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タイで日本食材の普及を深耕ジェトロ、豚肉やサンマなど訴求

日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所が、タイの消費者になじみの薄い日本産食材の普及に力を入れている。全国各地に日本食店があり、何度も日本を訪れた経験のある「日本通」の消費者も多いタイ。そうした「成熟市場」にあって、日本食レストランなどとの連携の下、鹿児島産黒豚や北海道産サンマなどを使ったメニューを展開する。生産者のこだわりや生産方法といった食材にまつわるストーリーを紹介することで、認知度向上につなげたい意向だ。

日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所は日本食の成熟市場とされるタイで日本産豚肉などの消費拡大を図っている

ジェトロ・バンコク事務所は、今月1日から2023年2月末まで「本物の『Made in JAPAN』を味わおう!」と題した日本産食材のPRキャンペーンを展開している。バンコクの150店、地方86店の合計236店の日本食レストランと連携し、日本産食材の魅力を発信する。
同事務所が日本産食材のPRキャンペーンを展開するのは、本年度が3年目。20年度に外食店の日本産食材のPRキャンペーン「Let’s eat Japan」、21年度にリンゴやサツマイモ、イチゴなどの青果物の小売り販売PRキャンペーン「Japan Fruits Festival」などを展開した。ジェトロ・バンコク事務所で日本産食品を担当する谷口裕基氏によると、20年度のキャンペーンは、新型コロナウイルス感染症の影響によって飲食店の営業が制限されるなど、日本産食材の消費への影響が懸念される中でのキャンペーンだったのに対し、今年は日本産食材の消費の多様化や深掘りなど新たな需要を掘り起こす「攻めのキャンペーン」と位置付けている。
キャンペーンで力を入れているのが、これまであまりタイの消費者にはなじみのない日本産食材の認知度向上だ。その一つが豚肉。タイでは和牛が高い人気を誇るが、日本産豚肉の消費は少ない。日本産の豚肉がタイに輸入されるようになったのは2019年。21年の輸入額は約3,000万円と少なく、消費者の認知度はまだまだ低い。同様に、水産物ではマグロやサーモンなどがすしネタとして人気が高い一方、サンマやブリなどまだまだ広くは知られていない水産物が数多くある。
また、首都バンコク以外の地方への浸透にも力を入れる。近年、日本食店の店舗数は特に地方で著しい伸びを見せている。バンコクの高級店などがメニューの多くに日本産食材を使っているが、地方でもより多くの日本産食材が使用されることを目指す。「日本産食材を使った本物の味」を味わう機会を増やすことで、日本産食材の普及につなげる。
日本産食材の認知度向上に向けては、各飲食店が運営しているそれぞれの会員制交流サイト(SNS)を通じたPRに力を入れる。飲食店の店員が直接消費者にコミュニケーションやメニュー、看板などでの紹介に加え、フェイスブックやインスタグラムなどのオンラインPR媒体を通じ、日本産食材の魅力をアピールする。特に生産者のこだわりや独特の製法などを紹介するなど、それぞれの日本産食材の「ストーリー」を伝えることで、より興味を持ってもらえるようにする。
飲食店自身が情報発信のメディアとなることや、オンラインメディアやインフルエンサーによる情報発信で、タイ人口の6~7人に1人に相当する1,000万人へのリーチを目指している。
■日本食店の増加、食材輸出の原動力に
ジェトロ・バンコク事務所がタイで消費される日本産食材の多様化や地方での普及に力を入れる背景には成熟市場としての認識がある。
親日家の多いタイでは、好きな料理として「日本料理」が「タイ料理」に次ぐ地位を占める。また、タイには全77都県に日本食店が営業している。ジェトロ・バンコク事務所が21年に実施した調査によると、タイにおける日本食レストラン店舗数は、前年比6.7%増の4,370店となり、9年連続で増加した。新型コロナの流行による休業の影響などで首都の店舗数が微減した一方、地方は2桁の増加。地方の店舗数が初めてバンコクを上回った。日本食文化の浸透や価格帯の多様化によって、バンコク以外の顧客層が拡大したことが要因と考えられている。
22年の調査は現在、集計作業を進めているところだが、新型コロナによる営業制限にも関わらず前年を上回った21年に比べ、経済活動の制限解除や外国人旅行者の回復など、飲食店を取り巻く事業環境は明らかに改善している。ジェトロ・バンコク事務所は、日本食レストランの増加が日本産食材の輸出拡大につながるよう、地方での消費拡大や認知度の向上を進めていく方針だ。
■北海道のTV局も独自イベント
タイで日本産食材の消費を促進しているのはジェトロだけに限らない。北海道の地方テレビ局である北海道文化放送(UHB)は10月31日、道産食材をアピールするイベントを開催した。
日本総務省による補助事業「放送コンテンツによる地域情報発信力強化事業」の一環。タイの「チャンネル3」で放送されている情報番組で、UHBが制作した北海道特集が放送されるのに合わせて、北海道・札幌の食と観光をアピールするイベントをバンコクにある日本大使公邸で開いた。
「北海道のゆうべ~うまいっしょ!北海道~」と題した同イベントでは、タイ国内の旅行会社や航空会社、インフルエンサーらを招き、北海道産の食材を使ったすしやスープカレーなどをふるまった。北海道米を使ったおにぎりのパフォーマンスや札幌市のソウルフード「ちくわパン」にまつわるエピソードに関心を示していた。
UHB総合コンテンツ局の鈴木謙二局長は、「北海道は訪日旅行先として非常に人気があるが、北海道の魅力をより積極的に発信することで、さらに多くのタイ人に北海道を訪れてもらいたい」と話した。
日本の水際対策が緩和され、外国人旅行者が本格的に回復しつつある中、日本の各地方が自ら発信力を高めてアピールする機会が増えそうだ。

