モールは、ルイ・ヴィトンやグッチ、カルティエ、ディオール、ブルガリなど66ブランドが入居する。併設施設を多く持ち、大会議場や劇場が開業済み。この先、住居エリアがオープンする。モール一帯はムンバイの新都心バンドラ・クルラ・コンプレックス(BKC)地区に位置し、周辺はオフィスや商業施設の開発が進んでいる。
(続きは来週に掲載します)
<メモ>
「無印良品」ブランドは1980年12月、西友ストアー(当時)のプライベートブランドとして40品目でスタートした。会社組織「良品計画」は89年6月に設立され、無印商品の企画開発や調達、流通、販売を手がける。現在は日本を含む32カ国・地域に店舗を設け、ユニクロやニトリに並ぶ日本を代表する製造小売り(SPA)に育った。
良品計画の地域別売上高(2023年8月期通期・連結)を見ると、インドを含む「東南アジア・オセアニア」事業の存在感はまだまだ小さい。
総売上高5,814億円(無印良品の総店舗数1,188店)のうち、構成比が最も高いのは日本(売上高3,428億円、店舗数562店)の59.0%。2番目は東アジア(1,716億円、482店)の29.5%が続く。
東アジアの中でも中国大陸(1,060億円、361店)は全体比18.2%を誇り、売上高、店舗数ともにインド(22年4月~23年3月期の売上高は約7億円、現在の店舗数は3店)と桁違いの存在感だ。
他方、欧米(354億円、57店)は6.1%、東南アジア・オセアニア(314億円、87店)は5.4%にとどまる。
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「この新店は売り場が広く、ベッドや机を複数展示できるようになった。大型家具を含む生活シーンを余裕持って展示できる。無印の商品をしっかり紹介したい」。良品計画のインド担当・商品課長、中村夏樹氏は新店を案内しながら、インド事業の再拡大に向けた意気込みを語った。
中村氏によると、これまでの国内店は売り場が狭く、家具を複数展示したり、衣服全体をハンガーにかけて見せたりするのが難しかった。特に衣服は畳んで商品棚に並べることが多く、消費者が手に取りづらかった。
新店は広さを生かし、ベッドをインドで初めて2台展示し、ハンガーにかけた衣服を増やした。インド事業の課題の一つ、女性服の売り場は入り口付近に配置。新店付近はオフィスが多く、働く女性の来店に期待を寄せる。
[caption id="attachment_16517" align="aligncenter" width="620"]女性服の売り上げアップはインド事業の課題の一つ。衣服全体を見せるため、ハンガーにかけた展示を増やした=無印良品のムンバイの新店(NNA撮影)[/caption]
■リライアンス系モールで開店
新店は、同じく1日に開店した地場財閥リライアンスグループが運営するショッピングモール「ジオ・ワールド・プラザ」内でオープンした。新店の売り場は1フロアで、日本の無印と同様、男性・女性・子供向け衣服、文房具、寝具、化粧品、スーツケースなど幅広い商品をそろえた。売場面積の拡大に伴い、品数を単純に増やすのではなく、通路を広くしたり、購入商品の刺しゅうサービスコーナーを設けたりした。
「この店にしかない特別な商品を売るというより、今まで十分見せることができなかった無印を分かりやすく見せる。それがこの店の一番のコンセプトだ」(中村氏)。気軽に立ち寄ってもらうため、コーヒーを飲める休憩スペースも店内に近く開設する。
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■ヴィトン、グッチ、カルティエも
新店はもともと19年7月に開店する予定だったが、モール工事の遅れや新型コロナウイルス流行で大幅に後ずれした。現在営業中の無印は、今回の新店のほか、ムンバイの別店(売場面積約230平方メートル)、ノイダの店(約500平方メートル)の計3店がある。日本で新店を出す際の売場面積は約1,700平方メートル前後が最近多いものの、今回の約1,000平方メートルはインド最大だ。
モールは、ルイ・ヴィトンやグッチ、カルティエ、ディオール、ブルガリなど66ブランドが入居する。併設施設を多く持ち、大会議場や劇場が開業済み。この先、住居エリアがオープンする。モール一帯はムンバイの新都心バンドラ・クルラ・コンプレックス(BKC)地区に位置し、周辺はオフィスや商業施設の開発が進んでいる。
(続きは来週に掲載します)
<メモ>
「無印良品」ブランドは1980年12月、西友ストアー(当時)のプライベートブランドとして40品目でスタートした。会社組織「良品計画」は89年6月に設立され、無印商品の企画開発や調達、流通、販売を手がける。現在は日本を含む32カ国・地域に店舗を設け、ユニクロやニトリに並ぶ日本を代表する製造小売り(SPA)に育った。
良品計画の地域別売上高(2023年8月期通期・連結)を見ると、インドを含む「東南アジア・オセアニア」事業の存在感はまだまだ小さい。
総売上高5,814億円(無印良品の総店舗数1,188店)のうち、構成比が最も高いのは日本(売上高3,428億円、店舗数562店)の59.0%。2番目は東アジア(1,716億円、482店)の29.5%が続く。
東アジアの中でも中国大陸(1,060億円、361店)は全体比18.2%を誇り、売上高、店舗数ともにインド(22年4月~23年3月期の売上高は約7億円、現在の店舗数は3店)と桁違いの存在感だ。
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