北海道文化放送が主催したイベントでは道産食材を使った料理が振る舞われた=10月31日、タイ・バンコク(NNA撮影)
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同事務所が日本産食材のPRキャンペーンを展開するのは、本年度が3年目。20年度に外食店の日本産食材のPRキャンペーン「Let's eat Japan」、21年度にリンゴやサツマイモ、イチゴなどの青果物の小売り販売PRキャンペーン「Japan Fruits Festival」などを展開した。ジェトロ・バンコク事務所で日本産食品を担当する谷口裕基氏によると、20年度のキャンペーンは、新型コロナウイルス感染症の影響によって飲食店の営業が制限されるなど、日本産食材の消費への影響が懸念される中でのキャンペーンだったのに対し、今年は日本産食材の消費の多様化や深掘りなど新たな需要を掘り起こす「攻めのキャンペーン」と位置付けている。
キャンペーンで力を入れているのが、これまであまりタイの消費者にはなじみのない日本産食材の認知度向上だ。その一つが豚肉。タイでは和牛が高い人気を誇るが、日本産豚肉の消費は少ない。日本産の豚肉がタイに輸入されるようになったのは2019年。21年の輸入額は約3,000万円と少なく、消費者の認知度はまだまだ低い。同様に、水産物ではマグロやサーモンなどがすしネタとして人気が高い一方、サンマやブリなどまだまだ広くは知られていない水産物が数多くある。
また、首都バンコク以外の地方への浸透にも力を入れる。近年、日本食店の店舗数は特に地方で著しい伸びを見せている。バンコクの高級店などがメニューの多くに日本産食材を使っているが、地方でもより多くの日本産食材が使用されることを目指す。「日本産食材を使った本物の味」を味わう機会を増やすことで、日本産食材の普及につなげる。
日本産食材の認知度向上に向けては、各飲食店が運営しているそれぞれの会員制交流サイト(SNS)を通じたPRに力を入れる。飲食店の店員が直接消費者にコミュニケーションやメニュー、看板などでの紹介に加え、フェイスブックやインスタグラムなどのオンラインPR媒体を通じ、日本産食材の魅力をアピールする。特に生産者のこだわりや独特の製法などを紹介するなど、それぞれの日本産食材の「ストーリー」を伝えることで、より興味を持ってもらえるようにする。
飲食店自身が情報発信のメディアとなることや、オンラインメディアやインフルエンサーによる情報発信で、タイ人口の6~7人に1人に相当する1,000万人へのリーチを目指している。
■日本食店の増加、食材輸出の原動力に
ジェトロ・バンコク事務所がタイで消費される日本産食材の多様化や地方での普及に力を入れる背景には成熟市場としての認識がある。
親日家の多いタイでは、好きな料理として「日本料理」が「タイ料理」に次ぐ地位を占める。また、タイには全77都県に日本食店が営業している。ジェトロ・バンコク事務所が21年に実施した調査によると、タイにおける日本食レストラン店舗数は、前年比6.7%増の4,370店となり、9年連続で増加した。新型コロナの流行による休業の影響などで首都の店舗数が微減した一方、地方は2桁の増加。地方の店舗数が初めてバンコクを上回った。日本食文化の浸透や価格帯の多様化によって、バンコク以外の顧客層が拡大したことが要因と考えられている。
22年の調査は現在、集計作業を進めているところだが、新型コロナによる営業制限にも関わらず前年を上回った21年に比べ、経済活動の制限解除や外国人旅行者の回復など、飲食店を取り巻く事業環境は明らかに改善している。ジェトロ・バンコク事務所は、日本食レストランの増加が日本産食材の輸出拡大につながるよう、地方での消費拡大や認知度の向上を進めていく方針だ。
■北海道のTV局も独自イベント
タイで日本産食材の消費を促進しているのはジェトロだけに限らない。北海道の地方テレビ局である北海道文化放送(UHB)は10月31日、道産食材をアピールするイベントを開催した。
日本総務省による補助事業「放送コンテンツによる地域情報発信力強化事業」の一環。タイの「チャンネル3」で放送されている情報番組で、UHBが制作した北海道特集が放送されるのに合わせて、北海道・札幌の食と観光をアピールするイベントをバンコクにある日本大使公邸で開いた。
「北海道のゆうべ~うまいっしょ!北海道~」と題した同イベントでは、タイ国内の旅行会社や航空会社、インフルエンサーらを招き、北海道産の食材を使ったすしやスープカレーなどをふるまった。北海道米を使ったおにぎりのパフォーマンスや札幌市のソウルフード「ちくわパン」にまつわるエピソードに関心を示していた。
UHB総合コンテンツ局の鈴木謙二局長は、「北海道は訪日旅行先として非常に人気があるが、北海道の魅力をより積極的に発信することで、さらに多くのタイ人に北海道を訪れてもらいたい」と話した。
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